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2026.6.24事例

AI時代の競争優位をどう見極めるか NTT DATAの戦略的知財活動

AIの進化やデジタルインフラ需要の拡大により、企業の競争力は「優れた技術を生み出す力」だけでなく、「その強みを見極め、守り、事業成長に活かす力」によって左右される時代になっている。NTT DATAでは、AI領域のLITRON®やデータセンター領域のエネルギーマネジメントなどを対象に、知財情報と事業情報を組み合わせた分析を行い、競争優位性の可視化と知的財産の戦略的確保を進めている。本記事では、知的財産を単なる権利として捉えるのではなく、事業競争力の強化や新たな価値創出につなげるNTT DATAの戦略的知的財産活動を紹介する。
目次

1.はじめに~戦略的知的財産活動の全体像

NTT DATAでは、AIをはじめとする先端技術の進展や、ITサービス市場における競争環境の変化を踏まえ、事業戦略や技術戦略と連動して、特許やノウハウなどの知的財産を事業の強みづくりに活かす取り組み、すなわち戦略的知的財産活動を推進しています。
特に、“AI-empowered New Value & Productivity”および“Next-Gen Infrastructure”を全社の注力領域と位置づけ、知的財産を事業競争力の強化につなげる取り組みを展開しています。

具体的には、IPランドスケープ(※1)を活用し、特許・論文・製品・市場などの情報を組み合わせた分析を実施しています。これにより、競合企業の研究開発動向や市場ニーズを踏まえながら、NTT DATAの技術やサービスのどこに競争優位性が存在するのかを見極めています。この分析から見えてきたのは、成長領域における競争優位は、単に先端技術を保有しているだけでは確立できないということです。

NTT DATAの戦略的知的財産活動の特徴は、こうした分析結果を「調査」で終わらせず、事業上の打ち手に結び付けている点にあります。顧客価値につながる差異化要素を特定し、それを特許・ノウハウ・データ等の知的財産として確保するとともに、営業活動や顧客提案、パートナー連携に活用することで、技術上の強みをビジネス上の競争優位へと転換することを目指しています。

(※1)IPランドスケープ

知的財産情報と事業情報を組み合わせて自社の強みや競争環境などを分析し、経営・事業戦略に活用する取り組み

2.AIビジネスにおける取り組み

NTT DATAは、2027年度までにAIエージェント関連ビジネス売上3,000億円の達成を目標に掲げるとともに、Smart AI Agent®構想のもと、AIを活用した新たな価値創出と生産性向上に取り組んでいます。AI市場の競争が急速に激化する中、持続的な競争優位性を確保するためには、技術開発だけでなく、その強みを知的財産として戦略的に確保・活用することが重要です。

こうした考えのもと、NTT DATAではAI領域を戦略的知的財産活動の重点領域の一つに位置付けています。特に、Smart AI Agent®構想に基づくAIソリューション群であるLITRON®については、事業部門と知的財産部門が一体となり、知的財産情報と事業情報を組み合わせた分析を実施しています。

具体的には、市場で提供されている競合製品を対象に、機能面・技術面の比較分析に加え、関連する特許動向の調査・分析を実施しています。その結果、企業ごとの業務に応じたAIエージェントのカスタマイズやパーソナライズ、情報アクセス制御を含むガバナンス機能が重要な差別化要素になりつつあることが見えてきました。NTT DATAでは、こうした領域をLITRON®の競争優位性の源泉として捉え、お客さまにとって価値が高く、かつLITRON®の差異化要素となる技術や機能を特定しています。さらに、それらを知的財産として保護するため、特許として出願したり、ノウハウとして管理したりすることで、技術上の強みの保護を図っています。

この取り組みにより、単に特許件数を増やすのではなく、事業競争力の源泉となる技術に重点を置いて特許出願・権利化を進めています。実際に、LITRON®に関連する複数の技術について特許出願を行っており、一部の新機能リリースにおいては、その機能に関連する特許出願を実施していることを公表しています(※2)

