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2023年3月31日トレンドを知る

先進技術と共創イノベーション ~世界6カ国にイノベーションセンタを設立~

NTTデータは中期経営計画(2022年度~2025年度)において、「先進技術活用力とシステム開発技術力の強化」を重要な戦略の1つと位置付けている。この戦略を現場で担うのが、世界6カ国に設立された「イノベーションセンタ」である。同センタが置かれているのは日本、北米、イタリア、ドイツ、中国、インド。本稿ではイタリア・ドイツのEMEAL(欧州・中東・アフリカ・中南米)イノベーションセンタ、および北米イノベーションセンタを取り上げ、NTTデータにおける先進技術活用とイノベーション創出の取り組み、その考え方などについて解説する。
目次

6カ国の拠点でイノベーションプロセスを標準化

次々に新しい技術が生まれる時代。企業が持続的な成長をめざすためには、技術の長期的な動向を見極める力は欠かせない。同時に、各産業および各企業の特性を把握した上で本質的な課題を見出し、それに対して最適な技術を組み合わせて解決を図るソリューション構築力も問われている。

NTTデータ 技術開発本部 イノベーションセンタ センタ長の古川洋は、イノベーションセンタの目的について次のように説明する。

「イノベーションセンタの目的は高度な技術を世界中から獲得し、先進的なお客様と一緒にR&D(研究開発)を推進することです。6カ国でセンタを立ち上げるにあたって特に意識したことの1つは、イノベーションプロセスをできるだけ標準化することです」

6カ国にイノベーションセンタを設立

6カ国にイノベーションセンタを設立

各センタはそれぞれが、いくつかの注力する技術テーマを掲げている。プロセスの標準化により各拠点が協力し、複数の専門性を融合させたイノベーションを促進することが可能になる。

NTTデータ 技術開発本部 イノベーションセンタ センタ長 古川 洋

NTTデータ 技術開発本部
イノベーションセンタ センタ長
古川 洋

「各地のイノベーションセンタでは、まず先進技術の成熟度を確認し、評価します。これを『テクノロジー・バリデーション』と呼んでいます。その上で、その技術がお客様に事業価値をもたらすかどうかを検証します。これが『ビジネス・バリデーション』です。各地域のイノベーションセンタが協力しつつ、最大の効果を発揮するためには、インプット/アウトプットの視点に基づくプロセスの標準化が欠かせません」(古川)

イノベーションプロセスの標準化

イノベーションプロセスの標準化

様々なステークホルダーがつながり化学反応を起こす

イタリアでEMEALイノベーションセンタを統括するPietro Scarpinoは、特に量子コンピューティングとインダストリアルメタバースに注力しているとした上で、同センタの3つの戦略を次のように説明する。

「3つの柱は『変革』と『専門性』、そして『つなぐ力』です。新しいテクロジーへの取り組みは、お客様のビジネスの成長や変革に寄与するものでなければなりません。また、私たちは各産業の専門性を一層磨いていこうと考えています。業種業態の豊富な専門知識を備えた上で、個々のお客様のニーズを把握してソリューションを提示するのです。そして、イノベーションセンタをハブとして様々なステークホルダーを繋ぎ、グローバルにイノベーションを推進していきます」(Scarpino)

NTT DATA Italia Head of EMEAL Innovation Center Pietro Scarpino

NTT DATA Italia
Head of EMEAL Innovation Center
Pietro Scarpino

つながる対象は多様な産業・企業、クライアント企業の各部門、スタートアップや研究機関、NTTグループの各社など幅広い。イノベーションセンタの重要な目的の1つは新規ビジネス開発であり、そのためにステークホルダーが集まる場も用意されている。こうした場を通じて、新たなアセットを生み出し未来の創造をめざすのである。その実現手法として、Scarpinoは以下の4つを挙げた。

  • (1)高度な専門性を備えた技術アドバイザリー
  • (2)お客様のニーズを把握するとともにNTTデータのケイパビリティを示す場ともなるイノベーションスペース
  • (3)実務的なアプローチ
  • (4)初期段階からの各部門の巻き込みと信頼関係の構築

