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2021年12月8日事例を知る

デジタル人財化計画~#2 マインドと組織文化変革によるDX人財育成~

社会の大きな転換期、労働市場においては人財不足や雇用の流動化が加速し、働く上での志向も変化している。人事・人財育成領域においても、取り巻く変化や多様性に迅速に対応することが求められる。
デジタル技術を活用して社会課題の解決やビジネスモデル変革に邁進するNTTデータ。組織文化やマインドの変革が、人財育成を成功させる要因であることが見えてきた。

この連載では、全4回に渡りNTTデータの人財育成施策にフォーカス。人事本部 人財開発担当の下川が、担当者と対談、その本質に迫る。第2回となる今回は、官公庁をクライアントに持つ事業部の取り組みを紹介。社内の専門組織の支援を受けながらDXを学び、デジタル活用人材を育てた手法を関係者との対談から紐解く。

目次

デジタルの知識が足りずに、目指す方向性が統一できていなかった

コーポレート統括本部 人事本部 人財開発担当 下川桂(以下、下川)

コーポレート統括本部 人事本部 人財開発担当 下川 桂

コーポレート統括本部 人事本部 人財開発担当
下川 桂

NTTデータでは、デジタル人財育成を戦略的に進めています。全3種類ある人財の中で、今回は「デジタル活用人財」にフォーカスを当ててお話しします。

デジタル活用とは、デジタルツールやソリューションを使いこなし、その過程で得られた気づきをビジネスに生かしていくことを言います。デジタル活用人財は、システム開発や営業として、お客さまに接しながら価値を提供する現場の社員を念頭に置いています。このデジタル活用人財を増やし、デジタル活用力を底上げすることは、NTTデータにとっても、競争力を高める上で重要な課題です。

しかし、最先端のデジタルツール活用ばかりがもとめられる現場というのは、実際にはそう多くはありません。新しいチャレンジをするにしても、現業を抱えながらデジタル活用を継続することは容易ではありません。今回は、ある組織の成功事例を紹介します。数々の大規模システムの開発を担ってきた、いわば「トラディショナル」な組織がどのようにして自らのビジネスをデジタル化し、全員参加でメンバーのデジタル活用力を高めたのか、具体的に紐解いていきます。

第一公共事業本部 第二公共事業部 企画統括部 営業企画担当 課長 金子武彦(以下、金子) 第二公共事業部は約340名の社員が所属する事業部です。官公庁の大規模システムの開発を長年担ってきました。我々の組織もいわゆるトラディショナルな事業部だったと言えるでしょう。そのため最先端のデジタル技術を取り込むべきと思いつつも充分取り込めてはいませんでした。

しかし、世の中でDXが浸透するにつれ、お客さまからDXについての質問を受ける機会が増加します。メンバーは、自分なりのDX観でなんとなく話すなど、十分に対応できていない状況でした。事業部としても知識が不足しており、目指す方向性が統一できないといった課題を抱えていました。

下川 その課題感を抱えたなか、なにがきっかけで大きく事態が動き始めたのでしょうか。

第一公共事業本部 第二公共事業部 企画統括部 営業企画担当 課長 金子 武彦

第一公共事業本部 第二公共事業部 企画統括部 営業企画担当 課長
金子 武彦

金子 ひとことで言えば、トップの決断です。事業部長自らがDX推進の旗を振り、プロジェクトチームを結成し、私を含めた3人で始動しました。そこで始めたイベントが「DXを考える会」です。このイベントは、第二公共事業部に必要な推進策を都度考えて実施するイベントでした。最初はDXを担うべき人財を50名程集めてワークショップとディスカッションを実施しました。この時のワークショップが、デジタルテクノロジ推進室が提供する「DXワークショップ」です。DXの本質を理解する上で非常に有益なワークショップでした。

下川 そのデジタルテクノロジ推進室の責任者が、土井良さんですね。最初にこのお話があったとき、どう感じましたか。

技術革新統括本部システム技術本部デジタルテクノロジ推進室 部長 土井良篤志(以下、土井良)

