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2026.10.27業界トレンド/展望

冷凍食品は時短だけ?SNSで探る生活者ニーズ

生活者の価値観や食の楽しみ方が多様化するなか、食品メーカーには、従来の商品カテゴリーや用途だけでは捉えきれないニーズを発見し、商品企画・開発につなげることが求められている。
本記事では、冷凍食品を題材に、2026年2~7月のX上の投稿を分析。生活者の行動やニーズを「界隈」として捉え、従来の「時短」という価値だけでは説明できない利用実態を読み解く。食品メーカーの商品企画・開発、マーケティング担当者に向けて、生活者の潜在的なニーズを発見し、新たな商品価値を検討するための着眼点を紹介する。
目次

1.生活者の多様なニーズを、SNSの声から読み解く

10月は「冷凍食品月間」です。冷凍食品というと、「レンジで温めるだけ」「忙しい日の時短」といった利便性を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、生活者の実際の声を見ると、冷凍食品は必ずしも「できるだけ料理をしない」ためだけに使われているわけではありません。

こうした生活者の多様なニーズを捉えるため、今回の分析では、NTT DATAの「トレンドエクスプローラー®」を活用しました。トレンドエクスプローラーは、AIを活用してSNS上の生活者の声を分析し、消費者ニーズやトレンドの兆しを捉えるソリューションです。食に関する投稿を食材や食べ方、利用シーンなどの観点で構造化し、似た行動やニーズを持つ生活者のまとまりを「界隈」として捉えています。

今回は、2026年2~7月のX上の投稿をもとに、冷凍食品に関連して伸長が見られた、次の3つの界隈に注目しました。

  • 冷凍食品を料理のベースとして使う界隈
  • 冷凍シーフードで本格的な料理を楽しむ界隈
  • 深夜のひとり時間に冷凍食品を楽しむ界隈

これらの界隈を読み解くと、冷凍食品に求められる価値が単なる「時短」にとどまらず、調理の手間や食べる量・タイミングなど、自分が負担を減らしたい部分を選べることにもある可能性が見えてきました。

冷凍食品は、生活者の暮らしの中でどのように使われ、どのような価値を求められているのでしょうか。3つの界隈から見えてきた多様なニーズをひもときながら、これからの商品企画・開発につながる新たな可能性を探ります。

2.完成品ではなく「素材」として使う界隈|冷食ベースのひと手間アレンジ

まず注目したのが、「冷食ベースの素材化・ひと手間アレンジ界隈」です。
この界隈では、冷凍食品を「温めれば完成する食事」ではなく、料理を始めるためのベースや素材として使っています。

界隈データの6カ月推移を見ると、月ごとの上下はあるものの、全体として投稿規模が大きくなっています。
投稿数は2月373件、3月391件、4月356件、5月558件、6月481件、7月826件。2月から7月で約2.2倍となり、7月は前月比71.7%増でした。

図1:「冷食ベースの素材化・ひと手間アレンジ界隈」の投稿数推移

食の構造化データで見られた投稿をもとにすると、例えば次のような使い方があります。

投稿例:

「冷凍唐揚げを酢豚っぽくしよ!って作ってたら……あれ?なんで私、メニュー増やしてるんだ(笑)」

投稿例:

「ピザのトマトソースって毎回余っちゃう。今日はひよこ豆と冷凍ハンバーグ入れて、そのまま煮ちゃお。」

特徴的なのは、冷凍食品を使いながら、あえて調理工程を加えている点です。
一つ目の投稿では、冷凍唐揚げをそのまま食べるのではなく、酢豚風にアレンジしています。思いがけず料理の手間が増えてしまったことへの、自分自身へのツッコミからも、冷凍食品を自由にアレンジしている様子がうかがえます。

二つ目の投稿では、余ったトマトソースと冷凍ハンバーグを組み合わせ、別の料理へと活用しています。
どちらも、完成品をそのまま食べることが目的ではなく、すでに調理された冷凍食品を、自分の食べたい料理をつくるための材料として利用していることが分かります。

ここからは、冷凍食品に求められる便利さが、必ずしも「手間をゼロにすること」だけではない可能性が見えてきます。
揚げる、成形するといった負担の大きい工程は商品に任せながら、味付けを変える、ほかの食材と組み合わせるといった工夫は自分で行う。そうした使い方にも価値があるのではないでしょうか。
つまり、生活者は必ずしも調理のすべてを省きたいわけではなく、「手間を省きたい工程」と「自分で工夫したい工程」を使い分けていると考えられます。

