APIを組み直してアプリを開発
海外からのゲストが訪れる
国内初のスマートホステルを銘打ち、宿泊を通じて最先端のIoTデバイスを体験できる「&AND HOSTEL(アンドホステル)」が福岡に誕生したのが2016年8月です。その第3号店が「&AND HOSTEL UENO」(東京・台東区)。稼働率9割以上を誇る人気施設は、どのようなサービスを提供しているのでしょうか。
AND HOSTEL UENO(東京都台東区東上野6-8-7) ※画像クリックでホームページが開きます
施設に伺った3人は、NTTデータ技術開発本部の研究者。『絵で見てわかるIoT/センサの仕組みと活用』(※1)の著者でもある小島康平、小山武士、河村雅人です。
(左)NTTデータ 技術開発本部 エボリューショナルITセンタ デバイス協調技術担当 IoT/ロボティクスチーム 主任 小島康平(中)NTTデータ 技術開発本部 エボリューショナルITセンタ デバイス協調技術担当 シニア・エキスパート 小山武士 (右)NTTデータ 技術開発本部 エボリューショナルITセンタ デバイス協調技術担当 シニア・エキスパート 河村雅人
建物入口で出迎えてくれたのは&AND HOSTEL UENOのブランド責任者を務める、茶置貴秀(ちゃおき・たかひで)さん。ホステルをプロデュースするand factoryは、もともとエンターテインメント系のアプリ開発を手がけています。そのため、同施設で用いるアプリを独自開発できる強みがあるのです。
and factory IoT Division Real Estate Tech Unit 茶置貴秀 マネージャー
茶置 ゲストの8割が海外から予約した宿泊客で、そのうちの4割ほどがアジアからの旅行者です。年齢層は20?30代が多く、男女比は半々くらいですね。
当館に2部屋ある「IoTダブルルーム」に宿泊されるゲストには、チェックインの時に専用アプリをインストールしたスマートフォンを貸し出します。
ゲストのスマホにダウンロードした方が利便性は高いのでしょうが、IoT機器のセキュリティ面を考慮して、まだこの方法を取っています。それでは皆さん、2階へどうぞ。先にこのアプリで部屋のクーラーをオンにしておきましょう。
専用アプリは主に日本語表記(固有名詞などは一部英語)。海外ゲストとのコミュニケーションは、グラフィックをわかりやすくして伝えていく方針をとる
プラットフォーマーに乗らない
茶置 こちらがIoTダブルルームです。ここにある機器はAPIコードが開放してもらっていて自分たちで組み直していますので、複数のデバイスの連携を可能にしています。
複数の機器を手元のスマホアプリで一括操作できる室内。温度や湿度などの環境情報も収集している
ワンプッシュで4つの信号を送れます。例えば、アプリの「ナイトモード」を押すと、鍵がかかり、カーテンが閉まり、エアコンが快眠モードになり、照明が豆電球になる。こうした一連の体験を提供しています。
(上)フィリップス「Philips Hue」(左下)ロビット「mornin’」(右下)キュリオ「Qrio Smart Lock」
小山 部屋の鍵の開閉、鍵管理をアプリ側でできるのは非常に便利ですね。解錠と同時に部屋の中の照明を点けるといったサービスは従来からよく語られるアイディアですが、実際に体験してみると改めて便利なサービスだと感じます。
入室前にエアコンを操作できるのは思いのほか良いですね。一般的なビジネスホテルでは、入室時に熱気がムッとすることがありますし。お客さんが欲しい体験をすぐに用意できているのは、当たり前のようでいながらとても気持ちが良い体験です。
茶置 UIやUXの部分に気を使ってアプリを開発しています。得られる情報は多いに越したことはないのですが、多すぎると使う側が迷ってしまう。部屋のライトは約1,600万色表現できるものの、シーンを6つに切り取っています。体験の本質が下がらないようにするバランスが大事です。
河村 できることが多いと、結局は何もできないと言いますから。お客さんに「この体験をしてほしい」というところに絞り、それを提供することが大事ということですね。
茶置 そうです。これが100%の完成度とは思っていませんので、お客さんの声から改善していきたいですね。
河村 ところで、複数のデバイスに関して、逐次「APIを開放してください」とお願いしていったのは、結構大変だったのではないですか?
