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2022.5.10トレンドを知る

カーボンニュートラル達成のカギ、再エネ普及の最新動向

「2050年までにCO2の排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指す」と宣言した日本政府。その達成に向け改めて注目されているのが、再生可能エネルギーだ。
再生可能エネルギーの普及には、ITによるエネルギーマネジメント・データ流通の仕組みが不可欠。本稿では、先進的な取り組みを行う3社の事例とNTTデータが考える分散化エネルギー社会の実現に関するプレゼンテーションの要諦をまとめた。

目次

分散型電源で沖縄の再エネ主力化を目指す

ネクステムズ、日新システムズ、エナリス。この3社は、ITを活用して先進的な再生エネルギーの活用やエネルギーマネジメントを手掛けている。その代表的な取り組みが、以下3つである。

  • ネクステムズ:「宮古島における需要家リソースを活用した電力エネルギーシステム」
  • 日新システムズ:「地域マイクログリッドを実現するエリアアグリゲーション技術」
  • エナリス:「再エネアグリゲーションによる分散型エネルギー社会の実現」

今回は、それぞれを牽引する方々が、自社の取り組みについて概要を解説。最後に、NTTデータが目指す分散化エネルギー社会の実現について述べる。

最初は、ネクステムズの代表取締役社長である比嘉 直人氏が電力エネルギーシステムについて説明する。ネクステムズは宮古島に事業会社である『宮古島未来エネルギー』を設置。ここで、「宮古島における需要家リソースを活用した電力エネルギーシステム」として、オンサイトPPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)と再生エネルギーサービスプロバイダ事業を提供している。

「各家庭に太陽光発電システム、蓄電池、エコキュート、あるいはEV充電器などを無料設置して、使用した分だけ利用料金を支払ってもらうビジネスモデルです。機器類はネクステムズが遠隔で監視・制御して、エネルギー消費のタイミングを図っています」(比嘉氏)

目指すのは、人々の暮らしに寄り添った分散型電源を地域に普及させ、電力ネットワークをコントロールすることだ。そのデータを沖縄電力とも共有しながら、グリッドとして需給バランスを整える取り組みを進めている。現在は、約700カ所に太陽光発電システム、蓄電池、エコキュート、EV充電器を導入しているという。

「宮古島に留まらず、久米島でも現地のガソリンスタンドと共同出資した事業会社を立ち上げています。また、2022年度中には、石垣島や小離島でも事業会社を立ち上げる予定です。沖縄本島では、沖縄電力から普及展開をしたいという申し出があり『おきでん かりーるーふ』というサービスメニューで、現在300軒ほどに展開を行っている最中です」(比嘉氏)

図1:今後の地域エネルギー事業のあり方

図1:今後の地域エネルギー事業のあり方

比嘉氏は「私たちが取り組む分散型電源は、地域の経済活性化や住民サービスの向上、社会コストの低減につながっており、さまざまなSDGsの目標達成に貢献できると考えています。カーボンニュートラルの実現のため、再生可能エネルギーの主力化、分散化、そしてすべてのデータの監視、制御を更に推進していきたいと思っています」と締めた。

複数の再エネリソースを有効活用する電力需給制御システム

次の取り組みは、日新システムズの「地域マイクログリッドを実現するエリアアグリゲーション技術」だ。

「実は、ネクステムズの比嘉氏とはご縁があり、その出会いのお陰で2016年から『宮古島市島嶼型スマートコミュニティ実証事業』に参加することができました」と語るのは、日新システムズの執行役員でありシステム・ソリューション事業部長の小松 宣夫氏である。

『宮古島市島嶼型スマートコミュニティ実証事業』は、IT・IoTによる需要の制御により、エネルギーの面的なマネジメントを実現するシステムを構築。太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーを最大限効率的に利用し、より安定的、持続的、低コストでエネルギー供給を目指す実証実験だ。

