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2026.2.16事例

JX金属はいかにしてデータ解析の文化を醸成できたのか

エンタープライズAIプラットフォームDataRobotを用いた現場定着と効果創出

データ解析を現場の課題解決や企業全体の価値創出、ビジネス加速に活用しようという動きは多くの企業で見られる。ただ、従来のデータ解析は専門的な知識やスキルが求められ、誰もが簡単に行えるわけではなかった。先端材料の製造・販売・開発を事業の柱とするJX金属は、そうした知識や技術がなくてもデータ解析を実現できるエンタープライズAIプラットフォーム「DataRobot」を導入。現場で数々の成果を生み出したうえ、データ解析を基にアクションを決定する企業文化の醸成も進み始めている。
目次

DataRobotとの出合いがデータ解析浸透の契機に

JX金属の事業は、「フォーカス事業」と「ベース事業」に分かれている。フォーカス事業は成長戦略のコアと位置づけ、半導体材料やスマートフォンに用いる情報通信材料などによって企業価値向上に注力する。ベース事業は、銅・レアメタルといった基礎材料の安定調達・供給に向けて収益の上がる体質を築き、フォーカス事業を支える。

同社ではこの両事業の成長・発展に向けてデータを活用しようという動きが以前からあったという。先端材料事業本部技術部と磯原工場生産性革新部を兼任する主任技師として、主にシミュレーションによる製造プロセスの課題解決支援を担当する森岡 理 氏は次のように説明する。

JX金属 先端材料事業本部 技術部 兼 磯原工場生産性革新部 主任技師
森岡 理 氏

「データ解析の機運は高まっていたものの、導入していたツールが統計に詳しい人でないと使いづらく、知識のない現場社員がすぐ使えるものではなかったのが問題で、全社浸透はなかなか難しい状況でした」(森岡 氏)

そこで現場でも手軽に利用できるデータ解析ツールを探していたところ、2018年、NTTデータが提供するDataRobotに出合う。「人間の手では1つ2つ程度ならできるかもしれませんが、DataRobotは同時に5つ、6つのモデルを混ぜて最適解を出してくれるので、現場社員もすぐに使えると考え、導入に動きました」と森岡 氏は語る。

NTTデータ ソリューション事業本部 デジタルサクセスソリューション事業部 課長
近藤 立志

この導入時からサポートしてきたNTTデータ ソリューション事業本部の近藤 立志は「現場社員のデータ解析ツール活用が難しいという課題を聞いていたことから、当時はまだ一般的ではなかったWeb会議ツールを通じて、具体的な課題を把握するためのヒアリングを実施した後、工場の現場に導入いただきました。導入開始から最初の一カ月で、ハンズオンや実課題での取り組み支援を進めました」と話す。サポートにあたっては「やはり実際の業務で使えることが大事なので、ツール自体を触ることはもちろん、DataRobotを活用してどのような業務課題を解決していきたいのか、そのすり合わせに時間をかけた記憶があります」と振り返る。

現場で動き始めたチャレンジとデータ解析自走のスタート

その導入から7年、JX金属では多彩な取り組みが進んできた。導入開始後、まずは本社と磯原工場(茨城県)、倉見工場(神奈川県)の3つのアカウントを作成し、活用が広がっていった。その磯原工場で当時製造部長を務め、現在は先端材料事業本部技術部の副部長としてデータ解析未導入拠点に展開を進める役割を担う髙橋 一成 氏が、磯原工場における取り組みを解説する。

JX金属 先端材料事業本部 技術部 副部長
髙橋 一成 氏

「磯原工場で作っていた製品は、まず金属を粉にして酸化させ、金型に充填してプレスし焼結、それを顧客が要求する寸法に切削し、銅板に貼り付けて出荷するという工程を踏むのですが、そのプロセスにおけるいずれかの物理的変化をコントロールできれば最終的な品質を高められると考えました。ちょうどその頃、本社からDataRobotを紹介され、これは使えるかもしれないと期待が生まれました」(髙橋 氏)

髙橋 氏は本社で開かれた講習会に参加し、確信を深め磯原工場で担当する製造プロセスへの導入が動きだした。当初、DataRobot活用にチャレンジしたのは髙橋 氏1人で、製造工程を一気通貫したデータも準備されていない。しばらくしてデータは集まるようになったが、「データをDataRobotで読み込み、相関関係がある部分を見つけようとしたものの、最初はなかなかうまくいきませんでした」と髙橋 氏。

JX金属 先端材料事業本部 技術部技師
岩知道 大輔 氏

そこで髙橋 氏とこの取り組みを進めることとなったのが、薄膜材料事業部技術部で技師を務める岩知道 大輔 氏だ。岩知道 氏は髙橋 氏からDataRobotの導入要請を受けた頃をこう回顧する。

