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2026.5.15事例

「学んで終わり」にしない実践型育成で、データ活用人材を組織に根づかせる

東邦ガスが挑むデータ活用人材育成プログラム

東邦ガスは、各事業部門が自律的にデータ利活用を推進できる組織体制の構築をめざしている。その実現に向けた取り組みの中核として、「データ活用人材育成プログラム」が2025年度に本格始動した。

同プログラム最大の特長は、汎用(はんよう)的な座学やツールの操作研修ではなく、受講者自身の業務課題とデータを用いた実践型の育成にある。その設計から実施までを強力に伴走支援したのがNTTデータだ。第1期の受講を終えた現場担当者は、10か月のプログラムを通じてどのような変化を遂げたのか。推進者、受講者、そして伴走者のリアルな声から、組織変革の第一歩となる10か月の軌跡を紐解く。

目次

忙しい現場に向けた教育で終わらない、実データを用いた実践的なアプローチ

東海エリアを地盤に、都市ガスや電気などのエネルギーインフラを支える総合エネルギー企業・東邦ガス。近年、同社は従来のエネルギー供給にとどまらず、会員サイト「Club TOHOGAS」の運営をはじめ、光回線、ハウスクリーニングなど、お客さまのくらしに寄り添う多様な生活関連サービスへと事業領域を拡大している。

東邦ガス株式会社 DX推進部 DX第二グループ
梅村 勘太 氏

インフラ事業特有の長期的で限られた顧客接点から脱却し、多様なサービスを通じて日常的な顧客接点をいかに創出していくか。新規事業を成長させるうえで、同社が急務としているのが、データに基づく深い顧客理解とビジネス創出である。

DX推進部で全社のデータ利活用とAI導入を牽引(けんいん)する梅村氏は、プログラム始動前の社内の状況と課題を次のように振り返る。

「全社的なDXを進めるうえでは、我々のような専門部署だけでなく、各事業部門の現場にデータ分析を広める必要があります。しかし、現場からは『やってみたいことはあるけれど、通常業務が忙しく、データ分析にまで手が回らない』という声が上がっていました」(梅村 氏)

NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 インダストリセールス事業部 課長
蟹江 教佳

「これまでデータ分析は専門組織が実施してきましたが、全社に広める上では要員体制に限界があります。加えて、実際の業務内容を最もよく知るのは現場の担当者であり、彼らが自らデータ分析を回せるようにならなければ、全社的にデータ分析を広めることは難しいと感じています。しかし、社内での教育はインプット中心になってしまい、多忙な現場の自走を促すような実践的な仕組みづくりが急務となっていました。」

こうした課題に対し、最適なソリューションを提示したのがNTTデータだ。テクノロジーコンサルティング事業本部の蟹江はこう振り返る。

「東邦ガス様が求めていたのは、単なる『ツールのプロ』を育成することではありませんでした。我々もその方針に深く共感し、重視したのは、ツールの使い方を学びながら、実際の業務を改善して成果を出してもらうことでした。そのため、忙しい現場では形骸化しやすいe-learningの比重を下げ、自社の生データを用いた課題解決に直結する伴走支援を提案しました」(蟹江)

人材像の定義から伴走支援まで--プログラム成功の3つのポイント

東邦ガスが、数ある企業のなかからNTTデータを選定した最大の決め手は、「ガスの需要データや自社の顧客データ等を使った業務に活用できる教育を行いたい」という要望に対する柔軟な対応力と、システム子会社である東邦ガス情報システムへのAI導入支援などを通じて感じられていたAIパートナーとしての信頼だった。

NTTデータ側でプログラム設計に携わった加藤は、成功に向けた具体的なポイントを3つ挙げる。

第1のポイントは、東邦ガスに合わせたデータサイエンティストの人材像を定義したことだ。

NTTデータ ソリューション事業本部 デジタルサクセスソリューション事業部 AI&データアナリティクス統括部 主任
加藤 颯

「データサイエンスの領域は非常に広範ですが、すべてを画一的に学ぶことがゴールではありません。東邦ガスの実際の業務やビジネス課題に直結するスキルを最優先で習得できるようカリキュラムを最適化し、受講者の方が何を学ぶべきかを明確にしました」(加藤)

