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2026.2.25業界トレンド/展望

サービスデザインで読み解く事業変革

デジタル化の進展は、単なるIT導入や業務効率化にとどまらず、企業が「どのような価値を提供しているのか」という前提そのものを問い直している。市場や顧客行動が大きく変化する中、事業の意味や役割の再定義が不可欠である。スタートアップがゼロから価値を設計する一方で、既存企業には蓄積してきたアセットを起点に価値を再構成する視点が求められる。本稿では、NTT DATAのサービスデザイン領域におけるデザイナー集団「Tangity」に所属し、サービスデザインコンサルタントとして活動する長岡仁が、NTT DATAが支援した事例も含む複数の事例をもとに、本業アセットを起点とした事業変革を成功に導くためのキーポイントを、サービスデザインの観点から整理します。
目次

マーケットイン、個別最適化へと変貌したビジネスの新常識

情報を調べるには辞書を開き、住所を探すには電話帳をめくる。これは、私が中高生だった1990年代前半の風景です。しかしインターネットの普及以降、社会は劇的に変化しました。

ビジネスの常識も大きく転換しています。

  • プロダクトアウトからマーケットインへ
  • 所有から利用へ
  • マス市場から個別最適化へ
  • 企業目線から顧客体験へ

こうした変化に対する企業の適応の仕方は、大きく2つに分けられます。

1つ目は「ゼロ→イチ」型です。スタートアップに代表されるこのアプローチは、変化を前提にゼロから新たな価値を創出します。意思決定が速く、試行錯誤を重ねやすい一方で、事業基盤が安定する前の環境変化に影響を受けやすい側面もあります。

2つ目は「イチ→ジュウ」型です。既存企業が、本業で培ってきた顧客基盤、技術、データ、ブランドといったアセットを生かしながら進化するアプローチです。変化に適応し続ける企業に共通しているのは、本業アセットと社会課題を掛け合わせ、提供価値を再解釈している点にあります。

ここからは、3つの事例を通じて、事業変革を成功に導く6つのキーポイントを示します。

「イチ→ジュウ」型の企業が変化に対応する方法

「イチ→ジュウ」型は、既存企業が本業アセットを生かして変化に適応する方法です。既存企業は従業員数が多く業務も複雑で、社会的責任も大きいため、組織改編や承認プロセスが必要になりスピードが出にくい場合があります。変化に対応しきれず、苦境に立たされる企業もあります。

一方で、「イチ→ジュウ」型の企業には、本業で培った顧客基盤やビジネスモデルという強みがあります。過去を振り返っても、アセットを武器に変化へ適応してきた例は数多くあります。例えば、UX設計と統合力を武器に価値を再定義したテクノロジー企業、データと物流を掛け合わせて購買体験を再設計したプラットフォーム企業、研究開発基盤を生かして社会課題解決型へ進化した素材メーカーなどです。

アウトプットは商品、プロダクト、サービスなどさまざまですが、共通するのは「自社アセット」と「社会課題」を組み合わせて着想を得ている点です。以下では、この視点で6つのキーポイントを整理します。

  • キーポイント(1):「何をつくるか」ではなく、「どんな価値として意味づけるか」
  • キーポイント(2):「アイデアを出す場」ではなく、「試しながら育てられる仕組み」
  • キーポイント(3):「声を聞く」のではなく、「行動を見て本音を読み取る」
  • キーポイント(4):「自社だけで完結」させず、「関係者全体で価値をつくる」
  • キーポイント(5):「誰に売るか」ではなく、「どんな場面で使われるか」
  • キーポイント(6):「点の施策」ではなく、「最初から最後までの体験を設計」

【キーポイント(1)】
「何をつくるか」ではなく、「どんな価値として意味づけるか」

製造業A社の事例

製造業A社では、中核となっていた製品市場の縮小をきっかけに、事業の再構築に取り組みました。そこで行われたのは、製品の延長ではなく、技術要素単位でのアセット整理です。ナノ加工、光学、素材設計といった技術を、「生活者や社会にとってどのような価値を持つのか」という観点で捉え直すことで、新たな事業の方向性が見えてきました。
事業変革の起点となったのは、新しい製品アイデアではなく、価値の意味づけを意図的に変えた点にあります。

【キーポイント(2)】
「アイデアを出す場」ではなく、「試しながら育てられる仕組み」

A社では同時に、新規事業を育てるための仕組みも整備しました。新規事業は、アイデアを出しただけでは成立しません。仮説を立て、検証し、学びを次の取り組みに反映するという試行錯誤のプロセスが不可欠です。この事例では、ボトムアップの提案を受け入れる姿勢や、挑戦を前提とした制度設計が、アイデアを事業へと育てる土台となっていました。サービスデザインは、こうした試行錯誤を前提とした環境づくりと密接に関わっています。

