1.成功例から学ぶ大規模アジャイルの体制
アジャイルなプロダクト開発の成功例は少人数に留まる
アジャイルとは、ソフトウェア開発において、ユーザーのフィードバックを柔軟に取り入れながら反復的な開発を行う手法を指します。「ユーザーから何が求められているか」を見極めつつ、頻繁にソフトウェアのリリースや改良を実施することで、ユーザーのニーズに合ったプロダクトへと迅速に到達することが可能です。
ビジネス環境がますます複雑化している中、大規模な組織がアジャイル手法を導入し、柔軟に開発を進めることが成功の鍵となります。
図1:ウォーターフォールとアジャイルの違い
アジャイル1チームでの成功例は数多くありますが、複数のアジャイルチームを抱えて組織化された成功例は多くありません。アジャイルのトライアルやPoCで終わってしまう場合と、それをスケーリングできる場合の差はどこにあるでしょうか。
チーム数が増えるとビジョンの維持や整合性が取りにくい
複数チームが関与するプロジェクトでは、依存関係が増え、調整が難しくなります。多くのチームが関わると、プロダクトのビジョンやゴールが揺らぎやすくなります。複数チームで成功させるには何が必要でしょうか。
図2:複数チームでの整合性の取りにくさ
意思決定を早くする大規模アジャイルフレームワークSAFe
SAFe®は複数のアジャイルチームを持つ大規模な組織でアジャイルを実践するためのフレームワークで、多数のチームを同期させるために独自のイベント、ロールが定められています。
複数チームに跨るイベント
図3:複数チームに跨るイベント
アジャイルチーム単体のイベント
図4:アジャイルチーム単体のイベント
SAFe®を導入することによって、以下の図に記載したようなメリットがあります。
図5:大規模アジャイルのメリット
これらのメリットによって、SAFe®が組織のビジネスアジリティを上げる理由については「トップダウンで実施すべきSAFe®導入によるビジネスの加速」の記事をご参考ください。
大規模アジャイルを取り入れた金融部門の体制例
金融部門において、大規模アジャイルを取り入れる際の具体的な体制例を紹介します。この組織では大規模アジャイルSAFe®の公式研修を受け、メリットやプロセスを理解した上で、下図の通り、複数のアジャイルチームを統合し、Agile Release Trainと呼ばれる新たなチームを形成しました。結果、依存関係の調整速度と開発効率が上がりました。
図6:大規模アジャイルの体制例
SAFe®では、下記の図に記載したようにアジャイルチームの上位ロールが定義されています。
図7:大規模アジャイルのロール
SAFe®の特有のロールとイベントは、Scrumが抱える多くのチーム間での調整や方向性の一致、リリースの管理といった課題を効果的に解決します。また、戦略と予算をプロダクト開発に紐づけることにより、大規模なプロダクトでもアジャイルの原則を適用し、組織全体の一貫性と効率性を保ちながら、ビジネス価値を最大化することが可能となります。
専門性の高いロールやイベントを円滑に実践するためには、相応の労力と時間が求められます。そのため、全体のプロセスを支援するアジャイルコーチと、アジャイルの原則を理解し、実践できる開発者の存在が成功への近道となります。
2.アジャイルコーチ
アジャイルやSAFe®の理念を理解し、実際の組織体制に適用するためには、高度なスキルが求められます。成功事例を分析すると、アジャイルやSAFe®の経験を持つ指導者の存在が重要な要素であることがわかります。
アジャイルコーチは、アジャイルの導入やSAFe®の実装において、現場で指導します。彼らは組織の変革を支援し、プロセスの標準化、チームのエンゲージメントの向上、問題解決、さらには大規模プロジェクトの管理を効果的にサポートします。このような取り組みにより、組織全体がアジャイルの利点を最大限に活かし、ビジネスの成功へとつながります。
アジャイルチームへのサポート内容
図8:アジャイルチームへのサポート内容
大規模アジャイル導入コンサルのサポート内容
図9:大規模アジャイル導入コンサルのサポート内容
3.アジャイル開発人財
なぜAltemista Lab for Agileの施策を始めたのか
「大規模アジャイル開発をスピーディに進めていきたい場合には、「デジタル技術に精通したデジタル人財の数や質の不足」、「プロジェクトを遂行する体制構築に係る手続きの煩雑さ」といった課題が発生しがちです。