茶置 フィリップスは当初からAPIを一般に開放していたと思いますが、駆け出しのベンチャーにAPIを無償で開放する国内メーカーの例はなかなかありませんから、当初ハードルが高かったですね。
IoT機器を入れるごとに個別のアプリが必要になるのはまったくスマートではありません。それらの機器を一元管理できる独自のアプリを開発することは、事業の肝だと考え、APIを組み直してアプリを開発しました。
小山 プラットフォーマーと呼ばれる大手が提供するサービス、例えば、アップルの「HomeKit」や、グーグルの「Google Assistant」系サービス、アマゾンだったら「Alexa」といったものに乗っかって、自前で外側だけつくるようなやり方もあったと思うのですが、あえてそうしなかった理由は何でしょう。
茶置 鍵を開けて部屋に入ると自動的に電気が点く、朝に目が覚めると自然にカーテンが開いて快適な温度に設定されている、といった一連の体験を設計するには、自社でやるのが一番だと思ったんです。
小島 確かに、IoTのデバイスを一番下に据えながら、全体の空間をデザインすることまで自分でやろうとすると、メーカーと直接やり取りするほうができることの枠が広がるかもしれません。
提供する側のメーカーとしても、プラットフォーマーにAPIを開放してしまったほうが楽かもしれませんが、いったんプラットフォームに乗ってしまうと、その仕様に準拠したものしか使えなくなってしまい、空間における制約条件がどうしても増えてしまう。自前でアプリを用意する手段があるのは、ビジネス面で重要だと思います。
建築空間も変えていく
茶置 現在のIoT機器は一般住宅の規格に合わせて設計されていますから、宿泊施設のような場所に使うのはいわば後付けで、少し無理をして設置している部分もあります。特に電源周りは煩雑になりがちで、独自にボックスをつくるなどで対応しています。
私たちが先陣を切って使って導入していけば、建築もIoTとの関係ありきの設計になって、空間も洗練されていくと思うのです。将来、壁の照明スイッチやドアの鍵穴などがない部屋が生まれたら、とてもスマートではないでしょうか。
ボックスには、室内にあるIoT機器へのアクセスポイントの役割を果たす「iRemocon」と「Philips Hue ブリッジ」が設置されている
小島 IoT機器を他の製品と組み合わせる場合、メーカーごと、デバイスごとにまとまってしまっているケースが多いように感じます。この部屋では体験をデザインするために入口からIoTデバイスを組み合わせている印象を持つので、非常に良い刺激を受けます。
翔泳社発行。IoTの基礎知識やセンサ情報の収集、分析、活用までを解説している。 http://www.shoeisha.co.jp/book/detail/9784798140629
スマートホームは実現するか
現実世界をセンシング
茶置 このアプリがカバーするのは、客室内のIoT機器だけではありません。例えば、同じ時間帯に利用者が集中しやすいシャワールームの使用状況をリアルタイムに把握できます。
扉の鍵が「縦方向」か「横方向」かをセンシングするという、単純な仕掛けを施しています。使っているのは電子タグです。
シャワールームの扉の鍵に付けられているのは、ブロック形状をした電子タグのソニー「MESH」。近くに置いたボックスとBluetoothで通信する
河村 電子タグのメンテナンスは充電が必要ですよね。
小島 無線充電ができたら楽ですけれど……。
小山 さすがに、まだ飛ばない。
茶置 現在は1日1回、清掃の時間にコンセントにつなぐという人的なオペレーションでカバーしていますね。シャワールームと同じく、利用者の多いコインランドリーにも電子タグを用いています。こちらは振動をセンシングしています。
洗濯機側面についた「MESH」では振動をセンシング。こちらは外付けのモバイルバッテリーによって給電されている
河村 なるほど。フタが閉まっている状態ではなく、洗濯機の振動を取ることで、利用状況を検知しているんですか。洗濯機は使っていると必ず揺れるからこのほうが精確ですね。洗濯機のような従来の家電に工夫を加えることでIoT機器化しているし、市販デバイスの中からセンサーを選んでいるところに工夫を感じました。
小山 普通はしない電子タグの使い方なので、別の応用法を考える上で参考になります。
河村 実現したいユーザー体験から遡って、デバイスの使い方を考えているのですね。
小島 ユーザーの体験をまずはデザインしてから技術的な実装をするという姿勢には、非常に共感を覚えます。生活をする人と環境の理解をきちんとやったプレイヤーがIoTビジネスの入口に立てるのだろうと思います。
ちなみにデバイスを開発しているメーカーからは、自社の製品を検証したいという要望は受けますか?