【キーポイント(3)】
「声を聞く」のではなく、「行動を見て本音を読み取る」

小売業B社の事例

生活者に身近な場所で事業を展開する小売業B社では、「商品を売る場」という従来の捉え方を見直しました。現場での観察を通じて着目したのは、生活者の発言ではなく、日常の行動です。そこから導き出されたのが、「常にそこにあることによる安心感や利便性」という心理的な価値でした。
生活者自身も言語化していない本音を行動から読み取ることで、提供価値を再設計することが可能になります。

【キーポイント(4)】
「自社だけで完結」させず、「関係者全体で価値をつくる」

B社の取り組みでは、サービスは自社単独ではなく、複数の関係者との連携によって構築されました。行政、外部パートナー、生活者など、関係者全体を視野に入れた設計が行われています。サービスデザインでは、価値は一社で完結するものではなく、関係性の中で共に生み出されるものと捉えます。この視点が、新たなサービスの実現につながっています。

【キーポイント(5)】
「誰に売るか」ではなく、「どんな場面で使われるか」

住環境分野における事例

住環境分野において、Tangityが支援したプロジェクトの一例が、Leroy Merlinです。
同社は、1923年に創業したフランスを本拠とする住宅改装・DIY・園芸用品の大手チェーンです。製品提供の小売業として、芝刈り機などを販売していますが、市場は成長鈍化の傾向にありました。

こうした背景のもと、同社は1世紀以上にわたり築いてきた「地域との信頼」という本業アセットに改めて着目しました。そして、住宅空間をより良くしたいと考える生活者と、専門的な知見や技術を持つプロフェッショナルをデジタルでつなぐ仕組みとして、「Hogami」という新サービスを構想しました。
Hogamiは、住まいに関するさまざまなニーズを持つ生活者と専門家を結びつけるデジタルプラットフォームです。これによりLeroy Merlinは、従来の製品販売に加え、住宅関連サービスの提供へと事業領域を拡張しました。

新規事業において重要なのは、年齢や属性といった顧客セグメントで市場を定義することではありません。生活者がどのような状況にあり、何に困り、どのような結果を求めているのかという「利用される場面」から市場を捉え直すことが重要です。Hogamiの構想にあたっては、リサーチを通じて2つのユーザーアーキタイプが見出されました。自ら手を動かしてDIYを楽しみたい層と、専門家の知見を活用し、確実な成果を得たいと考える層です。そのうえでHogamiは、後者の「専門家に依頼したい場面」に着目し、安心して任せられる体験を設計しています。このように、「誰をターゲットにするか」ではなく、「どのような場面で価値が必要とされているか」に焦点を当てることで、新たな市場機会を明確化しました。

【キーポイント(6)】
「点の施策」ではなく、「最初から最後までの体験を設計」

サービスの価値は、個別の施策や接点だけで決まるものではありません。利用前から利用後までを含めた体験全体によって評価されます。Hogamiは、生活者と認定プロフェッショナルをデジタルでつなぐプラットフォームです。しかし、その本質は単なるマッチング機能ではありません。住まいに関する課題の整理からサービス内容の明確化、見積もり取得、専門家の選定、コミュニケーションと予約、施工の実施、完了後のフォローに至るまで、一連のプロセスを一貫して設計しています。このような全体設計により、生活者は住環境改善をスムーズに進められ、プロフェッショナルにとっても新たなビジネス機会を創出できる仕組みとなっています。情報取得から実行、完了後までをつなぐ体験全体の設計は、サービスデザインにおける「体験の連続性」を体現した取り組みといえます。

サービスデザインが事業変革に果たす役割

3つの事例に共通しているのは、

  • 本業アセットを再解釈し
  • 行動や利用シーンから価値を捉え直し
  • 組織やエコシステムを含めて体験全体を設計する

というプロセスです。

サービスデザインは、単なるアイデア創出手法ではありません。価値の再定義から実装までを一貫して支えるアプローチです。
NTT DATAは、新規事業創出において構想段階から市場・技術・ビジネスモデルを整理し、開発、実装、運用までを一貫して支援しています。
また当社自身も、変化の激しいIT業界において「イチ→ジュウ」で進化してきた企業です。本業アセットを再解釈しながら進化してきた実践知と、サービスデザインの思考、そして確かな実装力。これらを掛け合わせることで、NTT DATAはお客さまの事業変革に伴走し続けます。

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

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