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NTTデータの「先見の明」が示す、変革の道筋とは【Foresight Day 2024レポート 前編】

2008年~2023年に開催した、NTTデータの先進的な取り組みを紹介するイベント「NTT DATA Innovation Conference」。2024年から名称を「NTT DATA Foresight Day」と改め、NTTデータがForesight(先見性)を発揮してお客様の事業とその先にある社会を変革する姿勢をより明確に示すイベントに進化しました。今回はForesight Day当日の様子をレポートします。

目次

Foresightをベースに、ビジネスを通して社会課題を解決していく

Foresight Dayのスタートを切ったのは基調講演の「開け、未来。社会課題解決への情熱と変革への胎動」。NTTデータ代表取締役社長の佐々木 裕からのプレゼンテーションに加え、注目の若手社会起業家である株式会社taliki代表取締役CEOの中村 多伽氏の対談が行われました。

「Foresight Day」に込められた想い

今回のイベントを通して、NTTデータが提示するForesightは二つ。一つは、Business Foresightで地政学や気候変動などのさまざまな要因から、産業構造、競争環境の変化を先読みし、お客様の将来あるべき事業立地を読み解くこと。もう一方のTechnology Foresightは、テクノロジーとそれが既存のマーケットに与えうる可能性を見極め、起こりうる産業構造、競争環境等の変化を読み解くこと。
「二つのForesightをもって、私たちの企業理念である『より豊かで調和のとれた社会の実現』を目指していく」と今回のイベント名に込められた想いを語った佐々木。Foresight Dayを通して、今後の活動に向けた示唆を持ち帰ってほしいと呼びかけました。

「世界を変える30歳未満」が登壇

基調講演の後半からは株式会社taliki代表取締役CEOの中村氏が登壇。中村氏は社会課題解決ベンチャーキャピタルであるtalikiファンド 代表パートナーも務めており、世界を変える30歳未満「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」にも選出されています。佐々木からのリクエストで、世代も領域も異なる新世代の社会課題解決プレイヤーとの対談が実現しました。
まずは中村氏から社会起業家(社会課題解決に取り組む起業家)の発掘・育成や事業への投資、営業支援・販路拡大を通して、より大きな社会課題解決プラットフォームを目指すという展望が語られました。
佐々木との対談ではNTTデータが取り組むIT・テクノロジーによる社会貢献とのつながりについても言及。中村氏は社会課題解決に向けたテクノロジーの役割について「10年前と比較して、サステナブルやエシカルといった単語が当たり前に通じる社会になった。意識の変容の次に必要なのは技術の課題。行動と技術が両立しないと解決できないものがある」とし、意識変容、行動変容の先でテクノロジーによる解決が求められると話しました。

また、NTTデータに対し、すぐにはビジネスにならないマイノリティ領域へどのようにアプローチするかを問う場面もありました。対する佐々木はNTTデータ単独で動くのではなく、お客様とともにソリューションを作るという姿勢を強調。幅広いお客様とリレーションシップを持つNTTデータだからこそ、さまざまな課題にリーチできるという考えを示しました。

NTTデータは「社会変革プロデューサー」に

対談を踏まえて、佐々木は「より豊かで調和のとれた社会の実現に向けて、従来の業界に縛られず、より高い視座で社会課題を見つめ直す必要がある」と話し、「NTTデータは『社会変革プロデューサー』として、Foresightをベースに業界を横断し、プレイヤーを巻き込むことで実現に近づけていく」という想いが語られました。
NTTデータが取り組む社会課題の具体例として、年間15億着とも言われるファッションロス(衣類の大量廃棄)や、スマートフォンなどのIT活用で病気の治療が可能になるデジタルセラピューティクス(DTx)の社会浸透を紹介。佐々木は「Business、TechnologyのそれぞれのForesightによって、業界構造や法規制、企業、そしてテクノロジーなどのMissing Pieceを皆様とともに埋めていく」と、社会変革プロデューサーを目指す意義を説明しました。来場者に向けて「本イベントが社会課題に対してのアプローチの多様性を感じる機会になれば。日本の未来はまだまだ明るいと思ってもらいたい」と呼びかけると、会場からの大きな拍手で講演が締めくくられました。

多様な視点で未来を洞察し、課題解決の示唆に富んだ各講演

基調講演後も、「Foresight」をコンセプトに企画を一新した各講演が続きます。来場者は会場に掲示されたタイムスケジュールを確認し、参加する講演の会場に向けて続々と流れて行きます。ここでは、4つの特別講演の模様をご紹介。

