1.継続性という側面
IT技術の進化によって日々サービスが生み出され、また、企業内の業務改善等も活発に行われている。この中で特に重視されているのが、エスノグラフィなどのユーザー理解の手法やビッグデータ分析などによる新しいサービスの開発や業務改善ポイントの発見という側面である。新たなニーズを発見する場面ではこうした技術は有効な手段になるが、ビジネスでは開発したサービスを継続的にユーザーに利用してもらうための方法も考えなければ、サービスは短命で終わることもある。継続性をいかにサービスに組み込むかが重要である。継続性を考えるアプローチには、例えばロイヤルティプログラムなどもあるが、サービス利用への動機づけという人の心理に着目するというアプローチがゲーミフィケーションの得意とする領域である。続けたいと思う心理をゲームの良い面と組み合わせてサービスの継続利用につなげるのである。
2.ゲーミフィケーションで考慮すべきこと
ゲームにはまるという継続性を考えれば、ガートナーの「2015年に全世界のトップ企業の4割近くがITにゲーミフィケーションを導入する」という予測もうなずける。
ところで、人はなぜ何かを楽しいと思い夢中になるのか?その理由を解明する分野として行動心理学やモチベーション理論といった心理学がある。フロー理論や段階的学習といった研究成果は、自分にもできる、もっと難しいものにチャレンジしたいといった要素を裏で含んでいるゲームと組み合わせれば、人を夢中にさせサービスの継続利用につなげることに大いに活用できる。逆に、人が夢中になる理由がなければ継続利用は難しいともいえる。
昨今のゲーミフィケーションの流れは、ポイントやバッヂといったゲームの要素を部品化し、早く容易にさまざまなITに組み込めるようにするものである。顧客管理のセールスフォースの事例もこうした部品をうまく適用している。しかし、既存のサービスにゲームの部品を組み合わせただけでは短絡的である。ユーザーが夢中になる理由がその部品やその組み合わせによるメカニズムにあるかが大切であり、サービスの継続利用という目的に結びついていなければいけない。ガートナーが「2014年には全ゲーム化アプリの8割が当初の目的を達成できずに終わる」とした理由がここにある。ポイントやバッヂなどでユーザーが夢中になる仕組み自体をゲームメカニズムと言い、夢中になることによってサービスを継続的に利用するという結びつきを考え、適切にゲームの良い面を取り入れていくことをゲームデザインと言う。これらの検討をおろそかにすると、ゲーミフィケーションの適用は失敗に終わるのである。
3.ゲーミフィケーションの推進
NTTデータグループでは、2年前よりゲーミフィケーションに取り組んでおり、例えば、石巻BPOセンタに適用した事例では、センターで働くオペレーターのモチベーションアップによる生産性向上やコミュニケーション活性化による業務品質向上を目指し、オペレーターの心理や考えや業務特性を詳細に分析しゲームの要素を取り入れながら、業務支援目的のシステム利用の促進にもつなげている。また、ITのバリューを継続させビジネスに役立てることは重要命題である。今後も、こうしたビジネスへのゲーミフィケーション適用事例を蓄積しつつ、人の心理とビジネスとITとをうまく融合したソリューションを展開していく予定である。