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2022.2.21イベント & レポート

健康長寿に向けた、生活者起点による健康データ利活用

自分の健康は自分で守らざるを得ない昨今、自らの健康データを管理し自由に使える生活者起点の仕組みづくりが必須となっている。「生活者起点の健康データ利活用」の最先端事例ともいえる柏の葉スマートシティは、健康データの利活用に取り組むプレーヤーがつながり、新たな価値を共につくり出すフィールドだ。健康データに関わる仕組みの提供としてNTTデータも携わるこの取り組みを紹介するとともに、健康データ活性化の展望を見据える。

目次

拡大する健康データの利活用

柏の葉スマートシティ(千葉県柏市)では、「柏の葉データプラットフォーム」を通じ、生活者が多様なヘルスケアサービスを利用している。柏の葉データプラットフォームは本人確認やIT連携などの個人情報を取り扱う際に必要な機能を備えている。柏の葉スマートシティではNTTデータをはじめ、さまざまなステークホルダーと連携しながら健康データを利活用した新しいサービスの創出に取り組んでいる。
健康データ利活用に関する現状について、NTTデータでヘルスケアデータを活用したサービス企画に携さわる第二公共事業部ヘルスケア事業部 課長の湊 章枝は、次のように説明する。

図1:健康データとは

図1:健康データとは

第二公共事業本部 ヘルスケア事業部 湊 章枝

第二公共事業本部 ヘルスケア事業部
湊 章枝

「健康データとは、個人の健康や医療に関する多種多様な情報のことです。例えば個人が測定する血圧や心拍数などのバイタルデータや食事、運動などのライフログのほか、制度に基づき測定する健康診断(健診)結果、病院での診療記録などの情報があります。この中でも医師が作成する健診結果や診療記録などは要配慮個人情報と呼ばれ、取り扱いに注意が必要です。このデータ管理は、個人測定はデバイスやアプリ提供会社が、健診結果は自治体や保険者、事業主などが、病院で測定したデータは医療機関などが管理しています」。
つまり、個人の健康や医療に関する多種多様な情報が健康データであり、測定目的や方法に応じて機密レベルや管理場所が異なる。とくに近年の技術進化により生活者がスマホなどで気軽にバイタルデータを日々測定できるようになったことから、その利活用シーンが拡大している。
「これまでの健康データは保険者や事業主が健康診断を年1回で実施し、結果を各施策に活用することが主流でした。しかし現在は、生活者がバイタルデータを日々測定することで、個人の健康にかかわる特性やし好性を示すリアルタイムデータが得られています。これを使えば、企業などは顧客の健康状態に応じたプロモーションや商品開発に活用でき、かかりつけ医は病院外での患者の状況確認に活用できます」と湊は健康データ利活用の背景を語る。
さらに、「これまでの健康データは、提供者起点で個別に管理され生活者は自由に使えませんでしたが、超高齢社会が現実化したいま、国は生活者が自分の健康に責任を持つことを推進しています。生活者も新型コロナウイルスの蔓延で自分の健康は自分で守ることを自覚している。このような世の中の動きを背景に、生活者自身が健康データを管理し自由に使える仕組みとして生活者起点での健康データ管理が必要になっています」という。健康データ管理において、「提供者起点」から「生活者起点」へとパラダイム・シフトが起きているのだ。

健康管理を安心・安全に収集・管理する仕組みを提供

NTTデータでは、2002年から「Health Data Bank®」を運用している。これは、企業の従業員健康管理を支援するクラウド型サービスで、3000団体、400万人の健診データの形式を変換・統一化して管理している。

図2:Health Data Bank®

図2:Health Data Bank®

「従業員向け健康管理のクラウド型サービスとしてはトップシェアです。健診機関ごとに異なるデータ形式を統一し、データベースに登録する一連の作業を実施しています。また、NTTグループのAI技術を用いて、健診結果に基づき生活習慣病、たとえば糖尿病の6年以内の発症リスクを予測する機能を有しています。最近のトレンドであるバイタルデータやライフログについては、IoTデバイスやスマホ向けアプリを提供するさまざまな事業者とコラボレーションすることで、多様なデータの取得に取り組んでいます」(湊)

数年前より「Health Data Bank®」は、健康データ利活用ビジネスに取り組むさまざまな業種の企業に対し、健康データを安心・安全に収集・管理するバックヤードの仕組みとして提供されている。柏の葉スマートシティもその一つだ。「Health Data Bank®」を「柏の葉データプラットフォーム」と連携して提供することで、柏の葉での健康データ利活用ハブとして利用されている。

図3:My Health Data Bank(健康データ版銀行モデル)

図3:My Health Data Bank(健康データ版銀行モデル)

加えてNTTデータでは、今度は生活者起点の新たな健康データ管理・運用サービス「My Health Data Bank」の構築に取り組んでいるという。生活者が自身の健康データを「健康口座」に集約して自己管理、運用する仕組みだ。「生活者は自分の意志でサービス事業者や医療機関などに健康データを提供することで、自分に最適な商品やサービス、予防治療やケアを受けることができるようになります。今後も多くの意見を聞きサービスを進化させていきたい」と近い将来の姿を説明する。

