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15万時間の業務削減を目指す横浜銀行の生産性向上戦略
横浜銀行では、2025年度からの3年間を「未来への飛躍につなげる3年間」として、中期経営計画において「Growth(成長)」「Empowerment(強化)」「Sustainability(持続性)」の3つを基本テーマに掲げています。この中の「Empowerment」を構成する重点戦略の一つとして位置づけられているのが、「生産性向上」です。同行は生産性改革により、お客さまと向き合う時間を創出し、中長期的に顧客利便性の高い金融サービスを提供できる体制の構築を目指しています。
図1:横浜フィナンシャルグループ 中期経営計画の概要
図2:横浜フィナンシャルグループ 中期経営計画 - 生産性向上の実現に向けてIT部門が担う役割
同行が掲げる「生産性改革4つのポイント」のうち、「AI活用による業務効率化」と「データベースの有効活用」の2点をIT部門が主導する役割を担っています。

株式会社 横浜銀行 ITソリューション部 副部長
岩崎 秀紀 氏
横浜銀行 ITソリューション部 副部長の岩崎 秀紀 氏は、「本部では依然として紙の報告業務や、手作業によるエクセル作業、いわゆる“Excelのバケツリレー”が根強く残っている。データやAI活用により各部門の業務効率化を図り、本部や事務の人員をスリム化し、営業人員を拡充することで、お客さまと向き合う時間を最大化することを目指している。具体的に3年間で15万時間の業務削減をKPIとして定め、実現に向けて取り組んでいる」と、変革への意志を語ります。
この目標を支えるのが、分析環境やガバナンスを整える”基盤整備”と、経営課題を解決する”利活用推進”を並行して進める戦略です。”基盤整備”では利便性の高い分析環境の構築、データガバナンスの整備、各部門が自走できる人材育成に取り組んでいます。”利活用推進”においては、効果の大きいテーマを戦略的に選定し、各部門がBI/AIを実務で使いこなせるよう、コンサル型の伴走支援を行うことが、成果を生むための大きな鍵となっています。
岩崎 氏はこの戦略のポイントについて、「“基盤整備”と“利活用推進”はどちらが先というものではなく、相互に連携しながら両者を一体的に推進することが重要だ。」と語ります。
Snowflake活用によるデータ活用基盤の高度化
“基盤整備”において同行は、あらゆる情報を徹底的にデータ化し、常に1つのデータソースへ集約することでデータフローと業務フローの双方を“清流化”し、データに基づく高度な業務運営を可能にすることを目指しています。
その実現に向けた取り組みの一つとして、2026年1月、次期統合データベースの稼働を開始しました。Snowflake AIデータクラウドを採用したこの新基盤は、MEJAR共同利用5行が同一基盤上で利用する、極めて大規模なものです。
岩崎 氏は「40以上のサブシステム、18,000件以上の検索定義を移行するという難易度の高いプロジェクトであったが、IT部門が主体となりNTTデータ社の支援のもと無事完遂した。」と振り返ります。今回のシステム更改により、“収集データの拡充”、“災害時の業務継続性向上”、“データ利活用の高度化とAI活用に向けた基盤整備”を実現し、データドリブンな経営判断やお客さま向けサービスの高度化の推進をさらに加速していきます。
図3:Snowflakeを採用した統合データベース
利活用推進事例(1):LTV算出業務を82.5%削減
“利活用推進”の取り組みにおいて、データ・AI活用による3年間で15万時間の業務量削減というKPI達成のため、業務部門ごとに工数を精査し、効果の大きいテーマから優先的に業務効率化に着手しています。
岩崎 氏は利活用推進のポイントについて「業務部門のコミットメントが不可欠であると考え、業務部門とIT部門が一体となって推進している。また、進捗(しんちょく)状況について経営層を含む会議体で報告し、経営層を巻き込んだモニタリング体制とすることで、双方のコミットメントを高める仕組みとしている」と語ります。
特に大きな成果をあげたテーマの一つが、リスク管理部におけるLTV(Loan To Value:不動産担保に対する貸出金の割合)算出業務の自動化です。四半期に一度行われる従来のLTV算出業務は、複数のシステムから抽出した情報を手作業でつなぎ合わせる、いわゆる「Excelバケツリレー」が常態化していました。

株式会社 横浜銀行 ITソリューション部
鷲見 達也 氏
横浜銀行 ITソリューション部の鷲見 達也 氏は、当時の課題を「データの加工だけでなく、CRMや稟議(りんぎ)書の内容を目で見て判断する工程が存在するなど、業務フローや作業の複雑化により担当者の業務が属人化していた」と振り返ります。非効率なフローは作業者の負担を増大させ、オペミスを誘発するだけでなく、担当者の異動が業務継続のリスクになる懸念もありました。
この困難な状況に対し、不足データは“創って集め”、システムに“眠るデータは新たに活用”し、データの収集と効率的な活用に取り組みました。不足データを“創って集める”ためには、現場での入力作業が必要でしたが、入力負荷と誤入力・表記ゆれを最小限にするため、入力インターフェースを工夫し、実装しました。またシステムに“眠るデータを新たに活用”するために、セルフETLツールにより、抽出しにくい環境のデータを現場担当者が活用可能な形で収集しました。これらのデータについて、BIツールで効率的に処理をすることで、業務効率化を図るとともに高度なデータハンドリングによりデータの価値を最大化させました。
鷲見 氏は、この取り組みのポイントについて「実装部隊が業務理解を深め、要件定義から参画することで担当者とのコミュニケーションコストが下げられ、案件を進める中で発生するさまざまな要件にも柔軟に対応することができた」と語ります。

