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1.ツヤ肌のトレンド変化|「光って見える」から「うるおって見える」へ
まず注目したのが、ツヤやうるおいを表す言葉の変化です。今回は、オノマトペや感覚表現を大きく「光沢・発光系」と「水分・保水感系」の二つに分類しました。
「光沢・発光系」は、「水光」「発光」「輝き」「光の玉」「ガラス」など、光や反射を想起させ、見た目のツヤを評価している表現です。一方、「水分・保水感系」は、「ぷるん」「うるうる」「みずみずしい」「しっとり」「うるおい膜」など、水分を感じさせる表現が、保湿感や乾燥しにくさと結び付いている投稿としました。一つの投稿に両方の要素が含まれる場合は、単語を重複して数えるのではなく、投稿全体で何が主に評価されているかによって分類しています。
図1:オノマトペ投稿に占める「光沢・発光」と「水分・保水感」の構成比推移
特徴的なのは、光沢・発光系が4月から一直線に減少しているわけではないことです。光沢・発光系は4月14.3%、5月14.7%と、5月までは高い水準を維持していました。しかし6月になると8.9%まで低下しています。一方、水分・保水感系は4月8.0%、5月9.3%から、6月には16.8%まで上昇しました。5月までは光沢・発光系が優勢だったものの、6月には水分・保水感系が逆転しています。
では、この数字の変化は、実際の生活者の言葉ではどのように表れているのでしょうか。
4月には、例えば次のようなリップに関する投稿が見られました。
投稿例:
「ひと塗りでちゅるんとしたツヤのある唇に。ガラスのような透明感があり、ふっくらとした美唇になる。」
ここで使われている「ちゅるん」は、単なる水分感だけを表しているわけではありません。「ツヤ」「ガラスのような透明感」と結び付き、目で見て分かる仕上がりの美しさや輝きを伝える言葉として使われています。
一方、6月には次のような投稿が見られました。
投稿例:
「ほぼグロスのような質感なのにベタつかず、ぷるっとした仕上がり。色持ちもよく、乾燥もしづらい。」
6月の投稿でもツヤは評価されています。ただし、「ぷるっとした仕上がり」だけではなく、「乾燥しづらい」「ベタつかない」「色持ちがよい」といった複数の条件が、一つの商品体験の中で同時に語られています。
図2:春から初夏へ、「ツヤの質」が変化している
この変化を「春はツヤ、初夏は保湿」とだけ捉えると、少し違います。初夏にツヤが求められなくなったわけではなく、「どれだけ光って見えるか」に加えて、「そのツヤをどれだけ心地よくまとえるか」まで評価されるようになっていると考えられます。
言い換えれば、「光を足してツヤを見せる」から、「水分を感じることで自然にツヤを感じる」へ。美容における「ツヤ肌」の評価軸が、春から初夏にかけて変化しています。
2.初夏の保湿ニーズ|「乾燥しにくい」と「ベタつかない」がセットになる
水分・保水感系のX投稿をさらに見ていくと、6月にはもう一つ特徴的な評価軸が見えてきます。それが、「乾燥しにくさ」と「ベタつきにくさ」の両立です。
先ほどのリップに関する投稿でも、「ぷるっと」「乾燥しづらい」といううるおいに関する評価と、「ベタベタしない」という軽さが同時に語られていました。ここで重要なのは、「高保湿だから良い」という単純な評価ではないことです。生活者が求めているのは、水分やうるおいは残してほしい一方で、表面には重さやベタつきを残してほしくないという、一見相反する二つの条件を同時に満たす使用感だと考えられます。
この傾向はリップだけではありません。ヘアケアでも、ツヤとベタつきにくさを同時に評価する投稿が見られました。
投稿例:
「重すぎないオイルだから髪がベタつきにくく、するんとまとまる。ドライヤー前にも使いやすいし、ツヤ感もきれい。」
この投稿では、「ツヤ感もきれい」という見た目の仕上がりだけでなく、「重すぎない」「ベタつきにくい」「するんとまとまる」といった使用感も同時に評価されています。
図3:初夏の美容トレンド:「ツヤ」と「軽さ」を両立するヘアケアニーズ
ここから見えてくるのは、初夏の美容では「ツヤ」と「軽さ」が相反するものとしてではなく、同時に満たしたい価値として捉えられている可能性です。ツヤを出したいけれど、重くはしたくない。うるおいは欲しいけれど、ベタつきは残したくない。こうした複合的なニーズが、美容アイテムを評価するポイントになっていると考えられます。
6月は冷房を利用し始める時期とも重なるため、室内環境による乾燥などが背景の一つとなっている可能性もあります。
商品企画の観点でも、「保湿力が高い」「ツヤが出る」といった単独の機能だけではなく、「うるおうのにベタつかない」「ツヤが出るのに重くない」といった、複数のニーズをどのように両立させるかを見ることが重要になりそうです。
3.クレンジングの使用感|「するん」「とろける」に表れる変化
もう一つ特徴的だったのが、「するする」「するん」「とろける」「なめらか」「つるん」など、商品のすべりやなじみ方、肌や髪の変化を表すオノマトペです。
図4:「すべり・なじみ・平滑感」を表す投稿の構成比
「すべり・なじみ・平滑感」を表す投稿は、4月の6.3%から5月7.0%、6月10.9%へと上昇しました。さらに、その中で保湿やしっとり感などの「うるおいベネフィット」が一緒に語られている割合は、4月28.6%から5月55.6%、6月63.6%へ高まっています。
