「コンピュータの透明化」
テクノロジーやメディアは人間の身体を拡張する存在だ、という考え方があります。例えば自転車は足の拡張、電話は口の拡張、カメラは記憶の拡張です。こうした既存の製品に加え、近年はより自然な形で身に付けて扱えるウェアラブルデバイスが登場してきています。やがて、道具として使っている感覚が無くなり、まるで自分の身体の一部であるかのように、存在を意識せずテクノロジーを扱えるようになるでしょう。ウェアラブルデバイスには、時計型、ヘッドマウント型、腕輪型、コンタクトレンズ型、洋服型参考1などさまざまな形状があります。Google Glass参考2で有名なヘッドマウント型は、航空機の整備や医療など専門性の高い領域で既に採用が進み、Apple Watch参考3で有名な時計型は、体温やストレス情報を自然に収集するなど、新たな機能が注目を集めています。また、ウェアラブルの次に来ると考えられる物に、体内にデバイスを取り込むインプラントやサイボーグ、環境にデバイスを埋め込むアンビエントがあります。例えばマイクロチップを体内に取り込み、外部からコントロールして任意の場所で薬品を放出する仕組み参考4や、壁が電子デバイス化することでスクリーンになり、ジェスチャーで壁を操作するようなことが可能になると考えられます。さらに、暗闇でも見える視覚や、高速で走ることができる脚力、瞬間的な記憶力や発想力の向上など、自身の能力を高めるエンハンスメントの領域もさまざまな研究が進められています。コンピューターを意識せず自然に使えるようになったその先について、人間はどこまでの高みを求めるのか問われる時代になるでしょう。
未来のモビリティ
未来の乗り物として今最も注目されているのは自動運転車だと思われます。自動運転車の技術が確立されインフラとして普及すれば、都市の交通システムが丸ごと刷新される可能性があります。例えば自動運転タクシーが配備され、スマホで呼べばいつでもすぐに来てくれる環境があれば、車を保有する人が減り、都市内の渋滞緩和や駐車場スペース削減に繋がると考えられます。人の判断ミスが主原因である交通事故が激減し、自動車保険などのビジネスモデルにも影響があるでしょう。自動運転車の他にもモビリティの進化は多岐にわたります。リニアモーターカーや超音速旅客機などの高速移動手段も今後登場してくるだけでなく、宇宙や深海や火山といった危険地域の探索向けモビリティや、高齢者の足となるパーソナルモビリティにも期待が掛かります。さらに、モビリティの革新は物流にも大きな影響を与えると考えられます。物流ではドローン参考5を用いた配送サービスが代表的な事例でしょう。こうした新しいモビリティや新交通システムが普及するには社会的な受容が必要になり、法整備も求められます。自動運転車が事故を起こした場合に許されるのか、といったような心理的な課題をどう乗り越えるのか、これは技術面での実現よりも難しい問題であり、検討には多くの時間が必要になると考えています。