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2026.4.9事例

コンテンツ産業と日本の国益を最大化する国際標準化

漫画やアニメ、ゲームといった日本が世界に誇るコンテンツ産業は、デジタル化によってグローバルに拡大してきた。一方、著作権をはじめとした権利に関するルールづくりは遅れ、クリエイターなどステークホルダーの利益が適切に守られないという状況が課題となっている。NTT DATAと一般社団法人ジャパン・コンテンツ・ブロックチェーン・イニシアティブ(略称、JCBI)は共同で、国際的な技術委員会にブロックチェーンに関する国際規格案を提出。日本発としてはじめて新業務項目提案(NP:New work item Proposal)に採択された。この提案により、デジタルコンテンツ市場にどんな変化を起こそうとしているのか。経済産業省の呼びかけで始まったプロジェクトの狙いと今後について、3人の登壇者に語ってもらう。
目次

1.国の戦略ツールとなった、国際標準化。ブロックチェーンの技術委員会で、日本発の提案が採択された

稲葉:近年、デジタルコンテンツの領域で国際標準化の重要性が高まっている背景について、世界的な標準化のトレンドも踏まえて教えていただけますでしょうか?

田中 氏:標準化はこれまで、製品やサービスの安全性確保や利便性向上など、安全で効率的な社会を実現するための手段として利用されてきました。しかし、近年、標準化は単なる秩序づくりの枠を超え、新たな市場価値の創出や既存市場への新たな競争軸の導入等、より戦略的なツールとしての性格を強めています。すなわち、自国または自社に有利な標準を定めることで他者に対して優位になり得るため、国としては産業競争力を高めるための政策的ツール、企業にとっての経営戦略のツールとして標準化が重視されるようになってきています。

最近の事例としては、例えば、欧州を発端としたDPP(Digital Product Passport)があります。DPPは、材料の調達から廃棄に至るまで製品のライフサイクルにおけるあらゆるデータの可視化を義務付ける新しい仕組みであり、現在このDPPに関連する複数の国際標準が議論されております。仮に、特定の製品に対して、事実上、「欧州の認証機関から認証を受けないと欧州市場に投入できない」という状況を作られてしまうと、各国の貴重なデータやノウハウが欧州に蓄積されるようになり、欧州の競争力が今以上に強まる可能性があります。このように、標準化の主導権をとることにより、自国産業に優位性をもたせるルール形成に繋がる可能性を秘めています。

今回はDPPを例に挙げましたが、デジタルコンテンツの領域においても、Blockchainや生成AIなどの技術導入が始まっており、まさにこれから各国でのルール形成が活発化しつつある重要な局面にあると考えています。

稲葉:国際標準化が国や企業によって戦略的に進められるようになってきた中、ISO/TC307(※)において、NTT DATAはJCBIと共同で「ブロックチェーンにおけるトークンを用いた非金融デジタル資産に関する国際規格案」を提案し、日本発として初めて新業務項目提案(NP:New work item Proposal)に採択されました。これにより、技術のみならず、関係者、フレームワーク、ライフサイクル、データカテゴリに関する標準化を進め、クリエイターや消費者、企業など多様なステークホルダーが安心してデジタルコンテンツを活用できる環境を整え、新たな市場機会の創出や既存プロセスの効率化を目指していくことになります。非金融領域におけるデジタルコンテンツの流通が拡大を続ける中、これまでも相互運用性や権利保護といった課題が指摘されてきたにもかかわらず、今になるまでこのような標準化の提案に至らなかった背景には、どのような事情があったとお考えでしょうか?

伊藤 氏:ITの領域では製造業などと違い、ISOやIECのようなデジュールスタンダード(標準化機関が策定した標準規格)より、デファクトスタンダードが広がっていくケースが多かったことが、これまで標準化の提案に至らなかった理由にあると思います。そのような中で、2021年頃からNFTの投機的な売買が過熱してきました。そして当時は、NFTにはまだデファクトスタンダードがなく、何のルールも存在しなかったことから、消費者は詐欺被害、権利者は権利侵害に遭うという問題が発生しました。これをきっかけとして、ブロックチェーンによるデジタルコンテンツの売買を、安心して安全にできるようにするためのルールを求める声が上がってくるようになりました。

(※)

ISO/TC307は、ISOに設置された技術委員会であり、ブロックチェーンおよび分散型台帳技術に関する国際的な標準の策定を目的としています。

2.国際的な標準化リーダーとなり、日本コンテンツ産業の海外売り上げを20兆円へ

稲葉:日本の国益という観点で、今回採択された日本発の標準化規格案にはどのような意義があるとお考えでしょうか?