「DataRobotでの解析結果を解釈し、製造工程改善のアクションまでつなげるうえでモデリング方法などに悩んだ記憶があります。工夫してなんとか結果を出していこうと後押ししてくれる環境が部署内にあったので、次第にアクションにつながる結果を出せるようになっていきました」(岩知道 氏)

DataRobot活用で品質不良の要因分析を迅速・効率化

磯原工場で最初に取り組んだのが品質不良に関する解析である。金属粉をプレスして焼結した製品が反ったり、割れたり、欠けたりする原因をデータ解析で探し、品質改善策につなげていった。

「品質不良が出る割合は以前から収集していましたが、その原因がどこにあるかは長い間経験に根ざすノウハウが幅を利かせていました。最初に小さな成果を出すまではDataRobotの操作習得も含めて1年以上かかりました。ただ、その後は不良発生からデータ解析まで1週間以内に終わり、不良の本質原因発見とアクションをスピーディーに行えるようになって、改善のサイクルを繰り返していく形を実現できたのが大きな成果です」(岩知道 氏)

磯原工場でその成果までたどり着いたのは2019年のこと。その間、NTTデータとしてもハンズオンによるDataRobot操作はもちろん、実際に成果を出すうえでもさまざまなサポートを行っていった。

「磯原工場ではDataRobotを主に要因分析、原因探索に使ったのが特徴的でした。解析結果を見るだけでなく、製造プロセスを改善したいという観点で仮説を立て、確認していく。当社への相談も常にその観点を大事にしていましたし、その姿勢が浸透していたからこそ、結果をアクションに結びつけるスピードも速いと感じていました」(近藤)

実際に髙橋 氏の部署では担当者たちが週に1度集まり、「製造データを見る作業はもともと浸透していたのですが、データ解析とアクションを起こしたときの結果を見て原因を探り、知恵を出し合ってさらに深掘りしていく作業も習慣化されました」(髙橋 氏)。こうした姿勢や習慣が、その後のJX金属におけるDataRobot浸透に深く寄与したことは間違いない。

ただ、実はまだこの当時、活用は磯原工場の、それも髙橋 氏の部署内にとどまっていた。磯原工場内の他の部署や他工場、本社への展開もまったく進んでいなかったという。

2021年頃、髙橋 氏が工場内の部長クラスにDataRobot活用を呼びかけたが、当時は「反応が皆無」(髙橋 氏)。そこで髙橋 氏は視点を変えて若手社員にデータ解析勉強会開催を呼びかけたところ、30人程度の応募があった。「内容はデータリテラシーや事例紹介が主でした。最近では、参加者が各自の課題を解決するためDataRobotを使うようになり、いくつかの部署でデータ解析の自走が実現しているとのことです」と髙橋 氏。

DataRobotを全社に展開したJX金属のチャレンジ

岩知道 氏は勉強会の教育を担当し、現在も磯原工場を中心に製造現場・開発部隊を対象とした教育を担っている。

「ハンズオンのDataRobot勉強会を質疑応答がしやすい少人数で開催しています。製造に関するデータの知識は最低限にとどめ、家賃など身近なデータを基に解析を体感してもらっているのですが、なじみのあるデータを用いることで理解が進み、それを自部署の製造データに置き換えて自走する流れができ始めています」(岩知道 氏)

JX金属 技術本部 情報システム部 技師
高瀬 拓歩 氏

また2024年からは、本社の情報システム部が開催するDX勉強会でもテーマとしてDataRobotによるデータ解析を取り上げるようになったと、技術本部 情報システム部の技師、高瀬 拓歩 氏。同チームは日頃、全社からのデータ解析依頼の受託やデータ解析文化の醸成を主に担っているが、DataRobot活用の普及にも乗り出し、「今後は新入社員の希望者に対してもDataRobotの教育を進めていこうと計画しており、さまざまな形で全社展開に取り組んでいきます」と高瀬 氏は力を込める。

そうした教育が効果を発揮し、2025年10月時点の全社での登録者数は127人、頻繁に利用するアクティブユーザーは30人に達しているとのことだ。

中でもいま取り組みが進んでいるのが佐賀関製錬所(大分県)である。副所長の永戸 敏博 氏が語る。

「佐賀関製錬所で導入を始めたのは2025年春頃のことです。本社からもDataRobotが有用という情報が届き、情報システム部が実施するデータ解析テーマの発掘・教育がスタート。当初は、担当者がデータに関して素人なので結果が出るまで1年以上かかると想像していたところ、意外にも簡単に使いこなせて、半年で実業務に反映できるところまで進んでいます」(永戸 氏)