技術革新統括本部システム技術本部デジタルテクノロジ推進室 部長 土井良 篤志

技術革新統括本部システム技術本部デジタルテクノロジ推進室 部長
土井良 篤志

我々のミッションは、技術部隊のフロント組織として、全事業部と連携してデジタル案件を創出し推進することです。事業部を支援し、一緒にDXを進め、デジタル活用人財を育てることは我々の使命と合致します。もし、NTTデータのなかでも比較的トラディショナルな第二公共事業部が変われば、NTTデータ全社が変わるかもしれない。そういった期待感も高かったですね。

第二公共事業部の社員と話したところ、DXは単純にデジタル技術を使うこと、という誤解があると分かりました。DXはデジタル・トランスフォーメーションの頭文字ですが、本当に重要なのは、トランスフォーメーション、つまり変革を起こす部分。まずは、この変革をおこすためのマインドや気風、仕事のやり方を変える必要がありました。

すべての案件がDX~一人ひとりが自分事化

下川 デジタルテクノロジ推進室のサポートも受けつつ始まった取り組みですが、どういったことから始めて、どのように運営したのかを教えて下さい。

金子 第二公共事業部が主催した「DXを考える会」を2年間で計4回、当初第1回で実施するだけのワークショップだったデジタルテクノロジ推進室と協力した「DXワークショップ」も2年間で計6回、実施しました。

DXを考える会の目的は、メンバーがDXに関する情報を身につけ、自分の言葉でDXを語り行動ができる状態になることです。正しい方向性を知れば、それを実践していく意識改革の第一歩になるといった狙いもあります。当初は選抜した50人から始まりましたが、最終的には全メンバーへと広がりました。

下川 最初に選抜された50名は意欲もアンテナも高い社員だと思いますが、その温度感を300名以上も在籍する組織全体に広げるのは大変なことです。どのようにしてベクトルを合わせていったのでしょうか。

金子 管理職と一般社員、また、職種や担当するシステムによって、DXが遅れていることに対する危機意識が異なりました。その解消のために始めたのは、トラディショナルとDXという二元的な考え方をやめることです。「自分たちが携わる仕事は、全てDXだ」と、事業部長自らが発信していきました。先ほども話しましたが、トップの発信力が強いことは重要な要素です。

知識の習得、マインドの変革

下川 4回行ったDXを考える会ので、どういった取り組みを行ったのですか?

金子 第1回では、DXの知識を得て基礎を固めました。第2回は、3つある統括部ごとにお客さまや業界の状況を改めて分析し、将来のビジョンがどうあるべきかを考えました。そして、そのために必要なお客さまのDXと、そのDXに対して自分たちがやるべき内容を議論しました。

第3回は、SI業界の動きを踏まえたうえで、NTTデータのあるべき姿を考えました。DX推進に対して、メンバーによってさまざまな考え方があります。事業部内の多種多様な意見を知り、世代や職務を超え1つになるためにアンケートを実施。改めて、第二公共事業部が一つになれる方向性を目指しました。

第4回では、第二公共事業部のメンバー全員をオンラインでつなぎ、DXを実践してみての疑問や課題、悩みを事業部長にぶつけました。その手段として、プレゼン中に社員のコメントが画面を横切って流れる独自ツールを開発。匿名なので役職や年次に関係ない、本音の意見です。これを利用して、事業部長が全社員からの疑問や要望、不満に回答しました。トップの考えがさらに浸透し、現場の差が縮まることで、第二公共事業部がひとつになれたと感じています。

下川 DXワークショップでは、どういった取り組みがあったのでしょうか。

土井良 DXが進む中でお客さまからのニーズも急速に変化しています。求められるのは、システムを提供するだけでなくE2Eでお客さまのビジネスを一緒に考えていくマインド。QCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)中心で考えるだけでなく、顧客のニーズに応えていくためにはどうするべきか、言われたことに応えるだけでなく能動的に顧客にアプローチするというマインド変革を目的に据えました。

金子 当初は一部のメンバーのみを対象としていましたが、これでは参加していない社員は自分には関係ないと考えるようになる。そこで、対象を全社員に拡大した上で、階層別研修などにも組み入れるなど、徹底的に浸透を推進しました。

土井良 自分たちの仕事のやり方自体を変えていくことが、トランスフォーメーションの第一歩。関係ないと思っているメンバーに、「お客さまを変革する前に、自分たちから変わろう」と思わせることが必要と考えています。

