人間能力の自然な拡張
情報端末やロボットによるサポートを通じて、人の知的能力や身体能力が自身に負担の無い形で強化されるようになります。例えばロボットスーツを着ることで身体能力を増強して重い物を楽に持ち上げたり、人工網膜デバイスを埋め込むことで視力を回復したり、脳波によってコンピュータを操作するBMI(Brain Machine Interface)参考1のようなことが可能となってくるでしょう。特に顕著なものがウェアラブルデバイスです。メガネ型が有名ですが、指輪型、腕輪型、時計型、コンタクトレンズ型、洋服型などさまざまなタイプが登場してきています。今後は壁や床などに埋め込んだ機器を利用するアンビエントコンピューティング注にも注目が高まるでしょう。こうした人間能力の自然な拡張を通じて、身体的な限界や時間やスキル的な課題が解消され、特に高齢化社会で、より豊かな生活を送れるようになると考えています。
人間のモデル化
人間工学という分野がありますが、今後はさらに人間そのものが科学的に分析されることで理解が深まり、人間の生体、感覚、行動、心理に合わせたさまざまなサービスが生み出されると考えられます。例えば生体に着目すると、iPS細胞参考2を用いた再生医療や、DNA情報を活用した効果の高い投薬などは既に研究が進められています。感覚の面では、味や香りや触覚をデジタルデータとして伝達し、離れた場所で再現することも徐々に可能となってきました。行動分析では位置情報や購買履歴を用いるのが主流でしたが、視線や手の動きといった途中経過情報の取得と分析まで進むことで、より精密で高度な広告サービスが生まれてくるでしょう。心理面では、モチベーションを高めるゲーミフィケーションという手法がビジネスに適用され始めています。人間のモデル化を通じてさまざまなサービスが生まれることは、新しいビジネスのチャンスでもあると考えています。
モバイルセントリック
スマートデバイスは爆発的に普及しており、FacebookやYouTubeの利用内訳でも、モバイルからの利用が40%を超えるような状況です。スマートデバイスは社会インフラの一部となり、各種のデバイスやサービスを繋ぐ「ハブ」としての位置付けを獲得するでしょう。モバイルによって繋がりが活発化する典型的なサービスとして、モバイル決済やモバイルヘルスがあげられます。スマートデバイスに専用機器を装着してクレジットカード決済機能を付けたり、心拍や血圧などの生体情報をスマートデバイスがセンサーとして計測・収集するようなことも普通に行われるようになってきました。今後は、リアルな地図上にバーチャルな区切り空間を設けるジオフェンシングサービス参考3の適用も進むでしょう。自宅を出るとスマホがマナーモードに切り替わったり、店舗に入ると自動的にアプリが立ち上がりクーポンをゲットできるような仕組みです。モバイルに適したインターフェース、例えばジェスチャーや視線による操作、会話による音声操作などもさらに高度化していくと考えられます。
図:人間拡張やモデル化
注釈
- 注周囲にあるセンサーや情報機器類を意識せず利用し、恩恵を受けられる環境のこと。