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業界全体と自社の課題に答えを出すCX向上策を推進
第一フロンティア生命は、第一生命グループにおいて個人年金保険・終身保険の提供を通じた、顧客の「資産形成・承継」支援に特化した会社として2007年に設立された。現在は、主に銀行や証券会社、保険ショップなどを代理店として販売するモデルで事業を展開している。
同社で生命保険システムの開発や保守運用に携わり、最近ではCX向上施策を強化するため顧客が利用する個人ページ「マイページ」の利用率アップにも取り組んでいるITデジタル推進部 フェローの川口幸信氏は、まず生命保険業界が一般的に抱えるシステム面の課題を指摘した。

第一フロンティア生命 ITデジタル推進部 フェロー
川口幸信氏
「生命保険は短くても5年、10年、長い場合は終身といった長期契約が中心になるため、20年から30年の継続を前提にシステムが出来上がっています。ですから長期間の安全・安心を第一にシステムを構築し、メンテナンスも長期目線で行わなければなりません。かつ、いまから30年前といえばまだ20世紀ですが、その時代の契約に当てはまるレガシーな部分を残しつつ、最新の契約にも対応する必要があります。加えて保険商品も多種多様で、新たに登場するタイプの保険もあるためシステム自体が複雑になりがちで、DXはどうしても難しい部分があります」(川口氏)
さらには、同社ならではの顧客特性の影響もあると川口氏は続ける。
「当社の場合、保険商品は契約時に保険料を一括で払い込む一時払が中心で、お客さまもまとまった金額をお持ちの高齢層が多い傾向にあります。そのため、いまも紙の書類でやり取りしたい方がいらっしゃいますし、スマートフォンは使えるけれどそれほど得意でない方もいらっしゃるので、多様なお客さまが使いやすいシステムやWebサイトにしなければなりません」(川口氏)
一方、販売チャネルに起因する同社固有の課題もあると、CX戦略推進部 CX戦略企画グループ長の近江澤猛氏が語る。

第一フロンティア生命 CX戦略推進部 CX戦略企画グループ長
近江澤猛氏
「一時払商品が主力という事情に加えて、代理店を通じた販売であるため、お客さまとの直接的接点がほとんどなく、ニーズを正確に把握するのが難しい点も課題に感じています。CX向上に取り組むため5年ほど前から契約者アンケートを実施しているのですが、その回答からは間接接点型ゆえ契約後のフォローが十分でないことがCX毀損の最大要因であるとわかりました。そこでお客さまとのデジタル接点を作る施策としてLINE公式アカウントをスタートし、マイページもそれほど使われていなかったため利便性アップに向けた取り組みを始めることになりました」(近江澤氏)
NTTデータ提案の「デジタルサクセス®プログラム」で課題解決に着手
マイページを使いやすくするため、改良サイクルをより早く回し、リリースもスピーディーに行えるようにしたいと考えていた川口氏。その具体的施策を検討していく中で、マイページのシステムを担当していたNTTデータに相談を持ちかけた。相談を受けたNTTデータは、DX推進・CX強化に向けデジタル変革をサポートする「デジタルサクセス®プログラム」を提案した。
テクノロジーコンサルティング事業本部 インダストリセールス事業部の赤松秀一がその経緯を話す。

NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 インダストリセールス事業部
赤松秀一
「課題を詳しく聞いたうえで解決方法を一緒に検討し、これまで当社がさまざまな企業を支援する中で得たDX/CXに関する知見やアセットを展開していく形で『デジタルサクセス®プログラム』を提案しました」(赤松)
近江澤氏はこの相談に際してNTTデータ側のメンバーと会ったとき、「私たちが取り組もうとするCX強化に向けたシステム開発だけでなく、そのさらに上流となるビジネスそのものについても親身になって話を聞き、一緒に課題を解決し、業務改革していこうという姿勢を強く感じました」と振り返る。
NTTデータが提案した「デジタルサクセス®プログラム」とはどういったものか、赤松が解説する。
「顧客企業の成果創出を第一に考えた包括的プログラムです。ビジネスやデジタル戦略、データを利活用してビジネス価値を創出するための人・組織、必要なデータとシステム基盤やツールを整備し、総合的に支援するプログラムになっており、状況に応じて最適なプランを組み合わせて提供します。今回でいえば、マイページシステムのデータ分析だけでなく、最終的にデータ利活用を内製化し自走させることへの期待と実現への課題感をお持ちと分かりましたので、データをビジネスに活かせる人材の育成も含めた組織内での自発的なデータ活用を推進していくためのサポートを提案しました」(赤松)
図1:デジタルサクセス®プログラムの4要素
具体的な支援内容についてはテクノロジーコンサルティング事業部の服部有加が説明する。

NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 テクノロジーコンサルティング事業部
服部有加
「代理店に集積される顧客情報が、自社に十分に集まりにくいという課題を踏まえ、マイページを顧客接点としてだけでなく、顧客情報を収集する重要な場として位置付けました。マイページの行動ログを活用して顧客理解の深化に取り組み、データを起点としたCX向上への改善サイクルを構築できるよう支援してきました」(服部)
デジタル変革の道筋策定と推進を担う人材育成に大きな効果
「デジタルサクセス®プログラム」は2024年度第3四半期(10月)にスタートした。
「まずはKGI/KPIの構造理解やブレイクダウンを行い、戦略と分析の整合性を保ちながら、STPDサイクルをどう回すのか、組織の役割分担をどう定めていくのかなど大きなデザインを描いていきました。そうして推進プロセスを整えたうえで、実際の改善につなげるためいくつかの分析テーマを設定し、マイページ内のボトルネック特定などに注力していきました。続く第4四半期(2025年1月~)からは、小さなサイクルをクイックに回すことが成果創出につながるという考え方のもと、一つ一つの課題からテーマを洗い出し、優先度の高いものから分析していく作業を進めました」(服部)
図2:STPDサイクルを回す上での各組織の役割
また人材育成については、ITデジタル推進部とCX戦略推進部のそれぞれから計3人が参加し、NTTデータ伴走のもとデータ利活用のプロセスを学んでいった。「今回は主に、ビジネス課題から分析テーマ設定をどういったプロセスで進めていくのかという方法論や考え方を伝えていきました」と服部。育成に参加したITデジタル推進部 CXチームの冨塚氏はこう振り返る。

