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2023.3.2事例

誰もが横浜からイノベーションを起こす時代へ~キーマンに聞く事業アイデア創出ワークショップの取り組み~

2022年11月、“横浜市にイノベーションを起こすアイデアを持った人を増やす”を目的に、横浜市主催事業「YOXO事業アイデア創出ワークショップ」が開催されました。NTTデータを含む7企業・団体が特色あるワークショップを提供、のべ80名以上に参加いただき、盛況に終わりました。今回はこの企画・運営を担った、横浜未来機構・福井さんへのインタビューを通して、横浜未来機構の考え・想いについて詳しくお伺いしました。

NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。

(左から)今回インタビューに応えてくださった福井さん、聞き手のNTTデータ野口

福井 直樹
一般社団法人横浜みなとみらい21
企画調整部
横浜未来機構事務局
リクルート社を経て、上場企業、ベンチャー企業数社で新規事業開発責任者を歴任。2022年に横浜未来機構に参画し、インターンシッププログラムやアイデア創出ワークショップの立ち上げ、YOXOカレッジの運営など、産学公民連携プロジェクトを担当。

野口 友幸
株式会社NTTデータ 法人コンサルティング&マーケティング事業本部 リードサービスデザイナー。顧客企業への支援や共創型プロジェクトでサービスデザインに従事。「ビジネスデザインスプリントField Trip」を企画運営。

YOXO事業アイデア創出ワークショップの企画背景

野口:本日はありがとうございます。はじめに福井さんが所属する横浜未来機構について教えてください。

福井さん:横浜では、2019年1月の「イノベーション都市・横浜宣言」以降、横浜からイノベーションを生み出そうという熱が高まり、企業や大学とも一緒になって、インターンシッププログラムやスタートアップ支援、社会人も学べるYOXOカレッジの開講などを行なってきています。

わたしたち横浜未来機構はみなとみらいエリアを中心に、企業間のコラボレーション促進や事業支援を目的に、2021年3月に推進団体として設立しました。現在は正会員企業が90社ほどに増えています。活動が始まってちょうど1年が経ったくらいです。

横浜未来機構

写真左:野口 写真右:福井さん

野口:横浜未来機構のミッションと、今回の「YOXO事業アイデア創出ワークショップ」との関わりを教えてください。

福井さん:横浜未来機構は、横浜市が実施する本事業の運営事業者として、主に2つの役割を担っています。

①    企業間のコラボレーションのコーディネート、実証実験の支援
②    人材育成や事業支援における横浜市との協働事業

今回は、上記②の一環として「YOXO事業アイデア創出ワークショップ」を企画しました。横浜未来機構としては、事業化までの各プロセス・タイミングにマッチした支援をトータルで行いたいと考えていますが、今回は事業化の最初の「自分ごとでコトを起こす」プロセスにフォーカスしてワークショップを開催することにしました。

開催形態をワークショップとしたのは、以下のような理由からです。

・    YOXOイノベーションスクールなどの講義型が多く、参加型のプログラムがなかった
・    講義型には定員があり、たくさんの人には参加いただけなかった
・    ライトでたくさんの人が参加して、共創のマインドセットを持ってもらうきっかけにしたかった

こうした理由から、いくつか特色のあるワークショップを複数提供することで、希望する方がどなたでも参加できて、アイデアを持てるような企画としました。

横浜市と横浜未来機構による記者発表

横浜未来機構による全7ワークショップの紹介ページ

野口:今回、私たちNTTデータが提供した「ビジネスデザインスプリント Field Trip」(以下、BDS Field Trip)を含めて、7つのワークショップをラインナップされました。どのように選定されましたか。

福井さん:横浜未来機構に集まる情報に加え、東京都など他の地域で開催されているスタートアップ支援プログラムなど、アイディエーションに関する取り組みを参考にしました。結果、スタンフォード大学d.schoolが提唱するデザイン思考のような発散と収束のプロセスを踏まえた、アイデア創出に適したワークショッププログラムを選定できました。