伊藤 氏:国際標準化では最初に提案して採択を受けた国がプロジェクトリーダーとなって、議論をリードして、ルールを定めることができます。今回の提案の採択により、コンテンツ領域にフォーカスした標準規格案において日本がプロジェクトリーダーのポジションをとれました。そのため、先ほど田中さんからお話があったDPPの標準化において欧州が主導権を握って行ったように、日本にとって必要な要素を規格の中に盛り込みやすくなります。

田中 氏:その意味で、日本が強みを持つコンテンツ産業に関わる標準化において、日本が提案国となれたことは重要です。経産省としても2033年までにエンタメ・コンテンツ産業の海外売り上げを20兆円とする目標を掲げていますが、日本が主導権を握って国際標準化を進められることで、クリエイターの権利を守った上で安心して海外へ展開できる流れをつくりやすくなります。

3.グローバルなIT産業の最前線に立つNTT DATAのけん引力

稲葉:このように重要な意味を持つ国際標準化をNTT DATAのような民間企業が推進することの意義はどこにあるとお考えでしょうか?

伊藤 氏:私たちJCBIは日本国内のさまざまなコンテンツ企業とのネットワークを有しており、広く業界の皆さまから標準化に求められるニーズを集めることができます。また、市場を拡大させて利益が生まれる前の準備段階であるため、民間企業だけでは取り組むことが難しい先端技術領域の標準化だからこそ、業界団体であるJCBIが積極的に取り組むべきであると考えています。一方で、世界各国から多くのメンバーが参加するISOで国際標準化をけん引するプロジェクトリーダーを担うためには、これまでにも日本を代表して国際標準化をリードしてきた実績と知見を持つ存在が必要でした。そこで、グローバルなリーディングカンパニーとしてそれらを有していらっしゃるNTT DATAにプロジェクトリーダーとしてジョインしていただきました。そして、ISOでの活動において、議論に入る前の他国とのアジェンダの調整や、国際会議のファシリーテーション、スケジュールやタスクの管理等のプロジェクトマネジメント全般をNTT DATAに推進していただいています。

田中 氏:国としては、標準化を積極的に支援する立場をとっており、最前線での戦略づくりやプロジェクトの推進は、技術トレンドや特定領域に強い民間企業に担っていただく形を原則としています。標準化は息の長い活動となるため、民間企業として、いつ自社の利益として還元されるかわからず、人と時間を投資するのは簡単なことではないと理解しています。そうした中で、長期的なアウトカムを見据えて、標準化を着実に推進されているNTT DATAの取り組みは、我々としても大変心強いものです。

稲葉: NTTグループでもコンテンツビジネスにいくつか取り組み始めています。NTTグループとしてビジネスを拡大する未来をイメージしながら標準化について各国との交渉や国内企業との議論も進められることは、大きいと考えています。

4.幅広い領域を将来的なスコープに、各国の議論が活性化

稲葉:2025年8月に採択されたNP提案ですが、この国際標準化プロジェクトは、現在どのようなフェーズにあるのでしょうか?

伊藤 氏:昨年度、PWI(Preliminary work Item:予備業務項目)という、参加各国との議論を通じて今回の標準化の意義を確認するフェーズを終え、本年度からいよいよ具体的な標準規格の内容を規定したドキュメントを書き始めるフェーズに入りました。今後、複数回の改定と承認を経て、最終的に正式な国際標準規格書がISOから発行される予定です。
大変有り難いことに、現在毎月行っているISO内の国際会議では、参加各国から「こういう視点も入れた方がいい」などと積極的に意見が出ており、議論が非常に活性化しています。現状では、今回の国際規格案の対象は「非金融デジタル資産」としており、デジタルコンテンツだけに留まらない幅広い範囲を含んでいます。つまり、この範囲で規格化が進めば日本が強い漫画やアニメ等に限らず、他国が注目しているような、例えばメタバース内のアイテムなど、今後広がっていく可能性のあるデジタルアセット全般に関するルールメイキングに及ぶ国際標準規格になる可能性を秘めていることを意味しています。そのため、それぞれの国が自国としてフォーカスしているデジタルアセット領域に関して、積極的に幅広い視点から意見を出してくれています。

