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2021年10月8日事例を知る

デジタル人財化計画~#1 学び合いで全社員育成へ~

社会の大きな転換期、労働市場においては人財不足や雇用の流動化が加速し、働く上での志向も変化している。人事・人財育成領域においても、取り巻く変化や多様性に迅速に対応することが求められる。
デジタル技術を活用して社会課題の解決やビジネスモデル変革に邁進するNTTデータ。その人財育成施策から、社員が実ビジネスをこなしながら能力や技術力を磨くには、社内外問わず「学び合う」ための環境と時間確保のための制度設計が要となることが見えてきた。

この連載では、全4回に渡りNTTデータの人財育成施策にフォーカス。人事本部 人財開発担当の下川が、担当者と対談、その本質に迫る。第1回となる今回は、研究開発部門の取り組みを紹介。人事育成担当部長を務める俣木に、高い技術力を持つ人財の育て方やパートナー各社と連携した育成・リスキルなど、さまざまな施策について話を聞いた。

目次

トップ技術者が次世代のトップ技術者を育成する技術塾「技統本塾」の創設

人事本部 人財開発担当 下川桂(以下、下川) 本日はよろしくお願いします。NTTデータでは、デジタル変革をドライブする人財を「デジタル人財」と定義し、戦略的にその育成を進めています。デジタル人財は、3つに定義されているので、まずその説明をさせてください。

デジタル人財の定義

デジタル人財の定義

まず、ビジネスを熟知して、デジタル技術を活用することで新しい価値を創造する「デジタル活用人財」。次に、高度なデジタル技術の知見を持ち、デジタルを活用するサービスを設計・開発する「デジタル専門人財」、そして、先進デジタル技術の研究開発を先導する「デジタルコア人財」。

デジタルコア人財が開発した先進のデジタル技術を使い、デジタル専門人財がサービスを創出。デジタル活用人財は、そのサービスをビジネスとひも付ける。三者が連携して、お客さまに新しい価値を提供することを目指しています。NTTデータではすべての社員がデジタル人財となるよう育成を進めています。

全社としては社員共通で基盤となるベーススキルのインプットや、デジタルビジネス推進に必要な人財像、キャリアパスの明確化などを進めていますが、NTTデータの事業領域は多岐にわたり、お客さまの業種・業界により求められるDX化の内容や進展度合いも異なるため、各事業組織主体の人財育成も積極的に行われています。研究開発部門にあたる技術革新統括本部(以下、技統本)では、デジタルコア人財とデジタル専門人財の育成を進めています。

技術革新統括本部 企画部 人事育成担当部長 俣木淳哉(以下、俣木) 技統本は高度な技術力でシステム開発を支援したり、先進技術を駆使してイノベーションを創出したりするなど、NTTデータグループのビジネスを支える技術やノウハウの源泉となる研究開発をミッションとした技術集約組織です。方法論や技術オファリングの整備などもおこないますが、技統本の社員が現場に出向いて技術指導や支援も行っています。

ただ、現場では案件が優先。技統本以外の事業部門の社員が深く技術を追求したり、新しい技術を扱ったりするチャンスが少ないことは課題でした。その課題を解決するために原理原則を理解しているトップ技術者の育成に目を向けることになります。2017年頃のことです。

まず、「技統本塾」を立ち上げました。一言で表すなら、徒弟制度のようなしくみです。技統本のトップ技術者が塾長となり、半年間、マンツーマンで若手や中堅社員を教育。普段の業務では深く追求することのできない技術や先進的なテーマを深掘りします。

技統本塾 講義風景

技統本塾 講義風景

下川 デジタルコア人財や専門人財の確保・育成を支える人事本部の取り組みの一つとして、2018年頃から進めている人事制度の変革があります。DXなどの技術革新が加速し、人財獲得競争が激化する中で、スペシャリストのキャリアパスを明確化し、多様なスキル・パフォーマンスの発揮に対応した処遇を行えるようにするためです。そこで新たに創設した制度が「Advanced Professional(ADP)制度」と「Technical Grade(TG)制度」です。