このような課題を包括的に解決するためにNTTデータグループではAltemista Labというリソースプールを立ち上げました。
Altemista Lab for Agileは、Altemista Labという枠組みの中でも特にアジャイル開発の領域に特化した施策となります。
Altemista Lab for Agileの取り組み概要
Altemista Lab for Agileではデジタル人財を定常的にプールしたり、個別の案件等での繋がりから人財を調達したりといったハイブリッドな人財調達により、プロジェクトの開始タイミングに合わせてデジタル人財の提供タイミングを柔軟に調整することが可能となっています。
また、基本的にメンバは固定となっているため、他プロジェクトで高めたチームの経験値を維持したまま参画することが可能です。
図10:チームとしての基本的な成長イメージ
Altemista Lab for Agileの活用メリット
Altemista Lab for Agileを活用するメリットとして、以下が挙げられます。
- 1.育成や要員調達にかかるコストを削減して迅速な体制の構築・立ち上げができる
- 2.豊富なデジタル案件とそこに参画する人財がおり、経験が蓄積されていくことで生産性を向上させながらデジタル人財の数を増加させていく
- 3.デジタル人財の体系的育成やアジャイル開発およびその時々の需要に応じた技術スキルの習得により、安定的に一定の品質が担保できる
Altemista Lab for Agileの活用事例
事例1.育成済み人財によるチームの迅速な構築と立ち上げAltemista Lab for Agileでは、アジャイル開発のスキルや経験を持つ育成済みの人財・チームが定常的にプールされているため、プロジェクト内での急なチーム追加や増員、あるいは周辺の他プロジェクトでの要員需要などにも迅速に対応することができます。
A社様では、アジャイル開発の推進に取り組んでいましたが、従来型の開発を中心に行ってきたこともありデジタル人財が不足している状況でした。
そこで、Altemista Lab for Agileを活用することで、アジャイル開発のスキルや経験を持つチームを迅速に構築し、既に育成済みのチームのため立ち上げにもそれほど苦労せずプロジェクトを円滑に推進することができました。
A社様ではその後もチームへの増員や周辺の他プロジェクトへのチーム追加などでAltemista Lab for Agileを活用いただいています。
事例2.チーム間でのノウハウ展開等による生産性の向上やチームの拡大B社様では、事業のDXを進めるため経験豊富なアジャイル人財を多く必要としておりました。
Altemista Lab for Agileでは中心人物となるプロダクトオーナー支援人財を始めとしたアジャイルチームで参画し、高い品質と生産性を発揮しお客様事業の推進に貢献しました。
その後、案件拡大に伴うチーム拡大に向け、信頼感の高いAltemista Lab for Agileでチーム拡充していく意向を受け、参画中のチームと過去に取り組み実績のあるチームを参画させることにより、更なる生産性の向上に成功しました。
この際、当該チームには特別なスキルセットが必要だったのですが、参画中のチームからノウハウを横展開し別チームを育成することでチームの拡大に繋げることができました。
B社様では現在別案件でもAltemista Lab for Agileの活用を検討いただいています。
4.まとめ
本稿では大規模Agileの成功事例を基に体制作りについてご紹介しました。NTT DATAで提供するアジャイルコーチや大規模アジャイル導入コンサルでは、実際のプロジェクトに入りOJT指導を通して、プロセス標準化と現場の問題解決をサポートします。また、Altemista Lab for Agileが提供する経験豊富な開発者が組織全体のアジャイル実装をサポートし、組織やチームのエンゲージメント向上を図ります。
大規模アジャイルフレームワークSAFe®を提供するScaled Agile社のPlatinum Tier Global Transformation Partnerに認定についてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/100301/
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