グローバルIPv4アドレスの枯渇とIPv6対応
まず、現在のグローバルIPv4アドレスの状況について整理しておきます。既に、アジア太平洋地域のIPアドレスを管理するAPNICの在庫は2011年4月に枯渇し、ヨーロッパ地域のIPアドレスを管理するRIPE NCCの在庫も2012年9月に枯渇しています。また、Geoff Huston氏が公開している「IPv4 Address Report参考1」によると、北米地域のIPアドレスを管理するARINや、南米地域のIPアドレスを管理するLACNICの在庫も2014年に枯渇すると予想されています。在庫が枯渇したとは言っても、各ISPが既に保持しているグローバルIPv4アドレスはまだ利用できるため、ISPのユーザがグローバルIPv4アドレスの割り当てを受けることは今でも可能となっています。とはいえ、ISPが持っているグローバルIPv4アドレスまでもが枯渇するのは時間の問題です。そろそろIPv4が使えないユーザが出現する可能性があります。
それでは、このグローバルIPv4アドレスの枯渇にどのように対応したら良いのでしょうか。根本的な解決策はIPv4の後継であるIPv6への対応です。IPv6では128ビットの長さのアドレスを使用する(IPv4は32ビット)ため、当分は枯渇しないと言われています。しかし、IPv4とIPv6は互換性がないため、IPv6に対応させるには非常に手間がかかってしまうという問題があります。
IPv6への対応方法
例えば、あるWebサイトをIPv4とIPv6の両方に対応させようとした場合には、レイヤ2スイッチを除き、すべてのネットワーク機器は、IPv4とIPv6の両方に対応した「デュアルスタック」のものに置き換える必要があります。そして、WebサーバやDNSサーバなどのOSやミドルウェアだけでなく、Webサーバ上で独自開発したアプリケーションを動かしている場合には、そのアプリケーションもIPv6に対応させる必要があります。例えば、クライアントのIPアドレスによってアクセス制御をしていたり、アプリケーションレベルでアクセスログを取得していたりした場合は、プログラムのIPアドレスを処理する部分をIPv6アドレスにも対応できるように改修する必要があります。
IPv6対応は大変な作業になりますが、対応を容易にする方法もあります。1つ目は、Webサーバの前に設置されているロードバランサでIPv6からIPv4に変換する方法です。ネットワーク機器はIPv6に対応させる必要がありますが、改修に時間がかかるWebサーバはIPv6に対応させる必要がないというメリットがあります。2つ目は、Webサイト側は全くIPv6対応をせずに、Akamai参考2に代表されるような、IPv6からIPv4への変換機能を持つCDN(Contents Delivery Network)サービスを活用することで、インターネット側でIPv6対応する方法です(図)。
IPv6対応は、手間がかかる(=お金がかかる)だけで、何もメリットはないと考えている方もいますが、IPv6しか利用できないユーザが現れてからでは手遅れです。そろそろ、IPv6対応を本気で考えてもよい時期ではないでしょうか。