人と仕事を伝えるWEBマガジン
NTTデータグループ / NTTデータ / NTT DATA, Inc.

“顧客の事業パートナーとして課題に向き合う ”NTTデータのPMとは?次世代のPMを輩出する組織へ。

プロジェクトマネジメントにおける卓越した能力を武器に、数多くのお客様から選ばれてきたNTTデータ。しかし、時代の変化に伴い、従来のやり方でPM(プロジェクトマネージャー)を育てることが難しくなっていました。その問題を分析し、PMボトルネックを解消するために発足されたのがプロジェクトマネジメント統括部です。これからもNTTデータがビジネスを拡大していくためには、どのようなPMが必要なのか。NTTデータが描くPM像や現場改善の取り組みについて統括部長の横倉と担当部長の山上が語ります。

目次

Profileこの記事に登場する人

“スーパーマン”への専任から脱却し、応用力を持った次世代を育てる

NTTデータは、大規模システム開発でのプロジェクトマネジメントが強みです。しかし、クラウドなどの技術進歩やアジャイル開発のニーズ増加により、状況は一変。小規模な開発でお客様と密接にコミュニケーションを取りながら、スピード感を持ってプロジェクトを進行することが求められることが増えてきました。

この時代の変化に適応するうえで問題となったのが、NTTデータに所属するPM人財の育成です。当時の状況について、横倉はNTTデータが強みとするPM力に対して、少しずつ問題が顕在化していたと言います。

NTTデータのPMは、一言で表すとスーパーマンです。システム企画や要件定義といったエンジニアとしてのスキルだけでなく、お客様やパートナー、社内の組織との調整など、四方に意識を張り巡らせてプロジェクトを柔軟に進行することを強みとしています。このようなPMは「またあの人にやってもらいたい」と指名していただきやすい反面、プロジェクトが小規模化した現在では育成を阻む要因にもなっていました。

マルチスキル化が進み、PMとして高い価値提供ができる一方で、プロジェクト環境の変化によってPMが担う業務を若手メンバーに任せることが難しくなっていたのです。この状態が続くと後進育成に支障が出るだけでなく、PMが特定のお客様の慣習にとらわれてしまい、PMとしての応用力が次第に失われていくのではないかと横倉は考えました。

PMの専任化が加速すると、案件を受けられるキャパシティが小さくなることに加え、時代の変化に適応できなくなり、結果としてお客様にも不利益が生じる可能性があります。そのような事態に陥らないためにも、PMボトルネックの解消は急務となっていました。

幸いなことに、法人分野の組織形態が事業部制からマトリクス型に刷新されたことで、人財の専門性や流動性を高める土台はできていました。しかし、「PMの応用力を磨くこと」や「次世代のPM人財を育てること」の問題を解消できなければ、本質的な解決にはなりません。そこでプロジェクトマネジメント統括部は、法人分野で顕在化していたPMボトルネックを解消することをミッションに掲げました。

かくして、困難なプロジェクトを完遂する「NTTデータ1丁目1番地の次世代PM人財」を育成し、NTTデータのPM力を強化する取り組みがスタートしました。

プロフェッショナルな人財は、どのようにして成り立つのか

プロジェクトマネジメント統括部には、PMの業務を改革するPMチームと、プロジェクトの構造を最適化するモダナイズチームという2つのチームがあります。それぞれのチームの活動目的について、山上は「PMの仕事を変えるPMチーム」と「PMの仕事を減らすモダナイズチーム」と表現しました。

PMチームは、NTTデータのPMがなぜスーパーマンたり得てきたのかを定義し、業務を適切に分けるためのチームです。特定の業界やお客様のみに活用できるテクニカルスキルと、どのプロジェクトでも通用するポータブルスキルにPMのスキルを分解し、PMが担うべき業務を再構築しています。一方でモダナイズチームは、プロジェクトでの業務の手法や進め方をモダンなかたちに変えることが主目的です。どちらもPMの負担を減らす取り組みですが、アプローチが違います。

各チームの活動は、テーマごとにPMが集まり、課題解決に向けた方法を協議する分科会と呼ばれるグループに分かれて行われます。現在、分科会はPMチームに「PMの専門性を分解して業務を再構築する分科会」と「PMに必要な知見・ノウハウを得るためのトレーニング内容を検討する分科会」、モダナイズチームに「新技術を採り入れたモダンなプロジェクトマネジメントの仕組みをつくる分科会」という計3つがあります。

