2022.10.17

SIerが新しいITサービスを創出!保険業界にソリューションで変革を

デジタルとテクノロジーの発展によってさまざまなビジネスやサービスが変化しています。保険業界でも「インシュアテック(インシュアランス+テクノロジー)」として、デジタルやテクノロジーを活用したDXが非常に速いスピードで進んでいます。
今回紹介する保険ITサービス事業部は、自らがITサービスの企画開発に取り組み、多くのお客様にソリューションを提供している、一般的なSIとは少し毛色が異なる組織です。彼らがどのようにして保険業界の変革に取り組んでいるのか。SIとは異なる文脈におけるNTTデータの価値とは何なのか。統括部長の安藤と、部長の池上の対談から探っていきます。

Index

安藤 彰浩
第三金融事業本部 保険ITサービス事業部
グローバル&ソリューション統括部 統括部長

1994年、NTTデータ入社。保険関連事業部に配属され、保険会社の企業年金システム開発に従事する。お客様と近い距離で課題を身近に感じ、解決するという成功体験を得る。2019年、生命保険会社のDX保険ソリューションの企画・開発、2020年にはグローバル&ソリューション統括部を担当。グローバルにおける保険分野の動向や情報の調査、ビジネスへの活用に取り組んでいる。

池上 文男
第三金融事業本部 保険ITサービス事業部
グローバル&ソリューション統括部 Iプロモーション担当 部長

1998年、NTTデータ入社。公共関連事業部に配属され、官公庁向けシステム開発を担当したのちに、金融関連事業部へ異動し、新規ビジネス提案や金融ソリューション提案、システム開発など担当する。2013年には保険関連事業部に配属され、生命保険個社向けシステム開発のほか、海外生命保険ソリューションの国内向け展開や保険事務BPOの新規立ち上げなどを経験したのち、現在は保険デジタルサービスプラットフォームやDigital Insurance Labなどのサービス開発を担当している。

販売チャネルやニーズの多様化。保険業界に迫る変革の波とは?

――保険ITサービス事業部とはどのような組織なのでしょうか。

安藤)
一般的なSIerはお客様が必要とするシステムをオーダーメードで提供しますが、私たち保険ITサービス事業部は個別のお客様向けのSIではなく、共同利用型の保険業務基幹システム、保険業界全体の共通インフラとなる保険会社共同ゲートウェイなどのインフラビジネス、海外パッケージ活用による保険会社向けの価値創造などを行っています。また、保険事務の分野における業務プロセス変革なども支援しています。

池上)
個別の「お客様」に向き合うのが既存のSIだとすれば、保険ITサービス事業部は、保険業界という「マーケット」そのものに向き合って業務を行っている組織だと言えます。

――おふたりは長く保険業界に携わっていますが、近年の保険業界の動向をどのように見ていますか。

安藤)
古くは保険会社の営業職員が直接保険商品を販売していましたが、保険代理店という販売チャネルが生まれ、代理店経由で販売する形態が主流になりました。昨今はデジタルにより、保険会社がユーザーとダイレクトに接点を持つ機会が増えてきています。

池上)
そうですね。一例として生命保険を挙げると、元来は「死」という人生でもっとも遠い地点を対象にしている商品でした。ですが、その遠さゆえに商品の訴求が難しい面もあり、入院や手術といった目先の出来事の方に視点が移ってきて、商品が多岐にわたるようになってきました。近年ではコロナ保険も生まれていますし、商品の多様性が増しているわけですね。

そして多様化とデジタルの流れの中で契約者側から保険にタッチできる機会も増えてきており、スマートフォン決済のような新しい決済サービスから加入できる保険も出てきました。商品も、チャネルも、急速に広がっているのが今の動きです。

安藤)
リスクに備えるのが保険商品ですが、近年ではリスクやそのニーズの多様化に対応して、保険商品も多様化してきていますね。

――そうした商品とニーズの多様化、デジタルという流れの中で、「保険IT」にはどのような変化が生まれていますか。

安藤)
保険業界では、いわゆるレガシーシステムと言われるようなメインフレームの基幹システムがメインでしたが、商品やチャネルが広がるにつれて、基幹システムにも柔軟な仕組みが求められるようになりました。外部のソリューションやサービスとの連携やクラウドの活用が特に増えています。

