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2022年5月24日展望を知る

マッキンゼーとNTTデータが描く、B2B企業の営業DX

営業のデジタル化のため多くの企業で新たなツールの導入が進んでいる。しかし、ツールや手法の導入だけでは成果が生まれにくく、現場の思考から変える必要がある。経営視点での組織変革に取り組むマッキンゼーと、デジタル導入の現場定着化を図るNTTデータが、営業DXプロジェクトを成功に導くポイントを事例から探る。
目次

営業DXのグローバルトレンド

世界のB2Bの営業モデルはコロナ禍において、デジタル化やオムニチャネルを活用しどのような発展をしているのか。McKinsey & Company Japanのアルナウ・バジェス=アマット氏は「オムニチャネルへの期待は、これまで以上に増大しています。多くのチャネルは顧客の利便性を高め、よりパーソナライズされた体験をもたらします」と話す。
日本を含む12市場で3,500人の企業の購買担当者を対象に調査した結果、企業はサプライヤーに対してオムニチャネルの構築を期待していることがわかった。グローバルで見ると企業の購買担当者は現在、対面・FAXといった「従来型」、電話やテレビ会議などの「リモート」、またはeコマースやアプリのような「セルフサービス」の3つのチャネルをバランスよく活用し、B2B企業の営業担当とコミュニケーションをしている。これがコロナ以前と大きく変わった点だ。

図1:B2B企業との連携手段

図1:B2B企業との連携手段

「この2年間で新たな営業モデルが機能し始め、今では大半のB2B企業がリモートやセルフサービスを活用した営業モデルが効果的だと考えています」とバジェス=アマット氏は語る。ただ、日本では従来型のチャネル活用が全体の半数を占めており、セルフサービスの活用はまだ一部にとどまっている。「日本は他の市場より遅れているものの、この現状は日本と世界の両市場でビジネス拡大のチャンスがあることも意味しています」と指摘する。

次にオムニチャネル活用の効果をみてみると、より多くのチャネルを活用する企業が市場シェアを拡大する傾向にあり、投資効果が高いことがわかっている。例えば、営業に7つのチャネルを利用する企業は、1つのチャネルしか活用できていない企業に対して有意に市場シェアを拡大している。また、自社のECサイトを構築した企業と、そうでない企業の比較も同様だった。「自社のECサイトは、パーソナライズした顧客体験を可能にすることから重要性が増し、これを進める企業が2021年に市場シェアを拡大しています」と語る。

営業DX成功の要諦

営業DXで抑えるべきポイントについて、国内外の多種多様な業種企業クライアントの営業変革を支援しているMcKinsey & Company Japanの中田太郎氏は次のように語る。「デジタルの活用はインパクトが大きく避けて通れないと考えている企業が大半です。しかし、競争力強化など目に見える成果を上げている企業はわずかに過ぎません。デジタル展開に時間がかかっている企業が大半であり、これらの企業が顧客、消費者へのリーチの仕方など営業DXをいかに推し進めていくのか、デジタルを導入することが大きなポテンシャルになると考えています」。
日本企業でデジタル化が進まない主な理由は(1)損益に対する影響が不明確(2)実行力やスピード感が足りない(3)縦割り組織、アナリティクスの単独活用(4)アナリティクスのモデルが大規模で展開されていない(5)データの欠如とアクセスのしにくさなどがある。DXは営業組織の変革を伴うので、ツール導入だけでは成果につながらないことが分かる。したがって上記の課題を一つずつ解き組織変革するのがDXに取り組む基本だ。

組織変革がうまくいかないことをどう乗り越えていくのか。「成果を生むためには行動を変えることが求められ、そのためには現場社員の思考とスキルを変える必要があります」と語る。同社は多くの実績から、現場の思考とスキルを変える手法を体系的に整理した「インフルエンスモデル」を作成している。組織を動かすための4要素は以下のとおり。

  • 1.意義・目的への腹落ち
  • 2.ロールモデルの構築
  • 3.スキルと人材の開発
  • 4.ツール・仕組みの整備

図2:現場の思考とスキルを変える「インフルエンスモデル」

図2:現場の思考とスキルを変える「インフルエンスモデル」

さらに経営トップを含め高い目標への合意形成を行ったうえで、試験的に「デジタル営業成功の型」を実証し、研修指導により人材開発を行う。そして、デジタルツールによる行動KPI・結果KPIのモニタリングなどにより、思考スキルの変革が実現しDX成功が見えてくる。

