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2022.4.15技術ブログ

注目!欧州発の企業間データ連携の仕組み作り:IDS・Gaia-X

欧州では世界に先駆け、多数の企業同士がデータ主権を守りつつデータを連携するための新しい仕組みづくりが着実に進んでいる。多くの国を巻き込んだ動きになりつつあるGaia-XやIDSにより何が実現されようとしているのか、本記事内で紹介する。

目次

背景:企業間データ連携とIDS・Gaia-X

企業が扱うデータの中には、高い価値を持ち秘匿しておきたいが、一定の許可の下で適切に第三者に利用してもらいたいものが存在します。このようなケースでは、データ提供者と利用者がNDA(秘密保持契約)などを結んだ上で何らかの手段でデータを渡す、という方法が一般的です。その際、どのようなルールや手段でデータをやり取りするべきか必ずしも定まっているわけではないことや、契約を結んでいるとはいえ、技術的にデータの利用目的や方法を制御しているわけではないことに、不安を覚えることもあるでしょう。そのような不安から、「本当はうまくデータを活かしたい/活かしてもらいたい」と思いつつも、データを連携することに足を踏み出せないことが、身のまわりにもあるのではないでしょうか。

図1:企業間データ連携のよくある悩み

図1:企業間データ連携のよくある悩み

この記事では、データには所有者がいて、データの所有者が持つ権利のことをデータ主権と呼びます。データ主権を守りつつ、多数の企業間でデータを連携していくためには、新しい考え方や方法が必要です。欧州ではIDS(International Data Spaces)(※1)及びGaia-X(※2)といった考え方やイニシアティブに多くの組織・企業が賛同し、データ主権の考え方からアーキテクチャに至るまで、活発に議論し具体案を公開しています。

IDSとは?

IDSA(IDS Association)はデータの所有者が主権を守りつつデータの価値を最大化できるようにするためのIDSの構想に基づき、デジタルエコノミーを立ち上げようとしている団体です。特に国際間でデータを連携することを視野に入れ、「データスペース」というデータ連携のための仮想的な接続・企業間の繋がりの概念を打ち出しています。データスペースを構成するためには複数のロールが必要とされており、図2にIDSAが提唱するデジタルエコノミーの主要ロールとその関係を示します。(※3)

図2:IDSの考え方に基づくデジタルエコノミーの主要ロール概要

図2:IDSの考え方に基づくデジタルエコノミーの主要ロール概要

図中の左がデータの発生源としてのデータ所有者や提供者を示し、右側がデータがデータ消費者や利用者のロールを示しています。
実際にデータを連携するためには、それに付随する様々な情報(メタデータ)が必要ですが、メタデータを登録・検索・参照するためのBrokerを提供するロールが定義されています。またデータを連携する前のデータ所有者の主権を守るためのポリシー確認、データ連携中のモニタリング、事後処理を行うための取引管理のロールが定義されています。合わせてデータを利用するサービス、アプリを提供するロールも定義されています。

Gaia-Xとは?

またIDSの概念と関連が深いGaia-Xは、以下を主導していくイニシアティブの一つです。

  • 企業がデータ連携する際のコントロールやガバナンスを担うソフトウェアの開発
  • クラウドやエッジに適用可能なポリシーやルールの策定
  • 分散型システムがフェデレートする仕組みの規定

つまり、企業間データ連携が全体としてうまくいくような枠組み、考え方、仕組み作りを担っています。図2にGaia-Xのアーキテクチャ概要を示します。(※4)

図3:Gaia-Xのアーキテクチャ概要

図3:Gaia-Xのアーキテクチャ概要

Gaia-Xのアーキテクチャでは、データ活用システムとICTインフラをつなぐ役割や、製造、電力などの各業界をつなぐ役割を担う、4つのGaia-X Federated Servicesを重要な要素と考えています。

2022年3月時点でGaia-Xには300を超える企業・組織が参画しています。特に欧州とつながりの深い製造業のサプライチェーンに関わる方は名称を耳にしたことがあるのではないでしょうか。またより実業務に近い取り組みとして、特定業界向けの枠組みがGaia-Xを基に立ち上がりつつあります。例えば、自動車産業のサプライチェーン関連ではCatena-X(※5)と呼ばれるプラットフォームが立ち上がっています。

以上のようにIDSとGaia-Xは一見すると似たような考え方を有した取り組みですが、互いに補完しあっています。設立背景などから図4のような差・役割分担があります。(※6)

