NTTデータが積極的に取り組む「実践型リスキリング」プログラムとは

「技術を学びたいが、日々の業務の中で時間がとれない」「新しい技術分野にチャレンジしたい」──。このような思いを抱いているエンジニアは多いだろう。NTTデータではこの課題に対して”活かせる技術”が学べる、NTTデータ式「実践型リスキリング」を実施している。実際にどのような育成プログラムがあるのか、リスキリングプログラムを受講したエンジニアの活躍などを紹介する。

リスキリングプログラムを受講後、プロジェクトリーダーとして活躍

金融戦略本部 技術戦略推進部 プロジェクトサポート担当 主任 渡邊 仁氏
金融戦略本部 技術戦略推進部
プロジェクトサポート担当
主任 渡邊 仁氏

NTTデータではデジタル人財・DX人財の育成に注力しており、さまざまなリスキリングプログラムを用意している。その具体的なプログラムを紹介したのが、自身もリスキリングプログラムを受講した経験を持つ渡邊仁氏である。渡邊氏は入社4年目でDAP(Digital Acceleration Program)に参加し、2年間、技術革新統括本部(以下、技統本)システム技術本部 デジタルテクノロジ推進室に所属し、ブロックチェーンやクラウド技術などの技術を習得。

現在はそれらの技術を活かして、金融系の分野(現部署)で活躍している。

DAP施策の特徴は「大きく3つある」と渡邊氏。まず1つは2年間、先端技術に強みを持つ部門などに社員を異動させ、デジタル人財として活躍できる人財を育成すること。

2つ目が「Digital Boot CampによるOff-JT拡充」。技統本の育成プログラムを体系化した約9週間のデジタルOff-JTである。3つ目は「育成計画に基づく、半期毎の進捗確認」だ。半期に一度、経験ベースの定量的な進捗確認が実施される。

DAPのポイント

Off-JTのDigital Boot Campでは、次の図のような受講プログラムのラインナップが用意されている。

「最先端のテクノロジートレンドに沿った研修を受講することができます。中には長期の研修もあり、エンジニアをしっかり育てようという意図が感じられました」(渡邊氏)

渡邊氏はプログラムの中からクラウド研修を受講した。基礎知識を習得するだけではなく、資格取得も行った。各研修の難易度について渡邊氏は、「基礎から学べるので、困難を感じることはなかった」と語っている。

「部署に復帰後、早々にクラウド関連のプロジェクトに配属され、貢献できていると思います」(渡邊氏)

Digital Boot Campによるoff-JT拡充

「Agile Boot Camp」と「クラウドネイティブ開発ハンズオン」は、5週間にわたる体験型の研修だ。Agile Boot Campでは最初にデザイン思考を学び、アジャイルについての基礎を学んだ上で、実際の体験ができる。残り2~3週間は、クラウドネイティブ開発ハンズオンが始まり、実際にAndroid実機を使って実際にアプリのアジャイル開発を体験する。

「題材は、簡単な決済アプリのようなもの。これまで金融プロジェクトでは触ったことがなかったので、良い経験となりました」(渡邊氏)

Agile Boot Camp

渡邊氏の発表をさらに深掘りすべく、コーポレート統括本部 人事本部 人事統括部採用担当課長安永章太郎氏が渡邊氏に7つの質問を行った

コーポレート統括本部 人事本部 人事統括部 採用担当課長 安永 章太郎氏
コーポレート統括本部
人事本部 人事統括部
採用担当課長 安永 章太郎氏

安永:実際にOJT現場では、どのようなプロジェクトにジョインしていましたか。

渡邊:OJTとしては、主にブロックチェーン技術と貿易業務を組み合わせたシステムを開発するプロジェクトに配属されました。このプロジェクトはHyperledgerなど最先端技術を使う先進的なプロジェクトで、さまざまな考え方を吸収しました。

渡邊:やりがいを感じたのは、社内外の有識者の方と意見交換する場が得られたことや、ブロックチェーンのイベントに発表者として登壇できたことです。

安永:参加前とDAP期間中の働き方の変化はありますか。


渡邊:DAP参加前は年次も若かったので、先輩と一緒に業務を実施していました。技統本でリーダーを任されてからは、ブロックチェーンを活用した新しいサービスについて技術検証したり、事業部の方々と密に連携してサービスを実現するところまで携わりました。技統本は顧客の幅が広く、金融分野だけではなく、公共分野や法人分野の会議に参加するなど、新しい体験ができました。

安永:DAP期間中に不安になることはありませんでしたか?

