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2026.8.24事例

生成AIによるFAQ高度化 大規模VoC分析から得た実践知

コンタクトセンターには、問い合わせや応対履歴など、業務改善につながるVoC(Voice of the Customer)データが大量に蓄積されている。しかし、通話データには口語表現、表記揺れ、重複、途中で終了した会話、担当部署への転送履歴などが含まれ、そのままFAQ整備に活用することは難しい。特に制度や手続きが複雑な領域では、FAQの品質が応対品質や業務効率を大きく左右する。本稿では、生成AIを用いて数十万件規模のVoCデータを分析し、実運用に活用できるFAQ案を整備した取り組みを基に、大規模データを扱う際の工夫とFAQ運用を成功させるためのポイントを紹介する。
目次

1.問い合わせデータ活用が求められる背景

大規模な問い合わせ窓口では、利用者からの質問に迅速かつ正確に回答することが求められます。取り扱う制度や手続きが多岐にわたる場合、オペレーターはFAQや業務マニュアルを参照しながら回答するため、FAQが現場の問い合わせ実態をどの程度カバーできているかが応対品質を左右します。

FAQが不足している場合、オペレーターがその場で回答できず、専門部署への確認や転送が増加します。また、FAQが存在していても、質問文が検索しにくい、回答が分かりにくい、例外条件が記載されていないといった問題がある場合、現場で十分に活用されません。

つまり、FAQ運用の課題を解決するには、実際の問い合わせをカバーできているかという「網羅性」と、正確かつ分かりやすく回答できるかという「回答品質」の両面から改善する必要があります。一方、数十万件に及ぶ問い合わせデータを人手だけで確認し、FAQ化すべき内容を抽出することは現実的ではありません。
そこで本プロジェクトでは、生成AIと類似度分析などの技術を組み合わせ、大量のVoCデータからFAQ候補を効率的に抽出・整理するプロセスを構築しました。

従来型とAI活用型のFAQ整備プロセスを比較した表

2.生成AIを活用したFAQ作成プロセス

本プロジェクトでは、通話内容をテキスト化したデータや応対内容の概要情報など、数十万規模のVoCデータを対象としました。

最初に行ったのは、FAQ化に適さないデータを取り除くための前処理です。通話データには、会話の途中で終了したものや、問い合わせ内容が不明確なもの、担当部署への転送のみで回答が含まれないものなどがあります。これらをそのまま生成AIに入力すると、質問や回答を誤って解釈し、不正確なFAQ候補が作成される可能性があります。そのため、FAQ化に適さないデータを分類・除外する工程を設けました。

次に、生成AIを用いて通話データから利用者の質問とオペレーターの回答をQA形式で抽出しました。通話単位ではなくQA単位に構造化することで、問い合わせ内容を比較しやすくし、後続の分類やグルーピングにつなげています。さらに、抽出したQAに対して類似度分析や分類処理を行い、実質的に同じ内容の問い合わせをグルーピングしました。これにより、表現が異なる質問の重複をまとめるとともに、問い合わせが集中しているテーマや、件数は少ないもののFAQとして整備すべきロングテールの質問を把握しました。

最後に、生成AIが抽出・作成したFAQ候補を、業務知識を持つ担当者が確認しました。質問文が検索しやすい表現になっているか、回答が業務ルールに沿っているか、条件分岐や例外が不足していないか、公開時点の制度や業務ルールに適合しているか、といった観点で修正し、実運用で活用できるFAQ案へと仕上げました。

VoCデータからFAQを作成する流れを示す5段階プロセス図。

3.数十万件規模の分析で見えた実践上のポイント

生成AIを活用すれば、大量の問い合わせデータを一括して処理できるように見えます。しかし実際には、小規模データで有効だった処理が、大規模データへ拡張した際にもそのまま機能するとは限りません。本プロジェクトでは、まず1,000件程度の小規模データで検証を行い、各処理やそのプロンプトのフィジビリティを検証しました。

その後、数十万件規模へ拡張したところ、同じグループに含まれる複数のQAを生成AIで要約し、一つのFAQへ統合する処理に課題が生じました。処理を繰り返す中で、回答が抽象化され過ぎ、元のQAに含まれていた具体的な条件や注意事項が失われるケースが明らかになったのです。

そこで、複数のQAから新しい回答文を要約生成する方式ではなく、グループ内で最も標準的かつ具体的なQAを代表例として選定する方式へ変更しました。原文に近いQAを残すことで、生成AIによる情報の欠落や意味の変化を抑え、FAQ候補の品質を安定させられました。
また、代表例として選ばれなかったQAについても、条件や回答内容の差分を確認できる形で残しています。これにより、人がFAQ候補を確認する際に、代表例だけでは拾い切れない例外条件を効率的に把握できるようになりました。

この経験から得られた重要な知見は、大規模データに対して生成AIの処理を単純に繰り返すだけでは、品質を維持できないという点です。大量データを扱う場合は、次の設計が重要になります。

  • 小規模データで処理の妥当性を確認してから全量展開する
  • 生成AIによって情報を統合し過ぎず、元データの具体性を残す
  • 処理単位や終了条件、出力形式をあらかじめ定義する
  • 生成AIとルールベース処理、類似度分析を適切に組み合わせる
  • AIの出力を人が効率的に確認できる情報を残す

4.FAQ運用の高度化と今後の展望

生成AIは、FAQ候補の抽出、分類、代表例の選定、差分整理などに有効です。一方で、最終的な回答の正確性や業務ルールへの適合性を、生成AIだけで保証することはできません。

特に制度や手続きが複雑な領域では、同じ質問であっても、利用者の状況によって回答が変わる場合があります。さらに、応対時点では正しかった回答が、制度変更や業務ルール変更によって、FAQ公開時点では不適切になる可能性もあります。

今後は、FAQを一度整備して終わりにするのではなく、問い合わせ傾向の変化、FAQ利用率、解決率、制度・ルール変更などを踏まえ、継続的に改善する仕組みづくりが重要です。例えば、問い合わせ件数が増えているテーマを自動検知し、新規FAQ候補として提示する仕組みや、利用率が高いにもかかわらず解決率が低いFAQを改善対象として抽出する仕組みが考えられます。

さらに、整備したFAQや業務マニュアルをナレッジとして活用し、オペレーターや職員向けの回答支援チャットボットへ展開することも可能です。FAQは単なる一問一答集ではなく、問い合わせ業務全体を支えるナレッジ基盤へと発展しうるものです。VoCデータを起点にFAQを整備し、そのFAQを業務支援やチャネル横断のナレッジ活用へつなげることで、コンタクトセンター全体の高度化が期待できます。

5.VoCを継続的な業務改善につなげるために

問い合わせデータは、顧客や利用者の困りごとが蓄積された重要な情報資産です。こうした膨大かつ複雑なVoCデータを業務改善につなげるためには、生成AIを導入するだけではなく、大規模データに耐えられる処理設計と、人による品質確認を組み合わせることが重要です。

NTTデータでは、こうした知見を生かし、生成AIを活用したVoC分析から、FAQ候補の抽出、類似質問のグルーピング、既存FAQとの照合、回答案作成、品質確認プロセスの設計まで、一連のFAQ高度化を支援しています。
生成AIによるVoCデータ活用やFAQ作成・更新業務の高度化に関心がある方は、ぜひNTTデータのAIビジネス事業部、ヘルスケア事業部までお問い合わせください。

記事の内容に関するご依頼やご相談は、こちらからお問い合わせください。

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