第2のポイントは、その定義に合わせた学習コンテンツを用意したことだ。一般的な教材をそのまま渡すのではなく、受講者の業務やデータに即したコンテンツにチューニングしたことで、自身の業務への適用をイメージしやすくしたという。

そして第3のポイント、加藤が「一番大事だった」と強調するのが、伴走支援のもとで受講者自身が実際の業務データを使ってデータ分析に取り組んだことだ。「勉強して終わりではなく、学んだことを実践する場を用意し、業務特有のハードルが生じる場面では当社の専門家がサポートしました。ただし主体はあくまで受講者の方々です。自社の業務課題とデータを使って分析することで、成功体験を積んでいただけたのだと思います」と考察する。

現場の課題を自らの手で解決する--受講者が語るプログラムのリアル

ここからは、顧客接点の最前線でデータ活用に挑んだ2名の受講者の取り組みを具体的に紹介したい。

散在するデータと我流分析からの脱却、そしてAI分析の“肌感”獲得へ

会員サイト「Club TOHOGAS」の運営やキャンペーン企画を担当する業務部門の金丸氏は、実務のなかでジレンマを抱えていた。Club TOHOGASには、膨大なデータが蓄積されているものの、体系的に整理されていないデータもあり、施策を分析・立案したい際にデータを活用しにくい状態になっていた。

「これまでは、分析したいデータがあるたびに別々のテーブルから都度探して集めなければならず、膨大な工数がかかっていました。また、『この数字が増加したから良いだろう』という我流の比較分析にとどまっており、本当にこの方法が正しいのかという不安も常にありました」(金丸 氏)

東邦ガス株式会社 営業計画部 DX推進グループ
金丸 拓海 氏

10か月のプログラムで金丸氏が取り組んだのは、顧客のサイト訪問履歴やキャンペーン参加履歴などを横断的に紐づけた包括的なデータベースの構築だ。自部署で重視する指標についてはあらかじめフラグ処理を施し、都度データを探さなくても即座に可視化できる仕組みを整えた。

ただし、道のりは平坦ではなかった。特に苦労したのが、BIツール「Tableau」とAIプラットフォーム「DataRobot」という2つのツールの特性の違いへの対応だ。

「Tableauでの可視化とDataRobotでのAI予測では、データの持ち方が違います。最初はTableauのデータをそのままDataRobotに読み込ませようとしたのですが、予測阻害情報が混入するターゲットリーケージなどのトラブルが頻発しました」(金丸 氏)

こうした壁を乗り越える支えとなったのが、NTTデータの伴走支援だった。「担当の方には、一般的なツールの解説にとどまらず、『東邦ガスのデータに置き換えると、こういう現象が起きていますよ』と翻訳して伝えてもらえました。トラブルの原因と解決のプロセスを1つひとつ共有してもらうことで、データに対する専門家の“肌感”に自分を近づけられたと感じています」と金丸氏は語る。

プログラムを終えた今、金丸氏はTableauで多彩なグラフを自在に作成できるようになり、報告作業の時間を大幅に削減。自部署のニーズに沿った可視化も実現し、「自信を持って伝えられることが増えた」と手応えを口にする。

今回は過去の実績に焦点を置いた分析が中心となったが、今後は予測をもとにしたキャンペーン施策の発案など、より高度な取り組みへの発展をめざすという。

「分析に活用できなかったアンケート」から得た学びと逆算思考

一方、光回線やハウスクリーニング、ECサイトなどガス・電気以外の新領域を担当する和佐田氏も、長年の課題解決に向けて本プログラムに飛び込んだ。

プログラム参加前の課題は、マーケティングのパーソナライズができていないことだった。

「従来は多数の会員に対して一律のプロモーションを行っている状態でした。しかしこれでは興味のない人にも情報が届きますし、購買につながりません。お客さま一人ひとりに寄り添ったサービスをお届けするための詳細な分析ができていませんでした」(和佐田 氏)

東邦ガス株式会社 営業計画部 新商材開発グループ
和佐田 祐太 氏

和佐田氏はプログラムのなかで、ハウスクリーニングサービスの購買者分析に取り組んだ。購買履歴に顧客の基本属性やアンケート情報などのデータを紐づけ、DataRobotで特徴量を抽出。顧客理解の解像度を上げたモデルの構築をめざした。