そのためにも、ワークショップの議論で温度感が違う社員同士が話すことこそ、重要だと思っています。温度感だけでなく、職種が異なる社員同士が意見を交わすことも大事です。営業と開発では細論が分かれるし、開発しているシステムが違っても考え方が異なります。そういった人たちが職種や所属する部署をまたいで意見をぶつけ合うことで、気付きを得てもらうことも目的のひとつです。

下川 DXを考える会、DXワークショップを実際に開催してみて、苦労したことや上手くいかなかった点などはありますか。

金子 それはもう、いろいろと(笑)。特に悩んだのは当初、DXを考える会で取り組んだディスカッション内容が、すぐに業務に反映されないことです。しかし、失敗がないように100%準備をしていると、なかなか最初の一歩を踏み出せません。失敗を恐れずに前に進むことのほうが重要です。指針となる方向さえ見失わなければ、その失敗が糧になり徐々に上手く回り始めます。第1回のDXを考える会で、「デジタルを使う=DXではない。トランスフォーメーションが重要」という話が出て、一部の人のマインドが変わりました。そこから、一気にではなく、ジワシワと変化が見え始め、2回目、3回目と段々と広がっていったと感じます。

下川 DXを考える会とDXワークショップ以外にも、関連する取り組みは行われているのでしょうか?

金子 デジタル活用人財であり続けるためには、常にお客さまの一歩先、二歩先を行く必要があります。そのために、新しい知識を取り入れ、実際にデジタルを経験する取り組みを実施しました。

新しい知識の吸収では、社外サービスの紹介や外部講演、クラウドなどの技術セミナーを年に30回以上、開催しています。デジタル経験では、センサーやスマートグラスといったIoTデバイスを利用したサービスを開発する「ガジェットワーキンググループ」を設立。ここでは、コロナ禍の密を避けるためのCO₂センサーを利用した通知アプリや花への水やりを通知するアプリなどを自分たちでつくりました。新しいことに挑戦すること、そして自分で手を動かすことでDX思考がより身につくと考えています。

お客さまと一緒に課題を考え、解決策を提案する

下川 DXを考える会に参加する前は、DXをどのように捉えていましたか。また参加後はどのようにマインドが変化しましたか?そして現場では、業務やお客さまとの接し方がどう変わっていったのでしょうか。日々、お客さまと直接接している笠原さんにお伺いします。

第一公共事業本部 第二公共事業部 第一システム統括部 貿易流通システム担当 主任 笠原基幹(以下、笠原) 恥ずかしながら、参加前は「最新のデジタル技術を駆使してお客さまの業務を変革する」といった技術先行のイメージでした。しかし、参加後は「技術は変革のための手段でしかなく、お客さまの課題を把握して解決することが価値の本質だ」と気づかされましたね。

下川 すでに、実際にDX案件に携わっているそうですが、業務内容を簡単に教えてください。

第一公共事業本部 第二公共事業部 第一システム統括部 貿易流通システム担当 主任 笠原 基幹

第一公共事業本部 第二公共事業部 第一システム統括部 貿易流通システム担当 主任
笠原 基幹

笠原 私は、お客さまとともに現場の方にヒアリングを行い、抽出した課題に対して、デジタル技術も活用しながら解決していくプロジェクトに従事しています。これまでは、要件に沿ってシステム開発を行うプロジェクトがメインでした。今は、要件をお客さまと一緒に考えながら、変化する状況に対応すべくアジャイル開発で進めています。

下川 どういったところで、やり甲斐や手応えを感じていますか。

笠原 お客さまと一緒に課題を考えて、解決につながるAI技術を現場に導入し、一定の評価やフィードバックをもらえたときには手応えを感じました。もちろん、肯定的なものだけでなく、否定的な意見もあります。否定的な意見を参考にしつつ、改善を重ねる過程にもやり甲斐を感じました。また、最新技術をキャッチアップしながら、適用できそうな技術や手法を試す過程も面白かったですね。

下川 今後はどういったプロフェッショナルを目指していきたいですか?

笠原 プロジェクトが進行すると、お客さま側の知識やマインドも成長し、進化します。それに負けないように、一歩先を行く技術や考え方を身につけ、より深いスキルを持った技術者として成長していきたいと思います。加えて、お客さまと一緒に考え、価値を生み出していくために、コンサルスキルも強化していくつもりです。

顧客満足度も向上

下川 第二公共事業部のDX推進の取り組みは、笠原さんの事例のようにビジネスにもいい影響を与え始めています。そのほかでは、どういった成果が上がってきていますか?

