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2016年5月13日技術ブログ

テクノロジーフォーサイトに込めた想い

未来予測レポート「NTT DATA Technology Foresight」は 社会の変化や技術動向がビジネスに与える影響を予見し、 イノベーションを生み出すための羅針盤。 技術革新統括本部長の木谷 強に制作意図を聞きました。

未来の社会像を共有するためには?

社会のマクロな変化と技術動向

──2012年に始まった「NTT DATA Technology Foresight(テクノロジーフォーサイト)」の発表は、どんな体制で取り組まれ、何を目的とするのでしょう。

技術開発本部にいる4~5人の担当者が、社会の新しい動き、特に技術の動向を常時調査して毎年まとめ、1月に発表しています。

始めた頃は、NTTデータグループの研究開発テーマを決めるための技術調査でした。当初は比較的狭い技術分野を対象にしていましたが、今では「PEST(※1)(政治・経済・社会・技術)」に沿って情報を集め、体系化して発信しています。

今ではテクノロジーフォーサイトの知名度が上がり、お客様と一緒に新しいビジネスを考えるきっかけになっています。経営者層や新しい事業を考える組織の皆さんに役立つ内容になっています。

──2015年からは「情報社会トレンド」を4つ、「技術トレンド」を8つに設定しています。

情報社会トレンドは情報社会のマクロな話で、必ずしも技術の話ではありません。例えば、自動運転の自動車が2020年頃から道路を走り始めます。自動車保険が今後どう変わるのかといった話題は、今から考えて備えなくてはなりません。
技術トレンドは、技術動向に特化した予測です。2~3年先に実現するトレンドもありますが、5年後、10年後を見据えたトレンドが中心です。

社会課題の解決が技術の核心

───2016年の技術トレンドで注目すべきものを3つ挙げてください。

http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/foresight/sp/index.html

http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/foresight/sp/index.html

まず「プレシジョンライフサイエンス(予測医療)」(TT02)です。

私たちが力を入れていきたいのは、こうした生命科学や医療の分野です。これまでITがあまり貢献できていなかった分野の1つだと捉えています。コンピューターのパワーがどんどん向上してきて、実現できることが増えています。

──なぜ、これまでは貢献できていなかったのですか。

データが非常に少なかったんですね。身体の情報は取りにくいし、個人情報ですから提供も消極的です。さらにその個人情報を特定の組織が抱えていて、アクセスしにくい環境でした。

その状況が随分変わってきて、うまくエコシステムを構築する例も登場しています。利用目的を明確にしてDNAのような個人情報を研究機関に提供してもらう仕組みが出てきて、データが集まりました。その結果、遺伝子情報を活用した医療のように、いろんなサービスが生まれてきています。

2番目は「人工頭脳(AI)との共生」(TT03)という技術トレンドです。

テクノロジーフォーサイトに興味のあるお客様には、AIで新しい事業を考えたいというニーズがあります。8つの技術トレンドにはAI、ロボティクス、IoT(Internet of Things)(※2)の3つがいろんな場面に絡んでいます。

http://www.nttdata.com/jp/ja/services/sp/digital-innovation/ai/index.html

http://www.nttdata.com/jp/ja/services/sp/digital-innovation/ai/index.html

http://www.nttdata.com/jp/ja/services/sp/digital-innovation/robotics/index.html

http://www.nttdata.com/jp/ja/services/sp/digital-innovation/robotics/index.html

例えばコミュニケーションロボットの「Sota(※3)」がそうです。Sotaは人と会話するのですが、音声認識、対話制御、音声合成はクラウドで動いている。Sotaの音声認識にはディープラーニングの技術が使われています。

最初にSotaを試験導入したのは高齢者の介護施設です。超高齢化社会になっているのに介護者が少ないという社会課題を解決しようとするものです。

Sotaは「今日お薬飲みましたか? 何錠飲みましたか?」と繰り返し質問するんですね。これは介護する人が毎日聞く質問です。こうした手間を省いてクラウド上に高齢者の状態を蓄積していける。事前に「ここのお年寄りはこういう状態の人です」と把握できるので、介護側の負担を下げられるんですね。

便利さや楽しさも大事ですが、社会課題を解決するためにトレンドを活用していくことが重要です。

※1PEST分析

マーケティングで用いる分析方法で、政治的(Political)、経済的(Economic)、社会的(Social)、技術的(Technological)の頭文字を取っている。マクロな環境を網羅的に見ていくフレームワークとして役立つ。フィリップ・コトラー博士の考案による。

※2IoT

モノのインターネット(Internet of Things)は、センサーと通信機能を備えた現実世界の物体が、相互に通信・制御を行うネットワークのモデル。割り当て可能なIPアドレスが2の32乗個(約43億個)に限られるIPv4に代わり、2の128乗個(約340澗個)が使えるIPv6への移行構想が進んだこともIoTの普及を後押ししている。

※3Sota

CPUにインテルEdisonを搭載した全長28cmのコミュニケーションロボット。カメラ、マイク、スピーカーを備える。専用ミドルウェアからモーション作成・動作プログラミングが可能。キャラクターデザインはロボットクリエイターの高橋智隆氏による。ヴイストン株式会社が販売。
https://www.vstone.co.jp/products/sota/