営業DXの実践事例

NTTデータは、salesforceなど各先進製品群に加え自社独自の複数クラウドソリューションを活用し、企業の顧客接点&ワークスタイルのデジタル化を支援している。NTTデータの新屋賢史は「これまで携わってきた営業DXプロジェクトから多くの失敗経験やノウハウを蓄積してきました。この実績からプロジェクト成功のポイントが分かってきました」と話す。
多くの顧客企業がシステム導入後に課題を抱えている。導入後に現場でうまく使いこなせないことに悩む企業は5割以上あり、定着化が大きな課題となっている。ここで、プロジェクト立ち上げ期に、改革に対する現場からの抵抗が強く難航した機械製造業の具体例をみてみる。

図3:機械製造業の事例

図3:機械製造業の事例

この企業では、IoT関連機器の成熟により、これまで知ることができなかった顧客の動向(製品の使用状況等)を把握できるようになったことをきっかけにプロジェクトが立ち上がった。製品の修理履歴とフィールドサービスを重ね、そこで得られた情報を営業に還元する考えで、カスタマーポータルやデジタルマーケティングなど全面的なデジタル化に乗り出すことになった。IoTとSalesforceの提供により、全社各部門の顧客理解と共有を深め、新しいサービスの創出と顧客を取り込むためのインサイトセールスの土台を築くことが狙いだ。
ただ、定着化に大きな壁が立ちはだかる。「立ち上げ期は経営層やIT部門の意見に比べ、現場の意見が遠くなりがちになります。しかし、現場の意見に耳を傾けなければ、激しい抵抗にあい頓挫する可能性もあります」と指摘する。階層ごとに抵抗、動機、対策を大別すると、いずれもネガティブな感情が動機であり、企業の上層部門を巻き込んで対策を検討・実施した。
「現場の抵抗を和らげ協力者に変えるには、小さな成功を作ることが重要です」と強調する。ビジネスシナリオ設定および実施スコープでは、営業強化を目的に将来は顧客とのコミュニケーションチャネルの構築を目指すが、まずは定期保守・不具合対応時間の削減に焦点をあて実施することにした。「小さく始めて成功を重ねることでドライブするアプローチです」と話す。

図4:定着化に向けた壁

図4:定着化に向けた壁

営業DXプロジェクトを成功に導くには、経営層と方針を合意できても現場からの抵抗で狙い通りの成果創出・定着に課題が出る。現場の不安などを想定し、周到に計画したPoCプロジェクトで早期に小さな成功を作ることが重要だ。周到な計画を作るためには、企業風土や過去の経緯を理解した企業側の担当者と、ITパートナーがシステム開発の着手前に対策を協議・検討することにある。

DX推進に不可欠な全社での変革意識の醸成

あらためて営業DXにおけるポイントを振り返る。一番のポイントは現場の考え方やスキルをいかに変えていくかだ。冒頭で紹介した「インフルエンスモデル」にあるように、意義、目的、腹落ちなどが現場に伝わることが大事になる。変革のムーブメントを起こすためには、立ち上げ期に小さな成功を作り、成功体験を元とした機運を盛り上げていくことが必要だ。
NTTデータの三竹 瑞穂は「DXはどうしてもDのデジタルに注目が集まり、Xのトランスフォーメーションを忘れがちです。ツールだけではなく「変革」を伴うことを意識する必要があります。」と話す。従来通りの取引を行い、売り上げも達成している中で何故、変革しなければいけないのかという声が上がるのも必然だという。将来にわたり自社の商品を顧客に販売していくことを考えた時、どのような営業になっていくべきなのか、先のことを考え成長のために変わる必要性を組織で議論・共有していくことが営業DX成功のカギとなる。
「変革に対する受け止め方は人それぞれなので、各メンバが腹落ちするよう私たちパートナー企業による啓発も必要です。」営業改革は経営層が成長ストーリーを持つのは当然だが、成果を出すのは現場の人たちだ。経営層と現場のベクトルを一致させ、トップダウンとボトムアップの両面で自律的に変わっていくことが不可欠になる。

マッキンゼーとNTTデータは、経営視点での組織変革構想はマッキンゼー、デジタルを用いた現場定着化と伴走はNTTデータ、両社のケイパビリティを最大化することで、自律的に変革できる企業の意識文化を醸成し、企業の営業DXを支援する。

Salesforceを活用したNTTデータのDXの取り組みはこちら

https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/salesforce/

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