渡邊:DAP期間中は所属していた部署とはもちろん、技統本の上司と半期毎に目標などが確認できていたので、そうした不安は軽減できました。

安永:DAP期間が終わった今、復帰先での活躍状況を聞かせてください。

渡邊:クラウド研修でデータベースやクラウドサービスなどの知識を向上できたので、復帰後はクラウド関係のプロジェクトに参画しました。

安永:今後のキャリアについての考えは?

渡邊:DAPは受講したら終わりではありません。これからも最新の技術などを常にキャッチアップするなど、学習を継続できればと思います。

安永:あらためて、DAPの魅力とは何でしょう?

渡邊:業務ではなかなか触れられなかったことに、Off-JTおよびOJTで触れることができる。それが魅力だと思います。

なぜ、NTTデータがリスキリングに取り組むのか

コーポレート統括本部 人事本部 人事統括部 人事担当 課長代理 中川裕子氏
コーポレート統括本部
人事本部 人事統括部
人事担当 課長代理 中川裕子氏

続いては、NTTデータがなぜリスキリングに取り組むのか。その理由を、DAP施策の全社展開を推進している中川裕子氏が紹介した。

NTTデータでは「2022年度~2025年度 中期経営計画」において、図のような5つの戦略を打ち出し、社会的にもDX推進が加速している。顧客からも今までになかったようなデジタル案件を要求されることが増えた。

「技術力を武器に、多様化する顧客課題に先んじて対応する必要があると考えています」(中川氏)

NTTデータでは、顧客・社会のデジタル変革を、技術を武器にドライブする人財を育てるために、リスキルを開始した。

「技統本を中心に、座学と実践の双方で技術を習得できるプログラムを社内で展開してきました」(中川氏)

NTTデータでは、デジタル人財を「デジタル活用人財」「デジタル専門人財」「デジタルコア人財」の3つに分類している。渡邊氏が参加したDAPはデジタル専門人財のための施策である。

「今はNTTデータ個社での取り組みですが、最終的には日本全体における“デジタル人財不足”という課題解決にも寄与できると考えています」(中川氏)

NTTデータのリスキリングプログラムは2年間。座学でトップ技術者たちから基礎を学び、実践を通じて学んだ技術力を実社会に生かす人財を育成する。NTTデータの強みを活かした特別な環境を提供することで、このような人財育成を可能にしている。

「選ばれた人しかそういうチャンスはないのでは」と思うかもしれないが、「そんなことはない」と中川氏は言い切る。どの組織にいても学びの機会は提供される。DAP施策以外にもさまざまな育成プログラムが用意されており、しかも同社では自主的に参加できる手上げ制を採用しているからだ。

「意欲があれば、成長し続けられる環境を用意しています」(中川氏)

DAPプログラムは2019年から展開しており、すでに4年の実績がある。現在育成中も含め、合計110人が参加している。

また、受講者からは「今までよりも深い領域まで踏み込んで検討できるようになった」「お客さまの期待を超えるような提案ができるようになった」など前向きな声がたくさん届いているという。

トップエンジニアが講師を務めることも!DAPの概要とその魅力とは

技術革新統括本部企画部 部長 俣木 淳哉氏
技術革新統括本部企画部
人事育成担当
部長 俣木 淳哉氏

続いては、技統本で人事部長を務める俣木氏が登壇し、DAPプログラムの紹介を行った。俣木氏は入社以来エンジニアとしてキャリアを積んだ後、17年より全社の技術者育成専門チームの運営責任者を務めている。俣木氏は「NTTデータの中に、エンジニアのラーニングカルチャーを駆逐してきた」と言う。なぜなら「エンジニアが成長していくためには、自律的にキャリア形成できる環境が重要だ」と考えているからだ。
それを表すのが次の6つの特長だ。1つは「毎日どこかでテクノロジーのトレーニングの開催」。社員が自分のレベルに合わせて必要な技術を学びたい時に学べる環境を整備している。年間250回以上のトレーニングが開催されている。

2つ目は、パートナーと整備した育成プログラムで最新テクノロジーの知識・スキルを習得できることだ。

「例えば当社の社員であり、元リナックスアカデミーの学校長の濱野賢一朗自身が講師を務めるオープンテクノロジーのトレーニングなども開講している。このような仕組みにより、年間で4,000以上のパートナー認定資格を獲得するに至っています」(俣木氏)

3つ目は、日本・世界で活躍するトップエンジニアから直接指導を受けるチャンスがあること。例えば技統本では、技統本塾という取り組みを実施している。これは半年かけて、塾長が徒弟制度のような形で次世代のトップ技術者を育てる仕組みである。

