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2026.3.16事例

中央集権のボトルネックを解く--東京ガスが挑む「データメッシュ」への大転換

首都圏を中心にエネルギー事業を展開する東京ガスグループは、AI・デジタル技術を駆使してビジネスモデルを変革する“AIネイティブ企業”への進化を掲げている。その屋台骨となるデータ活用基盤において、東京ガスは従来の「中央集権型」から、事業部ごとに基盤を分散管理する「データメッシュ型」へのアーキテクチャ刷新を決断した。分析基盤としてDatabricksを採用し、NTTデータの支援を受けながら進めたその挑戦の軌跡を追う。
目次

成功ゆえに直面した中央集権のボトルネック

東京ガスにおいて、グループ横断的にAI・データ活用の旗振り役を担うのがDX推進部だ。同部は、“AIネイティブ企業”への進化を掲げ、顧客への新たな価値提供やビジネスモデル変革を推進する戦略的な役割を負っている。データエンジニアリング推進チームリーダーの青木正博氏は、その立ち位置をこう強調する。

「我々のミッションは、単に“箱”としてのデータ基盤を用意することではありません。データマネジメントや利用推進までを一気通貫で担い、グループ全体で自律的にデータ活用が行われる環境を整え、価値創造につなげることです」(青木 氏)

東京ガス株式会社 DX推進部 データ活用統括グループ データエンジニアリング推進チームリーダー
青木 正博 氏

東京ガスにおけるデータ活用の取り組みは、古くは1980年代以前から行っていたが、電力・ガスの小売全面自由化の際にマーケティング領域向けに本格的な分析基盤を整備した。その後、データドリブン経営を加速させるべく、あらゆるデータを1カ所に集約・統合するデータ分析基盤へと発展させた。この統合基盤の整備により、グループ内でのデータ活用は大きく進展し、利用者の裾野も着実に広がっていった。しかし、利用拡大とともに新たな課題が浮上した。それが中央集権の限界である。「中央のリソースがボトルネックになり、現場の個別具体的なニーズに対してスピード感を持って応えることが難しくなってきたのです」と、データ基盤の刷新プロジェクトを推進する山田卓祥氏は振り返る。

例えば、アジリティの欠如だ。現場のニーズを基盤整備に反映させる立場の田口雅隆氏によれば、DX教育を受けた意欲的な社員が「業務システムにあるこのデータを使って分析したい、業務活用したい」と思っても、基盤へのデータ連携が追いついていないなど、連携を依頼してもリソース不足による順番待ちが発生していて、現場のスピード感とのギャップが課題になっていたという。

東京ガス株式会社 DX推進部 データ活用統括グループ
田口 雅隆 氏

さらに拡張性・柔軟性の問題もあった。東京ガスグループでは、液化天然ガス(LNG)のトレーディング、ガス導管の保守、法人営業、家庭向けサービスなど、多種多様な事業を展開しており、事業ごとに求められるデータの扱い方や要件も大きく異なる。

「これらすべての要件を1つの巨大な基盤で、一律のルールで運用しようとすること自体に無理が生じていたのです」(山田 氏)

図1:中央集権の限界

自律分散型組織の実現に向けた「データメッシュ」という解

こうした課題に対する答えとして、東京ガスが選択したのが「データメッシュ」というアーキテクチャである。

中央集権型の基盤を高度化する選択肢もあったが、事業ごとに求められるスピードや要件の違いを踏まえると、中央にすべてを集約するアプローチには限界があると判断した。業務に近い現場が主体となってデータを扱いながら、全体はガバナンスで束ねる--その思想が、東京ガスの経営・組織構造に最も適していると結論づけたのである。

東京ガスが描いたデータメッシュの特徴は、各事業領域(ドメイン)が自らの業務要件に即してデータ基盤を持ち、データのオーナーシップを担う点にある。一方で、データのサイロ化を防ぐため、データカタログ提供やドメイン間データ流通といったガバナンスは、全体を統括する「ハブドメイン」が担う。分散と統制を両立させる連邦型のアプローチだ。

「中央集権的にデータを抱え込むのではなく、各部門が業務要件に合わせて自律的に基盤を持つ。一方で、サイロ化を防ぐために、全体を統括するデータカタログや共通のルールを各ドメインに提供し、権限管理と情報連携の“型”を整えることで、横断的な共有と利活用を促進する。この分散と統合を両立する連邦型のスタイルこそが、今の東京ガスグループに必要だと判断しました」(山田 氏)

図2:データメッシュアーキテクチャ上でのデータ活用の流れ

こうしたデータメッシュ構想を実現するプラットフォームとして採用されたのがDatabricksであった。

Databricksを選定した決め手について、青木氏は「Unity Catalog」の存在を挙げる。

「Unity Catalogを使えば、各ドメインにデータが分散していても、メタデータやアクセス権限を一元管理できます。『しっかり管理する』ことと『自由に使う』こと、この相反する要素を両立できる点が我々の要件に合致しました」(青木 氏)