野口:提供する7つのワークショッププログラムを構成するのに気をつけたことを教えてください。

福井さん:1つは“横浜らしさ”です。先鋭的で、テクノロジーを駆使するような事業アイデアも素晴らしいと思いますが、横浜市で開催する上で、地域密着のアイデアを出してもらうことができるワークショップであることを意識しました。

もう1つはイノベーションの起こし方として、「観察・情報収集→課題の把握→課題解決アイデア発見→商品・サービス設計」と進めるときに、各ワークショップの特長をプロットして、各プロセスをうまくカバーできるように構成しました。

各ワークショップの特徴

野口:その中で、NTTデータの「BDS Field Trip」をご依頼いただいた理由をお聞かせください。

福井さん:NTTデータは横浜未来機構発足時からの正会員であり、横浜未来機構キックオフイベントへの参加や、横浜オープンイノベーションExpoの登壇など、以前から取り組みを知る機会が多くありました。

そのような中、横浜未来機構の公認プロジェクトである「アイモビ」(ビジネスシーンで乗り合いによって移動するサービス)で、NTTデータの事業創出メソッドであるビジネスデザインスプリントが活用されていることを知りました。このビジネスデザインスプリントを活用したワークショップであれば、「課題解決アイデア発見→商品・サービス設計」のフェーズがカバーできると考え、今回の企画/運営をお願いしました。

事業アイデアを創る!「BDS Field Trip」ワークショップ

NTTデータのワークショップ「BDS Field Trip」は2022年11月13日(日)に横浜関内の“YOXO BOX”で開催しました。ここからは、ワークショップ当日の様子について、お話をうかがいます。

BDS Field Trip当日の様子

野口:日曜日に丸1日かけ、“YOXO BOX”でワークショップを開催しました。当日は福井さんにも運営側としてお越しいただきました。実際に見ていただいた感想としてはいかがでしたか。

福井さん:当日は一般に募集した、横浜での事業創出に興味を持つ19名の、さまざまな企業・個人の方が集まりました。ほとんど初対面同士の方々でしたが、朝からとても話しやすい雰囲気がつくられていたのが印象的でした。午前のアイデア発散と、午後の収束で、1日の長丁場にも関わらず、参加者の満足度も高い、充実したアイデア出しになりました。実際に出てきたアイデアの質の高さにも感心しました。

野口:今回のテーマは「横浜×10年後のシニアウェルビーイング」と設定しました。横浜のエリア情報とシニアウェルビーイングに関する共通理解を促して、10年後に実際にサービスインするような事業を考えてもらいました。当初の狙いでもあった、”横浜らしさ”のある事業アイデアが出ていましたか。

福井さん:はい。横浜でありながらも、それぞれ方向性の違う事業アイデアで、どれも可能性を感じるものでした。介護や終活、人が集う仕組みづくり、横浜近郊の農業とのコラボレーション、余暇での地域貢献ビジネスなど、どれもここ横浜で実現されればいいな、と感じるアイデアばかりでした。また、1日でここまでのものがたくさん出せることには驚きました。

野口:他のワークショップも見た福井さんから見て、「BDS Field Trip」の特長をどのように感じましたか。

福井さん:3点挙げられます。

1.参加者が活発に取り組めるきめ細かな仕掛け
席順を決めるタブレットを使ったくじ引きに始まり、ファシリテーターの皆さんからの声かけや、実績に基づいた発散と収束の構成など、随所に参加者が話しやすかったり、集中できたりする仕掛けがあり、参加者が活発に取り組めるワークショップでした。

2.個人の想いを重視したワークショップ運営
アイディエーションと言えば、個人でアイデアを発散して、グループワークで集約して何個かに統合するような進め方が一般的かと思っていましたが、「BDS Field Trip」は発散したままのアイデアから、自分自身がやりたいと思うアイデアをピックアップし、事業プラン(BDSクイックワークシート)に落とし込む手法でした。こうすることで、個人の想いが強い事業アイデアになることを実感しました。