ADP制度は、AIやIoT、クラウドなど先進技術領域などで卓越した専門性を持つ人財を外部から採用する制度です。TG制度は、社内で極めて高い専門性を獲得した社員に向けて、仕事の内容や会社への貢献度に応じて報酬を決める制度です。いわゆる管理職任用を背景としたマネジメント力とは別軸で、専門性を軸にキャリアを高め、現場で技術を極めながら市場水準に応じた報酬を得ることができます。

俣木技統本塾の塾長は、ADP制度とTG制度で採用・認定された社員を中心に選出しています。有名なトップ技術者が教鞭をとるとあって、非常に活況で社員に人気がある施策です。2021年度は70名が塾生として学んでいます。卒業した彼らは現場に戻り、リードエンジニアとして新技術の目利きや現場適用をおこなっています。

留学ならぬ“留職”やパートナーアライアンスで社内外連携

俣木2019年度より「Digital Acceleration Program」を実施しています。これは、先端領域のOFF-JTや多様な先端案件でのOJTを合わせた一連の育成・リスキルプログラムです。留学ならぬ“留職”という形で各部署から技統本へ異動して、2年間にわたりデジタル人財に求められる基礎的な技術を身につけます。

Digital Acceleration Program全体像

Digital Acceleration Program全体像

このプログラムのうち、先端領域のOFF-JTでは、サービスデザインやアジャイル開発、セキュリティ、AI、クラウドなどを2カ月で集中的に学ぶのですが、こちらはさまざまな事業部からのニーズも高い。「ぜひ学ばせたい」という声も多かったので、「Digital Boot Camp」として、新人を中心に研修を受けられるようにしています。

下川人事本部では毎年500人程度を対象に新人研修を行っています。新人研修後に連続して、主に大学院などで技術を学んできたデジタルに素養のある人財が「Digital Boot Camp」で学ぶことで、早期に即戦力としての立ち上がりが可能になる。非常に有効なしくみだと思います。ほかに、効果の高い人財育成のしくみはありますか。

俣木AmazonやMicrosoft、Google、Salesforceなど、パートナーとのアライアンスによる育成・リスキルも幅広いですね。アライアンス戦略に基づく資格取得を推進しており、パートナーと連携して、入門からトップ技術者育成までのラーニングジャーニーを設定。これは、パートナーとの関係が深いNTTデータならではの特長でしょう。

パートナーも私どもの力を必要としており、自社のサービスや製品に精通した技術者を増やすことで一緒にビジネスを拡大したいと考えているようです。そのため、数多くの社員が多岐にわたるプログラムの提供を受けています。結果として、AWSで言えばアンバサダーやトップエンジニアを輩出していますし、Microsoft AzureやGCP(Google Cloud Platform)からも表彰を受けています。 資格取得者数やトップ技術者数が増えるにつれて、パートナーから育成のしくみ自体も認められるようになりました。

下川企業としてお互いの信頼関係のもと、パートナーの力も活用した人財育成を行っているわけですね。ここ数年、技統本ではパートナー戦略に力を入れていますが、資格取得は分かりやすい目標になります。人財の裾野を広げ、リスキル・ボトムアップを促す点においても有効です。

リスキルは学ぶ時間の確保から~全社員・年間90時間超を確保する取り組み

下川一連の人財育成の施策は、既存の技術者のリスキルの場でもあると思います。ただ、既存のビジネスで忙しいなか、リスキルを目指して新しい領域へ挑戦するのは簡単ではありません。推し進めるために、技統本で意識されていることはありますか。

俣木全社の戦略的方針として「デジタル技術の学び」が重視されているのは、リスキル推進の強い後押しになっています。特に、人事本部が創設した「セルフ・イノベーションタイム」の存在は大きい。新しい領域の学びが非常に推進しやすくなりました。

下川セルフ・イノベーションタイムを簡単に説明すると、業務時間の一部を使って、デジタルやグローバルに関して学んだり、組織の枠を超えてナレッジを共有したり、デジタルを活用した働き方変革に取り組むことを推奨する施策です。

この施策は2019年に始まり、一人あたり年間50時間をセルフ・イノベーションに充てることを目標にしています。2019年度の実績は59時間でしたが、2020年度には91時間を達成。自ら学び、リスキルに取り組む文化が浸透してきている手応えを感じています。