アイデアと技術だけでは何もできない

技術がもたらす正負の側面

──NTT DATA Technology Foresightでは、情報社会トレンドの実現に大きな影響を与えるものとして技術トレンドを毎年いくつか挙げています。数年先に起こる社会インフラの変化でいうと、最も大きなインパクトを与えるのはどんなトレンドですか。

2020年頃からモバイル通信が5G(※1)の時代になることです。通信速度が10G bit/secですから、今のモバイル環境のおよそ40倍速い。帯域を十分確保しないといけない問題はありますが、技術的には可能なんです。何でもどんどん繋がり、映像もガンガン送れる。実際にそういう時代が間違いなく来ます。

様々な業界のお客様とお話しする機会がありますが、新しいサービスといっても今の延長線上でできるアイデアにとどまってしまうことが多いです。
破壊的な社会インフラとなるようなサービスを生み出すために、私たちは解決すべき課題や環境の変化と急激な技術進歩を掛けあわせるような発想を心がけています。

──テクノロジーが進んでいって良くなることがある一方、今後、負の側面のトレンドも出てくるでしょうね。

それが、3番目の技術トレンド「サイバーフィジカルセキュリティ」(TT07)です。
今日の社会では、どの企業も世界中から猛烈なアタックを受けています。インターネットバンキングなどでもIDを盗まれるといった事態が起こっていますから、解決すべき大きな社会課題であるのは間違いないです。
サイバー攻撃(※2)もどんどん新しい技術が出てきていて、私たちも脅かされている。専門家集団から攻撃されると、とても一企業では防ぎきれないんですよ。だから、考え方を「侵入されることはあるという前提で、侵入されたときどうするのか」いう方向に変えなくてはいけません。
例えば、ウイルスに感染したPCは、いち早くネットワークから切り離さないといけません。それを早くやれば、被害が最小限で済むはずです。ゆっくりしていると組織全体に広がるし、外部にもどんどん被害を広げてしまいます。

オープンな議論の場を用意する

──最後に、木谷さんが考える技術と社会の関係性をお聞かせください。ITが人間を幸福にするために、必要な条件は何だと思われますか?

解かなくてはいけない社会の課題や事業のニーズを技術で解決できるところがあると思います。コンピューターが本格的に使われるようになって50年くらいですから、まだまだこれから。解けるようになった問題もたくさんあって、技術の進歩が社会をどう変えていくのか楽しみです。

ただし、いくらいいアイデアと技術があっても、それだけでは何もできない。しっかりビジネスモデルを作らないと、世の中には広まりません。
グーグルが最近、ディープラーニングの技術を公開(※3)しましたよね。多額の投資をしてつくったもので、社内でも「出してもいいのか?」という議論があったと想像するのですが、思い切って誰でも使えるように出してしまった。そんな真似ができるのは、情報収集・分析のプラットフォームを提供することで広告収入を得るという確固としたビジネスモデルがあるからです。

──今世紀に入って、オープンイノベーションを行う巨大企業が次々に興り、成功しましたよね。NTTグループとしては、オープンなイノベーションに向かうビジョンはあるのでしょうか。

まず、NTTデータのビジネスの主体はシステムインテグレーションなので、世の中の技術を上手に組み合わせて情報サービスを提供する事業は続けていきます。

それと並行して、オープンイノベーションもしっかりやっていかなければなりません。どの企業も、同じ事業形態、同じビジネスモデルで永遠に存続していくことは考えられない。世の中の新しい技術やビジネスのモデルを取り込んで、自らのビジネスも変えていかなければなりません。
すでにNTTデータグループでも、オープンイノベーションは実施しています。インドでは盛んにアイディアソンやハッカソンをやっています。そういう動きを見ながら、私たちも未来への活動を取り入れていかないといけません。

──あらためて「テクノロジーフォーサイト」を社外に発表する意義とは。

テクノロジーフォーサイトは社会の課題や技術の進歩を提示しています。

変化が激しい世の中、お客様も私たちも何をすればいいのかが明確に見えているわけではありません。NTTデータだけで解決できる課題は少ないという前提に立ち、ニュートラルな視点でトレンドの公開をしていきます。世の中の大きな動きを提示することで、お客様とオープンに議論できる環境を作っていきたいですね。

※15G

NTTドコモが2020年のサービス提供開始を目指す次世代移動通信システム。2020年には、移動通信のトラフィック量は2010年と比較して1,000倍以上になると予測される。10Gbpsを超える超高速通信、低遅延化、多数の端末との同時接続などを、低コスト・低消費電力で実現することを目標に研究開発が進んでいる。

※2サイバー攻撃

大量のアクセスを集中させてシステムダウンを引き起こすDDoS攻撃やコンピュータウイルス散布のほか、サイバー攻撃はIoTの進展によって物理世界にも影響を及ぼし始めている。2010年にイランの核濃縮施設がコンピュータワーム「スタックスネット」に感染した例が有名。

※3グーグルが最近、ディープラーニングの技術を公開

Googleが2016年3月に公開した「Cloud Machine Learning」は、あらゆる規模やタイプのデータで、機械学習モデルを容易に構築できることを謳ったマネージドプラットフォーム。Googleフォトなどのサービスを支えるオープンソースの機械学習ライブラリ(TensorFlow)をベースにする。2016年5月下旬現在、下記サイトで限定プレビューの参加者を募っている。
https://cloud.google.com/ml/

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