――おふたりは保険業界のお客様と向き合う中で、どのような課題を感じていましたか。

池上)
保険の販売チャネルに課題やビジネスチャンスがあると感じています。保険の営業担当者が申込者のところまで紙の申込書を持って行き、書いてもらうというのが生命保険の基本的な販売方法です。ウェブサイト上で申込ボタンをクリックしたら紙の申込書が送られてくるというのも既存の仕組みの延長でしかありません。

しかし、このようなやり方が必ずしもユーザーにとって利便性が高いとは思っていません。既存の仕組みからどうやって脱却するかが、保険会社の重要なアジェンダになっています。一方、保険業界に新規参入する企業はゼロベースの発想で時代に即した手法を構築できます。これは既存の保険会社にとって大きな脅威です。

安藤)
さらに言うと、生命保険と損害保険で販売チャネルのあり方が違います。生命保険は人に勧められることで販売が成り立つことが多いのですが、損害保険は「自動車を買う」などトリガーになる出来事があります。また、損害保険は「保険金請求をいかにスピーディーにできるか」が求められるため、生命保険と比べてデジタルシフトが進みやすい傾向があります。今は洋服などいろいろなものをインターネットで購入する人が増えています。生命保険についても、デジタルが不可欠になっていくことは間違いないと思っています。

池上)
そうですね。NTTデータはお客様である保険会社の変革を支援して、強い保険会社であり続けていただきたい。そのためにはデジタルシフトは不可欠だと考えています。

グローバルソリューションをNTTデータが提供。SIの領域を超える価値創出とは?

――保険業界が直面する課題について伺ってきましたが、その課題に対してどのようなソリューションを提供しているのでしょうか?

安藤)
グローバルで実績のある保険業務ソリューションをベースに、私たちが国内向けにローカライズして展開している保険デジタルサービスプラットフォームがあります。世の中ではスマートフォンを中心に人々の消費行動が大きく変わりつつありますが、保険会社が既存のシステムをすぐに置き換え、スマートフォンなどの新たなチャネルに対応させることは簡単ではないです。レガシーシステムを持ち続けながらもデジタル化に柔軟に対応するための仕組みとして、この保険デジタルサービスプラットフォームを構築しました。

池上)
従来、保険業界においてクラウド型のソリューションはセキュリティ面の課題がありましたが、近年では金融庁もクラウド活用を推進しており、活用のハードルが下がってきています。そこで私たちも、時流をつかみながら、できるだけ早く、コストメリットのある形で日本のお客様にも提供したいと考えていました。ゼロからシステムを構築するのは時間がかかりますが、私たちがデジタルサービスプラットフォームを提供することで、大幅に時間を短縮できるのは大きなメリットです。

――大きなメリットがある一方で、デジタルサービスプラットフォームを提供するうえでの障壁はあったのでしょうか。

安藤)
海外企業ではパッケージソフトウェアをあまりカスタマイズせずに使うことも多いのですが、日本企業は自分たちの業務に近づけるべくカスタマイズを求めるという傾向があります。つまり、既存の業務を極力変更せずに対応したいということです。しかし、あまりにカスタマイズの割合が増えると、ゼロからオーダーメードでシステムを作った方が早いということにもなりかねません。

池上)
たしかに日本のお客様は海外と比べてカスタマイズの要望が多いという傾向はあります。ただし、グローバルで評価の高いものは積極的に取り入れて、新しいことに挑戦しようというお客様もいらっしゃるので、一概には言い切れませんね。オーダーメードだとお客様のニーズすべてに答えることで100点のシステムができますが、サービスプラットフォームを導入した場合、もともと有している標準機能を組み合わせて活用しながら個別のニーズを具現化することができれば、100点以上のものを作れるかもしれません。これはオーダーメードではなくサービスプラットフォームを提供する、保険ITサービス事業部ならではの可能性だと考えています。