サステナビリティを踏まえた「需要創造」

基調講演で触れられた社会課題の中でも、多くの企業にとって喫緊に取り組む必要があるサステナビリティ。「サステナビリティビジネス最前線」と銘打たれた講演では、NTTデータグループ執行役員 サステナビリティ経営推進部長の池田 佳子が登壇し、世界のCEOが今後もサステナビリティ・ESGへの投資を維持もしくは増やす意向であることに加え、デジタルとサステナビリティは次なるブームの推進役となって相互に補強していくという展望であることを説明。「ビジネスチャンス」だと語りました。

また、NTTデータのサステナビリティ経営については「特定の業界に向けたシステム・サービスの提供から、企業・業界・社会に横ぐしを刺したサービスの提供へとシフトしていく」として、デジタル防災プラットフォームで支援をつなぐ「D-Resilio®」のインドネシア防災情報伝達システム(DPIS)提供などを具体例に、サステナビリティに寄与する新規ビジネスや既存ビジネスに環境・社会的価値を付与する動きを紹介し、サステナビリティを軸にした新たな需要創造を呼びかけました。

講演の後半ではNTTデータ執行役員 ソーシャルデザイン推進室長の濱口 雅史と、 NTTデータグループ サステナビリティ経営推進部 シニア・スペシャリストの金田 晃一が加わり、それぞれの組織の設立背景から、サステナビリティへの取り組みを解説するセッションが行われました。
また、NTTデータの需要創造の取り組みとして、社会課題を起点とした異業種連携デジタルエコシステム創出・社会課題バリューチェーン構築・新たな市場の創出へとステップを進め、日本経済再成長に貢献するという道筋も示唆。具体的な施策として食を通した地域創生の事例を挙げ、鉄道事業者やIT企業などの共創パートナーとともに民間主導型の持続可能な地域創生プロジェクトが進められていることが紹介されました。
池田、濱口がそれぞれに話したのは「社会課題は個社で取り組むものではない」ということ。社会課題解決は民間と行政の一体的取り組みが不可欠であり、NTTデータがけん引役となることで、行政をはじめとした多くのパートナーを巻き込み、取り組みを加速していくことが期待されています。

提言・実装・成果を掲げるNTTデータの変化

NTTデータ 取締役副社長執行役員 有馬 勲が登壇した講演「変革の波及」では、Business Foresightに関わる“変革”のあり方が語られました。日本の国際競争力低下について警鐘が鳴らされて久しい中、「私たちには、まだまだやれることがある」と考える有馬は、欧米企業の事例紹介を通して、変革の波及を広げていきたいと話します。
有馬は国内企業と海外企業の「稼ぎ方」「回し方」「人の活かし方」の変化について海外製造業の事例を挙げ、事業の多角化・大規模化に伴う収益性の違いから日本と米国の経営力の違いと意識改革の必要性を説くとともに、人財のリスキリングについても欧米各国に後れを取っている現状を説明。「欧米に取り残されている日本だが、逆に言えば変化の振れ幅を広げる余地がある。変化をもたらすための確固たるビジョンを持ち、実現に向けて長く挑み続けることが重要」と語りました。

そのような中、「提言・実装・成果」をバリューとして掲げるNTTデータ自身はどのような変化を起こそうとしているのか。有馬は「これまで高い評価を得てきた実装に加え、よりよい提言を行いビジネス成果の実現までお客様に伴走する力を身につけていく」と語りました。法人分野のビジョンとして「お客様の経営課題を提起し、一緒に考え、業務とIT一体で変革を実現する会社」を目指し、稼ぎ方は「受動SIから、“能動”提案」へ、回し方は「マトリクス組織運営」、人の活かし方は「“能動”アサインメント」に取り組んでいることを紹介。
“能動”提案では、小売業のお客様に対するNTTデータオフィス内の共同店舗運営の事例を。マトリクス組織運営は2023年からスタートした価値提供を最大化できる体制への再編を。そして“能動”アサインメントについては、メンバーのキャリアビジョンに基づくアサインメントの制度化といった具体例を示したうえで、「お客様の変革に伴走するべく、私たち自身も挑み続ける」と宣言し、NTTデータが技術力とコンサルティング力で産業界のレベルアップに貢献していくと話して講演を締めくくりました。

デジタル時代の組織・人材マネジメントに必要な戦略アクション

NTTデータ経営研究所で組織・人材変革コンサルティング室長を務める長安 賢は、「デジタル時代に求められる組織・人材マネジメント」と題して、重要性が増す「組織・人材戦略」と「変化に迅速に対応できる組織アジリティ」に関する課題を突破するための戦略アクションを解説しました。

