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2013.2.28技術トレンド/展望

IPデータキャストのサービス応用

放送波を使ったデータ伝送技術を活用することで、多種多様なファイルを端末に届けることができ新しい放送サービスが可能となります。

IPデータキャストとは

IPデータキャストは放送波(ブロードキャスト)や通信網(マルチキャスト)に「IPパケット参考1」を乗せて、各種デバイス端末へ一斉同報でマルチメディアファイル(テキスト、静止画、動画等)のデータ伝送を行う技術のことです。放送波を利用するため、完全片方向でファイルを端末に送り届ける必要があります。これを実現するために、FLUTE(File Delivery over Unidirectional Transport:RFC3926)プロトコルによるカルーセル伝送に加えて、AL-FEC(Application Layer Forward Error Correction)参考2を適用することで、パケットがロスしてもデータを送り届けられる仕組みを確立しています。放送波を使うことのメリットは、端末の台数が増えても通信のようなトラフィック集中時の輻輳が避けられる点や、デジタル放送のデータ放送よりも多種多様でサイズの大きなファイルが送り届けられる点です。これらの特徴を活かすことで、新しい放送サービスが実現可能になります。

【図】

図:IPデータキャストによるデータ伝送の様子

IPデータキャストを利用したサービス例

2012年4月に開始されたV-High帯(207.5~222MHz)の携帯端末向けマルチメディア放送「NOTTV®」では、「シフトタイム放送サービス」として、毎日、新聞コンテンツや数100MBの映像ファイルが配信されています。このサービスはIPデータキャストにより実現しており、NTTデータは最大で4GBの大容量ファイルを送出するサーバと受信用クライアントを世界で初めて商用化しました参考3。また、近い将来にサービス開始予定のV-Low帯(90~108MHz)の携帯端末向けマルチメディア放送では、防災情報配信にIPデータキャストの適用が検討されています。一斉同報のメリットを活かし、ユーザが持つ端末に直接、緊急情報や避難生活で必要となる行政の情報を送り届けられるようにするものです。NTTデータでも2012年12月~2013年の2月にかけて主に宮城県内で災害情報伝達の実証実験を行い、その有効性を検証しました参考4。今後は規格化に取り組む予定です。さらに、デジタル放送の新たなサービスとして、主に関西のTV局が中心となり、IPデータキャストを利用して放送中の番組に関連する情報をスマホやタブレットに配信する「マルチスクリーン型放送サービス」の検討が進められています。

今後の応用分野

M2Mでは通信コストが大きな課題となっていますが、IPデータキャストによりセンサやデバイス端末に一斉同報でデータを送ることで下り回線のコストの削減が期待されます。V-Low帯マルチメディア放送では、放送波の空いた帯域や時間帯にM2Mデータの送信に活用するような放送波の通信利用が検討されています参考5。また、IPデータキャストで使われるFLUTEプロトコルは、LTEでのマルチキャスト配信規格であるLTE-eMBMS(enhanced Multimedia Broadcast Multicast Service)でも採用されています。この技術を利用すると特定のエリアにいるユーザに一斉同報でデータを送ることが出来るため、急増する通信トラフィックへの対策の1つとして期待されています。現在、規格化の最終段階で一部の国では規格の確定に合わせて実証実験を開始する動きもあるようです。

NTTデータではこうした動きをウォッチしながら、IPデータキャストの新たなサービス適用を検討しています。

【図】

図:IPデータキャストの応用分野

注釈

  • 同じファイルセットを一定周期ごとに繰り返し伝送する伝送方式

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