安藤)
まさしくそうです。個別SIとは異なる展開としては、この保険デジタルサービスプラットフォームは保険会社だけでなく、保険代理店、さらには保険に関する他の業界にも展開しようとしています。保険会社以外でもデジタル対応に活用したいというニーズが顕在化したのはひとつの発見でした。

池上)
保険会社以外への広がりについて補足すると、例えばクレジットカードを例に取ると、クレジットカードには付帯保険がついており、カード利用者にとっては付帯保険がクレジットカードの価値を高める場合があります。つまり、保険サービスの柔軟な多様化は他の商品の付加価値を高める可能性を秘めています。

――ソリューションサービスにおけるNTTデータならではの価値はどのような点にあると考えますか。

安藤)
私も池上も一般的なSI、つまりオーダーメードのシステム開発には長く関わってきました。ものづくりの全体像やお客様のニーズの理解という点ではそれなりの知見を持った上で、ソリューションサービスを考えています。つまり私たちは、お客様に対していきなり海外のパッケージを提案しているわけではなく、これまでの経験を踏まえた上で、根拠を持って我々のソリューションとして提案しています。日本のお客様が安心して使えるよう十分に配慮したローカライズも施しています。お客様からは「NTTデータは逃げずに最後までやりきる」という信頼を頂戴していますし、新しいソリューションの提案においても、多くのプロジェクトの開発実績や安定運用の実績・ノウハウを有しているNTTデータならではの安心を感じていただけていると思います。

池上)
私は「構想を実現する力」がNTTデータの価値だと考えています。逆に言えば、世の中には構想だけであれば多く溢れています。しかし、それを実現できるかどうかは別の話です。NTTデータは「作る力」と「安定運用する力」の両方を兼ね揃えています。様々なお客様と密接に対話を続けてきた経緯から、お客様のニーズも深く理解していますし、「業界全体としてこうあるべき」という私たちなりの仮説も持っています。保険デジタルサービスプラットフォームというソリューションを提供するだけではなく、NTTデータが今までやってきた実績に基づいて、構想の実現までをしっかりサポートできることが強みになっていると実感しています。

安藤)
事実、グローバルで実績のあるパッケージについて自ら調べていたものの、導入にまで踏み切れていなかったというお客様もいらっしゃいます。そのようなお客様からは、「NTTデータがサポートしてくれるなら安心」という声をいただけています。

新しい保険のあり方さえも模索。Digital Insurance Labで未知の価値創出に挑む

――保険ITサービス事業部では「Digital Insurance Lab(デジタル・インシュアランス・ラボ)」という組織を立ち上げたそうですね。

池上)
はい。昨今のお客様のニーズの多様化やテクノロジーの劇的な変化など、ビジネス環境が大きく変わる中でもマーケットのニーズに応えるためのサービスを創発していけるような組織変革が目的です。

ラボ立ち上げの大きなトリガーはデジタルの波です。今起きているのは、課題より先にソリューションやサービスが乱立しているような世界です。課題解決の道具やパーツはそこら中に転がっている。しかし、それらを拾って組み合わせるだけでは本質的な課題解決には至らない、ということが起きています。

そうなると、まずは目の前のものを拾ってみて、仮説を立てながら何ができるかを考え、色々と試行錯誤してみるという姿勢が必要になります。Digital Insurance Labはこのような新しい形での課題解決アプローチにも対応するための組織です。

安藤)
私から補足すると、お客様の要件に合わせてものを作るのではなく、自分たちでサービスを生み出していこうという取り組みです。アジャイルでクイックにサービスを作り、「こういうサービスがあったらどうでしょう」とこちらから提案していくようなスタイルがこの先の主流になると考えています。

池上)
その通りです。とはいえ、今はまさに産みの苦しみの真っ最中なのですが(笑)。

安藤)
社内の類似事例も参考にしながら、新たなスタイルを保険分野においても適用、発展させるというチャレンジングな取り組みだと捉えています。我々の取り組みはゼロベースからのスタートだったので、Digital Insurance Labの方が社内で既にサービスを展開しているところからスタートした事例より難しい挑戦だと言えるかもしれませんね。その分、挑みがいがあることは間違いありません。