「イノベーションセンタは単に新しい技術を紹介するためだけの場ではなく、それをフックとして、お客様に私たちが提供できるすべての価値を示し、新たなビジネスへとつなげていくための場所なのです」(Scarpino)

お客様のニーズを把握するとともにNTTデータのケイパビリティを示す場である「THE SPACE」は、最先端の技術を紹介する新しいコンセプトのショールームだ。様々なデジタルデバイスを駆使して、先進技術を容易に、かつ分かりやすく表示する。こうした環境の中でクライアントをはじめ、R&Dパートナーなどのステークホルダーとの議論は活発化される。

「THE SPACE」 2カ所のイノベーションセンタをライブで繋ぎ、共にプレゼンテーションを行うこともある(右下)

「THE SPACE」
2カ所のイノベーションセンタをライブで繋ぎ、共にプレゼンテーションを行うこともある(右下)

「お客様のビジネスを加速するために、『THE SPACE』では技術の複雑性を取り除き、分かりやすい形でその効果を示しています。開設から9カ月の間に、すでに90件以上のイベントが開かれ、200人以上が参加しました。主なオーディエンスは、お客様企業の経営層です。このような方々に対して、これからも最新の技術でいかに変革を実現するかをお見せしていきたい。そして、技術が未来につながっていることを実感していただきたいと考えています」(Scarpino)

開催されたイベントには10以上の国のステークホルダーが関与しており、すでに30以上のビジネス機会が創出されたという。

お客様とともに挑戦するインダストリアルメタバースの構築

イノベーションセンタが重視しているのが、パートナーシップアプローチだ。先進技術を保有する企業との共同提案、クライアントとの共同ラボ、大学や研究機関との共同研究などである。

「例えば、NVIDIAとのパートナーシップを通じて、私たちはコンピューティングやAIを活用し、お客様のビジネスにおける課題の解決をめざしています。別の例としては、メディア企業と一緒に立ち上げた共同ラボがあります。ここでは新技術の評価とともに、ビジネスに即したPoC(概念実証)なども行っています。また、研究機関とのコラボレーションの機会も増えています」とScarpinoはいう。

前述した産業ごとのメタバースの取り組みも加速している。公共、メディア、エネルギー、製造業、通信などの分野で、メタバースを活用したR&D、PoCなどが進行中だ。

「インダストリアルメタバースの活動は、デジタルツインのコンセプトをベースに実施しています。物理的な設備や機器などに合わせてデジタルレプリカをつくることで、様々なユースケースが生まれます。例えば、NTTデータとNVIDIA、お客様の3社を中心に行っているPoCでは、データセンタの高精度なデジタルレプリカを構築しました。これにより、データセンタの動きをシミュレーションすることができます」(Scarpino)

デジタルツインで再現されたデータセンタ

デジタルツインで再現されたデータセンタ

イノベーションセンタでは、他にも挑戦的なプロジェクトが幾つも走っている。「グローバルなコラボレーションを加速するカギ、それがイノベーションセンタです」とのScarpinoの言葉通り、イノベーションセンタの国境を越えた活動はますます活発化している。

5~10年先に主流となる技術を見極める

北米イノベーションセンタの責任者であるTheresa Kushnerは、イノベーションセンタの取り組みついて次のように説明する。

NTT DATA Services Head of NA Innovation Center Theresa Kushner

NTT DATA Services
Head of NA Innovation Center
Theresa Kushner

「私たちは世界中からイノベーション人材を集め、先進技術の可能性を解き放つ活動をしています。2~3年先ではなく、5~10年先に主流となる技術を見極め、その可能性をお客様とともに追求し、その価値の実現をめざしています。また、世界中のスタートアップや大学・研究機関との関係の構築・強化も進めています」

イノベーションセンタには、新たな価値の実現に向けたオペレーションモデルがある。これはアイデアを育て、成長・拡大するためのモデルでもあり、3つのステップがあるという