田中 氏:おっしゃる通りですね。各国との議論が活発化することは、もちろん合意形成に時間がかかるという側面もありますが、私としては基本的に望ましい動きだと捉えています。国際標準は基本的には任意規格と呼ばれ、法律のような強制力はありません。従わないという選択肢もある中で、各国が積極的に議論に参加しているのは、多くの国がこの国際標準に対して将来の活用を見据えている証かと思います。

伊藤 氏:そうですね。そして将来的に、コンテンツ領域以外のデジタルアセットにおいてもマーケットが立ち上がってきた時に、それが非金融領域であれば、そのルールメイキングにおいても今回の標準規格の改訂を通じて日本がリードできます。ですので、このような広い領域に及ぶテーマでプロジェクトリーダーのポジションをとれていることは、日本の広い産業にとって意義があると考えています。

稲葉:非金融領域のデジタルアセットという幅の広い世界で標準化の主導権を握ることが、とても大きな意味を持っているのですね。現時点では、どこまでが標準化のスコープになっていくのか、その輪郭は見えてきているのでしょうか?

伊藤 氏:策定していく国際標準規格書の中には、規格が利用される具体的なユースケースを記載するアジェンダが設けられています。今スコープとしているのは、コンテンツの閲覧権やイベントの参加権等を扱うユースケースのような日本のコンテンツ産業のビジネスに関連し得るものが中心です。もちろん、他の国から提案があれば、例えばアバターの所有権を扱うユースケースのようなXRビジネスも加わり、スコープが拡充されていく可能性もあるでしょう。

5.国際標準の発行と並行し、国内の市場創出を進める

稲葉:国際標準規格の発行に向けて、今後はどのようにプロジェクトを進めていくのでしょうか?

伊藤 氏:プロジェクトの目的は標準化そのものではなく、それを手段としてビジネスや市場を創造することです。規格内容の検討にあたっては、ISO内の技術委員会の中で議論するだけでなく、国内のコンテンツ企業各社へヒアリングするなどして、産業界のリアルな声を取り入れるようにしています。また、標準化をきっかけとして、このように産業界との相互の意見交換をする機会を設けられることが、今後のビジネスを検討する有益な時間にもなっています。国際標準規格が発行されるだけでは意味がなく、発行されるまでの間に市場の受け入れ態勢も整え、実際に利用されることでビジネスが活性化することこそがゴールだと考えています。

また、経産省さんが掲げる日本発のコンテンツの海外売り上げを20兆円へ拡大するという目標の達成にも寄与したいと思っています。コロナ禍以降、大手映像配信プラットフォーマーがアニメの配信を始めたことで、日本のアニメが海外へ流通し価値が高まっているという追い風があります。しかしながら一方で、流通の過程で多くの収益が海外に流れてしまい、国内に十分に還元し切れていないという状況もあります。今回の標準規格では、クリエイターの権利を守りながら、安心安全にデジタルコンテンツをグローバルで流通させることで、世界に冠たるコンテンツ大国である日本の国内収益を確保しながら、海外へ流通できるようにすることも企図しています。

田中 氏:そう言っていただけるのはありがたいです。是非この達成に向けて、まずはこのブロックチェーンに関する国際標準規格の発行に向けて官民連携して取り組んでいければと考えています。

国内初、ブロックチェーンに関する国際標準規格のNP提案がISO/TC307で採択についてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/evaluation/2025/082700/

Japan's NP proposal for a proposed international standard on blockchain was adopted for the first time by ISO/TC307.についてはこちら:
https://www.japan-contents-blockchain-initiative.org/information/2025-08-27

NTTデータの考えるブロックチェーンの可能性についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/blockchain/

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