都市ガス業界における共通課題
家庭や事業所などへガスを届けるために張り巡らされた導管。その保守と管理には大きなコストがかかります。さらに、都市ガスネットワーク3社に共通していた課題として、業務の効率化、レジリエンス強化、そして将来的な人手不足への対応等が挙げられると、東京ガスネットワークの木津氏は語ります。

「ガス料金の請求に関わる検針は検針員が各家庭・事業所などを訪問していましたが、今後は人手不足の影響が出てくることを視野に入れなくてはいけません。業務効率化があらゆる業界で課題となる中で、導管の保守と管理もデジタル化し、さらにはデータ利活用によって新たなサービスを創出することも求められています」(木津氏)

災害対応の重要性について、東邦ガスネットワークの伊藤氏もこう語ります。
「当社エリアは南海トラフ巨大地震の被害が大きいと予想されている地域の一つとして、レジリエンスの強化によってお客さまに信頼感を持っていただくことが特に大きな課題です。東日本大震災など各地域での過去の災害を踏まえても、早期復旧の仕組みづくりは欠かせません」(伊藤氏)
こうした課題を背景に、都市ガスネットワーク3社では2010年代前半からスマートメーターの導入を検討してきました。スマートメーターは、遠隔での検針や遮断・復帰、保安監視など、次世代のインフラとして期待される多様な機能を実現することができます。メーターや通信機の開発も3社共同で進めてきたと、大阪ガスネットワークの友岡氏は振り返ります。

「スマートメーターは料金算出に関わるため、開発は慎重に行われ、一部地域での導入実証・改良を繰り返しました。コスト面では通信費が障壁となりましたが、省電力・長距離通信を可能にするLPWA技術(※)の登場でコストが下がり、導入を決断できました」(友岡氏)
低消費電力で10~100Kmといった長い距離の通信を実現できる技術。
データ運用のための3社共同システム「SMANEO」
スマートメーターの導入にあたり、必要なのは通信で取得したデータを運用するシステムです。
当初は各社でシステムの構築が模索されていましたが、コスト面や運用効率面を考慮し、機器・通信規格に加え、システムも3社で共同化する方針となり、2020年12月に共同センターシステムである「SMANEO」の開発に踏み切りました。
しかし、システムの共同化には、機器の共同開発とは次元の異なる難しさが想定されていたと、木津氏は語ります。
「3社の中でも取り組みが早かった東京ガスネットワークは、2019年にエリアを限定した先行導入をスタートしていました。その時は個社での導入でしたが、業務オペレーションに深く関わるシステムを3社で共同化することは、難度が個社導入と比較して数倍になると想像していました。先行導入を支援していただいた際の業務理解と、地方銀行の共同センターなどの共通システム構築・運用の豊富な実績とノウハウに期待して、3社共同のシステム開発もNTTデータに相談することになりました」(木津氏)
このような課題を抱える3社に対して、システム構築に関する提言を行ったのがNTTデータです。
そのポイントについて、NTTデータの中釜は次のように語ります。