長安は「組織・人材マネジメントは悩みが深い領域なので、バズワードが生まれやすく惑わされやすい」と話し、中長期で本質的に取り組まなければいけない7つのアクションとして、「①企業競争力の源泉としての変革スピード強化」「②人的資本情報のビジネスとの連携高度化」「③事業の多様化をマネジメント可能なリーダーシップ強化」「④人材・スキルミスマッチへの対応・自律リスキリング」「⑤専門人材不足への対応」「⑥社外/パートナー活用での組織ケイパビリティ迅速拡張」「⑦変革を支える人事機能強化」を解説。それぞれの成功例を紹介しながら、陥りがちな課題や乗り越えるべき壁についても説明しました。
日本型の組織・人財モデルは変化を求められていますが、バズワードに惑わされることなく戦略的なアクションを遂行することで、アジリティの高い組織・人財モデルを実現し、共創力とビジネス成果を生むことにつながっていきます。

ビジネスと社会、そして未来を変えていくテクノロジーの最前線

Foresight Day注目講演の一つは、NTTデータグループ 執行役員 技術革新統括本部長の田中 秀彦による技術トレンドレポート。NTTデータが公開する「NTT DATA Technology Foresight」では、激しく変化を続ける現在と未来のトレンドが提言されています。本講演では最新版のレポートの中から主要なポイントが紹介されました。

止まらないAIの進化と、体感、体験のUX追求

まず、田中は今後のトレンドについて「技術からビジネスにどう割り込んでいくか」だと全体像を示したうえで、メインストリームとして「AIが起こす地殻変動はなお継続する」という最新動向を挙げ、2023年から真価が加速するAIの今後について説明しました。
AIは未だビジネスへの活用法がわからないという企業も多い中で、今後は「コアの進化」が急速に進み、人間の専門家を超えるとも言われています。
そうした中で田中が紹介したのは、NTT研究所の「tsuzumi」。これは小さいAIであるために反応が早く、日本語に特化することで最新の情報を提供することが可能です。壇上のデモンストレーションでは、日本語による質問に対しては他の生成AIよりもレスポンスが早く、正確な回答を返すことができていました。こうしたAIをどのように企業競争力に結び付けるかは、「顧客接点の深掘りで決まる」と田中は話します。スマートフォンの台頭で業態業種を超えた可処分時間の争奪戦が起こっている中で、顧客接点からの一気通貫が競争力となっています。それを支えるデータ×ソフトウェアの領域にAIの浸透が進むことで、AIが人とITの接点を司るようになるという未来像が示されました。

また、新たな技術が顧客接点を生み出すという展望もあります。当日は、来場者が実際にテクノロジーを体感できる展示がいくつも用意されていました。いずれも、実際に目で見て・触れて・感じることができるという体感・体験のUXを追求した技術ばかり。「におい・かおり産業のDX」の展示では、大阪大学発のベンチャー企業である株式会社香味醗酵との共同開発による“香りの数値化”と、量子コンピュータの組み合わせ最適化計算技術を用いた“数値化された香りの再構成”を体感することができました。少量の香料でさまざまな匂いを多様な場所で再現するなど、エンターテインメント領域やヘルスケア領域への活用が想定されていますが、五感データの活用はまだまだ可能性が広がっていく分野です。今後のビジネスへの拡大についても期待が大きいと言えるでしょう。

その他、リアルに生成されたデジタルヒューマンによって生身の人間に近いインタラクティブな会話・コミュニケーションが可能な「生成AIと3Dアバターを活用したデジタルヒューマン」や、クロスモーダルAIを活用して話者の会話内容や表情・声を統合的に解析し個性を可視化したニックネームを生成できる「ニックネーム生成AI」、タブレット端末のカメラで手軽にウェルビーイング度を可視化できるFace.ing®など、生成AIをはじめとした最新技術が体験できる展示ブースでは開発担当者と来場者の間で活発なコミュニケーションが生まれていました。技術的な背景やビジネスへの転用について生の声をやり取りできる場となり、展示ブース周辺は大盛況となりました。

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NTTデータが持つ先見性を示すさまざまな講演が開かれた「NTT DATA Foresight Day 2024」。後編では3年ぶりに来場者を招いてのイベント開催を実現した広報部のメンバーに、本イベントに込められた想いと今後の展望を聞きます。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです