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2025.12.5事例

技術のバトンをつなげ!製造業の暗黙知伝承の最前線

製造業では技術を伝える熟練者の高齢化や大量退職が深刻な問題となっており、企業の競争力の源泉である熟練者が長年培ってきた暗黙知の伝承が急務となっている。NTTデータは以前から暗黙知伝承に取り組み、その改善をリードしてきた。本稿では、NTTデータが実際に取り組みさせていただいている川崎重工業様の暗黙知伝承を通じて、生成AIを活用した暗黙知伝承の取り組みや、NTTデータが持つ暗黙知伝承における独自の強みを紹介する。
目次

1.今まさに求められる暗黙知伝承

国内で進行する高齢化は、企業に多方面で大きな影響を及ぼしています。 建設・運輸業では、就業者の高齢に加え、少子化の影響で若年者の入職の減少が見込まれ、中長期的な担い手の確保・育成が喫緊の課題となっています。
参考:国土交通省「国土交通分野における担い手不足等によるサービスの供給制約の現状と課題」

農業では、荒廃農地が拡⼤し、地域の農地が適切に利⽤されなくなることが懸念されています。
参考:農林水産省「令和6年度 食料・農業・農村白書 全文」

金融業においては、社会的変化に適切に対応していくとともに、それに沿った金融商品・金融サービスを提供することが求められています。
参考:金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」」

とりわけ製造業では、技術を伝える熟練者の高齢化や大量退職という深刻な問題に直面しています。その結果、現場で長年培われてきた「暗黙知」が途絶する危機が進行しており、今まさに暗黙知を次世代に伝承することが求められています。

「暗黙知」とは、従業員の経験や技能、勘などを通じて体得されたもので、個人に留まっている知識を指します。暗黙知は企業の競争優位性を支える重要な資産であり、その喪失は市場における優位性の低下に直結します。

図1:熟練者の暗黙知が競争優位性の支える資産

このような背景から、多くの国内製造業では暗黙知の伝承を重要な経営課題として位置づけ、熟練者の暗黙知を「形式知」へと変換し、社内に蓄積・共有する取り組みを進めています。なお形式知とは、言語や数値、図表、マニュアルなどの形式で表現・体系化され、共有や伝達が容易な知識を指します。

2.NTTデータの製造業における暗黙知伝承の取り組み事例(川崎重工業様)

NTTデータは、大手製造業である川崎重工業様の設計業務において、暗黙知伝承を目的としたPoCをご支援しています。川崎重工業様では、設計業務に数多くの暗黙知が業務に存在し、若手設計者が熟練設計者の支援なしに業務を独力で遂行することが困難であるという課題を抱えております。

そこで本PoCでは、NTTデータが開発中の「暗黙知伝承システム」を利用し、熟練設計者の暗黙知を形式知化して若手設計者に伝承する取り組みを行っています。この取り組みにより、以下の成果を目指しています。

【若手設計者】

  • 業務上の不明点を解消し、従来よりも効率的に設計業務を遂行できるようにすること。
  • 独力で実施できる業務範囲を拡大し、自律性を高めること。

【熟練設計者】

  • 若手設計者からの質問対応が減少し、自らの業務に専念できるようにすること。

図2:暗黙知伝承システムの利用で目指す姿

暗黙知伝承には暗黙知と形式知の相互変換のプロセスを通じて、個人の持つ知識を組織全体で共有・創造していくプロセスを表すSECIモデルがあります。
参考:https://www.jaist.ac.jp/ks/labs/nishimuralab/

  • 共同化:直接体験を共有し、暗黙知を生成する
  • 表出化:暗黙知を言語化し、概念を創る
  • 連結化:概念と他の知をつないでシステムにする
  • 内面化:モデルを実践し、暗黙知を体得する

この4プロセスを循環させることで、個人の知識を拡大・進化させ、組織全体で共有・活用することが可能となります。その結果、より高度な知識の獲得やイノベーションの創出が期待されます。

図3:本PoCの暗黙知伝承の対象プロセス

本PoCでは暗黙知伝承システムによりSECIモデルにおける「表出化」、「連結可」のプロセスに重点をおいて取り組んでいます。

3.NTTデータの暗黙知伝承の取り組みの強み

川崎重工業様の設計業務の暗黙知伝承PoC実施中の「暗黙知伝承システム」は、NTTデータが開発中の「インタビューエージェント」と既に製品としてリリースしている「LITRON® Generative Assistant」を組み合わせた独自のシステムです。

  • インタビューエージェント
    AIが熟練者の頭の中にのみ存在する暗黙知を引き出すための質問を考え、インタビューを行い、抽出した暗黙知を形式知として整理します。
  • LITRON® Generative Assistant
    インタビューエージェントが抽出した暗黙知をユーザに共有します。

図4:暗黙知伝承システムの概略図

このように、暗黙知伝承システムはインタビューエージェントによる熟練者へのインタビューから暗黙知を抽出し、LITRON® Generative Assistantによる伝承まで一貫して支援することが可能です。これにより、属人的な知識を組織全体の資産へと転換し、持続的な競争力強化を実現します。

また、今回のような暗黙知伝承の取り組みを通じて抽出された熟練者の暗黙知は、NTTデータが目指す生成AI・AIエージェントの未来像「Smart AI Agent®」の実現において不可欠な要素です。熟練者の暗黙知を有する専門エージェントの活用は、今後の業務やビジネス変革を推進する上で重要な役割を担っています。

図5:Smart AI Agent®の構想

4.生成AI活用による暗黙知伝承に興味がある方へ

本稿では、NTTデータが取り組む生成AIを活用した暗黙知伝承のPoC事例をご紹介しました。NTTデータのソリューション事業本部では、生成AIを活用し、お客さまの暗黙知伝承を推進しています。社内の暗黙知伝承が進まないなどお悩みの方や、本稿でご紹介した取り組みにご関心をお持ちの方は、ぜひお声掛けください。

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

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