その過程で壁となったのが、アンケートデータの品質だった。和佐田氏が、「これまで取っていたアンケートを、分析したところ、実は特徴量としてほとんど意味をなさないことがわかったのです。どの項目も似たような回答傾向になっており、上手く活用できるものではありませんでした」と説明する。

ただし、この気づき自体がプログラムの大きな成果の1つといえる。NTTデータの伴走支援において、「アンケートが分析に活用できないとわかったこと自体がポジティブな成果」というフィードバックを受けたことで、和佐田氏は前向きに試行錯誤を続けられたという。

「自分一人で分析していたら、『じゃあ、このデータは全部いらない』と投げ出していたかもしれません。しかし、NTTデータの担当の方から『こういう見方をすればいい』『この指標は残し、別の情報を足してみよう』と的確なアドバイスをもらえました。専門家の知見を借りながら、出てきたデータをどう評価すべきかを学べたのは非常に大きかったです」(和佐田 氏)

現在は、分析結果をもとにしたアプローチリストの作成に成功し、直近の施策へとつなげている。和佐田氏はこの経験を通じて、「目的から逆算して必要なデータを考える力」が身についたと語る。さらに、上司に対してもデータの裏付けをもって「なぜこれをやるべきか」を堂々と説明できるようになり、業務の推進力が大きく向上したという。

モチベーションを最後まで維持する伴走支援の工夫

今回のプログラムでは、NTTデータのデータサイエンティストである小林ともう1名の担当者で、計8テーマの伴走支援を行った。定例的なミーティングに加え、チャットツールなどで日常的にコミュニケーションを取った。

小林がプロジェクトリーダーとして最も心がけていたのは、受講者のモチベーション維持だったという。

「第1期ということもあり、育成モデルをしっかり確立させたいという思いがありました。現場の方々は通常業務が多忙なため、途中でモチベーションが下がり、ドロップアウトしてしまうリスクが常にあります。今回は全員が最後までやり抜き、ポジティブな気持ちで終われるようにしたいと考えていました」(小林)

NTTデータ ソリューション事業本部 デジタルサクセスソリューション事業部 AI&データアナリティクス統括部 シニア・エキスパート
小林 未歩

そのために小林が徹底したのが、「小さなステップアップの言語化」だ。受講者が壁にぶつかったとき--たとえばアンケートデータが分析に使えないとわかったとき--、それを「失敗」ではなく「分析に活用できないデータだとわかったこと自体がポジティブな成果だ」と即座にフィードバックする。些細なことでも、一つひとつ前に進んでいることを言葉にして伝えることを共通方針としていた。

結果として、プログラムの最後に行われた成果発表会は、非常にポジティブな熱気に包まれたという。「データ分析の経験がなく、最初は不安だったが、ここまでできるようになり、次はこうした取り組みにも挑戦していきたい」といった声も聞かれた。和佐田氏も「他部署の課題やデータの使い方を知り、部署間の連携の可能性を感じてとてもワクワクした」と語るように、個人のスキルアップにとどまらず、組織の縦割りを打ち破るきっかけともなった。

成果発表会の参加メンバーによる集合写真

先駆者の経験を次へつなぎ、全社に広げる

今後の展望として、梅村氏が重視するのは「継続」と「発信」だ。

「今後は、今回得られたノウハウや現場のリアルな苦労・成功体験を地道に社内へ発信し、現場でもデータ分析を自走できる人材を継続的に増やしていきます。さらに、受講者同士の横のつながりを生むコミュニティー形成も進め、全社的なデータ利活用の成熟度を高めていきたいと考えています」(梅村 氏)

小林は、今後の育成の広がりについてこう展望する。

「育成モデルが確立し、次は受講者の数を拡大していくフェーズです。一人で始めたテーマが2~3人のチームに広がり、小さなプロジェクトになっていく。部署内で仲間が増え、口コミが広がり、やがてシティズンデータサイエンティストの輪が全社に展開されていく--そうした未来像をめざしています」(小林)

現場のリアルな課題に寄り添い、実データを用いた伴走支援によって見事なブレイクスルーを果たした東邦ガス。顧客の暮らしを豊かにする多様なサービス展開と連動し、NTTデータという心強いパートナーとともに、同社のデータドリブンな組織への変革は今まさに確かな一歩を踏み出した。

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