生命や感情の科学
近年、脳に関する研究は劇的に進展し、従来の通説の誤りが明らかになってきています。例えば脳細胞は生まれてから減る一方で1日に10万個死滅すると言われていましたが、減るだけでなく新しい細胞を生み出していることが確認されました。こうした脳の研究はヨーロッパやアメリカでも積極的に行われており、例えば脳の仕組みを解明する「BRAIN Initiative参考1」や、脳をコンピューターでシミュレートする「The Human Brain Project参考2」などが進められています。脳や感情は人の意思決定や行動に大きく寄与するため、脳科学をビジネスで活用しようとする新しい潮流が登場しています。日本でも40社超の企業や研究機関が参画する「応用脳科学コンソーシアム参考3」にて、脳科学を用いたマーケティング、製品開発、店舗設計、人材育成、経営マネジメントなど幅広い研究が行われています。脳や感情をビジネスで活用した具体的な事例としては、コミュニケーションロボットによる高齢者の認知症予防、「マインドフルネス」と呼ばれる瞑想による従業員のストレス低減、ゲームの仕組みを模して従業員のモチベーションを高める「ゲーミフィケーション参考4」などがあります。脳機能を通常よりも強化する「ニューロエンハンスメント」分野も今後さらに研究開発が進むと考えられます。脳の理解と活用が進んだ先には、"幸福を最大化すること"が国や企業の経営方針に取り入れられる時代になるかもしれません。
人工頭脳への挑戦
人工知能は現在最もインパクトのある技術トレンドと言えるでしょう。コンピューターパワーの指数関数的向上に伴い、人工知能で実現できることは大きく広がりを見せました。チェスや将棋などの知的競技では既に人間の能力を超えており、Deep Learning参考5による学習で認識精度が高まり、今では画像を見るだけでコンピューターが自ら画像内容を解説する文章を付けることすら可能になってきています。また、従来は人にしかできなかった知的作業や創造性を必要とする領域にもコンピューターは進出しています。例えば人工知能が記事原稿を執筆したり、ロゴをデザインしたり、コールセンターで受け答えしたりといった、ビジネスでの活用事例が出始めています。人工知能がこのまま成長を続けると、やがて人間を超える思考力を発揮し、自ら学習判断し、自分自身をコピーして増やしながら365日24時間不眠不休で働き続けられるため、あらゆる仕事が人工知能に取って代わられることも想定できます。この歴史的転換点はシンギュラリティと呼ばれ、その期待と脅威について海外でもさまざまな議論がなされています。