社会実装を加速するロボット業界の動き
近頃、ロボットで培われた技術を活かし、自動運転、パワーアシスト、テレプレゼンスロボの利用が活発化するなど、世界的にもいろいろな動きが出てくるようになりました。12月には、GoogleがBoston Dynamicsを買収するなど、新たな局面の予感もします。
また最近の動向の一つとして、サービスロボットの実用に向かうにはまだ距離がある中で、Amazonのドローン(小型無人飛行機)による配送サービス企画のような、割と扱いやすいデバイスを活用し、より実用に近づけようとする挑戦的なスタンスが多く見受けられます。
ロボット実用化に向けた課題については、その用途により研究開発進捗は異なりますが、主に「技術面」「コスト面」「安全面」に集約される認識です。
これらの課題に対して、「ロボットのNW化」「クラウドロボティクス」というアプローチにより達成していくとともに、POC(Proof of Concept:概念実証)を、より効率的に回すことで実用化を加速させると考えています。
図1:サービスロボット実用化に向けた課題認識
クラウドロボティクスのトピック~RoboEarthとそこから見たトレンド
そのようなサービスロボットの実用化に向けた課題に対し、クラウドロボティクスの実現に向けて各国が取り組んでいる中で、欧州でRoboEarthという興味深いプロジェクトが行われています。11月に行われた国際会議IROS2013でもさまざまな成果報告がなされたようです。欧州の主に複数の大学が中心となり研究を進めている取り組みですが、ABB、KUKA、Kiva Systems、Google等といった企業も名を連ねており、今後の展開も期待できる内容となっています。
詳細はここでは割愛しますが、興味深いポイントとして、連携するロボット技術のオープンソースのミドルウエアとして米国で推進しているROS(Robot Operating System)を利用し、クラウドを活用した知識共有やタスク生成、強力な演算能力との連携を容易にする環境の実現を行っています。
図2:RoboEarthの全体概要
これらは上述の課題に有効に働く要素が多く取り入れられており、まだ研究開発の域は出ていませんが、クラウドロボティクスの可能性を広げる取り組みとして期待できます。
RoboEarthプロジェクト自体は今年度までの取り組みですが、その成果活用や研究開発は継続して行われるとみられ、今後も動向はウオッチしていく必要がありそうです。
社会実装にむけた課題と展望
一方で、サービスロボット適用においては、実用化に近づける、社会実装するためには技術だけでない部分も多く存在します。よく引用される例として、英国の赤旗法というものがあります。赤旗法は、19世紀後半公道で自動車を走らせる際に、「自動車は、運転手、機関員、赤い旗を持って車両の60ヤード(55メートル)前方を歩く者の3名で運用することを規定する」(Wikipediaより)、という法律で、車本来の使い方ができなかった結果、車の導入そのものが英国で遅れ、業界的に他国の後塵を拝する形になった、と言われています。ロボット技術に関して、日本は先進国と言われながらも、一般的に法制度上の問題から社会実装が遅れがちになっていますが、その先入観を払しょくできる営みも、根本的に必要である時期であると考えます。
冒頭、ドローンによる配送を取り上げました。当然守るべき安全性はあると考えますが実用化に向けた積極的な取り組みがどれだけ行えるか、また、サービス開発のサイクルを早くするための組み合わせ技術が実現できているか、というのが、クラウドロボティクスにおいてもさらに重要になってくるでしょう。