商品企画においても、温めるだけで完成することに加え、アレンジしやすい味付けや形状、ほかの食材と組み合わせるレシピの提案など、「素材としての使いやすさ」が新たな商品価値につながる可能性があります。

3.下処理は省き、料理は楽しむ界隈|冷凍シーフードの本格アレンジ

二つ目は、「冷凍シーフードで手軽に本格海鮮アレンジ界隈」です。
先ほどの界隈と似ていますが、こちらでは生活者が冷凍食品に任せている工程がより明確です。
投稿数は2月30件、3月38件、4月24件、5月140件、6月94件、7月340件。増減はあるものの、7月は6月比261.7%増となり、6カ月で最も高い水準になりました。

図2:「冷凍シーフードで手軽に本格海鮮アレンジ界隈」の投稿数推移

この界隈では、魚介類の保存や食材の準備にかかる負担を減らしながら、調理そのものを楽しんでいる様子が見られます。

投稿例:

「冷凍のシーフードミックスがあったから、何作ろうかな~ってレシピ見てたら中華丼発見!おかず少ないかなって心配だったけど、母が『おいしい、おいしい』って完食。お腹いっぱいだったみたい。」

投稿例:

「ふるさと納税の冷凍ホタテ、塩と砂糖と氷で解凍して昆布締めにしてみた。これ、すっごくおいしい……!今年も冷凍ホタテにしようかな。」

一つ目の投稿では、冷凍庫にあったシーフードミックスをきっかけにレシピを探し、中華丼をつくっています。冷凍食品が献立を考える出発点になっている点が特徴的です。

二つ目の投稿では、冷凍ホタテを解凍して終わりではなく、解凍方法を工夫したうえで昆布締めにしています。「すっごくおいしい」という感想からも、完成した料理への満足感が伝わってきます。

ここで注目したいのは、冷凍食品を使っていても、料理を簡単に済ませようとしているとは限らないことです。
魚介類は、保存や下処理、使い切りなど、料理を始める前に負担が生じやすい食材です。冷凍シーフードを活用すれば、そうした負担を軽減しながら、炒める、味付けする、仕上がりを工夫するといった工程に時間を使うこともできます。

今回の投稿からは、冷凍シーフードが単なる時短食材ではなく、自分で料理を楽しむための選択肢にもなっている様子が見えてきます。
つまり、「便利さ」と「本格的な料理を楽しむこと」は、必ずしも相反するものではないと考えられます。

商品企画では、下処理済みで使いやすいことに加え、必要な分だけ取り出せるバラ凍結、解凍後の食感や風味、料理に合わせたレシピ提案など、「準備の負担は減らしながら、仕上がりにはこだわれる」設計も一つの方向性になりそうです。

4.深夜のひとり時間を支える界隈|冷食アテ・ちょい食べ

三つ目は、「深夜の冷食アテ・夜な夜なちょい食べ界隈」です。
投稿数は2月43件、3月67件、4月95件、5月105件、6月82件、7月203件。6月に一度下がったものの、2月から見ると増加基調で、7月は前月比147.6%増となりました。

図3:「深夜の冷食アテ・夜な夜なちょい食べ界隈」の投稿数推移

この界隈で冷凍食品が使われるのは、家族の食事を用意する場面だけではありません。仕事で遅くなった夜や、一人で晩酌したい時間に、「少量だけ、すぐに熱々で食べたい」というニーズを支えています。

投稿例:

「帰宅。仕事で遅くなって、今日はもう全っ然やる気なし。冷凍パスタをチンして、あとはウインナーと野菜をちょこっと炒めただけ。」

投稿例:

「なんか食べたいな~。でも作るのもなぁ……って冷凍庫あさったら、フライドポテト発見!うまっ。さっきポテサラも食べたけど、まぁいいか(笑)」

一つ目の投稿では、仕事で帰宅が遅くなり、料理をする気力がないなかで冷凍パスタを活用しています。それでも、ウインナーと野菜を炒めるなど、すべてを冷凍食品だけで済ませているわけではありません。