事業者間連携と生活者の参加で価値を創造する

三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事 竹川 励 氏

三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事
竹川 励 氏

では柏の葉スマートシティでは、どのようなことが行われているのだろうか。
もともと三井不動産単独ではなく、行政と大学などを含めた複数の団体による「柏の葉国際キャンパスタウン構想」があり、それを発展させる形で公・民・学の連携による街づくりが進められてきた。
コンセプトは「世界の未来像」をつくる街。環境共生、健康長寿、新産業創造の3本柱に、アカデミアと連携したイノベーション、データ利活用の街づくり、国際化を掛け合わせる内容だった。
三井不動産で柏の葉スマートシティの街づくりを担当する竹川 励氏は、当時を振り返りながら話す。「昨年から3本柱を進化させる取り組みを開始しました。その中で重視しているデータ活用ですが、これは目的ではなく手段だと考えています」。目的は柏の葉をアジア最大のライフサイエンス拠点にすることで、竹川氏は「我々の役割は予防から治療への橋渡しです。ヘルスケアと医療の間にある部分のソリューションを関係者でつくっていこう。これこそが柏の葉ならではの取り組みになります」と語る。
こうした中で2020年に開始したのが「柏の葉データプラットフォーム」だ。基盤は三井不動産が日本ユニシスと共同開発した分散型連携プラットフォームで、その中で持っているのはID情報のみ。「健康データの利活用が進まないのはデータを持つ企業の連携が推進されないからです。しかし柏の葉は企業ではなく生活者が優先される街。生活者が自身の健康データの提供先を決定でき、企業はデータ活用を拒否できない街づくりとしています」(竹川氏)。

図4:柏の葉データプラットフォーム

図4:柏の葉データプラットフォーム

生活者はIDを登録し、健康管理アプリなどのサービス利用をするとともに企業のデータ連携に同意するかを決定する。データをコントロールするのは個人の権利という考え方だ。竹川氏は「新しいサービスとしてAI栄養管理士が疾病リスク予測に基づいた食事指導を行います。NTTデータの協力で実現しました。企業間で技術やサービスをつなぎ合い、価値の高いサービスを創出する取り組みをすすめていきたい」という。
柏の葉では実証フィールドにも取り組んでいる。住民参加型で企業のサービス、商品の価値を実証する取り組みだ。住民からデジタルデバイスなどの新商品を一定期間使ってもらう人を募集し効果を実感してもらい、使用前と使用後の結果を「Health Data Bank®」が分析する。従来はアンケートレベルにとどまっていたが、今後はウエアラブルデバイスから「Health Data Bank®」へデータを連携し、分析をNTTデータが行うことで、商品として有効な年代層などが数値化して分かる仕組みができあがる。
それ以外の展開として注目すべきなのが、国立がん研究センター東病院の敷地内に三井不動産が建設中のホテルだ。病院の敷地内にホテルを設け、実証フィールドの場として病院と街の新たな診療モデルの創出を目指している。竹川氏は「国立がん研究センター東病院様と共同で、宿泊者の健康管理に繋がるセンシングデバイスなどの実証フィールドとして活用し、新たな診療モデルの創出を目指しています。単なるホテルではなく宿泊する人(患者)の視点にたったサービスを開発するため、衣類や食事、仕事、アピアランスでも企業連携で新しい形を作っています」と話す。宿泊者は「Health Data Bank®」を使うことができ、得られたデータを保険商品や治療に適した食品などに展開する構想も描いている。

企業連携を意識した参画で新サービスの価値を高める

このように健康データの利活用は提供者起点から生活者起点に変わっている。柏の葉スマートシティでは健康データを提供する生活者との信頼関係を築き、それを活用した企業をつなぐ新しいサービスを創出していることがわかった。「柏の葉データプラットフォーム」があることで、企業が健康データの利活用をする際にネックとなっていた本人同意もクリアしており、生活者が実証フィールドに積極的に参加する意思をもっている。
竹川氏は「当社はプラットフォームをつくりましたが、持っているのはID情報だけ。よりセキュリティ強化すべき健康データまでは手が届きません。ケイパビリティをもっているNTTデータの参画があるからこそ実証フィールドの価値が格段に高まりました」と強調する。
一方、湊は「20年間、提供者起点の従業員健康管理の仕組みを構築し運用してきました。ただ、これだけでは健康データを企業も生活者も自由に使うことができないことから、『My Health Data Bank』の構築に取り組んでいます。これは提供者起点から生活者起点への大きな転換であり、ぜひ柏の葉スマートシティとともに挑戦していきたいと考えています。」と話す。これまで培った技術を生かす場が、まさに柏の葉スマートシティだったというわけだ。

さらに湊は、健康データ利活用のさらなる推進に向けこう提起する。「生活者が健康データ活用のベネフィットを感じない中で健康データを提供してくださいといっても無理があります。柏の葉スマートシティに参加する企業と共に、住民と企業それぞれがベネフィットを得られるサービスモデルをつくり上げ、世の中に発信し浸透させていくことが、健康データ利活用を活性化させるための肝になるのではないでしょうか」。

最後に、事業創出に向けた道筋について竹川氏は「一番大切にしたいのは、街づくりに参画する企業が自社の意思でサービスをつくっていく形です。当社からの依頼に沿ったものをつくるだけでは発展しません。NTTデータが自社のサービスを自社の責任で提供しているような形でこそ、常にその価値を高めていくことができるのです」と強調した。「柏の葉スマートシティに参加する企業、住民はみんな、街づくりに関わっているという意識を持ち、自分ごととして連携していくことで、どんどん価値を高めていけると考えています」(竹川氏)。
「参加者同士が連携しなければ新しいサービスや事業を生み出すことができない、というのは、街づくりだけでなく健康データ利活用についても同じです。健康データ利活用は、これから価値をどのように見いだすのか模索しながら動いているのが現状ですが、パートナー企業同士が同じ目線で積極的に提案し実行していく形が必要です。NTTデータも柏の葉の街づくりに参加しているという矜持を保ち、新しい価値を生み出していきたいと思います」(湊)。

本記事は、2022年1月27日、28日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2022での講演をもとに構成しています。

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