図4:IDSとGaia-Xの比較

図4:IDSとGaia-Xの比較

IDSやGaia-Xの関係性については、IDSAが公開したホワイトペーパ(※7)にも記載されているので合わせてご覧ください。
両取り組みを通じ、データ連携の概念や枠組みが急速にまとめあげられつつありますが、多くのエッセンスを含みやや複雑ことから、一企業がエコシステムに参画するにはどこから取り組んだら良いのか分かりづらくなっています。参画する立場においておすすめのエントリポイントは、IDSAが提唱するデータ連携のエコシステムに接続するための「データスペースコネクタ」(以降、コネクタと呼ぶ)です。

(※1)

https://internationaldataspaces.org/ なお、団体のことを指す際にはIDSA(IDS Association)と表現することもある。本記事ではできる限り、考え方や取り組みの事はIDS、団体の事をIDSAと表記する。

(※2)

https://www.gaia-x.eu/ なお、団体のことを指す際にはGaia-X AISBLと表現することもある。ただし公式ウェブサイトや情報発信などにおいても団体のことを単純にGaia-Xと表記するケースも見られることから、本記事ではすべてGaia-Xと記載する。

(※3)

IDSAが公開している参照モデル文書(Most Important Documents - International Data Spaces)から図を引用し日本語翻訳

(※4)

Gaia-Xの公式文書(Gaia-X Publications)から図を引用し日本語翻訳

世界で広がるデータ連携の輪に加わる切り口:コネクタ

IDSAは、デジタルエコノミーを形成するためのリファレンスアーキテクチャを提案しています。(※8)図5に主要なコンポーネントとコネクタ同士が繋がるイメージを示します。

図5:コネクタを中心とした企業間データ連携の考え方

図5:コネクタを中心とした企業間データ連携の考え方

コネクタは、データ交換のためのプロキシとして働くコンポーネントです。企業は、コネクタを利用することで他の企業と繋がったり、データをやり取りしたりできるようになります。またリファレンスアーキテクチャ内には認証認可の仕組みも定義されており、コネクタと他のコンポーネントを組み合わせることで、安心してデータをやり取りできるようになっています。

現在活発なオープンソースソフトウェアの一例:Eclipse Dataspace Connector

IDSAが示しているリファレンスに従ったコネクタの実装は単一ではなく、複数存在しています。例えば、ドイツのFraunhofer研究所が主に開発している「Dataspace Connector」(※9)やEclipse Foundationの下で開発が進んでいる「Eclipse Dataspace Connector」(以降、EDC。※10)などが挙げられます。当初はDataspace Connectorが先行的に開発されていましたが、現在ではEDCの開発が活発になってきています。その傾向は、主要開発者のMarkus Spiekermannの講演(※11)内でEDCのコンセプトがCatena-X等で受け入れられつつある旨の言及があったこと、EDCの公式GitHubレポジトリ(※12)にもEDCアプリケーション実装のアクティブな形跡が本記事執筆時点であることからも間接的に推測されます。IDSやGaia-Xにおけるデータ連携の最新状況や仕組みをこれから知りたいのであれば、EDCを中心に眺めていくと最新状況を把握しやすいでしょう。

EDCはコア機能を含む以下の構成で実現されています。

図6:EDCの主要機能

図6:EDCの主要機能

コアを取り囲む主要機能がモジュール化されていて、各機能をカスタマイズして独自の機能を作りこめるようになっているという特徴があります。ただし、現時点の実装は十分とは言えず、いくつか公開されているチュートリアルにおいてもモック(試作部品)を用いている部分が多く見られます。これは、現在のEDCはまだ立ち上がったばかりの若いプロダクトだからなのですが、これまでFraunhofer研究所が培ってきたノウハウや考え方を踏まえた後発実装であること、2022年3月現在も活発に開発が進んでいる(※13)ことから、今後、急速に充実することが期待されます。
なお、ここで紹介した内容は2022年3月時点の状況であり、EDCは著しく開発が進んでいるので、最新状況は公式GitHubレポジトリ(※13)をご確認ください。

(※13)

公式GitHubレポジトリ(GitHub - eclipse-dataspaceconnector/DataSpaceConnector: DataspaceConnector project)におけるコミット件数傾向から推測

おわりに

NTTデータは、企業間で安心してデータを連携し、活用するための研究開発を行っています。今回ご紹介したEDCについてのホワイトペーパーも公開予定です。ホワイトペーパーでは今回紹介しきれなかったコンポーネントの詳細や動作の様子を紹介します。また、本記事では企業が最初に取り組む「接続」に関する技術を紹介しましたが、NTTデータでは複数のステークホルダ間でデータを秘匿したまま処理する技術、企業間の合意形成やデータ共有のための技術、ニアリアルタイムにストリームデータを処理するための技術なども研究開発しており、それらの情報も順次発信してまいります。

- NTTデータは、「これから」を描き、その実現に向け進み続けます -
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