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2017年12月27日技術ブログ

サービスデザインの最先端

IT業界でも認識が高まりつつあるサービスデザイン。先日行われたService Design Global Conferenceの様子を通じて、最先端で扱われている関心ごとについてお伝えします。

Service Design Global Conferenceとは?

Service Design Global Conferenceとは、Service Design Networkが年に一回主催するサービスデザインのカンファレンスです。毎年、開催都市は代わり、3年前からたどるとニューヨーク(2015)、アムステルダム(2016)で開催され、今年はスペイン・マドリッドで開催されました。

Service Design Global Conference

図1:Service Design Global Conference

運営主体であるService Design Network(注1)とは、サービスデザインの啓発活動を行う国際機関になります。2017年11月現在、世界に29のChapterがありますが、Japan Chapter(注2)も存在し活発に活動しています。

カンファレンスはどんな様子か?

カンファレンスは、Day1, Day2の合計2日開催されます。(その他、Pre-DayとしてService Design Networkのメンバーだけが参加可能なイベントもあり)
プログラムの中身としては、先進的な取り組みのプレゼンテーションや、体験型のワークショップがあり、サービスデザインに関する最新の情報を得ることができます。スピーカーは、サービスデザインのエージェンシーだけでなく事業会社やアカデミックからも構成されており、それぞれの視点からの見方・考え方は多くの気づきを与えてくれます。

Service Design Global Conferenceの様子

図2:Service Design Global Conferenceの様子

また、プレゼンテーションやワークショップの合間には、参加者同士がネットワーキングしやすくするため、コーヒーブレイクが用意されています。

Service Design Global Conference コーヒーブレイクの様子

図3:Service Design Global Conference コーヒーブレイクの様子

参加者は、今年は非公式ですが700人程度になったようです。IT系の巨大なカンファレンスと比較すると少なく感じますが、内容は非常に濃いモノになっています。日本からの参加者も年々増えており、これも非公式ではありますが今年は40名ほどいらっしゃったようです。

話が前後しますが、本カンファレンスの前日には、Japan Chapterによる独自ツアーがあります。サービスデザインに取り組んでいる現地事業会社やエージェンシーの訪問およびディスカッションなどが組まれており、ここでも最新情報を得たり日本からの参加者同士のネットワーキングも行うことができ、著者も今年参加しましたが非常に貴重な場になっています。

「スケール」の1側面としての「組織デザイン」

今の最先端の関心ごとは、今年のカンファレンスのテーマにある通り、如何にサービスデザインを「スケール」させるかという点にありました。そしてその1側面として、「組織のデザイン」という点に関する様々な実践事例の紹介がありました。
「サービスデザインの教科書」(注3)に、サービスデザインの関心の対象が「サービスを構成する個々のタッチポイントのデザイン」から、「利害関係者の価値共創」、そして更に「組織のデザイン」に変わってきていると説明がありますが、まさしくこの「組織のデザイン」に関心ごとが集まっていることをリアルの場で感じられました。
逆に、「タッチポイントのデザイン」を行うための「プロセス」や「方法論」などの話はほとんど聞かれず、多くの参加者が基本的なものは出揃ったという認識を持っている印象を受けました。

「スケール」の1側面としての「組織デザイン」

図3:「スケール」の1側面としての「組織デザイン」

「組織のデザイン」の具体的な取り組み

以降は、「組織のデザイン」について書きたいと思いますが、組織のデザインと言った時に、具体的には大きく二つの課題が扱われていました。

  1. 1.従業員の体験のデザイン(Employee Experience : EX)
  2. 2.組織全体へのサービスデザイン文化の浸透

1.従業員の体験のデザイン(Employee Experience : EX)
カンファレンスでは、多くの組織が「サービスをdeliverするためには従業員の巻き込みが必要である」という課題認識を持ち、従業員の体験のデザイン(EX)に取り組んでいる事例が紹介していました。あるスピーカーは課題を「サービスの失敗の原因60%強が従業員のサービスに対する不適応」であること定量的に把握し、その取り組みの重要性を伝えていました。
具体的な取り組みとしては、サービスの企画や設計段階からワークショップなどを用いて従業員を巻き込んだり、またユーザに対する活動と同様に従業員のサービス提供時の体験の調査や設計も行い、従業員の体験を考慮し、サービスの設計や実装をしたという実践の紹介もありました。
日本でもここ数年で、サービスの成功にユーザの体験=UX(User Experience)をデザインが重要であるという認識が当たり前のものになってきましたが、日本ではまだそれほど耳にしない「サービスを提供する従業員の体験=EX(Employee Experience)」がUXと同じくらい重要である、という認識を多くの方が持っているという点が非常に印象的でした。

2.組織全体へのサービスデザイン文化の浸透
1つ目にご紹介した内容が「あるサービスを成功させるため」という目的だったことに対して、更に一歩進んだ目的「継続的なサービス改善や、自分たちで新たにサービスを創出していくため」を設定し、そのために「デザイン文化を築く」取り組みを行っている事例の紹介も多くありました。
ノンデザイナーである従業員をサービスデザインの文化(ユーザー中心で考える文化)に変えていくために、その組織が受け入れられるような独自方法論の開発や、従業員へのトレーニングなど様々な施策を、横断的そして継続的に行っている話がありました。
どの組織の話からも、腰を据えて数年間にわたって活動をしている様子が伺えましたが、事業会社の中にいる方の口からはっきりと「デザイン文化を取り入れるには長い時間がかかる。」といった発言があったことは非常に印象的でした。

今回は、Service Design Global Confernceで扱われた最先端の関心ごとの一部ではある「組織デザイン」について、概要をご説明させていただきました。
近々、日本支部による報告会も開催されると思いますので、ご関心を持たれた方は、ぜひ参加してみてください。日本でもサービスデザインをさらに盛り上げていきましょう。

  1. 注1 Service Design Network
    https://www.service-design-network.org(外部リンク)
  2. 注2 Japan Chapter
    https://www.service-design-network.org/chapters/sdn-japan(外部リンク)
  3. 注3 サービスデザインの教科書
    https://www.amazon.co.jp/dp/4757123655(外部リンク)
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