――Digital Insurance Labのメンバーたちはどのように価値創出に挑んでいるのですか。

池上)
例えば、保険の契約者としては、新規契約の申し込みから保険金支払いまでデジタルで完結するのが理想です。では、その理想を実現するには何があればいいか、どうすれば実現できるか。世の中に無数にあるソリューションをどうにか活用できないか、足りないものは何だろうかと、自分たちで考え、ディスカッションしながら試行錯誤しています。

こうした議論に正解はありません。保険ITサービス事業部には、他社から転職してきたメンバーなど多様な人財が集まっており、また風通しの良い組織カルチャーでもあるので、知見を持つメンバーに直接意見を聞きに行くことも多いですね。「こういうところが課題になるのでは」といったフィードバックがあれば、今度はそれが次のソリューションの種になります。

また、我々にはこれまでの事業で培った保険会社のお客様との関係性があります。NTTデータ内部に蓄積された業界に関する知見だけではなく、我々のアイデアを一緒にブラッシュアップしていける多様なお客様との共創関係があります。業界を牽引している企業にコンタクトを取れ、アイデアをぶつけフィードバックを得られるというのはNTTデータの強みです。構想段階でありながらお客様の感触を聞きに行けるというのは、新しいサービスの具現化という点で最強の武器でもあります。

安藤)
Digital Insurance Labではメンバーへの業務の割り振り方も違います。通常は上からの指示に基づいて担当業務が決まるものですが、それでは受け身になってしまいます。主体性を重視するDigital Insurance Labでは、自分からアイデアを提案して、取り組むべきテーマを設定するのです。仕事のやり方や向き合う姿勢も含めてマインドを変えないと、新しい価値は生み出せないと考えています。

池上)
Digital Insurance Labは本当に自由な組織です。どんなアイデアも否定しないのが共通認識になっているのですが、最初は地味だったアイデアも、実際にメンバー同士で議論を重ねていくと必ず何かしらの新しい見方が出てきます。価値のないアイデアなんて存在しないのだと実感しますね。先日、あるメンバーが面白いことを言っていました。やっていることはベンチャーと同じだけど、大企業の恩恵も受けられる、と。私もその通りだと思います。

安藤)
上手い表現ですね。いわゆるSIerだと思って入社するとギャップに驚くでしょうね。Digital Insurance Labでは、今までにない働き方が現実のものになっています。面白いのが、Digital Insurance Labに参画している社員の社員満足度は非常に高いスコアが出ていることです。やりたいことに自由に挑戦できるというのは、とてもやりがいがあるのでしょうね。

――Digital Insurance Labを含めた保険ITサービス事業部では、どのような人が活躍しやすいのでしょうか。

池上)
Digital Insurance Labでいうと、自由な発想で未来を切り開くことが求められているため、ゼロベースで発想できる人が活躍できると思います。保険業界以外の人にも活躍の機会がある組織です。新しいものを生み出すためには、多様な人たちが集まることが大切です。

安藤)
一方、先述の保険デジタルサービスプラットフォームでは、保険業界やIT業界からの転職者が多いですね。保険業界の経験者もそうでない人も、あらゆるバックグラウンドを持つ多様な人財が実際に活躍しています。保険ITサービス事業部は多様性を重視していますので、メンバーそれぞれが個性を発揮しながら継続的に活躍していくための育成にも力を入れています。

池上)
保険ITサービス事業部全体の風土として「変化を文化に!」というマインドがありますが、変化を続けていくところはNTTデータの強さの根源でもあると思っています。

安藤)
保険業界向けのSIと聞いてイメージするより、我々の事業部は、はるかに間口の広い組織です。業務によってメンバーのバックグラウンドは異なる面もありますが、いずれにしても変化を続けていくことは共通して求められます。多くの保険会社と接点があり、お客様も巻き込みながらサービスを作り、一緒に保険業界を変革していけるのは保険ITサービス事業部の大きな魅力です。

多様なメンバーが集まり、自分たちで新しいITサービスを創出し続ける保険ITサービス事業部。保険デジタルサービスプラットフォームやDigital Insurance Labでの挑戦を通して、保険業界の変革を実現していきます。

※掲載記事の内容は、取材当時のものです