「業務の効率化、レジリエンス強化、そして将来的な人手不足への対応という3社の課題に応えるにあたり、重視したのは社会インフラとしての信頼性です。何があっても動き続けるシステムでなければいけないことを大前提に考えた時に、災害時に早期復旧できること、現地作業員がいなくても遠隔でガスの遮断・復帰ができること、また継続的な事業活動に寄与するためには、これから新たな技術が次々と出てくることを見越して機能拡張しやすいシステムであることも重要です。さらに、このような高信頼性を担保しながら、オペレーションや制約が異なる3社の業務のうちどこまでを共通化し、どこから個別対応とするのか。全体における最適解を探りながらのシステム構築を提言していきました」(中釜)
図1:SMANEOの仕組み
図2:SMANEOの機能と効果
3社の業務オペレーション、文化の違いを乗り越えて導いた全体最適
ガスのスマートメーターは、電気のスマートメーターとは異なり、データの取得のみならず、メーターの遮断・復帰作業やガス漏れ等を監視できる導管の保安機能を備える必要があります。このような機能要件をクリアした上で、3社の全体最適となるシステム構造を実現するため、NTTデータでは他業界で培ったノウハウやアセットを総動員すべく、チーム編成を行ったと中釜は言います。
「木津さんから地方銀行の実績のお話もありましたが、金融機関だけでなく、放送、通信、さらには電力のスマートメーターも含め、他業界で共通システムを構築したメンバーをそろえ、SMANEOに必要な限りの社内ノウハウを集結しました」(中釜)
NTTデータの支援のもと、進み出した「SMANEO」プロジェクトの第一弾リリースは2022年12月。そのプロセスにおいて、特に驚いたのはNTTデータの「プロジェクトマネジメント力」であったと木津氏は振り返ります。
「そもそも、大規模なシステムを3社でつくること自体がはじめてで、どんな会話をしながらどんなステップを踏めば実現できるかというイメージが持てておらず、社内からもこの規模のシステムを共同開発することは難しいのでは?という声があがっていました。NTTデータの実績を示しながら社内を説得しつつプロジェクトを開始しましたが、最初の要件のすり合わせが不十分だったこともあり、開発中に多くの仕様変更が発生し、結果的に複数のスケジュールを並行して開発を進めることになりました。オフショア先を巻き込みながらのプロジェクトで、私たちとしてもさすがに予定通りのリリースは難しいかと覚悟はしていましたが、納期を順守して稼働してくださったNTTデータのプロジェクト管理能力は圧巻でした」(木津氏)
NTTデータからの最初の提案が2021年2月、そこから1年8か月という開発期間を経てリリースされたSMANEO。東京ガスネットワークが2022年、東邦ガスネットワークが2024年、大阪ガスネットワークが2025年に、それぞれ運用を開始しました。その中で出てきた課題を踏まえ、2025年5月には第二弾リリースとして大幅なアップデートを実施。この4年以上におよぶ期間の中で、4社でのプロジェクト運用スキームも高度化されていったと、友岡氏は語ります。
「これまでシステム開発は子会社へ発注することが通例でしたが、3社共同のシステムとなると、文化の違いも乗り越えなくてはいけませんでした。個社の要望に対してNTTデータが個別に詳細を確認、真の意図をくみ取った上で3社の合意を形成していくという丁寧なプロセスを踏んでいただき、3社それぞれの文化への対応も時間とともに洗練されていったという印象があります」(友岡氏)
ガス使用量の確認から料金の計算、メーターの遮断・復帰作業、導管の保安といった多様な業務オペレーションが3社それぞれにある中で、どこまでをSMANEOで共通業務化していくべきか。「今回のプロジェクトでは、3社がお互いを理解し合い、共通のゴールを描くための対話を何よりも重視していった」と、中釜は語ります。
スマート化を、ガス業界の成長のきっかけに
2025年5月に第二弾がリリースされたSMANEOと接続するメーターは、東京ガスネットワークで300万台以上となり、遠隔検針も実施しています。
導入の成果について木津氏は、「ガス漏れ通報があった時はすぐにメーターを遠隔遮断し早期に安全を確保することができるようになりました。また、お客さまからの電話によるメーター遮断時の復帰にあたっても、今まではお客さまと電話でやりとりしてメーターの場所から説明し、場合によっては人が現地へ赴くというオペレーションでしたが、それもオペレーターによる遠隔での復帰操作が可能になりました。メーターの圧力低下のアラームによって供給支障を監視し、早期復旧にも寄与しています。さらに、SMANEOで取得したデータをAPIで連携して提供するといった新たな価値創出につなげる取り組みも進めています」と語る。
大阪ガスネットワークでは、2023年10月からスマートメーターの設置が始まり、2025年12月末時点では約140万台が設置され、2025年5月から始まった遠隔検針の台数が約68万台という運用状況です。また東邦ガスネットワークでは、2024年6月からスマートメーターの設置を開始し、2025年12月末時点で約40万台が導入されています。遠隔検針は2025年4月から始まっています。
また、伊藤氏は、スマートメーターの導入を通じて、社内にも変化の兆しが見られると、SMANEOの影響を語ります。
「都市ガスというエネルギーをお客さまに選んでいただく上で、電力をはじめとする他のエネルギーが競合となっています。他業界を視野に、ガス業界ならではのDXを進め、お客さまへの付加価値を向上させることは非常に重要なことです。その一環として、スマートメーターの取り組みもしっかり発信することで、社会的な期待感も高めていきたいと思っています。こういった変革を起点に、社員にも新しいことに対する意欲、DXへの士気が高まってきていると感じています。さまざまな業務におけるDXを進めることはもちろん、それをきっかけに社外への発信、社内の士気を更に高め、成長の好循環を生み出していきたいと考えています」(伊藤氏)
「NTTデータとしては運用状況を見ながら業務改善、効率化を進めるとともにデータ利活用により新たな価値を生み出していきたいです。AI等の最新技術による監視の効率化を含め、あらゆる業務で自動化の推進をご提案し、運用と改善をくり返す中に最先端の技術を組み込み、情報の分析や活用を通じて、ガス業界の発展につながる貢献をしていきたいと考えています」と、中釜は強調しました。
NTTデータはこれからも、さらなる社会課題の解決と業界の持続的成長に貢献していきます。


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