日新システムズは、電力需給制御に必要なクラウドシステムおよび屋外で使用できるゲートウェイの技術開発を担った。

「この実証実験で培った技術を生かして、ネクステムズと共創した電力需給制御システムが、『エリアアグリゲーションシステム』です。クラウドと屋外型IoTゲートウェイで構成されており、蓄電池、エコ給湯機、EV充電器など複数のエネルギーリソースを有効活用し余剰電力を効率制御します」(小松氏)

図2:エリアアグリケーションシステム

図2:エリアアグリケーションシステム

主にPPA事業者を対象に提供しており、太陽光の予測、発電などを行いながら、エリアに設置したエコキュート、蓄電池等のエネルギーリソースを遠隔から一括で制御できるという。「家庭では最適な自家消費技術が可能になり、エリアでは簡単に太陽光を大量導入できるようになるシステムです」と小松氏。今後は、発電設備やアグリゲーターに対して需給バランス調整などの指令を行う『簡易指令システム』に接続することで、容量市場や需給調整市場への参入もサポートするという。

最後に小松氏は、「NTTデータさんとも連携を進めることで、世界各国で起こっているエネルギーに関わる社会課題を解決していきたい」と締めた。それを受けて、NTTデータ テレコム・ユーティリティ事業本部 グリーンエネルギービジネス推進室 室長の江原 貴之も「NTTデータは、センター側のスケールシステムは得意ですが、『エリアアグリゲーションシステム』のような技術は弱いところもあります。ぜひ一緒に技術協力ができればと考えています」と応えた。

需要側と供給側を一体で調整する『再エネアグリゲーション』

「再生可能エネルギーアグリゲーションによる分散型エネルギー社会の実現」について話すのは、エナリス 執行役員 事業企画本部 本部長の平尾 宏明氏だ。

平尾氏は「これから重要になるのは、再生可能エネルギーの発電事業者を含めて、需要側と供給側を一体で調整する『再生可能エネルギーアグリゲーション』です」と強調し、その在り方について、需要側、発電側、それぞれのニーズから説明した。

「需要家側のニーズは、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)に頼らない再生可能エネルギーの使用です。具体的には、追加性のある再生可能エネルギー(※1)を長期的な視点で調達したいといった声をよく耳にします。それ応えるように、オフサイトPPA(※2)や自己託送(※3)も増えています」(平尾氏)

発電側のニーズは、FITに依存しない発電事業だ。ここで課題になるのが、計画値同時同量制度(※4)で決められた内容の達成と長期的な販売先の確保である。

「これらの課題を解消するのが再生可能エネルギーアグリゲーションだと考えています」と語る平尾氏。その方法のひとつとして、アグリゲーターが発電所を束ねて電気を販売する仕組みがあるという。また、発電所を束ねて発電予測を行い、発電計画を出すといったことも可能となる。

図3:再エネアグリケーション

図3:再エネアグリケーション

平尾氏はまとめとして、「これまで手掛けてきた需要側の制御で再生可能エネルギーの安定供給を実現し、引き続き再エネの利用拡大に貢献をしていきたい。加えて、今後はアグリゲーション技術も使って、再エネの利用拡大を目指したいと思います」と抱負を述べた。

(※1)追加性のある再生可能エネルギー

新たな再生可能エネルギー設備に対する投資を促す効果がある再生可能エネルギーのこと。

(※2)オフサイトPPA

需要家が所有していない土地の太陽光発電設備などで発電された電力を、一般の電力系統を介して購入者へ供給する電力販売契約。

(※3)自己託送

自社で発電した電気を一般電気事業者の送配電網を使い、別の場所にある自社の工場や施設に等に送電するサービス。

(※4)計画値同時同量制度

発電事業者は、販売計画に対応した発電計画・合理的な予測に基づく需要計画を策定し、計画に沿った調達・販売を実需給の直前まで行う制度。

分散型エネルギーの大量導入を促進する『グリーン分散エネルギー情報流通基盤』

最後は、NTTデータの江原が『グリーン分散エネルギー情報連携基盤』について紹介する。
「一方通行の集中型電力系統から、分散・双方向型のエネルギー形態にバリューチェンジする必要があります」と考えを述べる江原。その実現のために、「(1)送配電会社」「(2)ノード/ドメインのオーナー」「(3)系全体」が抱えている課題に踏み込んだ。