「大学のゼミのようなもの」と俣木氏。塾長はHadoopコミッターやAWSのアンバサダーなど、第一線で活躍しているエンジニアが務める。

4つ目は、同士が集まりやすく、専門スキルを修得しやすい環境が盛り上がっていること。2020年頃から技術者コミュニティの立ち上げが活発化し、メンバー同士のQA、イベント・技術情報・資格取得・案件相談などの情報展開が進んでいる。

5つ目は、楽しみながら学べるスキルコンテストやラーニング・イベントが開催されていることだ。トラブルシュートがテーマの「AWS Game Day」やトレーニング終了数を競う「Cloud Skills Challenge」などのイベントが複数企画され、社員の学びを促進している。

6つ目は、DXの実践経験を積むことができるリスキリングプログラム、つまりDAPである。渡邊氏の紹介にもあったが、DAPの育成モデルを図にすると次のような形となる。

「DAPは紹介したプログラムが全部入った集大成のような育成プログラム。エンジニアのスキルアップにとって十分な育成環境が整備されています。NTTデータの最大のアセットは人財。これだけ豪華な講師陣がいる環境は、他にはないと自負しています」(俣木氏)

NTTデータの新しい採用方法「リスキリング採用」とは?

最後に安永氏からリスキリングと採用を組み合わせた新しい取り組み「リスキリング採用」の紹介が行われた。

これまで紹介したようにDAPは、社内で活躍している人財が留学のような形でリスキルするプログラムである。それを社外にも適用しようというのが、リスキリング採用である。以下の図を見ればわかりやすいが、入社後のリスキリング期間と活躍フィールドを用意した新しいキャリアの提案である。

2年間先端技術に強みを持つ組織で、Off-JTと実業務によって基礎知識と技術力を身につけ、その後身につけた専門性を軸に金融分野や公共社会基盤分野のプロジェクトに参加。同プロジェクトをリードする存在になるというものだ。リスキリング後の配属先も入社までに決まるので、「配属先が思っていたところと違う」という思いをすることもない。

リスキリング採用とは?

リスキリング採用のゴールは、デジタル技術の知見を有し、サービス設計・開発するデジタル専門人財。そして、専門性を軸にさまざまなプロジェクトをリードする人財となってもらうことだ。

他社で培った経験とDAP施策により、今までいなかった専門性を持つ人財となる。NTTデータとしても人財が多様化することで、より新しい価値を社会全体に届けることができる。

リスキリング採用で入社するメリットの第一は、デジタル人財として成長できる育成プログラムとフィールドが得られること。第二に業界をリードするトップエンジニアによる講義・手厚い学習フォローがあること。第三に習得した技術や知識を、NTTデータだからリーチできる具体的な社会課題、業界課題、顧客課題に活かせることだ。
「専門性を身に付けてキャリアの幅を拡げたい、より自己研鑽できる環境に身を置きたい、もっと大規模、社会に貢献できるプロジェクトに携わりたいという方は、ぜひチャレンジしてください」(安永氏)

リスキリング採用で入社するメリット

最後はQ&Aタイム。冒頭のセッションから、たくさんの質問が寄せられた。

リスキリング採用の場合、採用時のスキルレベルによって期間短縮はあるか

中川:現在期間短縮はしていませんが、かなりスキルの高い人が来たときも想定して今後は短縮することも考えています。

リスキリング採用時、DAP期間中の待遇はどういう扱いになるのか

安永:育成プログラム中という理由で待遇が変わることはありません。育成期間中もプロジェクトにジョインするため、そこでの活動や業績で評価されます。

2年間でリスキルの専門分野を極めたいと思った場合、技術革新統括本部に 残ることはできるのか

中川:技術に触れ続けたい人がかなり多いのは事実です。しかし、公共や金融の現場では学んだ技術を求められているので、まずはその分野の技術者として復帰していただきます。その上でもっとスキルを身につけたいという場合は、別のプログラムで技術統括本部に異動したり、リスキリングを続けたりしています。

俣木:専門領域を強めたい人は、リスキリング採用だけではなく、当部ではたくさんのポストを用意しているので、そちらを検討することも可能です。

リスキリング採用は通年実施しているのか

安永:通年で採用のプロセスは動かしますが、入社時期は7月と1月に固定しています。

データサイエンティストやAI人材のリスキリングプログラムなどはあるか

安永:リスキリングはセキュリティだけではなく、いろんなテーマで用意しています。

※掲載記事の内容は、イベント当時のものです