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2021年5月11日INSIGHT

デンソーKAIZEN事例に学ぶ!RPAからDXへの発展

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か、何を行えばDXといえるのか悩んでいる企業担当者は多い。デンソー社がKAIZEN活動をベースに全社のRPA導入・活用を推進し、デジタル化を実現している事例を紹介すると共に、そこに隠れたDXの重要ポイントを紐解く。

日本に浸透したKAIZENがDXへの道標となる

DXにこそKAIZEN(改善)が効く―― NTTデータ 中川は冒頭でこのように語る。KAIZENという言葉には「古くさい」というイメージを持つ人がいるかもしれないが、「欧米では最近でもKAIZENに関する研究書が刊行されており、それだけ底力のあるフレームワークである」と中川は続けた。

そしてDXの定義「デジタル技術でイノベーションを起こし続ける組織に『変容』すること」と、KAIZENの定義「目標を定めて現状を把握し、課題を発見・解消する、組織の継続的な取り組み」を比較して、両者が非常に近しい関係にあることを示し、「DXで何を行うべきかに迷ったら、KAIZENフレームワークが道標になる」と説明。これは、日本企業に浸透しているKAIZEN活動、例えば「なぜなぜ分析」「ムリ・ムダ・ムラ削減」「PDCA」などの検討手法が、DXにもそのまま有効であることを意味している。ただし従来のKAIZENとの大きな違いは、KAIZENを生産現場だけではなく、オフィス業務にも適用していくことと、デジタル技術を積極的に活用することだという。そして、こうした取り組みを効果的に行っている代表格の企業として、デンソーが紹介された。

RPAは業務改善手段のひとつ、まずは業務改廃から検討

デンソーは国内外に連結子会社200、従業員数17万人を擁する一大グループ企業だ。DX推進の一環としてRPAのグループ展開を図っており、その推進・展開手法は、まさにKAIZENからDXへのステップアップを具現化したものだといえる。デンソーの全社RPA事務局に所属し、デジタル化を推進する伊藤逸也氏が、その概要を説明した。

RPA活用の推進体制は、現場主体のものとなっている。デンソーグループでは「RPAサークル」という各社・各部の有志集団の組織を土台とし、EUC(End User Computing:現場部門でシステム開発や運用を行う)においてRPA(標準ツールはWinActor)の活用が進められてきた。このサークルの登録メンバーは全グループで現在700名以上を数え、事務局の主な役割はこれらメンバーへの支援となる。

EUCでRPA活用を進めるにあたり、「RPAは数ある業務改善手段のひとつ」という考えを全グループに周知していると伊藤氏はいう。つまり煩雑な業務を自動化するためにすぐRPAに飛びつくのではなく、その業務を改廃できないか、減らせないか、プロセスの改善ができないかというレベルで見直すということだ。KAIZENの常套手段とされる「やめる・へらす・かえる」という順番でふるいにかけ、それでもやらなければならない業務だと認められて、はじめてデジタル化による業務効率化手段を検討し、その手段の一つとしてRPA化に着手することをデンソーグループ内に繰り返しアナウンスしている。

図1:RPAの位置づけ

図1:RPAの位置づけ

多方面から現場でのRPA活用支援と統制の徹底に取り組む

事務局が実施している主な支援策には、情報公開、技術支援、コミュニケーション支援などがある。RPA関連の情報公開は、グループ内のRPAポータルサイトを通して行われており、導入検討時に役立つ情報、シナリオ開発者向けの技術情報などを閲覧できるようになっている。

技術支援では「RPA駆け込み寺」という、予約制のリモート技術サポートが用意されている。これはシナリオ開発や運用にあたるデンソー社員と技術支援の講師とをオンラインでつなぎ、技術的な質問、疑問を直接やりとりできるようにしたものだ。

「WinActorはユーザーフレンドリーなツールだが、開発・運用にはある程度のスキルが必要なので、『駆け込み寺』を設けた。ユーザーからの評判は良く、アンケートでは回答者の100%が『引き続き利用したい』と答えている」(伊藤氏)