3.YOXO事業アイデアワークショップとの相性の良さ
個人でも参加できるプログラム内容であることに加えて、簡易ながらも事業プラン(BDSクイックワークシート)に落とし込みができることから、次のアクションに取り組みやすいワークショップになっていました。プロトタイピングによってアイデアを具体にしたり、他者にピッチしてフィードバックをもらったり、次に動きやすい状態になっています。これは、アイデアからビジネスに仕立てて、ヒト・モノ・カネを得て、ビジネスを磨いて世に送り出すYOXOの事業支援と流れにも重なっており、相性が良いと思いました。

BDS Field Tripで生まれた事業アイデアを発表する参加者の皆さん

野口:企画意図に沿ったワークショップが開催できてよかったです。「BDS Field Trip」 は、グローバル実績豊富なイノベーション創出メソッドである「FORTH Innovation Method」の一部を使った発散や、NTTデータの新規事業ノウハウをドリル化した「ビジネスデザインスプリント」のクイックワークシートでまとめる収束を、うまく1日にまとめたワークショップです。

普段はNTTデータ社内やお客さま企業向けに開催していますが、今回のような多様なバックグラウンドの参加者の方にも有効であることを確認できました。このような機会をいただき、ありがとうございました。

これから横浜発のイノベーションを起こすために

最後に、YOXO事業創出ワークショップのプログラム企画全体の振り返りと今後の展望をお伺いしました。

野口:全7種類のYOXO事業アイデア創出ワークショップ全体として、どのように評価されていますか。

福井さん:今回、提供した7つのワークショップで、のべ80名の方にご参加いただくことができました。7つのワークショップはそれぞれの特色がありましたが、全体としては、希望すればどなたでも参加できるワークショップを提供して、多様な方と横浜発のアイデアを創出する、という当初の狙いを達成できたと評価しています。

野口:たくさんの方と多様なアイデアが出せたということですね。その上で、次なる取り組みのお考えがあればお聞かせください。

福井さん:今回の取り組みを通して、横浜にゆかりのある人、職場や住居が横浜の人、横浜に対して何らかの想いを持っている人とのコミュニティが形成できつつあります。こういった人たちと、さらにアイデアを広げたり、深めたりするために、アイデアが持てたら次は動くことができるように、何をしてあげられるといいのか、支援側の立場としては、その仕組みや仕掛けについて考えています。

野口:今回のようなワークショップでアイデアが持つことのできた人たちが、次なる行動を起こす、動くきっかけを支援していくことが次の取り組みですね。横浜未来機構や福井さんとして、その先の展望についてはどのようなイメージをお持ちですか。

福井さん:すでに起業をしたり、横浜で事業を立ち上げたりしている人から話を聞くと、最初から事業を起こそう、と思っていたわけではないことが多いです。最初は好きなことをやっていたら、とか、人にお願いされて対応していたら、という感じで、気がついたら事業としてやっていくことになった、という話を聞きます。

最初のきっかけは案外そういう方が多いのではないかと思っています。事業を起こす本人は気づいていないことも多い、いつのまにか行動していて、気がついたら結構すごいことをやっていた、みたいなことです。私としては、横浜未来機構としても、このような人がたくさん出てくるような環境を作りたいです。

野口:なるほど、最初からイノベーションありきと言うよりも、より自然なきっかけでアイデアを形にしたり、他の人からフィードバックが得られたりすることが大切ですね。

福井さん:例えば、ワークショップで出たアイデアのプロトタイプを作るところまで進めて、それを外に発信できる場所を用意することをやってみたいです。そうすることで、近いアイデアを持っている人が集まったり、お客さま側からコメントが届いたり、双方向でのやり取りが生まれます。このような取り組みによってコミュニティができることが、本当の意味でのオープンイノベーションにつながると思っています。

BDS Field Trip参加者の皆さんとの集合写真

おわりに

「イノベーション都市・横浜」における産学公民連携によるオープンイノベーション実現に向け、仕掛け人の考えや展望をお伺いできました。新規事業創出のきっかけはやはり人であり、人とのつながりから物事が始まっていく起点をどのように生み出すかの重要性を改めて感じるお話でした。ここから始まるオープンイノベーション、私たちNTTデータも当事者として関わっていきたいと考えています。横浜市、横浜未来機構、そしてNTTデータの次の展開にぜひご期待ください!

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