茶置 置いて欲しいというご連絡はものすごい数をいただきます。お客さんに体験してもらったフィードバックは、メーカーさんにとってのすごい価値があるのかなと。
私たちは「ファーストマーケットプレイス」と呼んでいますが、IoT製品を使ったゲストがどう考えられたのか、各メーカーにフィードバックさせていただいているんです。
小島 メーカーもIoT機器を検証したくても、最初の生産はロット数が決まっていたりするので、ハードルが高いと思います。検証段階のものをこうした場に置かせてもらえればデータが取れますよね。
河村 われわれも実証実験をやりますが、IoT機器は実際の環境に入れて長期間使わないと、なかなか役立つフィードバックを得られません。不特定多数の人に使ってもらえるなら、なおさら生きたデータが得られますよね。
宿泊施設でさまざまな機器を体験できるのはメーカーだけのメリットではなく、泊まったお客さんもいろいろ試せるから、きっと嬉しいはず。いいな、と思った商品を買って帰れるような仕組みはあり得そうですね。
小山 ホテルのアプリに入れておいて、決済までできると良いかもしれませんね。調度品とかディフューザーとか、自宅の部屋をホテルのようなインテリアで揃えたいという層はいると思うんですね。日本ならではの商品を取り入れたら、インバウンドにも評判が良さそうです。
茶置 1Fのダイニングにある「Amazon Launchpadストア」(※1)ショーケースには、まさにその目的で置いてあります。さまざまなIoT機器の実物が陳列されているのですがQRコードが付いていて、スマホで読み取ったAmazon Launchpadストアの商品販売ページに飛んですぐに買える仕掛けです。
リビングにある「Amazon Launchpadストア」ショーケースでは、宿泊者がIoT機器を自由に手に取って見ることができる(提供:and factory)
小島 宿泊先で「体験を買って帰る」というのは、新しいですね。
茶置 良い言葉なので、そのまま貰ってもいいですか?(笑)。経営面から考えると、そんな新しいビジネスモデルができるといいなと思います。
ハードの開発も視野に
茶置 これからIoTが変えていくのは、従来なら当たり前だったものです。窓や照明、鍵といった各要素もそうですし、ビジネスモデルにしても、人々の生活スタイルにしても、あらゆるところに変化が及ぶと考えています。
小島 IoTを使うと、ユーザー体験に基づく提案がより効率的にできるでしょうね。例えば、睡眠計測系アプリというジャンルがあるのですが、これは人間の眠りが浅いタイミングを計測して起こしてくれるものです。そういうアプリとハードが連動したら気持ちの良い朝が迎えられます。
小山 起床時間になると自動的に起こしてくれるベッドなんて良いかもしれませんね。
茶置 私たちの会社の別の事業では、NTTドコモ、横浜市と連携してスマートハウス(※2)の取り組みが始まっています。これは人の睡眠状況や体調を一元管理してスマートミラーに表示するといった内容です。ただし、まだハードの開発まではしていません。
小島 できそうなアイディアはあっても、APIがまだ公開されていないケースは多そうです。例えば、米国だと家のシャッターを開けるAPIも手に入ります。室温調節もサーモスタットを中央コントロールしていますから、スマートホーム化しやすいのですね。日本の場合は赤外線リモコンを使った機器が多数派ですから一度にIoT化できないのです。
茶置 私たちはこうした場でせっかくIoTとエンドユーザーの接点を設けているので、今後はお付き合いのあるメーカーなどにも声をかけて、商品開発にも挑戦したいと思います。
人情味を感じるテクノロジー
