1.人間とロボットが協働する必要性
人間とロボットとの協働は、現代社会の課題解決や未来の社会構築に不可欠な要素です。高齢化や人口減少により、世界的に労働力不足が深刻化しており、特に生産工程における単純作業や社会インフラを維持するメンテナンス作業などにロボットを活用し、産業の持続可能性を確保することが求められています。また、人間が持つ創造性や判断力と、ロボットの正確性やスピードを組み合わせることで、飛躍的な生産性の向上も期待されています。
デンソーでロボットを活用した社会課題解決に取り組んでいる馬場 裕康 氏は以下のように語ります。
「労働力不足と生産性向上を同時達成する一つの解決策が、知能化ロボットを活用した人間との協働です。人間とロボットの協働は、生産性向上や安全性の確保、単純作業の自動化によって人間の負担を軽減し、人間がより創造的で高度な活動に集中できる環境をつくるために必要です。また、ロボットが人間の能力を補完することで、多様な課題解決が可能になります」(馬場 氏)

写真1:デンソー 社会イノベーション事業開発統括部 先進自動化開発課 馬場 裕康 氏(右)、NTTデータグループ 技術革新統括本部 Innovation技術部 田端 佑介(左)、Raúl Bezares Pino(中央)
2.小売販売業務で進める人間・ロボット・システムの連携
デンソーとNTT DATAは、2024年6月13日に締結したソフトウェア領域での包括提携(※1)のもと、「社会課題解決への共同取り組み」を進めています。そのテーマの一つが「人間とロボットの協働」です。
「人間とロボットの協働」では、従来のような決まった動作をするロボットの活用とは違い、人間・ロボット・システムが連携し、周辺環境の変化に応じて人間とロボットが最適な分担やスケジュールで作業を行うことをめざします。具体的には、システム上で商品の売れ行き状況を見える化し、人間やロボットがシステムにアクセスして情報を入手し、作業を行います。現在、小売販売業務をファーストユースケースとして実証を進めています。
NTT DATAの田端佑介は、この取り組みの意義について次のように語ります。
「人間が判断せずともロボットが現場の状況に合わせて作業を行えるようになれば、人間は業務における判断の煩わしさから解放されます。そうなれば、人間とロボットの作業分担を最適化することによるコストの最小化だけでなく、商品の売れ行き状況に応じた商品陳列と品出し計画の実施による機会損失の最小化、さらには、マーケティングや仕入れ計画の実施による売上の最大化などの効果も期待されます」(田端)
3.ロボットとモノ管理システムとの連携がもたらす新たな価値
今回の実証では、「ロボット」と「モノ管理システム」の2つを開発。「ロボット」と「モノ管理システム」、「人間」が連携して商品の陳列を行いました。NTT DATAはソフトウェア領域、デンソーはハードウェア領域を担当しています。
図1:人間・ロボット・システムの連携
NTT DATAのRaúl Bezares Pinoは、モノ管理システムについて次のように語ります。
「モノ管理システムが、カメラ(監視カメラやロボットのカメラ)などのセンサーによって商品の在庫量と混雑度(店内の客数)を把握し、在庫量がない場合に品出しの指示を行います。この時、人間とロボットのどちらに品出しの指示を出すかは、店内の混在度に応じて変わります。混雑度が高い場合は人間に、低い場合はロボットと人間の両方に指示を出すのです」(Raúl)
図2:混雑度と在庫量に応じたスケジューリングのイメージ
モノ管理システムは、商品の在庫状況から人間とロボットのスケジュールを算出し、人間とロボットに共有します。ロボットに対しては、指示PCを通じてスケジュールを送信。人間に対しては、タブレットへスケジュール情報を表示し、人間はその情報を確認し作業実施の参考にします(図3)。
図3:モノ管理システムのスケジューリング結果(一例)
図3について説明します。マトリックスの色分けは、商品の在庫量を示します。在庫がある場合は商品の種類に応じて色分けしており、在庫がない場合は黒色で表示しています。丸は作業を示します。ロボットがすべき作業はピンクの丸、人間がすべき作業は緑の丸とし、さらに、商品を前に出す作業は矢印を表示しています。モノ管理システムでは、人間が全て作業した場合と、ロボットと人間が協働した場合で作業時間がどれほど短縮されたかも確認することができます。
図4:スケジューリングの効果(一例)
図5:システムの使い方
4.今後の展開と期待
モノ管理システムが店舗のすべての状況を把握し、その情報をもとに人間とロボットへ作業指示を出せるようになれば、在庫量や混雑状況に合わせて、人間とロボットの協働を最適化することができます。人間がレジ対応をしている間に作業指示を受けても、ロボットへヘルプを出し作業を進めることも可能です。店舗経営の観点でも、業務を最適化することで機会損失を低減させ利益を最大化できるほか、労働力の確保も容易になります。さらに、複数拠点の店舗での業務負荷を見える化できれば、拠点間バランスを図ることも可能になるでしょう。

写真2:店頭で動くロボットアームと従業員用タブレット
汎用型ロボットは、AIやIoTとの連携を通じて動作効率が向上し、多くの産業で利用が加速しています。今後、人とロボットの協働はさまざまな分野で浸透し、技術進化とともに新しい価値創造が進むと考えられます。制御技術、安全性、電源供給、センシング技術などの技術的障壁を解決することで、ロボットがより高度な知能を獲得し、人とロボットがよりスムーズに協働できる道が開かれます。デンソーとNTT DATAは汎用型ロボットとシステムの開発を進め、ロボットと人間の協働を推進し、労働力不足など世界的な社会課題の解決に貢献していきます。

写真3:作業中のロボットアーム


IOWN APNを活用した遠隔操作型ロボットによる工場設備点検を検証についてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2024/122000/
車室内の快適で安全な音環境の実現に資するPSZ能動騒音抑圧技術と所望音通過技術についてはこちら:
https://www.rd.ntt/research/JN202404_25738.html
ロボット活用による現場業務変革サービスを提供開始についてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2023/122101/
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