「イノベーションスタジオにおける中心はお客様です。お客様のニーズを把握し、技術の必要性を評価します。どのような課題があるのか、どのような解決策が有効かを見極めるプロセスともいえるでしょう。次にイノベーションスタジオで特定された課題に対して、解決策となる技術を検討します。幅広い技術を網羅的、包括的に検討し、それぞれの成熟度を評価します。研究機関やスタートアップとのコラボレーションも行われ、PoCなども実施しています。こうしたプロセスを経て、コンピテンシーセンタへと進みます」(Kushner)

オペレーションモデルの3ステップ

オペレーションモデルの3ステップ

コンピテンシーセンタで開発された具体的なソリューションはクライアントの実環境に展開し、その拡張をめざす。

「イノベーションスタジオが意識しているのは、お客様視点での活動です。ここでは、お客様は日々の業務から解放され、自分たちの目標に対しての重要な課題に集中出来ます。私たちはお客様の短期的な課題に向き合うとともに、その課題を将来有望な技術で解決しようとしています。最終的な目標は、革新的なお客様とともに、R&Dのコ・クリエーション(共創)を実現することです」とKushnerは話す。

その際、他のイノベーションセンタとの連携も重要だ。様々なステークホルダーと協力し、関係する専門知にアクセスしながら、技術の価値をビジネス価値へと転換させていく。

高まるデジタルヒューマンへの期待

北米イノベーションセンタがフォーカスする技術テーマは、顧客接点関連の分野だ。具体的には、デジタルヒューマンとスマートスペースである。

「いま、多くの産業分野で人材不足が顕在化しています。例えば、リアルな店舗のカウンター業務、コールセンター業務などにデジタルヒューマンを導入すれば、こうした課題の解決に寄与できるでしょう。デジタルヒューマンの構成要素はアバター作成、ボイスクローニング、アバターカスタマイゼーション、可視化プラットフォームなど。我々はこれらの構成要素について、様々な技術を評価します。例えば、アバターの表情や色が自然に変化するように、どのような技術やツールを使うべきかを検証しています。イノベーションセンタには、必要な要素をどのように組み合わせればいいのか、実ビジネスの中にどう適用すべきかを提案できる人材も揃っています」(Kushner)

イノベーションセンタでは、技術に関する知識だけでなく、クライアントのビジネス特性や環境を把握した上でベストな提案ができる人材の育成にも注力しているという。

北米イノベーションセンタが注力する2つのテーマ

北米イノベーションセンタが注力する2つのテーマ

スマートスペースで空間の最適化をめざす

北米イノベーションセンタが注力するもう1つの分野が、スマートスペースだ。その対象は店舗やオフィスから都市の規模まで、つまり、スマートハウス、スマートストア、スマートオフィス、スマートファクトリー、スマートシティなどである。あらゆる空間をスマートな場所にするために、イノベーションセンタは世界中からケイパビリティと専門知を結集している。

スマートスペースとデジタルヒューマンを組み合わせることもできる。スマートストアやスマートシティなどの様々な空間で、デジタルヒューマンの活用の可能性が広がっている。

「店舗や都市といったスペースで何が起きているかを知るのは難しいですし、スペースの一部を変化させたときに何が起きるかを予測することはさらに難しくなります。スペースを構成する場所で何が起きたかを察知し、その情報を統合・可視化して予測、最適化をめざす。バーチャルスペースを活用することで、リアルなスペースとの相互作用が可能になるのです」(Kushner)

例えば、小売業向けの在庫管理最適化、あるいは店舗を訪れた顧客のための仮想試着スペースなどといったスマートスペースはすでに実用化されており、デバイスなど技術の進化に伴って、今後より複雑で高度なスマート化が進むことが期待されている。デジタルヒューマンやスマートスペースに限らず、北米イノベーションセンタは様々な分野で新たな価値創造に取り組もうとしており、その挑戦はまだ始まったばかりだ。

本記事は、2023年1月24日、25日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2023での講演をもとに構成しています。

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