二つ目の投稿では、「何か食べたいけれど、わざわざつくるのは面倒」という気持ちから冷凍庫を探し、見つけたフライドポテトを食べています。

特に印象的なのは、食べるものをあらかじめ決めていたのではなく、「今、何か食べたい」という気持ちに、冷凍庫にある食品が応えていることです。

こうした投稿からは、冷凍食品の価値が、決まった食事を効率よく用意することだけではないと考えられます。 疲れているときには調理の負担を減らしたい。一方、少しだけ食べたいときには、わざわざ買い物や調理をせず、その場の気分で食べられることがうれしい。
つまり、「自分が食べたいタイミングで、食べたいものを手軽に用意できること」も、冷凍食品ならではの価値といえそうです。

商品企画においても、一食分の食事としての使いやすさだけでなく、少量ずつ取り出せる包装や再封しやすいパッケージ、皿を増やさずに調理できる容器など、生活者のそのときの気分や状況に応じて使える設計が、新たな選択肢になるのではないでしょうか。

5.3つの界隈から見える変化|「時短」から「任せ方を選ぶ」へ

ここまで、6カ月の推移から伸長が見られた冷凍食品関連の3つの界隈を見てきました。
それぞれ使っている商品やシーンは異なりますが、並べてみると、生活者が「冷凍食品に何を任せ、何を自分で行いたいのか」という違いが見えてきます。

「冷食ベースの素材化・ひと手間アレンジ界隈」では、負荷の大きい調理工程を任せながら、最後は自分好みに仕上げています。
「冷凍シーフードで手軽に本格海鮮アレンジ界隈」では、下処理や保存を任せ、炒める・味付けするといった料理そのものは楽しんでいます。

そして「深夜の冷食アテ・夜な夜なちょい食べ界隈」では、必要な時間に、食べたい量だけ手軽に用意できることが価値になっています。
つまり、生活者が冷凍食品に求めているのは、一律に「調理の手間をなくすこと」だけではありません。自分にとって負担となる工程や、量・タイミングに関する制約を、必要な部分だけ商品に任せられることにも価値があると考えられます。

この視点は、食品メーカーの商品企画・開発にも新たな可能性を示しています。
商品企画においても、「レンジで○分」「調理不要」といった時短性能を追求するだけではなく、生活者が負担に感じる工程と、あえて残したい楽しさを見極めることが重要ではないでしょうか。

今回の分析からは、冷凍食品の価値を、「どれだけ手間を減らせるか」から「生活者が何を、どのくらい、いつ任せられるか」へと捉え直すことが、新たな商品開発の着眼点になると考えられます。

6.構造化されたSNSの生活者の声から、商品開発のヒントを見つける

SNS分析では、特定のキーワードの投稿数や増減を見ることで、何が話題になっているのかを把握できます。しかし、投稿数だけでは、生活者がなぜその商品を選び、どのように使い、何に価値を感じているのかまでは捉えきれません。

例えば、「冷凍食品」に関する投稿が増えていても、その背景には、調理の手間を省きたい、料理を自分好みに仕上げたい、夜遅くに少量だけ食べたいなど、異なるニーズが存在する可能性があります。

こうした違いを捉えるために、NTT DATAのトレンドエクスプローラー®では、X上の生活者投稿を食アイテム、食感、食べ方、利用シーン、機能的・情緒的価値などの観点で構造化しています。さらに、似た行動やニーズを持つ生活者のまとまりを「界隈」として捉え、その規模や時間的な変化を分析しています。

今回紹介した3つの界隈も、単に「冷凍食品が便利」という共通点だけでは見えてこないものです。実際の投稿文脈を組み合わせて読み解くことで、料理のどの工程を省きたいのか、どの工程を楽しみたいのか、どのようなタイミングで利用したいのかという違いが見えてきました。

また、投稿数の多いテーマだけでなく、まだ規模は小さくても、継続的に注視したい伸長傾向を示す界隈を捉えられることも特徴です。こうした変化は、市場全体での需要拡大を直接示すものではありませんが、今後の商品企画で検証すべき仮説を見つける手がかりになります。

重要なのは、SNS上で「何が増えているか」を知るだけでなく、「どのような生活者ニーズが背景にあり、それを満たすために商品をどう変えられるか」まで考えることです。

こうした分析アプローチは冷凍食品に限らず、パン、スイーツ、飲料、麺類、健康食など、さまざまな食品カテゴリーにも応用できます。生活者が商品をどのような場面で、何を求めて利用しているのか。その声を丁寧に読み解くことで、従来のカテゴリーや用途にとらわれない、新たな商品企画・マーケティングの可能性が広がります。

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

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