特に、今回のプロジェクトでは、データメッシュの実現にあって重要となる人事・経理・財務などの全グループ共通のデータを扱う「コーポレートドメイン」の構想を、いかに実装へと落とし込むかが大きなテーマであった。

この構想を具体化するにあたり、東京ガスはDatabricksに精通したパートナーが必要だと考え、NTTデータに支援を要請した。

NTTデータは、国内で唯一Databricksのエリートランクパートナーとして認定されているほか、日本初のDatabricks MVPを輩出するなど、Databricksに関する高度な技術的知見を有している。こうした専門性を生かし、構想を実装レベルへと確実に落とし込むパートナーとして、NTTデータの存在は不可欠なものだった。

「NTTデータには、これまでのデータ分析基盤からハブドメインの構築まで東京ガスグループに対して支援をいただいています。全体のアーキテクチャやセキュリティ要件を理解してくれているので、コーポレートドメイン構築する上で最適なパートナーでした」と山田氏は説明する。

東京ガス株式会社 DX推進部 データ活用統括グループ
山田 卓祥 氏

また、スピード感も重要な要素だった。

「2024年度の第4四半期という限られた期間で、我々の抱える課題が本当にDatabricksで解決できるのか、PoCを行う必要がありました。NTTデータはそのスピード感に合わせて体制を構築し、高い技術力で検証を完遂してくれました。Databricksだけでなく、TableauやDataRobotといった周辺ツールも含めた知見を持つ点も心強かったですね」(青木 氏)

コーポレートドメインに見る、現実的な実装の工夫

コーポレートドメインの構築にあたっては、コストや移行リスクを抑えつつ、高度なセキュリティ要件を満たすための現実的な実装が追求された。

象徴的なのが「Lakehouse Federation」の活用だ。既存基盤にある膨大なデータをすべて移行するのには、コストも時間もかかる。そこでLakehouse Federationを使い、データを移動せずに仮想的に参照できるようにした。「データを二重持ちすることなく、ユーザーはDatabricks上からシームレスに別プラットフォームのデータへアクセスできます」と山田氏は評価する。

また、機微な情報を扱う人事・経営管理領域と、柔軟性高く、高度な分析を行う領域を明確に分けるため、ワークスペースを用途別に分割して設計。Unity Catalogによるガバナンスも徹底した。

「緻密な権限管理が求められるデータは、用途によって見せるべき情報の範囲が異なり、従来では実現では実現が困難でしたが、Unity Catalogで高度な制御を実装することができました。これにより、セキュリティを担保しながらデータの利用価値を最大化しています」(山田 氏)

さらに青木氏は、生成AI機能「Genie」によるデータ活用の民主化にも期待を寄せる。

「Genieを使えば、専門知識がなくても自然言語でデータを抽出・分析できます。まだ検証段階ですが、人事や経理といった非IT部門の担当者が自らデータを活用する文化が醸成されることを期待しています」(青木 氏)

データメッシュがひらく、グループ経営の未来

コーポレートドメインの構築は、データメッシュ構想における重要なマイルストーンに過ぎない。

「今後は、まだ独自のドメインを持っていない事業部やグループ会社に対しても、データ活用の環境を提供していきたいと考えています。自前で基盤を持つのが難しい部門には、コーポレートドメイン内にワークスペースを用意し、スモールスタートでの活用を進めています」(山田 氏)

こうした柔軟な対応ができるのも、拡張性の高いデータメッシュアーキテクチャとNTTデータの伴走支援があればこそだ。最後に青木氏は、今後の展望を次のように語った。

「基盤を作って終わりではなく、重要なのはドメイン横断のデータ共有と活用です。各ドメインの連携が進めば、ドメイン横断で新たな価値が生まれてくるはずです。コーポレートドメインを起点にグループ全体のデータ活用を牽引していきたいと考えています」(青木 氏)

東京ガスの取り組みは、社外からも高い関心を集めている。2025年10月に開催されたNTTデータとデータブリックス・ジャパン共催のイベント「Customer Round Table」では、山田氏がデータメッシュに関する講演を行い、参加者から多くの反響が寄せられた。東京ガスの事例は、他企業においてもデータメッシュが現実的な選択肢として注目され始めていることを裏付けるものといえる。

中央集権の限界を乗り越え、自律と連携を両立させる東京ガスの挑戦。その先進的な取り組みは、多くの大企業が直面するDXの壁を乗り越えるための、実践的な道筋を示している。

関連リンク

東京ガス株式会社についてはこちら:
https://www.tokyo-gas.co.jp/index.html

東京ガスDXサイト(AI・データ活用の促進)についてはこちら:
https://www.tokyo-gas-dx.com/base/data-utilization/index.html

株式会社NTTデータについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/

Databricksについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/databricks/

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