図4:解決すべき課題

図4:解決すべき課題

「(1)の送配電会社は配電網の安定化のために、不安定なDER(分散型エネルギー源)や再生可能エネルギーの情報を集めて、リアルタムでの潮流マネジメントを実現しなくてはいけません」(江原)

(2)のノード/ドメインのオーナーとは、新電力や配電ライセンサー、アグリゲーター、EVを展開している事業者、自治体などでDERのリソースを持っている関係者だ。江原は、「彼らは、自分自身で持っていたローカルのグリッドから、クロスドメインの観点で横断的に電力融通や最適化を行う必要があります」と指摘する。

(3)の系全体とは、需要家のバリューチェーン、サプライチェーン、バランスグループのこと。
「系全体では、エネルギーデータを活用して付加価値のあるユースケースを開発や環境価値や都市計画、金融取引などのサービスを展開してエコシステムを形成することが重要です。例えば、エネルギーのデータを活用したカーボントレースとCO2取引の連動もできるでしょう。スマートシティでは、電力データから街の動静を分析して都市計画に活用するといった使い方も考えられます」(江原)

この、「(1)送配電会社」「(2)ノード/ドメインのオーナー」「(3)系全体」が抱える3つの課題を解決するのが、2022年度から実証実験を始める『グリーン分散エネルギー情報流通基盤』だ。「オープンでかつシームレスにエネルギー情報流通をできるような基盤づくりに取り組んでいます」と江原。必要な機能要素を5つ、考えているという。

「1つ目は、さまざまなDER装置から情報を集められるプロトコルフリー。2つ目は、大量なエネルギーデータを高速に処理する能力。3つ目は、クロスドメインにおけるドメインごとのセキュリティポリシーを担保する仕掛け。4つ目は、需要家と供給者をマッチングするP2P。最後は、エネルギーのデータを用いたAIによる需給の最適化です」(江原)

これにより、分散電源の管理や各種のサービス、配電網の安定化に資するプラットフォームとして、DERの見える化、データ活用による把握・予測・制御、取引サービスの創出が実現可能な仕組みを提供するという。

『グリーン分散エネルギー情報流通基盤』でアグリゲーターが連携する世界

ここまで、先進的な取り組みを行う3社の事例とNTTデータの『グリーン分散エネルギー情報流通基盤』を紹介してきた。最後に、それぞれの講演者がNTTデータに期待することを述べた。

「ネクステムズは、再生可能エネルギーのバランスを取るために、地域マイクログリッドに取り組んでいます。今後、系統電力ネットワークのデジタル化も必要になり、需要家サイドとの連携も求められるはず。そこには、強固で高度化されたプラットフォームが欠かせません。『グリーン分散エネルギー情報流通基盤』の実用化が待ち望まれます」(比嘉氏)

「1社で成し遂げられることには、限界があると思っています。各々の強みをうまく組み合わせることで、2、3倍の事業メリットが出せるし、お客さまに対しても便益の提供範囲を広げることができます。NTTデータさんと事業スキームを作りながら取り組んでいけると嬉しく思います」(小松氏)

「現状ではエナリスはアグリゲーター同士が協調できる基盤を持っていません。そういった意味で、『グリーン分散エネルギー情報流通基盤』によって、アグリゲーターが連携を取れる世界を実現して頂きたいと思います」(平尾氏)

これらの意見を受けて江原は、未来への決意を力強く述べた。

「NTTデータは、『グリーン分散エネルギー情報流通基盤』を通じて再生可能エネルギーの大量導入を実現する手段を提供します。それによって、分散化エネルギー社会とカーボンニュートラルの実現を目指していきます」(江原)

本記事は、2022年1月27日、28日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2022での講演をもとに構成しています。

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