JX金属 佐賀関製錬所 副所長
永戸 敏博 氏

同所では現在、DataRobotを用いて自溶炉スラグの有価物ロス低減に取り組んでいる。従来は1対1の解析で影響度の高い因子を特定・対応していくアプローチだったため、さまざまな因子の複合的影響は十分に解析できていなかったと永戸 氏。それがDataRobotを活用することで、複数因子が絡み合う影響の解析を手軽に行えるようになり、モデル作成も容易になって、解析に基づくアクションが取れるようになった。その結果、ロスの低減効果も出始めているという。

「最初は1、2人の担当者からスタートしたのですが、DataRobotが活用できることがわかってからは希望者も多く、現在は5、6人が利用しています。効果が出ている自溶炉スラグ以外にも5つ程度の取り組みが始まろうとしています」(永戸 氏)

DataRobotによる解析と予測で不良がゼロになった事例も

JX金属でデータ解析の展開が進んだ理由はどこにあるのだろうか。森岡 氏はこう分析する。

「まず全社的な工夫として、DataRobotを本社技術本部で契約し、使いたい人は無料で使える状態にしました。つまり、各部署で予算を考える必要がない点が一つ大きな要素だと思います。また、半期に1度のペースで開かれる全社の技術報告会でデータ解析の成果報告を行うなど、さまざまなタイミングでDataRobotが効果的だという話を広げてきたのも大きいと考えています。いまは会社の方針としてデータ解析に力を入れているので、今後はより広まっていくと期待しています」(森岡 氏)

岩知道 氏も「最初は若手から普及を始め、成果が生まれたことで管理職にもデータ解析の関心が高まり、解析依頼が増えてきた印象があります」と話しており、JX金属におけるデータ解析は着実に加速していく勢いだ。

ここまでの成果として、佐賀関製錬所では最初に取り組んだ自溶炉スラグのロス低減で「うまくいけば年間数千万円程度の効果につながりそうです」と永戸 氏。また磯原工場では「反りについては従来、約15%の不良が出ていたのですが、DataRobotによる解析と予測でアクションにつなげたところ、2020年9月に取り組みをスタートし、2021年10月以降、不良ゼロをキープしています」と岩知道 氏がDataRobotによるデータ活用の取り組みについて語った。

NTTデータ 第二インダストリ統括事業本部 製薬・化学事業部 課長代理
山田 真一郎

何より大きいのが、データ解析の自走が始まったことだと髙橋 氏。高瀬 氏も「DataRobotの成功で情報システム部へのデータ解析依頼も増えており、データ解析の文化が醸成されつつあるとともに機運の高まりも感じています」と話した。

導入当初はNTTデータによるハンズオンのサポートも行われたが、現在は内製運用に切り替えられ、NTTデータとしては2カ月に1度の情報システム部との定例会で支援を行っている。NTTデータで営業を担当する山田 真一郎は「単にツールを使うだけでなく、解析結果を見てどう解釈し、どういうアクションにつなげて業務を改善していくかという意識がとても強いので、DataRobotとのシナジーも高いと感じています」と、自走を実現したJX金属の成功要因と今後の可能性に言及した。

さらなる価値創出を視野に

では、そのJX金属において今後、データ解析はどのように浸透・発展していくのか。高瀬 氏はまず情報システム部の課題として、一人でも多くの社員がDataRobotを使いこなせるようになってほしいとしたうえで「今後はヘビーユーザーをいかに増やしていけるかがポイントです」と話す。

経営企画部の副部長で情報システム部副部長(DX推進担当)も兼任する竹村 慶周 氏は次のように語る。

「全社DX推進施策の一つとしてDataRobotを標準ツールに位置づけ、データ解析によるコスト改善や意思決定などを実現していきます。情報システム部が伴走してより深く入り込み、結果を出すところまで寄り添うことで、社内の成功事例が増え、全社に浸透していくと考えています。解析スキルを持つ人財の育成にも注力し、誰もがデータを活用できる環境づくりを進め、DataRobotを起点にデータ活用文化の定着と、継続的な価値創出を目指します」

JX金属 経営企画部 副部長 兼 技術本部情報システム部 副部長
竹村 慶周 氏

岩知道 氏は「業務の中で生まれる気づき・発見をどのように数値化し、アクションにつなげていくかは今後ますます重要になっていくでしょう。DataRobotを導入していない管理・間接部門にも、食堂の混雑率予測など身近なテーマでデータ解析に親しみを感じてもらえたらいいですね」とこれからへの展望を話す。

こうした多種多様な取り組みをドライブしていくうえで、竹村 氏は「NTTデータは多くの企業を支援していますし、成功事例もたくさん持っているので、当社の今後のDXも引き続きサポートしていただければ」と語り、期待を示した。NTTデータとしてもその期待に応え、JX金属のこれからを支えていく。

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