第1章:顧客からの要請をきっかけに始まった脱炭素経営
松栄電機は、公共設備、通信基地局やデータセンター(※1)をはじめ、社会インフラを支える設備に向けて配電盤・分電盤・制御盤を提供してきました。当社の事業では、品質や納期に応え続けることが取引先との信頼を支える基本です。近年はそこに環境対応という新たな要素が加わり、取引先のScope3対応にどのように協力するかが、事業を継続するうえで重要なテーマになっています。
社会インフラを支える企業として、品質だけでなく環境への責任も果たしていくことが当社の重要な使命です。その中で、顧客企業からのScope3対応要請をきっかけに、CO2排出量の算定へ本格的に取り組み始めました。
これまでも環境への取り組みを進めてきましたが、排出量を体系的に把握し、顧客企業へ説明できる体制づくりが新たな課題となりました。サプライチェーンの一員として脱炭素に貢献することは、当社にとって重要な責任です。サノヤスグループで掲げる2050年カーボンニュートラルに向けて取り組みを進める中、当社でも電力や購入部材などのデータを脱炭素の視点で整理する必要が生じ、環境対応を経営課題として位置付けました。中小製造業である当社では、一人ひとりが広い業務範囲を担っています。新たな専任体制を大きく増やすより、既存の業務に排出量把握の観点を組み込み、継続できる形へ整えることが現実的です。だからこそ、当社はScope3対応を単発の報告作業を超えた日々の購買や経費精算、工場でのデータ整理、社内の情報共有を見直す機会として捉えました。
顧客企業からの要請を契機とした取り組みですが、自社の業務改善につなげることで、品質・納期・環境対応を一体で高め、社会インフラを支える企業としての信頼向上を目指しています。
第2章:品質向上と環境負荷低減を両立するものづくり
松栄電機株式会社は、社会インフラを支える設備を提供する企業として、高い品質を追求しています。社会インフラを支える設備は、安定した社会活動を支える重要な役割を担っており、品質はお客様の事業継続に直結します。当社では、製品性能だけでなく、生産体制の改善を通じて品質向上に取り組んでいます。
こうした品質への取り組みは、環境負荷低減にもつながっています。不良やミスや手戻りを減らすことは、材料やエネルギーの無駄を削減することにつながり、結果としてCO₂排出量の抑制にも寄与します。当社では、品質向上と環境配慮を別々の取り組みではなく、持続可能なものづくりを支える両輪として位置付けています。
環境面では、自社で実践できる施策を一つひとつ積み重ねています。その一例が、新庄工場における再生可能エネルギー100%電力への切り替えです。設備更新だけに頼るのではなく、使用する電力そのものを見直すことで、日常の事業活動に伴う環境負荷の低減を進めています。
さらに、フレキシブルオフィスや在宅勤務を活用し、生産性向上と環境負荷低減の両立にも取り組んでいます。
品質と環境を両立したものづくりが、当社の脱炭素経営の基盤となっています。
第3章:Scope3対応を支える基盤としてC-Turtleを導入
松栄電機株式会社がScope3対応を進める中で課題となったのは、排出量算定に必要なデータが社内のさまざまな部門に分散していたことでした。購入部材や電力使用量、燃料使用量、社用車の利用状況など、それぞれ異なる部署で管理されており、必要な情報を集めるだけでも多くの時間と手間がかかっていました。限られた人員で継続的にScope3対応を進めるためには、データを効率的に収集・管理できる仕組みづくりが不可欠でした。
そこで導入したのがC-Turtleです。当社では、排出量を算定できることだけでなく、入力項目が分かりやすく、初めてScope3対応に取り組む担当者でも迷わず運用できる点を評価しました。導入時にはNTTデータの支援を受けながら、運用ルールを整備しました。
当社が重視したのは、C-Turtleを自社の業務に合わせて変更するのではなく、自社の管理方法や業務フローをC-Turtleの運用に合わせて見直すことです。例えば、経費精算では移動手段ごとの情報を把握できるよう書類の様式や提出方法を変更し、排出量算定に必要なデータが日常業務の中で自然と蓄積される仕組みへ改善しました。購買データについても、必要な情報を継続的に収集できる運用へ見直すことで、年度末にまとめて対応するのではなく、日々の業務の中でデータを管理できる体制を整えています。
こうした取り組みにより、排出量算定は一部の担当者だけが行う業務ではなく、日常業務の延長線上で取り組めるものへと変わりつつあります。当社では、C-Turtleを単なる排出量算定ツールではなく、脱炭素経営を支えるデータ基盤として位置付けています。排出量の可視化を起点に業務改善を進め、環境対応を日常業務へ定着させています。