河村 IoTがもたらす未来を考えるとき、まずデバイスが自動的に動いたり、センシングしたりすることで生活が便利になる側面があります。同時に人の生活のデータが取れるので、全体を最適化するとか、データを分析して世の中にフィードバックしていくといった要素が入ってきます。
全体最適化というと、超管理社会やディストピア(反理想郷)のような世界が来ると思われてしまうから、そうならない程度に個人に嬉しいサービスを目指していきたいところです。
小山 これからの若い人にとって「管理社会」というものは、案外普通なのかもしれません。プライバシーと利便性を天秤にかけたとき、便利なほうがいいよね、という感覚がある可能性がある。私たちは個人のデータを取られるというのを警戒しますが、常にスマホで情報を渡している世代の感覚は新しいかもしれません。
一方、IoTで人と人のコミュニケーションを補完できれば非常に良いのですが、どうしても機械が提供するサービスが無機質になってしまう可能性はあるんですよね。インターフェースが人ではないIoTといった仕組みで「人情味」といったものをどう表現できるか。これは「2020年」までのポイントになっていくと思います。
小島 そうしたIoTのサービスを考えるのに、割と日本人は向いているのかなと個人的に感じています。人に気を使う文化、おもてなしをする文化、そういうものがうまくビジネスの中に現れてくると良いですよね。
小島 お母さんが子どもを寝かしつけるときに何気なくするようなことを、サッと環境がやってくれるとか。そういうサービスを思いつくかは文化的なところにもきっと結びついている。それがビジネスの中で発揮されると非常に面白いなという気がします。
茶置 そうですね。「驚き」や「感動」といった心動かされる感覚というのは、
本当にわかりやすく購買といった行動に結びつくはずですから。
小島 2020年、日本を訪れる方たちにテクノロジーを感じてもらいたいという気持ちもありますが、さらに「テクノロジーまでも人を思いやってくれる」という感想を携えて帰っていただいてもらえるといいですね。
NTTドコモ、横浜市、and factoryが共同で取り組む「未来の家プロジェクト」。3者が住宅メーカーやIoT機器メーカーなどの横浜市内の中小企業などと協力し、IoT家電やセンサーなどを実装した「IoTスマートホーム」を用いて実証実験を行い、将来的には、家が居住者の生活状態を把握し、AIを通じて居住者の状態に合わせた快適な室内環境へ自動調節する未来の家の実現を目指している。 http://andfactory.co.jp/press/post-836/
研究開発と手を携えたい
職場環境をIoTで改善
小島 ホステル1Fの共用スペースはどのように使われているのでしょう。
茶置 キッチンは「誰でも使ってください」という感じに開放されていて、そこにアトモフの「Atmoth Window」を壁に掛けているほか、リビングにはスマート自転車用U字ロック「ELLIPSE」、スマートペン「Neo smartpen N2」、スマートなスーツケース「Bluesmart Black Edition」、ウェアラブルカメラ「BLINCAM」があり触れていただけます。共有スペースでは料理パーティーをやることもあります。私もたまに参加しますけど、ゲストに評判が良いですね。
スマートフォンとつながるIoT機器の数々。リビングに流れる音楽も、もちろんIoT対応のオーディオ機器から流れている
アトモフ「Atmoth Window」は世界と繋がるデジタルな窓
小島 その様子をライブ配信したら面白そうですね。防犯カメラでなく宿泊者の了承の下にウェブカメラを用意して、ホテルのホームページや予約サイトに楽しい様子を上げると良いのでは。
茶置 いいですね! 早速、採用させていただこうと思います。
河村 小島さんは4年前に会社のトイレをIoT化したアイディアマンなんですよ。
茶置 それはどういった仕組みなんですか?