金子 事業部の文化が変わり、誰もがDXを当たり前に捉えるようになったことが最大の成果です。それによって、お客さまの課題を解決するために、枠に囚われない広がりのある提案ができるようになりました。技術的には、クラウドはもちろん、AI活用やBI、iPaaS、スマートグラスなどのデバイスの活用なども、積極的に提案しています。また提案時に限らず、組織内で新規技術を積極的に検証するDX投資も実施しています。結果として、お客さまに言われたシステム開発だけを行うのではない、提案型の実績が増えています。

現場の取り組みが次へとつながっており、新しい案件の際にはお客さま側から声を掛けて頂けるようになっています。これはしっかりと関係性が構築されている証で、顧客満足度を測るアンケートにも如実に表れ始めました。

土井良 関係性の構築には、お客さまを待つ姿勢が変化したことが大きいでしょう。今の第二公共事業部は、こちらからお客さまの元へと出向いて自分たちが立てた仮説をぶつけたうえで、顧客と議論することでより顧客のことを知ろうというアクションを起こしており、この点は素晴らしい取り組みだと感じています。

下川 今後、第二公共事業部のDX推進活動は、どういった取り組みや進め方を考えているのでしょうか。

金子 この2年間の取り組みで、文化として定着したと思っています。しかし、ここで終わりではありません。お客さまの一歩先、二歩先を常に維持していかなければならない。そのためには、常に新しい情報を取り入れ、よりスピーディーに対応していくことが求められます。現在もさまざまな研修を継続的に行っていますが、より参加しやすいように1時間単位のショートレンジでの情報提供や勉強会の開催を心掛けています。デジタルは日進月歩です。当然、現場のニーズも常に変化します。そのニーズに合わせて、新しいことにチャレンジできる人財を育成していきたいと思っています。

下川 NTTデータも含め、DX化に取り組んでいる組織・企業が数多くあります。最後に、金子さん、土井良さんから、今後どのように取り組んでいくべきか、方向性などを教えてください。

金子 我々がこうしてDX化していく事でお客さまとの信頼関係はより深いものになってきました。と言うのも、今までは悪く言えばお客さまから要望があったシステムをきっちり作りあげる会社でしたが、今ではお客さまの未来をお客さまと一緒に考え、そして作り上げるパートナーになっていると感じています。これからもお客さまへより良いご提案ができるよう成長していきたいと思います。

土井良 DXの取り組みにゴールはなく、継続的に革新を作っていくこと、そしてイノベーションを生み出すことが重要だと思っています。そのためには、考え方やバックグラウンドが異なる人間とのコラボレーションが効果的です。いろいろなお客さまと話をさせていただく機会がありますが、お客さま側でも掛け声を上げても中々変革が進まないという課題を持たれているケースが多いと感じています。デジタルテクノロジ推進室を、お客さまにもイノベーションを生み出す媒介、カタリストとして使って頂き、起爆剤になれれば嬉しいですね。

下川 DXに取り組んでいながらも苦戦している組織は非常に多く、ある調査では、日本企業のDX化成功率は、20パーセントに満たないとも言われています。その最大の障壁として取り沙汰されているのが、人財と組織と文化です。人財の育成だけでは足りず、組織運営の仕組みや文化に踏み込んだ取り組みがDX化のカギを握ると言えます。

今回の第二公共事業部の取り組みは、まさに組織文化に踏み込んで社員のマインドセットを変え、デジタル活用人財を育てることに成功したと言えます。組織全体でDXのベクトルを合わせ、一人一人の思考や行動に落とし込むプロセスを時間をかけてしっかり行ったことが成功要因の一つと言えるでしょう。また、トップがしっかりとコミットし方針を浸透させたことももちろんですが、トップに共振して施策を実行する金子さんのようなチェンジ・リーダー(施策推進者)の存在や、現場での社員の実践をサポートする管理職の役割も大きかったのではないかと考えます。

NTTデータは私たち自身の変革を進めるだけでなく、お客さまと一緒に活動することで、お客さま財育成や組織改革に対する貢献にもつなげていきたいと考えています。

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