NTTデータ 第二金融事業本部
佐々木 唯
この取り組みを支援していたNTTデータの佐々木唯は「“暗黙知”に頼った運用となっている部分や、目検に委ねられている作業が多く、業務フローや目検する際の「判断」の軸を引き出して言語化し、公平性・正確性を担保しながら、実装要件として整理していく工程に苦労したが、その工程のなかで現場担当者との関係構築ができたことが、柔軟かつ迅速な対応につながった」と振り返ります。
その結果、年間1,640時間を要していた業務は287時間へと激減。既存業務の82.5%削減という大きな定量効果に加え、定性効果も得られました。鷲見 氏は「手作業によるミスの防止はもちろん、属人的だった判断ルールをシステム化したことで、担当者が入れ替わっても品質を担保できる体制が整った」と語ります。
図4:LTV算出業務の効率化効果
利活用推進事例(2):生成AI・BI活用でM&A選定業務を60%以上削減
二つ目の事例は、ソリューション営業部におけるM&A買い手選定業務の効率化です。ここでも資料作成工数を62%削減、選定作業工数を66%削減するという高い成果が得られています。
M&A業務では、決算書や契約書などの多岐にわたるPDF資料(非構造データ)を目視で確認し、1社あたり30ページ前後の提案資料(IM:インフォメーションメモランダム)を作成する必要があり、非常に多くの時間がかかっていました。また企業選定のプロセスでもさまざまなデータを参照する必要があり、判断軸が過去の経験や既存の観点に偏りやすいといった課題がありました。
IM資料作成作業の課題に対しては、生成AI(Gemini)を活用してPDFから財務・非財務情報を自動抽出し、後続業務で活用する業務プロセスの改善に取り組みました。これにより、それまで手作業で行っていた目検や入力作業が簡略化でき、資料作成時間の62%削減という効果を創出しました。
また、企業選定プロセスにおける課題については、複数条件で絞り込みが可能な「買い手先候補検索ダッシュボード」の構築に取り組みました。売り上げ・資本金・地域・業種などさまざまな条件で企業候補を検索すると同時に該当企業の財務状況や特徴が可視化される構成としました。これにより選定作業における工数の66%削減を実現したほか、これまで分散していた情報を一元的に参照しながら比較検討ができるようになったことで担当者の経験に頼らない「多角的な分析とマッチング精度の向上」を実現しました。
図5:M&A選定業務効率化効果

NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部
布川 遼太郎
この取り組みを支援したNTTデータの布川遼太郎は「作業内容や参照するデータソースによって、最適なツールを使い分けることの重要性を改めて認識した。ツール選定にあたっては、社内の有識者やお客さまの業務担当者、プロジェクトメンバー間で議論を重ね、さらにソリューション営業部ともAs-Is/To-Beの業務プロセスを突き合わせながら検討を進めたことで、テーマごとに最適な手法で取り組むことができたと考えている。」と振り返ります。
また、布川 氏は大きな効果が創出されたポイントを「業務を理解した上で、仮説ベースで業務フローを作成してからヒアリングに臨んだこと、現場担当者との議論やフィードバックをもとに改善を繰り返し行ったこと」と語ります。

NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部
坂本 鮎美
本ウェビナーのファシリテーターをつとめたNTTデータの坂本鮎美は、今回の取り組みを、こう振り返ります。「どちらの事例においても、IT部門が業務の『中』に深く入り込み、現場の行員様と同じ目線で実務レベルの課題を一つひとつ解決していく。その徹底した姿勢こそが、単なるシステム導入に留まらない、真に『現場で使い続けられる仕組み』を生んだ最大の要因だと感じました。」
持続的な生産性向上に向けた展望
横浜銀行の変革は、一過性のプロジェクトではありません。同行は今後、さらなる生産性向上に向けて以下の3点を軸に据えた展望を描いています。
- AI・BI活用の段階的拡大:徹底した業務分析を前提に、業務自体をデジタルに最適化する変革を継続
- 人材育成の強化:自走できる組織を目指し、3年間で「データエバンジェリスト」を30名程度まで育成・配置
- データ品質・ガバナンスの継続強化:ガバナンスを効かせた上で、セルフETLやBIが同じデータソースを参照して業務が回る状態をつくることで、再現性の高い効率化と品質向上の両立を実現
最後に岩崎 氏は、「データ・AIの利活用による抜本的な業務改革を通じて、持続的な生産性向上を実現していきたい。」と語り、本ウェビナーを締めくくりました。
NTTデータはこれからも横浜銀行の変革を支えていきます。


Tableauについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/tableau/
統合DB更改に関するリリースについてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2026/012901/
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