図2:技術支援(RPA駆け込み寺)のしくみ

図2:技術支援(RPA駆け込み寺)のしくみ

またMicrosoft Teamsを活用して、事務局とユーザーがタイムリーなコミュニケーションを図れる仕組みも整えられている。以前はメールを使って事務局から情報発信をしていたが、一方通行になりがちだったという。しかしTeamsを利用したことで、たとえば「駆け込み寺」の予約にキャンセルが出たことをユーザーにリアルタイムに知らせたり、そのキャンセル枠に別のユーザーが利用を申し込んできたり、双方向のコミュニケーションが活発になり、機会損失の削減にも役立つようになった。

EUCでRPAを活用するにあたっては、厳格な開発・運用のルール制定、基幹システムの関係者や社外ベンダーと連携して行う自動化プロセスのチェック、年2回のロボット稼働状況確認(野良ロボット対策)などを実施して、統制と安全に努めているとのことだ。

「繰り返しになるが、RPA化の着手前に、その仕事自体の改廃・改善を検討することが重要。またRPA化が決まった業務でも、プロセスを見直す必要がある。現状の仕事をそのままRPA化すると、本来は不要な工程も含めて自動化することになってしまい、無駄をつくってしまう。自動化業務の前工程・後工程まで意識したり、分散した仕事を集約したりするなど、フロー全体の見直しをしてから着手すると、RPA活用の効果が高くなると考えている」(伊藤氏)

DXにつながるKAIZEN2.0とデジタルツインの実現に向けて

ここまでの伊藤氏からの取り組み紹介を受けて、中川は「『情報公開・技術支援・コミュニケーション』の3つのポイントを大切にすることによって、700人を超えるRPAサークルのメンバーが自主的に業務改革とデジタル化に取り組んでいる、つまり組織を変容させて新しいことに取り組んでいる好事例といえる。私もデンソーグループのユーザー会に参加したが、皆さん熱心に、そして楽しそうに参加しているのが印象的だった。現場社員のモチベーションを高めつつDXを推進していけるのが、KAIZENフレームワークの素晴らしさだと思う」と語った。

今後、企業がオフィスにKAIZENを適用し、DXを推進していくにあたっては、オフィス業務の「見える化・測る化・自動化」の3つが必要になると、中川は説明。パソコンを操作すると自動でマニュアルを生成するツールを利用して、オフィスの業務プロセスを見える化し、運用の流れを管理するワークフローやBPMツールなどで全体を測り、さらにRPAで自動化する…。このオフィスKAIZENの方法論をNTTデータでは「KAIZEN2.0」と定義している。

KAIZEN2.0推進の支援策として、NTTデータでは体制づくり、実行、人材育成などの支援メニューを揃えた「ネクストステップパック」を用意している。

図3:KAIZEN2.0の伴走メニュー

図3:KAIZEN2.0の伴走メニュー

「まとめてお手伝いするので、ぜひご相談いただければと思う」(中川)

さらにNTTデータではKAIZEN2.0で現場を効率的にするだけではなく、「オフィスのデジタルツイン」まで視野に入れていると中川は続ける。

図4:KAIZEN2.0によるオフィスのデジタルツイン

図4:KAIZEN2.0によるオフィスのデジタルツイン

デジタル空間にオフィスを再現できれば、そこでさまざまなKAIZEN策をシミュレートし、良い結果が出たものだけを現実の業務に落とし込むことが可能となる。イノベーションにつながるチャレンジをリスクなく、積極的に行えるようになるというわけだ。デジタルツインで試行して、上手くいったものを現場で採り入れる、このループを回すのが最終ゴールだと中川は語り、次のように呼びかけて、セッションを締めくくった。

「変革を起こすのが容易くないのは当たり前。我々に染みついたKAIZENを使って、DXに向かって取り組み、変革を起こしていこう」(中川)

本記事は、2021年1月28日、29日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2021での講演をもとに構成しています。

関連リンク

デンソーがグループ企業向けのRPAユーザー会を実施

https://winactor.com/case/winactoruse/denso

DXマーケットプレイス

https://nttdata-mp.com/

RPA「WinActor」無料トライアル

https://winactor.com/web_trial

COBOTOPIA イベント一覧

https://cobotpia.com/activities_calendar/

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