小島 トイレの個室に人が入ると、オフィスにあるLEDライトの色が連動して変わるというものです。自分の席で仕事をしながらトイレの混雑状況がわかるから、トイレまで行って無駄足を踏まなくて済むという職場改善の一環です。
その頃、用途に適した既製品のIoTデバイスがなかったので、むき出しの基盤を買ってきて箱から自作しました。職場における実際の人間行動を観察して「ここにボトルネックがある」という困りごとを見つけ、解決策を技術に落とし込むワークでしたから、&AND HOSTELで取り組まれている創意工夫には近いものを感じます。
IoTの普及を阻むものとは
小島 今回はメンバーのうち、私が代表して実際に1泊させていただきました。スマートフォンを介してホテルと繋がっている感覚を強く覚え、サービスが統合されているのを強く実感しました。アプリがスタッフや他の宿泊者とのコミュニケーションツールにも発展させられると、さらにユニークですね。
茶置 ええ。セキュリティ面の課題をクリアできたら、やってみたいことは数多くあります。
小山 宿泊者が自分のスマホにアプリを入れるとセキュリティ的な危険があるという話については、完璧な対策というものはありません。どこまで守り、どこをリスクとして許容といった線引きができて、ちゃんと責任を取れる人がいれば、今からでもその範囲でやれると思うのです。
しかし、その判断ができる人、セキュリティのコンサルティングができる人材がなかなかいません。また、ハードをつくる人はハードをつくることがメインであったので、今までネットワークに繋がっていなかった機器がネットワーク経由で攻撃されたらどうなるといった発想が少ないように思えます。
また、日本ではセキュリティに関して保守的な考え方をしていて「完璧でなければ使わない」という姿勢が大多数ですから、特にこういう新しいことをする場合には大変だと思います。
安全を保証することは難しいし、絶対に脆弱性を突かれないとは言えない。何か起こったときに責任を取る人もいない。それだと難しいです。
茶置 仰る通りで、それができればノーレセプションでもいいという話になりますし。海外だと24時間チェックインというホステルも増えていますね。
あとは、日本の法律的なところも絡んでくるイメージがあります。この施設は簡易宿所営業、つまり旅客業法に適した物件です。その営業許可を取るにあたってこのエリアでは「夜間も常駐の担当者を置いておかなくてはいけない」という規定があるんです。
IoTの技術を使えばレプションを構えなくても大丈夫なんですが、そもそも営業ができなくなる。まだロボットの接客ではダメなんですね。
一同 (笑)
小島 そこは変えないといけないですよね。そうでないと日本は世界から遅れてしまいます。新しい技術に対して問題が起こったら法律をつくるというのが海外だとしたら、日本は法律に書いてあることしかやってはいけないという図式になっている。新しいことをやるのに初めから海外には勝てないようになっているので、国として変えていかなくては。
IoTに接する場を増やしたい
河村 新しい技術やユースケースを、実際にこうして使ってみる場所があるのは、私たちにとっても魅力です。デバイスの耐久性などは、長時間動かして初めてわかるものですから。また、国内の立地でさまざまな国の方に試してもらえるのは貴重だと思いました。
小島 NTTデータではIoTを活用したサービスとして、これまで在宅高齢者の見守りサービスやトイレの利用監視システムなど、さまざまな種類のサービスを開発してきました。どの案件でも実際の現場で技術検証をしながら開発・評価を行っています。
スマートホームなどをテーマに共同で技術検証ができれば、&AND HOSTELは大変魅力的な環境です。実際にその場を見て、体験しないとわからないところも多いですから、こうした現場に私たちのお客さんをお連れして、実際に目で見て、体験をしてもらえるのは価値があると思います。
小山:さまざまな方が宿泊されるので、偏らないデータが収集できる可能性も連携の魅力だと感じます。また先端的な研究開発の実証実験を素早くできそうですし、その一部は&AND HOSTELでも役立つのではないかと思うので、うまく連携できると面白いですね。
茶置 いいですね。例えば、どんなことができそうですか?
小山 社内で取り組んでいるのは、リアルとバーチャルの境目をなくす研究開発です。リアルな世界をセンシングして、その結果を同じくリアルな世界でアクチュエートするのがIoTだとしたら、それをバーチャルの世界にも持ち込むというものです。
例えば、宿泊した部屋の壁一面に自宅が投影されていて、離れた場所でも家族とつながっていたら、まるで新しい体験が得られるのでは。反対に、自宅にいる家族がVRのヘッドセットをかけてセンシングされた&AND HOSTELの客室を仮想的に体験できたら面白いでしょう。
茶置 それはすごい。もはや宿泊という概念も超えそうですね。
小山 物理的な移動と体験は必要ですから、旅行や宿泊というものがなくなるとは思っていません。ただ、リアルとバーチャルの境目を曖昧にすることで、その体験を一人だけではなく、複数の人と共有できる未来が訪れると考えています。
茶置 私たちは来年中に&AND HOSTELを10店舗以上に増やそうと計画しています。お客さんとIoTをつなぐ拠点が増えれば、お客さんがIoTと接する機会も増え、それがIoTの知見になります。一方、データの収集もできますから、そのデータをメーカーにフィードバックできる。そうやってIoTシェアの底上げをどんどん図りたいと考えています。
河村 セキュリティや基盤の強化における仕組みづくりで、NTTデータがお手伝いできるところがあるかもしれませんね。
茶置 今日はビジネスモデルのアイディアから、私たちの社会における今後の課題まで、たくさん貴重なお話を伺えました。どんどん新しいことに挑戦していきますので、また是非いらしてください!