つまり、「するん」「とろける」といった言葉が単なる塗りやすさやなめらかさだけではなく、うるおいを含めた商品体験と結び付いて語られる割合が高まっていることが分かります。
この違いを同じ美容アイテムで比較するため、4月と6月のクレンジング・メイク落としに関する投稿を見てみます。
4月には、次のような投稿が見られました。
4月の投稿例:
「肌の上でとろけるジェルが、メイクや汚れをドロッと浮かせて、さっぱり洗い流せる。」
4月の投稿では、「とろける」「ドロッと」といった感覚表現が、ジェルが肌の上で変化し、メイクや汚れを浮かせて落とす様子を伝えるために使われています。中心になっているのは、「どのように汚れが落ちるのか」というクレンジング中の感触です。洗い上がりについても「さっぱり」と表現されており、落とし方や洗浄後の爽快感が評価されています。
一方、6月には次のような投稿が見られました。
6月の投稿例:
「とろけるオイルが素早く肌になじんで、メイクや毛穴の汚れがするんと落ちる。洗い上がりもしっとり。」
6月でも、「とろける」「するん」といった言葉によって、クレンジングが肌になじみ、汚れが落ちていく様子が表現されています。ただし4月との違いは、その先の肌状態まで語られていることです。「とろける」「なじむ」「するんと落ちる」に加えて、「洗い上がりもしっとり」という使用後のうるおいまで、一連の体験として評価されています。
図5:クレンジングの評価軸が変化―落とし方から、落とした後の肌状態へ
4月は「とろけて汚れを浮かせ、さっぱり落とせる」という落とし方や洗浄中の感触が中心でした。それに対して6月は、「とろけてなじみ、するんと落ち、それでもしっとりする」と、使用中から使用後までを一連の美容体験として評価しています。
ここで重要なのは、「するん」「とろける」というオノマトペが増えていることだけではありません。オノマトペが、何を評価するために使われているのかも変化している可能性があります。商品の動きや落ち方を分かりやすく表現するだけでなく、「しっとりする」「乾燥しにくい」といった使用後の肌状態まで結び付けて語る役割が強まっているのです。
初夏の美容では、「しっかり落とせるか」だけではなく、「心地よくなじむか」「落とした後にどのような感触が残るか」までが、美容アイテムを評価する要素になっていると考えられます。
4.SNSの生活者の声から読み解く美容ニーズ|商品開発・マーケティングへの示唆
ここまでの分析では、初夏の美容について大きく二つの変化が見えてきました。一つは、リップやヘアケアに表れた「仕上がりの評価」の変化です。もう一つは、クレンジングに表れた「使用体験の評価」の変化です。
■仕上がりについて見ると、「ツヤ」の中にも違いがある
4~5月には、「水光」「発光」「ガラスのような透明感」など、見た瞬間の輝きや美しさを感じさせる視覚的なツヤが目立ちました。一方、6月には、「ぷるん」「うるうる」「みずみずしい」といった水分を感じるツヤに加え、「乾燥しにくい」「ベタつかない」「軽い」といった使い心地も一緒に評価されています。
同じ「ツヤ」であっても、生活者が評価するポイントは一様ではなく、見た目の美しさだけでなく、うるおい感や軽さなど、より複合的な仕上がりへと広がっていることが分かります。
■使用体験について見ると、「落ち方」から「洗い上がり」まで評価が広がっている
クレンジングでは、4月は「とろける」「ドロッと浮かせる」「さっぱり落とす」といった、汚れをどのように落とすかという評価が目立ちました。
一方、6月には、「なじむ」「するんと落ちる」といった使用中の感覚に加え、「洗い上がりもしっとり」と、使用後の肌状態まで含めて評価する声が見られます。
つまり、単に「しっかり落ちる」だけでなく、なじませるところから洗い上がりまで、使用プロセス全体が商品の評価対象になっていると考えられます。
■共通しているのは、「一つの機能」ではなく「複数の価値」が評価されていること
リップやヘアケアとクレンジングでは評価している対象は異なりますが、共通しているのは、「ツヤが出る」「保湿できる」「汚れが落ちる」といった一つの機能だけで商品を評価しているわけではない点です。
「うるおうのにベタつかない」「ツヤがあるのに重くない」「しっかり落とせるのに洗い上がりはしっとりする」といったように、複数の感覚やベネフィットが組み合わさった状態に、生活者のニーズが表れています。
商品開発においても、単一の機能を高めるだけではなく、「どの価値とどの価値を両立させるか」という視点が、今後より重要になると考えられます。
■感覚表現の変化から、生活者が求める価値の組み合わせが見えてくる
こうした変化を捉える手がかりになるのが、オノマトペや感覚表現です。「ぷるん」「するん」といった言葉が、どの仕上がりやベネフィットと結び付いているのかを構造化し、時系列で見ることで、「ツヤ」「保湿」「洗浄力」といった機能キーワードだけでは捉えにくい生活者インサイトを読み解くことができます。
トレンドエクスプローラー®では、X上の生活者投稿を、商品名や成分だけでなく、感触、仕上がり、利用シーン、悩み、ベネフィットなどの観点から構造化して分析できます。「どの言葉が増えたか」だけではなく、「その言葉が何と結び付いているのか」「その結び付きが時系列でどのように変化したのか」まで見ることで、生活者の声から新しいトレンドや商品ニーズを探索できます。
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