また、NTT DATAでは知的財産を「守り」の手段としてだけでなく、「攻め」の手段として活用することも重視しています。営業部門とも連携し、知的財産情報分析によって明らかになった差別化要素や、当社が保有する特許について認識を共有し、営業活動や提案活動への活用を進めています。これにより、単に「高機能なAIソリューション」であることを訴求するだけでなく、競合製品と比較した技術的特徴や、それがお客さまの業務課題の解決にどう結び付くのかを、より具体的に伝えることができます。

さらに、分析結果は、今後の機能開発テーマや、パートナー企業との連携領域の検討にも活用し、AIビジネスの拡大に向けたエコシステム形成にもつなげることが期待されます。
今後はこうした活動をさらに強化し、知的財産を通じてNTT DATAの技術力や信頼性を分かりやすく伝えることで、AIビジネスの拡大や新たな価値創出につなげていきます。

(※2)

参考:NTT DATAニュースリリース「企業が自ら業務特化型AIを開発可能にする基盤の提供を開始」
https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2025/120901/

3.データセンタービジネスにおける取り組み

生成AIの普及を含めたデジタル技術の急速な進化により、データセンターはAI時代のデータ処理を支える重要なインフラとして、その存在感を一層高めています。需要の拡大に伴い、データセンター事業では提供容量やグローバル展開に加え、電力効率、冷却技術、エネルギーマネジメント、サステナビリティ対応などが競争力を左右する要素となっています。

こうしたデータセンター領域では、建築・電力・空調・通信・IT運用など、複数の技術領域が重なり合っています。そのため、特許情報を含む知的財産情報を分析することで、各技術領域の主要プレイヤーや、今後差別化を図るべき領域を把握しやすくなります。NTT DATAでは、IPランドスケープの考え方を活用し、事業環境や技術動向を知的財産の観点から可視化することで、データセンター事業における競争優位の見極めを実践しています。

エネルギーマネジメント分野における取り組み

具体的には、エネルギーマネジメント分野を対象に、特許をはじめとした技術情報を技術分野全体の傾向として広く分析し、技術領域の広がりや今後注目すべきテーマを把握しています。この分析から見えてきたのは、データセンターの競争力が、サーバー収容能力や拠点数だけでなく、AI活用に伴う消費電力の増大を踏まえ、限られた電力をいかに効率的かつ安定的に活用できるかへと広がっているという点です。エネルギーマネジメントは、知的財産情報の分析からも技術開発やサービス高度化の余地が大きい領域であることが見えてきています。

また、エネルギーマネジメントは、設備技術、IT運用技術、データ分析技術が交差する領域であり、単一の技術だけで差別化が難しい分野です。施設運用データ、AIによる予測・制御、グローバルな運用ノウハウを組み合わせることで、電力効率と安定稼働の両立という価値を生み出せます。NTT DATAは、データセンター事業で培った運用知見と、IT・AI・データ活用の技術力を活かし、競争優位の確立を目指しています。

このように、知的財産情報の分析は、今後強化すべき技術テーマや、知的財産として確保すべき領域を見極め、事業戦略や技術開発の方向性を支える取り組みです。特にエネルギーマネジメント分野では、今後自社の強みを形成すべき領域と、パートナー連携を深めるべき領域の判断にも活用しています。

4.今後に向けて

本記事で紹介した活動は主に日本国内を対象としていますが、今後はNTT DATA, Inc.やNTT DATA AIVistaを含むグローバルでの連携、さらにIOWNやtsuzumiなどNTTグループの技術アセットとの連携にも活動の幅を広げていきます。加えて、AI・データセンターに続くPhysical AI等の新領域についても、知的財産情報分析を通じた競争優位性の特定と知的財産確保を推進していきます。

NTT DATAは、知的財産を「守り」の手段としてだけではなく、顧客への価値訴求やパートナーとのエコシステム形成につながる「攻め」の経営アセットとして活用していきます。知的財産情報を起点に、自社の強み、顧客に提供できる価値、外部と連携すべき領域を明らかにすることで、グループ全体の事業競争力向上に貢献していきます。

京阪奈OSK11データセンターの開設に関するニュースリリース:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2026/040900/

知的創造活動の最大化による社会課題解決と経済成長の両立を目指すホワイトペーパー「知的財産が創るより豊かで調和のとれた社会への道筋」に関するニュースリリース:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/081800/

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