2020.10.23技術ブログ

激甚災害国ニッポンを救え!
~ハレックスのDXへの取り組み~

近年「数十年に一度の災害」が頻発している。阿武隈川の氾濫で多くの死者を出し、首都圏でも浸水や突風による甚大な被害を受けた昨年の台風19号は記憶に新しい。令和以降の激甚災害指定数は既に5件にのぼる。TVやネットではその被害がリアルに報道される一方、事前の備えや避難誘導に関する伝え方もより細かくなるなど、災害に対する社会の意識も高まっており、防災におけるITやデジタル技術の活用への期待も増している。
今回は、NTTグループで唯一気象データを扱う株式会社ハレックスにITを活用した気象災害対策の最前線を聞いた。

”IT×気象”のエキスパート集団

ハレックスは、「IT×気象のエキスパート」として、主に法人企業向けに気象情報を提供する気象専門会社だ。社員約40名のうち、約半数が気象予報士という専門家集団である。メディアへの気象解説者の派遣(NHK「おはよう日本」気象情報担当の檜山靖洋さん)等も行ってはいるが、NTTデータグループという特性上、気象データの提供に力を入れている。
同社の主力サービスであるオリジナル気象システム「Halex Dream!」は、1kmメッシュの気象データを顧客の利用形態に合わせた使いやすい形で提供する。

藤岡ハレックスの役割は、気象データを必要な人にわかりやすく、使いやすく提供することだと思っています。その為、他社と違い、データの粒度を地図との親和性を意識した1kmに細分化し、さらに鮮度保持のため気温や降水予報など1日24回の情報更新(情報によってはそれ以上の頻度で更新)も行っています。その気象データを、ファイル形式だけでなく、お客様のシステムに合わせて取り込んでいただけるようAPI(Application Programming Interface)という形でもご提供できることが最大の強みで、ピンポイント気象API技術として特許も取得しています。

自然災害にどう備える?

気象災害時では、時々刻々と変化する洪水害危険度(流域雨量指数)や土砂災害危険度(土壌雨量指数)、台風進路など、一度に多くの情報を確認し状況判断する必要がある。災害対策業務では、緊迫した局面において、各情報を別々のシステムで情報収集しており、災害リスクを総合的に把握できる仕組みづくりが急務となっていた。こうした状況に対応するため、ハレックスでは、これらの情報を一元表示する「気象災害モニタリングシステム」をリリースした。

酒井「気象災害モニタリングシステム」の最大の特徴は、多岐にわたる気象災害リスク情報の過去・現在の実況値と6時間先までの予測値を一元表示することにより、一見して状況を俯瞰できることです。また、1kmメッシュのデータがありますので、クリック一つで任意地点の予測値を細かい粒度で把握でき、線状降水帯など近隣地域であっても気象現象が異なる場合にも大変有効です。さらに、台風の進路予測においては、早い段階からさまざまな可能性を把握し対策検討できるよう、アンサンブル予報機能も提供しています。これは、複数の初期値設定により台風進路をシミュレーションするもので、気象会社独自の情報なのですが、あるインフラ会社では、気象庁の進路予報が出る前の早い段階から台風進路の東・西端の可能性を知りたいということで、このアンサンブル予報をご利用いただいています。
災害リスクの見逃し防止のため、設定閾値超過時の事前アラート通知機能や、困ったときには予報士によるサポートも行っており、好評をいただいています。今後はハザードマップも反映する予定です。

リスク低減の鍵は「読み解きコンサル」

そして、このシステムに命を吹き込むのが、気象災害リスク情報としてウォッチすべきデータの理解である。
「降水量」一つとっても、時間当たりの平均値なので、短時間にまとめて降ったのか、弱い雨が継続したのかなど、実際どのような降り方であるかについては他の諸条件を鑑み総合的に判断する必要がある。気象データは、天気、気温、降水量、風向風速、積算気温、積算降水量など、その内容も多岐にわたり、実際の時間経過に伴う気象現象を知るには、降水量と同様にそれぞれに解釈が必要となるのだ。一口に「リスク」といっても、災害から何を守りたいのかによって、気象データを読み解いた上で着目すべき情報を設定しなければならない。

酒井お客様事例でご説明します。河川沿いに工場を持つ大手製造会社様は、BCP対策として時間降水量の実測値や予測値の監視を行っています。敷地の冠水による操業停止だけでなく、環境問題や法令順守の観点から、工場から溢れ出た水による河川の汚染を食い止めなければならないためです。一方、線路付近の土砂災害を事前に検知したい鉄道会社様にもご利用いただいているのですが、アラート情報としてウォッチしている数値は先ほどの工場とは異なります。それぞれの目的に応じて、気象データを読み解いて設定しており、私共はこれを「読み解きコンサル」と呼んでいますが、これはデータサイエンティストであっても気象予報士でなければできません。防災関係に限らず、気象予報士がお客様の利用目的に合わせて「気象特徴量」を抽出することで最適な情報活用を実現しているのです。

DXへの布石

気象現象は、私達が生活する上で切っても切れない関係であり、スーパーでの受発注管理や建設現場での熱中症対策など、気象データはBCPや防災以外でも様々な分野で活用されている。ハレックスでは、過去8年間分の予報データ、実測データを活用したサービス「Halex Memory!」を提供し、生活者目線での付加価値の創出に取り組んでいる。

井原株式会社ルグラン様のTNQL(テンキュール)は、働く女性向けに天気や気温の変化に合わせたその日の服装コーディネートをレコメンドするサービスです。気に入った服は直接購入することもでき、AIにより一人ひとりの好みに合わせたコーディネートを提案する機能もあります。

このプロジェクトは、ルグラン様の「働く女性が天気に影響されず、自分らしいおしゃれを楽しむためのサービスを提供したい」という思いから始まりました。テレビで見るような一般的な天気予報ではなく、女性ユーザーが必要とする“その場所”の気象条件に合わせた服装をレコメンドするために、ジャストポイントでかつ扱いやすい気象予測データであるDreamAPI(ハレックスオリジナル気象API)をご提供しました。服装コーディネート提案の部分では、お客様とタッグを組み、私を含めた働く女性気象予報士が、気象条件を服装パターンに変換する部分の「読み解きコンサル」も担当させていただきました。
ハレックスならではのオリジナル気象APIや読み解きコンサルを通じて、防災や農業といった常に気象と向き合った領域だけでなく、新たな価値提供に向けた貢献をしていきたいと考えています。

このように、気象データは利益や利便性拡大にも寄与する大きな可能性を持っている。ハレックスでは、お客様のDXを実現すべく、多岐にわたる業界において過去の気象データを利用した分析を実施し、気象と組み合わせた未来予測モデルを構築している。

藤岡気象は生活と密接な共通インフラであり、気象情報活用の可能性は無限にあると考えています。私共の持つ気象ビックデータを活用して、生活者の「あったらいいな」「こんなことやりたいな」を実現したいと願って活動しています。現状は、命に関わるリスク低減やBCP対策での活用が先行していますが、各事業の重要なデータ資産と掛け合わせた分析やAIの活用により、お客様のDXや安心安全で豊かな社会づくりに貢献したいと考えています。

先ほどの事例にもあったように、気象予報士のナレッジとお客様の得意技とのシナジーが重要になってきますので、お客様とのパートナーシップを大切にしながらDX実現に向けたお手伝いをしていきたいと思っています。

「HalexDream!」「HalexMemory!」は日本国内における株式会社ハレックスの登録商標です。

その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。

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