モダナイズチームの分科会はどのような型を作り、プロジェクトに導入・適応させるかという初期フェーズに取り組んでいるため、まだ1つしか分科会がありません。しかし、1つの型が出来上がり、導入・適応が成功した場合、それを高度化するための分科会を新設する予定です。2024年度はその両輪を確立して、より効率的にサイクルを回したいと考えています。

また、プロジェクトマネジメント統括部は同時期にユニット制を採用し、小規模プロジェクトでの育成環境の構築を進めています。ユニット制を採用した目的について、山上は一人ひとりの任せられる案件を増やすことを挙げています。

もともとはPMそれぞれの知見や経験を集約化し、育成スキームとして体系化できないかと考えたのがユニット制を採用したきっかけです。ユニット制では、ユニットリーダーとメンバー数名で1つのユニットを組み、ユニット単位で各案件のプロジェクトマネジメントを行います。一人ひとりの得意・不得意を補完しながら、総合力を高められる点が利点と考えています。また、ユニット制なら1つの案件に限定されることなく、一人のPMが複数のプロジェクトに参画できるようになるため、PM個人としての成長スピードを高めることができます。個人のPM力が向上し任せられる案件が増えることで、将来的には事業全体の成長にも力強く貢献できると私たちは考えています。

プロジェクトマネジメント力、テクノロジー知識、業界・業務知見。NTTデータには、これらすべてを兼ね備えたプロフェッショナリティの高いPMが多く活躍しています。スペシャリストが若手メンバーとユニットを組むことでプロジェクトのパフォーマンスを標準化しつつ、技術の伝承が進むことが期待されています。

個性を活かし、多様な人財が活躍できる環境へ

2023年10月発足以降、これまで複数の取り組みを進めてきたプロジェクトマネジメント統括部ですが、当初その道のりは困難を極めました。社内のPMに変革の必要性を訴えかけた際、一定の理解は得られるものの、いざ実行するとなると尻込みしてしまう状態だったのです。

横倉

NTTデータとしては初の試みだったこともあり、「具体的に何をすればいいのか分からない」と戸惑うPMが多かったですね。そのような環境下でPMたちの協力を得ながら進めていくためには、ボトムアップで改善策を決めていくことが大切だと感じ、分科会がスタートしたんです。

NTTデータの大規模プロジェクトで育ったスーパーマン的なPMはNTTデータだからこそ輩出できる社員羨望の的であり、ITサービスプロバイダとしてさまざまなプロジェクトを構築してきたNTTデータの中心的存在です。しかし、そのような人財と採用市場で出会うことは、至難の業とすら言えるでしょう。だからこそ、PMのキャリアを考えたとき、1つの理想像に固執せず、柔軟なキャリア形成ができる環境整備が必要であると、二人は考えました。

山上

私たちとしても、NTTデータが築き上げたスーパーマン的なPM像を否定したいわけではありません。そのうえで視点を変えた際、一人で100%じゃなくて、ユニットで100%のパフォーマンスを発揮するという考え方があっても良いんじゃないかと感じました。すべてを一人で抱え込まなくても良いんだという別の道を示したかったんです。

なりたい姿は、PMごとに異なります。だからこそ、ユニット制の採用は、画一的だった従来のキャリア形成に多様性を与えることにもつながりました。これまでのような担当プロジェクトを取り巻くインダストリー知見や業務プロセスに強いPMだけでなく、今後はどんなプロジェクトにも対応できるポータブルスキルを持ったPMの重要性が高まると私たちは考えています。どのようなPMになりたいか、一人ひとりが望むキャリアビジョンを実現できる土壌を作っていきたいです。

横倉

何かを成し遂げるために何をすべきか、先読みして準備・実行していくという点で、PMは経営者に似ています。あらゆる物事はプロジェクトなので、PMとして培ったスキルはどんな仕事にも役立つでしょう。そのうえで私たちはNTTデータが持つプロジェクトマネジメントのノウハウを活かして、さまざまなプロジェクトにジョインしていただき、社内のスペシャリストとの接点を増やし、人脈や経験を培ってほしいと考えています。

PMとしての経験を活かして、幅広い視点で知見・ノウハウを吸収し、自分だけの理想のPM像を目指す。そのようなキャリアの可能性を切り拓いていくうえで、プロジェクトマネジメント統括部は新たな一歩を踏み出しました。今後は取り組みが深化し、PMの能力を最大化するための改善が進んでいくでしょう。当統括部の挑戦は、まだ始まったばかりです。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです