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2022.12.1業界トレンド/展望

【対談】生活者データ起点でビジネスを変革するCDPの可能性

コロナ禍でオンライン化が進み、多くの企業でビジネスモデルの転換が求められる中、自社の生活者データを収集・統合・分析できるCDP(カスタマーデータプラットフォーム)が、あらためて注目されています。日本国内で2017年から5年連続CDPシェアNo.1(※1)のTreasure Data CDPを提供するトレジャーデータ株式会社の営業担当執行役員 高木一成氏を招き、対談を実施。NTTデータでCRM関連のプロダクトを管轄する奥崎さんとともに、CDPの強みや生活者データ活用の可能性について語り合いました。

NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。

【対談者】

左から 高木さん、奥崎さん

左から 高木さん、奥崎さん

高木 一成
トレジャーデータ株式会社
営業担当執行役員 

マクロミルにて、消費財メーカーへのマーケティングリサーチ全般のコンサルティング、POSデータベース事業/「Questant」の事業責任者を担当。2017年3月、トレジャーデータへ入社。現在は日本の営業責任者として、営業組織を統括し、データを活用したビジネス支援および、DXを実現するプラットフォームとして「Treasure Data CDP」の価値の最大化にチャレンジ中。

奥崎 篤志
株式会社NTTデータ
ITサービスペイメント事業本部
SDDX事業部 マーケティングデザイン統括部
デジタルマーケティング担当
部長

流通・小売、鉄道業界のシステム開発、運用に長年従事。現在は、NTTデータの統合顧客管理サービス「CAFIS Explorer」のプロダクトオーナーとして営業・開発を統括するとともに、Treasure DataやSalesforceなどを組み合わせた顧客企業のデジタルマーケティングの高度化を包括的に支援。

CDPが注目されている理由とTreasure Data CDPの強み

奥崎さん:本日はありがとうございます。Treasure Data CDPは、2017年から5年連続で国内市場シェアNo.1(※1)を獲得しているソリューションですが、少子高齢化や人口減少が進んでいく日本で、いまあらためてCDPが注目されている要因はどのような背景によるものでしょうか。

高木さん:コロナ禍で顧客接点のオンライン化が加速し、顧客コミュニケーションが複雑になる中で、企業が生産性を高めて、顧客と最適なコミュニケーションを行っていくためには、顧客データの活用は欠かせないと我々は考えています。例えば、顧客データ分析をすることで、営業シーンにおいて見込み顧客を事前に察知できれば、そこにフォーカスした営業活動を行うことが可能です。

一方、実際にデータ活用を行う場合、部署ごとやシステムごとにデータがサイロ化されていて運用しにくいという課題に対して、全社横断的に重要なデータを集約できる点でCDPが注目されていると感じています。また、集約したデータをMA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)など多様な外部アプリケーションとスムーズに連携できる点も、Treasure Data CDPならではの強みです。

Treasure Data CDPの強みを語る高木さん

Treasure Data CDPの強みを語る高木さん

生活者データ起点で事業運営を行う上での課題

高木さん:NTTデータでは、幅広い業界の企業に対してデータ活用のコンサルティングなどを行われていると思いますが、最近はどういった業界の相談が多いのでしょうか。

奥崎さん:私の部署では、NTTデータの統合顧客ソリューションである「CAFIS Explorer」やSalesforce Marketing Cloud、Treasure Data CDPなどのデジタルマーケティングソリューションを軸に、顧客戦略の立案からシステムの提供、顧客データを活用したマーケティング運用まで、End to Endで顧客企業のマーケティング業務をサポートしています。

最近は、鉄道業界のお客様から生活者データの活用についてご相談いただくことが多いですね。人口減少や少子高齢化、コロナ禍におけるテレワークの広がりなどを背景に鉄道事業の売上低迷が懸念される中で、「沿線エリアで暮らす方々とのエンゲージメントを高め、様々な事業の連携を強め、収益力を高めていくこと」が重要な経営課題になっています。

そういった観点では、マーケティングも事業ドメインごとではなく、事業全体でどう展開していくのか、どうLTVを高めていくかがより重要になっていると感じています。

顧客データの活用が進む背景にある業界課題を語る奥崎さん

顧客データの活用が進む背景にある業界課題を語る奥崎さん

高木さん:トレジャーデータでは、最近地方銀行様から相談を受けることが多いです。例えば、「顧客にDM(ダイレクトメール)を送っても、コストがかかるだけでコンバージョンしない」といった課題に対して、「住宅ローンのウェブページを3回閲覧している」という自社の1stパーティデータを活用して、DM送付セグメントを生成することで反応率を上げられないかといった相談内容ですね。

奥崎さん:地方銀行でCDP導入の相談が増えているのはどういった背景からでしょうか。

高木さん:地方銀行は、地場企業のメインバンクとして融資を行いつつ、時にはコンサルティングをしながら成長を支える役割を担っています。そのため、幅広い商材・サービスを取り扱い、企業のDXを推進するという目的でZoomやSlackなどのITソリューションを提案するケースもあります。ところが、例えば20代の若手営業担当が70代の経営者の方にITソリューションの話をしても興味を持ってもらえず、非常に打率が低くなってしまうケースも多いのです。

そこで、CDPを活用してデータ分析をすると、実は経営者の方は事業承継のウェブページを何度も見ていて、事業承継の提案をすれば良かったというケースは多々あるのです。地方銀行に限らず多くの業界において、人間力だけでは解決できない部分を、効率的にデータを活用することでカバーしていくという利用法が広がってきています。

奥崎さん:鉄道会社も地方銀行も、日本全体が抱える構造的な課題に今まさに直面しているのは共通していますね。これまではマスに対して、あるいは、オフラインを中心とした接客でも十分に収益を上げられていたわけですが、次の10年を見据えると、ますます生活者に寄り添ったきめ細やかなサービスが重要になってくると思います。

CDP導入にはマーケティングROIだけでない全社横断的なゴール設定を

CDPの導入効果を語る高木さん・奥崎さん

CDPの導入効果を語る高木さん・奥崎さん

奥崎さん:最近、私が相談を受けたお客様の中では、「デジタルマーケティングは進めていかなければいけないが、ROI(費用対効果)が出ない」という理由でソリューションの導入を断念されるケースがありました。生活者データを経営に活かしていくために、CDPを様々な業務プロセスで活用していくことが重要だと考えています。

高木さん:ROIという視点ですと、デジタルマーケティングのことだけを考えれば、いわゆる広告領域のソリューションで対応できるケースも多いと思います。一方で、デジタルマーケティング領域だけではなく全社規模で考えたときに、「お客様はどの接点で流入してきて、購入しているのか」「LTVの高いユーザーは、どの機能を使っているのか」といった一人ひとりのカスタマージャーニーを含めて顧客を捉えることができるのは、CDPならではの価値です。

顧客対応を例にしますと、コンタクトセンターに問い合わせされた方のプロフィールと合わせて、事前にどういったウェブサイトをチェックされているのか、何を求められているのかといった情報の有無で、応対の品質が大きく変わってきます。

デジタルマーケティング領域におけるデータ活用はひとつの側面でしかありません。顧客データを顧客対応に活用するように、デジタルマーケティング以外にも活用できる領域は多々ありますので、ROIをそこだけで判断するのはもったいないと思います。

奥崎さん生活者データの活用に向けては、マーケティングROIの視点だけではなく、業務全体を顧客データドリブンで再設計していくことが必要ということですね。トレジャーデータでは、顧客データドリブンでの業務運営を実現するために工夫していることはありますか。

高木さん:販促部門、営業部門など、それぞれの業務をヒアリングし、オペレーションフローにどのように生活者データ活用のプロセスを組み込むかをお客様と一緒に検討しています。単純にお客様の情報を網羅的に確認できるダッシュボードを用意するだけでは、具体的な活用が進まないことが少なくありません。それぞれの営業プロセスや戦略に寄り添って、必要なタイミングに必要な情報を出せるような作りこみ、工夫が必要になってきます。

奥崎さん:なるほど。とりあえず、データを貯める箱を作って、標準的なダッシュボードで可視化して、さあどうぞ、といって失敗するケースは多いですよね。業務プロセスにそって適切なタイミングに、意味のある情報を提供することは、必要不可欠ですね。

CDPによる1 to 1マーケティングで、ブランドロイヤリティが向上

奥崎さん:生活者データマーケティングにおける最新の活用事例があれば、教えてください

高木さん:ある海外お菓子メーカーの事例ですが、「メーカーの立場でありながら、今後を見据えて1 to 1マーケティングでユーザーとつながりたい」という目的で、Treasure Data CDPを活用してパーソナライズギフトを展開しました。具体的には、お菓子のラッピングをパーソナライズし、「記念日にお菓子を贈りましょう」といったキャンペーンです。これにより、多くの1stパーティデータを獲得することができたのです。

このキャンペーンをきっかけにつながったお客様とキャンペーンを実施しなかった場合とを比較すると、キャンペーンを利用されたお客様のほうが「ECサイトでの購入率が高い」「配信したメールの開封率が高い」という結果が出ました。

つまりキャンペーンを通じてブランドロイヤリティが向上したともいえます。Treasure Data CDPを含めて、様々なプラットフォームを検証しながら実現した施策でしたが、先進的な取り組みだとあらためて感じました。

CDPの活用によるブランドロイヤリティ向上事例を語る高木さん

CDPの活用によるブランドロイヤリティ向上事例を語る高木さん

奥崎さん:日本でもメーカーはリテーラーを経由して商品を販売する一方で、その先にいる生活者の思いをどうやって理解するかを課題に感じている企業は多いと思います。販売に関しては、どうしてもリテーラーがメインになりますので、自社ECだけで1 to 1マーケティングをしようとしても規模が小さくて優先度は低くなってしまいます。目先の成果だけでなく、ブランドロイヤリティ全体をどう向上させていくか、という視点は非常に重要です。

高木さん:つながっているお客様にパーソナライズギフトを体験していただくことで、結果としてブランドロイヤリティが高まり、他のチャネルでもブランド選択してもらえる確率が上がっていきます。目に見えるところのKPI設定だけではなく、全体を俯瞰した成果を想定していくことが重要になると思います。

Cookieレス時代に、CDPは生活者データ起点で事業を展開していくハブに

奥崎さん:個人情報保護の意識の高まりなどを背景に3rdパーティCookieから得られる情報に対する規制が広がったことで、自社が保有する1stパーティデータの重要度がさらに高まっています。

高木さん:データは誰のものなのかという議論に対して、プラットフォーマーのものではなくて生活者のものという認識に変わっていきました。その意味でも、1st パーティデータの活用を拡充していくことが今後より重要になります。

奥崎さん:現状のように3rdパーティ Cookieを活用して、ユーザーを新規獲得するといった広告モデルは無くなっていくでしょうし、デジタルマーケティングの形も変わっていきそうです。Cookieレス時代に向けて、トレジャーデータがLINE、Yahoo! JAPANとデータクリーンルームで協業(※2)するそうですが、どのような意図があるのでしょうか。

高木さん:個人情報の流出などが社会問題になる一方、個人が特定されない安全な環境でデータ分析が行えるデータクリーンルームを活用することが、マーケティング分野では必須になっていくと予測し、LINE、Yahoo! JAPANとの協業を通して、いち早くデータクリーンルームを整備したいと考えています。

奥崎さん: NTTデータは顧客戦略の立案からシステムの提供、生活者データを活用したマーケティング運用まで、End to Endで顧客企業のマーケティング運営を支援しています。その中で、我々がTreasure Data CDPに期待するのは、生活者データ起点で事業を回していく上でのハブになるという点です。多くのクラウドDWHがある一方、顧客情報活用に特化していることはTreasure Data CDPの特徴であり、優位点ですよね。

高木さん:ありがとうございます。NTTデータは他のソリューションと連携してシステム全体を構築・運用をしていくことが得意だと思うので、ぜひともにCDPを活用しながら、多くの顧客企業に新たな価値を届けていければと思います。

奥崎さん:ぜひ一緒に進めていきましょう。本日はありがとうございました。

対談を終えた高木さん・奥崎さん

対談を終えた高木さん・奥崎さん

※1 株式会社アイ・ティ・アールが 2022年 1 月に発行した市場調査レポート「ITR Market View:メール/Webマーケティング市場2022」において、トレジャーデータのカスタマーデータプラットフォーム「Treasure Data CDP」は、国内CDP分野におけるベンダー別売上金額シェアで、5 年連続第 1 位(2017年度、2018年度、2019年度、2020年度、2021年度予測)を獲得しました
(参考: 「CDP市場動向レポート2022年」https://www.treasuredata.co.jp/download-cdp-research/)

※2トレジャーデータ、Yahoo! JAPANと連携し、新たなデータクリーンルーム「Yahoo! Data Xross」の提供を来春開始
https://www.treasuredata.co.jp/press_release_jp/20220719_td_yahoo_data_xross/

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