第4章:サプライチェーン全体で進める排出量削減
社内でデータを継続的に管理できる基盤が整ったことで、松栄電機株式会社ではScope3対応をサプライチェーン全体へ広げる取り組みを進めています。当社の製品には、電機部品や鉄板、筐体、制御関連部材など多くの購入品が使用されており、排出量の大部分はサプライチェーンに由来します。そのため、自社の取り組みだけでなく、購入先やメーカーを含めた排出量の把握が重要なテーマとなっています。
購入部材の多くは代理店経由で調達しているため、メーカー別・部材別に整理することが課題でした。幸いな事に弊社製品の主要部品である遮断器などはメーカー別での金額をすぐ確認できる状況が整っていました。手間がかかったのは鉄板などです。これらは鉄板の種類や購入代理店の情報のみでメーカーの情報がなかったため伝票を再確認して入力しました。これらは今後メーカーデータも入力するよう整備しました。こうしたデータ整備は、将来的な排出量算定の精度向上だけでなく、改善活動の土台づくりにもつながっています。
排出量を可視化したことで、これまで価格や品質を中心に行っていた調達に、環境負荷という新たな視点が加わりました。設計や購買部門では、部品の性能やコストだけでなく、環境への影響も踏まえた部材選定を意識するようになり、サプライヤとのコミュニケーションにおいても環境対応を重要なテーマとして捉え始めています。
Scope3対応は、一社だけで完結する取り組みではありません。顧客企業、親会社グループ、サプライヤ、メーカーなど、それぞれが排出量削減に取り組むことで、サプライチェーン全体の脱炭素化につながります。当社は、取引先と連携しながら環境負荷低減を進め、持続可能なサプライチェーンの実現に貢献していきます。
第5章:社会インフラを支える企業としての新たな価値創造
松栄電機株式会社は、排出量の可視化を一度きりの取り組みで終わらせるのではなく、継続的な運用として定着させることを目指しています。今後は月次でデータを蓄積し、継続的な排出量管理と改善につなげていきます。
顧客企業から求められるScope3対応に応えるだけでなく、自社として温室効果ガス排出量の削減目標を定め、その進捗を継続的に確認しながら改善を進めることで、脱炭素経営をさらに深化させていきます。サノヤスグループでは持続的な成長のためにはサステナビリティ経営と成長戦略の一体化は不可欠であると考えており、「中期経営計画<'24-'26>」においてもサステナビリティを重視した経営を推進することを宣言しています。当社においても、品質・環境・事業継続性を一体で捉え、持続可能な企業経営を推進していきます。
また、当社の取り組みは、業務改善や排出量管理にとどまりません。ものづくりそのものを通じて環境価値を創出することも重要なテーマと考えています。近年、気温上昇に伴い、屋外に設置される配電盤では内部温度の上昇が課題となっています。従来は冷却装置を追加する方法が一般的でしたが、電力消費の増加という新たな課題もあります。
そこで当社では、グループ会社と共同で放射冷却塗料や遮熱塗料を活用した製品開発を検討しています。
放射冷却塗料や遮熱塗料を活用し、製品の信頼性と環境配慮を両立する製品開発を進めています。社会インフラを支える設備だからこそ、環境性能も新たな価値として提供していきます。
当社が目指すのは、排出量算定に対応できる企業になることではありません。社会インフラを支える企業として、高品質なものづくりと環境配慮を両立し、持続可能な社会に貢献することです。C-Turtleを活用したデータ基盤を土台に、サプライチェーン全体での環境対応や環境配慮型製品の開発など、脱炭素経営の取り組みを着実に広げています。今後も品質・環境・事業継続性を一体で高めるものづくりを通じて、お客様や社会から信頼される企業を目指し、新たな価値を創出し続けていきます。
企業紹介
松栄電機株式会社
1941年創業。通信インフラ向けの配電盤・分電盤を中心に製造するメーカーです。2022年にサノヤスグループの一員となり、「確かな技術にまごころこめて」の理念のもと、技術力の向上に取り組んでいます。山形県新庄市・南陽市の工場では、板金加工から組立・検査まで一貫生産体制を構築し、データセンターや移動体通信網、空港、防災施設など、全国の社会インフラを支える製品を提供しています。
【C-Turtle®】の概要資料は、こちらからダウンロードください。


https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/c-turtle/