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1.川崎重工業の暗黙知伝承の取り組みとユーザー変革賞受賞
製造業では、熟練者が長年の経験の中で培ってきた知識やノウハウ(暗黙知)の伝承が大きな課題となっています。特に川崎重工業では、設計業務において数多くの暗黙知が存在し、属人化や生産性低下の要因となっていました。NTTデータは、川崎重工業と共同で、生成AIを活用した設計業務における暗黙知伝承に取り組みました。これは、生成AIを活用して熟練者の暗黙知を抽出し形式知として整理・蓄積し、次世代へ効率的に伝承することを目的としたものです。
この取り組みは、単なる技術活用にとどまらず、現場の業務プロセスやユーザーの行動変容にまで踏み込んだ点が高く評価され、経済産業省主催の生成AIコンテスト「GENIAC-PRIZE」(※)の製造業における暗黙知の形式知化分野で「ユーザー変革賞」を受賞しました。
図1:受賞式の様子
技術のバトンをつなげ!製造業の暗黙知伝承の最前線
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2025/1205/
2.AIエージェントが暗黙知伝承を支援する「暗黙知伝承システム」
本取り組みでは、NTTデータの「暗黙知伝承システム」を活用し、熟練者の暗黙知を形式知化して若手に伝承する取り組みを行いました。
「暗黙知伝承システム」は、熟練者の暗黙知をAIによって引き出し、若手へ伝承するまでのプロセスを一貫して支援します。具体的には、以下の2つのAIエージェントで構成されています。
- インタビューエージェント:熟練者に対する対話型インタビューを通じて、暗黙知を引き出し・整理
- チューターエージェント:引き出された知見を基に、若手からの質問に対して回答
これにより、従来は属人的であった暗黙知の伝承プロセスを体系化し、効率的かつ継続的な知識伝承を実現します。
図2:暗黙知伝承システムの概要
3.AIエージェントで暗黙知を“引き出す”ための設計のポイント
「暗黙知伝承システム」のインタビューエージェントおよびチューターエージェントにはさまざまな技術的工夫を施しました。本稿では、特にインタビューエージェントで熟練者の暗黙知を引き出すために行った代表的な2つの工夫を紹介します。
業務の認識合わせを行う質問設計
熟練者に対して、経験や勘に基づくノウハウ(暗黙知)について、いきなり詳細な回答を求めると、考えをその場で整理しきれず、内容が断片的で曖昧になってしまうという課題がありました。
インタビューエージェントでは、この課題に対し、まず業務の基本的な内容に関する質問から開始し、段階的に深い問いへと展開する設計としています。これにより、熟練者の思考を自然に引き出し、暗黙知の言語化を促進します。さらに、初期段階でエージェントと熟練者の間で用語や業務理解の認識をすり合わせることで、不適切な前提に基づく質問生成を防ぎ、インタビュー全体の精度向上を実現しています。
想定回答の提示による回答支援
熟練者はインタビューエージェトからの質問に対して、「どの程度の粒度で回答すべきか」が分からず、回答に迷うという課題がありました。
そこで、各質問に対して回答例(想定回答)をあらかじめ提示することで、求められる回答の粒度や観点を明確化しました。これにより、熟練者は迷うことなく、自身の知識を適切な粒度で表現できるようになります。
これらの工夫により、従来は言語化が困難であった熟練者の暗黙知を、自然な対話の中で引き出し、形式知として蓄積することが可能となりました。
図3:インタビューエージェントの質問設計と回答支援のイメージ
「ユーザー変革賞」の受賞においては、単なるAI技術の適用にとどまらず、手戻りの多かったレビュー回数の大幅な削減や、若手の生産性向上、ならびに熟練者による若手フォローの負荷軽減が見込まれる点が評価されました。
NTTデータは今後も、「LITRON®」ブランドを起点として、お客さまのAIエージェント活用、業務変革、および持続的な価値創出に貢献していきます。
4.生成AI活用によるインタビュー形式での暗黙知伝承に興味がある方へ
本稿では、NTTデータが取り組む生成AIを活用したインタビュー形式による暗黙知伝承のPoC事例をご紹介しました。NTTデータのソリューション事業本部では、生成AIを活用し、お客さまの暗黙知伝承を推進しています。社内の暗黙知伝承が進まないなどお悩みの方や、本稿でご紹介した取り組みにご関心をお持ちの方は、ぜひお声掛けください。


LITRON®のサービスラインナップについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/litron/
「GENIAC-PRIZE」製造業の暗黙知形式知化において「ユーザー変革賞」を受賞につてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/evaluation/2026/041700/
NTTデータの生成AIサービスにつてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/generative-ai/
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