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2021年4月30日INSIGHT

多様な部品の調達業務を支援するキャディが製造DXを推進

他の業界に比べて規模が大きい製造業のDXは、日本全体に与える影響も大きい。ここではキャディの加藤氏とNTTデータの佐々木による対談を通じて、サプライチェーン、特に部品調達や製品づくりにおける課題とめざすべきビジネスを明らかにしていく。

装置メーカーやブランドメーカーの部品調達を支えるキャディ

対談は、部品の調達というプロセスに革新をもたらしている気鋭のスタートアップ企業、キャディ株式会社の代表取締役 加藤勇志郎氏と、製造業のモノづくりをテクノロジーで支援するNTTデータ 常務執行役員 佐々木裕、この2人で行われた。キャディは、多数のカスタムメイド部品を必要とする装置メーカー、プラントメーカーなどに対し、発注先(加工業者)の探索、価格や納期の交渉、品質の監督といった調達業務をサービスとして一括提供している。

おおよその流れは次の通りだ。まず企業の調達担当者が「CADDi(キャディ)」に送付した図面を、キャディ独自開発の自動見積システムにかけることで、瞬時に適正な価格や納期が算出される。その提示された価格・納期に問題がなければ、キャディに対して発注をかける。キャディでは、提携している約600の加工業者の中から、部品製造の依頼先を選定する。同社では各業者の得意とする加工分野を分析・特定しているので、加工工程ごとに最適な依頼先を選ぶことができるのだ。仕上がった部品の品質検査から納品までも、キャディが責任を負う。このように調達業務の一連の工程をキャディが代行するため、調達担当者の負担は大幅に削減されることになる。

図1:CADDiサービス概要

図1:CADDiサービス概要

キャディ株式会社 代表取締役 加藤 勇志郎 氏

キャディ株式会社
代表取締役
加藤 勇志郎 氏

対談冒頭、コロナが与えた製造業に対する変化が話題になると、加藤氏は「われわれはまさにその受発注のど真ん中にいて、変化を感じている」と語り始めた。

「加工業者が、1社の顧客に売り上げの5~8割を依存している下請け構造下では、コロナによってどこかのサプライチェーンが止まったり倒産したりすると、すべてが大打撃を受けてしまう。日本にはこうした“下請けの城下町”がたくさんあって、危うい状況といえる」(加藤氏)

売り上げのほとんどを失った町工場や、頼りにしていた加工工場が倒産してしまったメーカーなど、同社に相談する発注者も増えてきたという。

佐々木は「製造業に限らず、日本の遅れている部分が顕在化した」ことを挙げ、「DXに対しての関心が高まったのが1つのポイントといえる」と言うと、加藤氏も「電気ショック的だが課題を見直すきっかけになった面もあったと思う」と同調した。

NTTデータが考える日本製造業の課題と解決

続いて両社が、重厚長大と言われる製造業に特有の課題をどう捉えているか、そしてその解決に向けどのように取り組んでいるのかが語られた。

佐々木は、中国、台湾、韓国などの台頭や、米中摩擦によってサプライチェーンが不安定になっていることに触れ、不安定な調達環境にも対応できるよう、サプライチェーンのデジタル化をNTTデータが支援していると説明した。

NTTデータ 常務執行役員 佐々木 裕

NTTデータ 常務執行役員
佐々木 裕

「多数のサプライヤーを持つ大手製造業のお客様向けに、生産計画とサプライヤーの部品の供給計画を、同じプラットフォームにのせてマッチングするシステムを提供した。予定通りに品物が納品されるのかを監視するためのものだが、調達環境が不安定なときには、こうして見える化しておかないと、いざというときに対応できなくなる。またサプライヤーとオンラインでつながると、品質情報や価格情報を共有したり、そこで決済を行ったりできるので、将来性のある取り組みだと思っている」(佐々木)

モノづくりのDXとしては、佐々木が社長を兼任するNTTデータ・ザムテクノロジーズの事例が紹介された。同社では3DプリンターとAIの連携により、これまでの加工技術ではつくれなかったような形状の製品を、安定した品質で生み出せるようになっている。たとえば特定サイズの製品を、表面積の最大化という目的に特化させてデザインする“コンピューティングデザイン”も実現している。また3Dプリンターが生成する層ごとの画像をAIで解析して、品質確認・歩留まり改善にも役立てているという。

「物理的なハードにITの力を掛け合わせて、ものづくりの未来を創っていこうと取り組んでいる」(佐々木)

さらに自動車に代表されるように、ハードウェアにソフトウェアをインストールして利用することが当たり前になった今、「モノを売っておしまい」だった製造業が、売ったあともソフトの更新サポートを行う必要が生じていると説明し、NTTデータでは、製造業におけるソフトウェア人材の不足をカバーする取り組みも開始していると語った。

日本製造業の強みとキャディの強み

加藤氏は製造業の本質的な課題として、対談前半でも言及された下請け構造を挙げた。一般的に、調達先を集約するとコストは下げられるが、危機が連鎖する恐れは大きくなる。逆に調達先を分散させると、リスクは下がるがコストが上がってしまう。また分散のために新しい取引先を増やそうとすれば、高い取引コスト(調達先の探索、交渉、監督にかかる人件費や工数)が発生するので、結局「じゃあ、今までのところでやり続けよう…という話になってしまう」と加藤氏。

集約と分散、それぞれのメリットを両立させるべく生み出されたのが、先に紹介したキャディのサービスだ。発注側の調達担当者は、キャディ1社と取引することでコストと負担を軽減できる。実際にはキャディを通じて複数の加工業者から部品を調達しているため、リスクの連鎖も抑制できるというわけだ。

また加藤氏は、キャディのサービスには日本企業が持つ“見えない強み”を活かせるメリットもあると言う。

「わかりやすい競争力を持つ、たとえば“痛くない注射針”をつくれるような企業が、世界シェアをとっていく。一方、特定条件下で、特定の製品をつくらせたらトップ3に入るというような、目に見えにくい強みを持っている会社もある。われわれは多くの企業のそうした“見えない強み”をデータとして持っている」(加藤氏)

小さな変数の積み重ねで生まれるような、簡単にはまねのできない強み。それを持つ企業を束ね、必要に応じて適切に取捨選択できる。それがキャディ自身の強みであり、諸外国が台頭する中で、日本の製造業の生き残りに貢献できるポイントだということだ。
「“日本の強みはこれ”と、一口に言えないことが強みなのではないかと思う。オペレーションの強さの中に、日本の強さがあるというのが私の仮説といえる」(加藤氏)

製造業の未来予測と、両社の取り組み

最後に製造業の未来についてそれぞれ意見を述べた。 佐々木は、製造業者がいったん販売した製品の使用状況をオンラインで把握・ケアしながら、 次の製品開発に活かすサイクルがより高度化していくだろうと述べ、「われわれもその役に立てればと思っている」と、支援することへの強い姿勢を明らかにした。

加藤氏は「180兆円規模の国内総生産額の内、120兆円程度が、部品調達にかかるコスト。調達を最適化すれば、周辺の最適化にもつながる。バリューチェーン全体をデジタルでどう最適化していくかが重要なテーマになると思っており、そこに力を入れていく」と語った。さらに「製造業にもアジャイル開発やデータ・オリエンテッドの風土・文化が根付けば、変化の激しい時代に後れを取らないスピードを得ることができるだろう」と付け加え、対談を締めくくった。

本記事は、2021年1月28日、29日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2021での講演をもとに構成しています。

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