第一フロンティア生命 ITデジタル推進部 CXチーム
冨塚彩花氏
「以前はデータ分析について学んだことはなく、目の前にあるデータを手探りで触っていた状況でした。それが今回の育成で、なぜこのデータを使った分析が必要なのか、といったところからプロセスを順々に学べたので、手当たり次第に触れるのではなく、しっかりしたプロセスでデータ分析ができるようになりました。また、そのノウハウを他チームとも共有できるようになり、各部門が一緒になって分析できる体制が整ってきました。いまは関連部門が一つの分析結果を共有して施策をスピーディーに打てるようになり、参加して本当によかったと実感しています」(冨塚氏)
「デジタルサクセス®プログラム」によって生まれた変化、得られた効果について近江澤氏が語る。
「それまでの開発はどちらかというと開発者や担当者の勘に頼る部分が大きかったのですが、今回のプログラムでデータをきちんと分析して課題を捉え、優先順位付けができるようになったことが大きな成果の一つです。プログラムに取り組む中でわれわれCX戦略推進部とITデジタル推進部、そしてお客さまサービス部の3部が協力し、組織横断でデータドリブンの議論ができる風土が出来上がりつつあることも感じています。人材育成については、参加者3人の分析スキルが上がったのはもちろん、ビジネス課題とデータを結びつけて考え、その結果を実際の開発に活かして、さらにお客さまの反応も自分たちで確認するサイクルが回るようになり、併せて本人たちのモチベーションアップにもつながっています」(近江澤氏)
より具体的な成果として、デジタル接点を増やす目的で取り組んでいるマイページ登録者の増加施策に関して「分析によりサイトからの離脱がどの段階で多いのかを可視化でき、その要因について仮説を立て、サイト改修も行いました。結果、トップ画面から次画面への遷移率が改修前は47%だったところ、直近は83%に改善され、登録の完結率で見ても21.8%から26.1%へと有意な改善が見られます」と近江澤氏は明かしてくれた。
図3:マイページ登録フローと改善優先度整理
施策検討に役立てるデータをなかなか得られないという課題についても「こういうデータが欲しい、ないなら取りにいこう、という話ができるようになり、いまは各部が協力してデータ活用できる状態になっています」と川口氏が話すように、今回のプログラムが解決につながっているようだ。
マイページについての会議の様子
経営層の積極関与と企業風土、NTTデータの伴走が成功に導いた
NTTデータの伴走により、第一フロンティア生命のDX化・CX向上は順調に進み出している。ではなぜ、同社ではうまく進んだのか。近江澤氏がポイントを提示する。
「実はそもそも社内にDXを加速させたい、CXを高めていきたいという思いが満ちていました。それに加えて、経営層がDX/CXに対してデータドリブンの戦略および施策決定を進めるべきだという強い思いを持っていることも、成功の大きなポイントと考えています」(近江澤氏)
NTTデータの鶴身も次のように評価する。

NTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 テクノロジーコンサルティング事業部
鶴身玲奈
「どの企業もデータ活用にあたってスキルがない、時間が足りない、役割が組織ごとに分断され横連携しづらいといった課題を抱えています。そのとき重要になるのは、経営層が目標を共有し、全組織のゴールを明確にしていくこと。第一フロンティア生命でも、経営層の強いコミットがあったからこそ全社一体で推進できました。さらに、小さな成功体験を早い段階で積み重ねることも重要です。データ活用に向けた組織ごとの役割やゴールを体系立てて整理し、それに基づいて組織横断でのトライアルを実行することで、継続的な改善に取り組む仕組みづくりを行いました」(鶴身)
図4:顧客体験フローとKPI構造の整理
加えて、NTTデータが折に触れ関与したこともやはり効果的に働いたようだ。赤松が話す。
「当社から第一フロンティア生命の経営層へ取り組み状況を報告する中で、人材育成に参加した第一フロンティア生命の冨塚さんたちが実際に取り組んでいる内容を発表する場をセットしました。そうした意味で、当社が経営層と現場のハブとして機能し、それを活かしていただけたこと、そもそもの前提として経営層と現場の距離が近い企業風土があったことが、成果につながる要因の一つだったと思います」(赤松)
「デジタルサクセス®プログラム」はいったん終了し、第一フロンティア生命は次のフェーズへと一歩踏み出している。今回の成果を念頭に、今後に向けて川口氏は「代理店販売というモデルゆえ、現状、実は第一フロンティア生命の名前がお客さまにはあまり知られていません。これからはデジタル接点を増やすことで、まず社名を認知していただきたいということと、そのうえで、データを活かしながらお客さまそれぞれのニーズに合ったサービスと体験を提供し、当社のファンになっていただいて、マイページの利用率を上げていきたいと思っています」と期待感を示した。
その歩みの中で、NTTデータに対しては「いまも生成AIを使ったお客さまへのサービスの届け方などいくつもの提案を受けているので、これからも継続して提案をいただきたいですね」と川口氏。両社が組む今後の可能性にも注目したいところだ。
※「デジタルサクセス®」は株式会社NTTデータの登録商標です。


デジタルサクセスについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/digital_success/
CXイノベーションについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/cx_innovation/
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