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2025.3.7技術トレンド/展望

DX時代に適応するガイダンスITIL4(第3回)-サービスマネジメント全体像のご紹介

「DX時代に適応するガイダンスITIL4」の第1回第2回では、ITILの基本概要および最新版であるITIL4の更新点とその背景にあるサービスマネジメントを取り巻く4つの変化について紹介した。本稿、第3回では、これらの内容を踏まえた上で、サービスマネジメントを最適化する指針となる「サービスマネジメント全体像」を紹介する。本記事がITILに対する興味関心のきっかけとなれば幸甚である。

目次

プロジェクトによって異なる目指すべき姿とそのアプローチ

ITILは、サービスマネジメントに関するガイダンスで、日本はもちろん、世界でも最も広く採用されています。これまで2回にわたり、まず最新のITIL4の特徴を紹介(第1回)し、次にその背景にある「サービスマネジメントを取り巻く4つの変化」について説明(第2回)しました。しかし、読者の皆さまの中には、すべての変化を受け入れることが最善とは感じない方もいるかもしれません。プロジェクトごとに重視する価値は異なり、目指すべき姿も一様ではないはずです。

たとえば、公共機関や金融機関の基幹システムのように高い安定性を求めるプロジェクトでは、ITIL v3のサービスライフサイクル(ITILv3で定義されているサービスマネジメントプロセスの流れ)に基づいた品質管理が重要です。一方で、スマートフォンのゲームアプリなど新機能の迅速なリリースが求められるプロジェクトでは、ITIL 4のバリューストリーム思考(価値を生み出すプロセス全体を見直し、無駄を削減する考え方)に基づくプロセスの最適化が効果的です。

また、プロジェクトの置かれた状況に応じて適切なアプローチも異なります。たとえば、プロセスが整備されておらず、毎回新たに手順書を作成しているプロジェクトは、まずプロセスの整備と標準化から始める必要があります。これに対して、すでに標準的な手順書が整備されているプロジェクトでは、バリューストリームの最適化にすぐ取り組むことが可能です。

サービスマネジメント全体像

本稿では、プロジェクトが最適な目指すべき姿を見極め、最適なアプローチで実現するための「サービスマネジメント全体像」をご紹介します。

「サービスマネジメント全体像」はサービスマネジメントの段階を日本古来のフレームワークである「守破離」に当てはめたものです。しかし、プロジェクトごとに最適な形は異なるため、単純に上記の段階を目指すことがすべてのプロジェクトに対して最適解であるとは限らない点は強調しておきます。

なお、「サービスマネジメント全体像」は筆者が提唱しているものであり、ITILの管理・運営を担うPeopleCertの公式見解ではございませんのでご注意ください。

下図が「サービスマネジメント全体像」です。各段階を説明します。

  • (1)現状を知る
    最初の段階です。品質、コスト、デリバリの観点から顕在的な価値を可視化します。顕在的な価値とは、SLAなどに具体化されたユーザや顧客の明確な要求を指します。
  • (2)型を守る
    この段階では、サービスの品質改善を目的にプロセスの整備・標準化・改善と測定を行います。また、コストとデリバリの削減のためにプロセスの自動化も実施します。ITIL v3での理想的なライフサイクルと各プロセスを目指します。
  • (3)型を破る
    「(2)型を守る」で整備されたプロセスを、ITIL 4のバリューストリーム思考に基づき最適化します。さらに、顕在的な価値に加え、潜在的な価値も追求していきます。潜在的な価値は、「ITをビジネスに近づける価値」と「ビジネスをITに近づける価値」に分類できます。
  • (4)型から離れる
    価値の変化に対応するために、高サイクルな開発やデジタルトランスフォーメーション(DX)を目指します。アジャイルやDevOpsなどの手法を活用し、開発を進めながら価値を継続的に見直すことでDXを実現します。

サービスマネジメント全体像の活用

サービスマネジメント全体像を活用することで、プロジェクトの現状を正しく把握し、目指すべき最適な姿とアプローチを明確にできます。

たとえば、公共機関や金融機関の基幹システムは「(2)型を守る」段階を最適な段階として目指すことが多く、スマートフォンのゲームアプリは「(3)型を破る」または「(4)型から離れる」段階が最適である場合が多いです。

また、プロセスが整備されていないプロジェクトは「(2)型を守る」から開始し、その後「(3)型を破る」に進むのが理想的です。一方、すでに標準的な手順書が整備されているプロジェクトは「(4)型を破る」段階へ進む準備が整っています。

さらに、DXへのアプローチについても説明が可能です。DXにはチーム内のプロセスの一部をデジタル化する「デジタイゼーション」、組織横断的にプロセスをデジタル化することで効率化や自動化をする「デジタルオプティマイゼーション」、そして会社のコアのデジタル化、つまり価値の再定義をする「デジタルトランスフォーメーション」の3段階がありますが、それぞれ以下のように対応します。

  • デジタイゼーション:「(2)型を守る」
  • デジタルオプティマイゼーション:「(3)型を破る」
  • デジタルトランスフォーメーション:「(4)型から離れる」

おわりに

今回は、第1回と第2回を踏まえ、サービスマネジメントを最適化する指針となる「サービスマネジメント全体像」をご紹介しました。当組織では、事例を含む多くの情報を有していますが、紙幅の都合上、本記事では詳細をご紹介できていません。たとえば、「(1)現状を知る」の可視化手法や、「(3)型を破る」での潜在価値の模索方法、さらに「サービスマネジメント全体像」を活用することでプロジェクトメンバ全員の意識をそろえる方法など、より詳しく知りたい方は、お問い合わせをいただければ幸いです。

ITILに興味を持たれた方や、さらに詳しく知りたい方には、書籍『【ITIL4公認】ITIL 4ファンデーション試験対策』(日経BP)をおすすめします。また、資格制度もありますので、体系的に学習し資格取得を目指される方は関連ページの研修受講をご検討ください。

また、「サービスの無理・無駄・ムラをなくし、効率を高めたい」「頻発するトラブルに対応したい」といった現場レベルのお悩みから、「複数のサービスに対する投資判断」「DX推進方法」といったビジネスレベルのお悩みまで、当組織ではITILの専門家がサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。

ITIL®はPeopleCert groupの登録商標であり、PeopleCert groupの許可のもとに使用されています。すべての権利は留保されています。
本記事ではITILの登録商標マーク(®;Registered Trademark「登録された商標」)を省略しています。また、その他記載の組織名(会社/団体/機関)、製品名は、それぞれの会社/団体の商標または登録商標です。それらについても登録商標マークおよび商標マーク(™;Trademark「商標」)、その他の商品・サービスの登録に関するマークを省略しています。

はじめに:『ITIL(R)4ファンデーション試験対策』についてはこちら:
https://bookplus.nikkei.com/atcl/column/032900009/101400197/

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