実際、どういった取り組みが多いか調査も行いました。デジタル技術関連のセミナー受講が多く、技統本で主催しているクラウドやアジャイル開発のセミナーが上位に来ています。技統本がこの枠組みを活用し、リスキルする文化を全社に展開してくれているのは、ありがたく思っています。人事本部でも「いつでも、どこでも、誰でも」をモットーに、学びの民主化を進めているところです。

「いつでも、どこでも、誰でも」変化に即応する人財育成

俣木「いつでも、どこでも、誰でも」という意味では、パートナーの資格取得に始まり、「Digital Acceleration Program」によるデジタル専門人財の育成、そして技統本塾によるデジタルコア人財の教育まで、デジタル初心者からトップ技術者まで網羅したラーニングアジリティ(学習機敏性)を作れていると感じます。

下川先ほど紹介したADPやTGといった人事制度も含め、さまざまな取り組みが有機的に組み合わされた結果が表れている気がします。そのなかでも、技統本が重視されているポイントはどこでしょうか。

俣木今お話した、ラーニングアジリティを重視しています。昔はエンタープライズ領域のソフトウエアのアップデートといえば、数年に1回程度という時代もありました。しかし、今はクラウドを中心に年間、数百のサービスが出てきており、常にアップデートされています。さまざまな技術が生み出される現状では、迅速な学びを提供することで、素早く変化に対応できる人財を育成し、強い組織を構築することがポイントです。

具体的には、「3カ月後にAWSを使ったサービスをローンチしたい」と言われたとき、もし精通した人財がいなければ、1カ月でスキルを習得し、3カ月後にはデリバリーできる状態を作っていくということも必要になってきます。

これまでNTTデータの価値観の中心には「安心・安全」がありました。もちろん、これをしっかりと守り続けることは言うまでもありません。しかし、これからは現場対応も人財育成も、スピーディーな対応が重要になります。

下川旧来型の人財育成は、研修を企画、設計して、テキストを作り、講師が登壇準備をして・・・とリリースするまでに最低でも3~6カ月かかっていました。変化のスピードが緩い時代はそれでも十分でしたが、今、育成の準備だけに6カ月も費やすと、その間に技術が陳腐化してしまう。ラーニングアジリティが重要なのは理解できます。

技統本塾やDigital Acceleration Program、Digital Boot Campのようなしくみは、会社が一方的に教える訳ではありません。現場で起きているビジネスや技術革新に触れたトップ技術者が、別の技術者に情報を共有して互いに学び合う。学ぶ側も受け身ではなく、自ら貪欲に技術を、新しい知識を求めていく。そして、高めた知識を再び共有して、NTTデータ全体の知識レベルを高め、お客さまに還元していく。今後、NTTデータがめざす人財育成の姿だと思います。

組織の事業戦略に合わせた人財育成が今後の鍵に

俣木「学び合う」という姿勢は、非常に重要です。これは、社内だけに限らずパートナーとの連携にも言えることです。技統本だけで解決できる人財育成は限られています。社内の各事業部、そしてパートナーとも上手く連携し、人財育成のエコシステムを作っていきたい。お客さまやパートナー、NTTデータ、それぞれのビジネスをいかに高めるか。戦略的な人財育成が求められています。

下川DXの加速やNew Normal、脱炭素化などの社会全体の新たな動きの中で、お客さまに提供する価値は多様化する一方で、労働市場においては人財不足や雇用の流動化が加速し、若年層を中心に働く上での価値観や志向も変化してきています。ラーニングアジリティという話がありましたが、人事・人財育成領域においても、これまで培ってきた組織や社員の強みを活かしつつ、取り巻く環境変化や多様性に対応できるアジリティを一層高めていくことが求められているといえるでしょう。
人事本部として全社最適の視点を持ちつつ、現場組織の事業戦略に連動した機動的な人財育成をいかに後押ししながら有機的につなげ、会社全体の力として高めていくか。NTTデータもまだ模索中ではありますが、俣木さんのような現場のHRパーソンと連携して、新たな人財育成のしくみを具現化していきたいと思います。

本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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