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2022.8.4特集

ESG時代の商流ファイナンスの新しい可能性

社会課題や国際情勢の影響などにより、サプライチェーンリスクが多様化している。その中で企業の長期的成長に必要なのは、商流効率化や金流データ一体管理の取り組みを、大企業中心のものからサプライチェーン全体を意識したものへ変えていくことだ。この変化は、金融機関にとって商流ファイナンス(※)の新しい形を生み出すチャンスであるとも捉えられる。

(※)

商流で発生するデータを用いて、企業活動に必要な資金の供給等を行う金融サービスを指す

目次

複雑化・多様化するサプライチェーンリスク

少子高齢化や都市一極集中型経済といったわが国が直面している社会課題は、働き手や事業承継者の不足をもたらして経済の衰退を加速させています。その結果、生産から販売までの一連のプロセスを最適化するように構築されてきた「サプライチェーン」の維持が困難になってきています。

また、サプライチェーンは経済活動のグローバル化に伴い国境を越えて構築され、日々複雑化しています。そこへ、新型コロナ感染拡大による世界的な人や物の移動制限措置、さらに米中対立やウクライナ問題といった地政学的リスクも加わり、サプライチェーンに大きな混乱がもたらされました。

さらにESGやSDGsへの意識の高まりは、環境や人権に対して十分に配慮された商品やサービスを選択して買い求める「エシカル消費」と呼ばれる消費行動として世界各国で現れています。フェアトレードマークの商品が選好されるようになったのみならず、直接でなくともエシカルに反する取引によって生産された製品に関わっているとする企業の不買運動やネガティブキャンペーンが起こり、株価下落やブランド価値毀損に繋がる事例も見られるようになりました。

こうした状況から、複雑化・多様化するサプライチェーンリスクを企業が可能な限り迅速かつ正確に把握するニーズは、より一層高まっています。

ESG時代に求められるサプライチェーンの可視化~“デジタル・プラットフォーム”の可能性

これまで大企業は、自社の売掛金消込作業の効率化や業況把握の早期化を目的に、個社ごとに商流の効率化や金流データの一体管理の取り組みを進めてきました。しかしそれでは、複雑化・多様化したサプライチェーンリスクを含むビジネスリスクの早期特定は困難です。各サプライヤーは“デジタル・プラットフォーム”に加入することで、商流上自社から離れたところに潜むサプライチェーンリスクを早期に発見することができるようになります。

そのために必要となるのが、サプライチェーン上で発生する在庫、受発注、需要予測等のデータを一元管理する基盤。現在、サプライチェーンの最上流に位置する大企業やサプライチェーンを補完する大手商社などにおいて“デジタル・プラットフォーム”として検討され始めています。

各サプライヤーの企業レジリエンス向上に繋がる“デジタル・プラットフォーム”ですが、サプライヤーの巻き込みには課題もあります。1つは、大企業や大手商社以外のサプライヤーにとってはそもそも自社のデジタル化が進んでいないために“デジタル・プラットフォーム”への参画の障壁が高いこと。もう1つは、デジタル・プラットフォームに商流データを提供することによってサプライヤーの手の内を明かすことによるデメリットも大きいことです。
2つ目の課題に対しては、“デジタル・プラットフォーム”を、脱炭素やフェアトレードといったバイヤーとサプライヤーが同じ方向を向きやすいサプライチェーン共通の課題に着目した取り組みにすることが一つの解決策になると考えます。

“デジタル・プラットフォーム”が秘める、新たな商流ファイナンスの可能性

NTTデータでは、この“デジタル・プラットフォーム”に金融機関が接続することで、新しい商流ファイナンスサービスが広がっていくと考えています。

たとえば、“デジタル・プラットフォーム”上のサプライチェーン全体の商流と金流情報に金融機関がアクセスできるようになれば、金融機関がこれまで対応してこなかった少額短期の資金ニーズなど、新しいファインナンスサービスの提供に繋がると考えられます。

また、先ほどサプライヤー巻き込みの難しさについて触れましたが、“デジタル・プラットフォーム”を活用した商流ファイナンスサービスの提供は、中小企業が“デジタル・プラットフォーム”に参加するインセンティブにもなります。例えば、バイヤーの信用力によるファイナンスができれば、中小企業自身がより有利な金利で資金調達が可能になるかもしれません。

新しい商流ファイナンスの取り組み事例として、米国小売り最大手のウォルマートが展開する「Project Gigaton」を紹介します。
「Project Gigaton」は、2030年までにサプライチェーン全体で10億トン(1ギガトン)の温室効果ガス削減を目標とし、ウォルマートのサプライヤー向けに温室効果ガス削減を支援する仕組みを提供します。さらに、英国大手金融機関のHSBCホールディングスと連携し、「Project Gigaton」に参画するサプライヤー向けにファイナンスサービスも提供しています。例えば、ウォルマートが承認した請求書のサプライヤーに対する早期支払いや、融資枠の提供などです。

図:ウォルマート Project GigatonとHSBCの連携によるサプライヤー向けファイナンス

図:ウォルマート Project GigatonとHSBCの連携によるサプライヤー向けファイナンス

HSBCがウォルマートと連携して提供しているような「Finance as a Service」の取り組みは、商流ファイナンスに限らずB2Bの領域でますます広がることでしょう。金融機関は、自ら取得できる取引先の情報だけに依存せず、デジタル・プラットフォームなどの非金融事業者が収集したデータを活用してファイナンス機能を提供していくことが必要となります。

新しい商流ファイナンス実現に向けて

“デジタル・プラットフォーム”を活用した新しい商流ファイナンスを検討することは、金融機関の与信のあり方を見直す契機にもなります。従来の財務諸表ベースの与信だけではなく、サプライチェーンリスクや機会を捉えた与信に取り組むことは、金融機関にとって新たなビジネスチャンスとなるでしょう。

NTTデータはサプライチェーンのデジタル化を通じて、関連するプレーヤーに対してサプライチェーンマネジメントの効率化を支援しています。

金融機関が新しい商流ファイナンスに取り組むことは、持続可能な社会の実現に向けた新たな産業・社会構造への変革を促し、日本の持続可能な成長にとっても重要となると考えます。NTTデータは、金融機関とともに新しいファイナンススキームの構築を通じて、サステナブルな社会の実現をめざしていきます。

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