デジタルマーケティング力が生む格差(1) 位置情報とプッシュ通知
デジタル技術が急速に発展していく中で、その成果を使う企業とまだ使えていない企業で競争力に差が生まれてきています。特に販促の世界では、他社がまだ使っていない情報をいち早く活用することで他社に差をつけている事例がみられます。例えば、昨今のスマートフォンアプリでは、アプリをダウンロードしたユーザーにプッシュ通知を出すことができます。このプッシュ通知は、GPS、Wi-Fi、Bluetoothに対応しており、「ある地域限定」や、「店内に滞在中」や、「ある売り場(や棚)の近く」といった場所を特定して通知を出すことができます。従来の手法にとどまっている事業者は、パソコンや携帯のメールでセールや新作情報などを通知しますが、メールの仕組みからは位置情報が取得できないため、基本的には受け手の居場所を意識した配信を行うことはできません。一方で、プッシュ通知を取り入れた事業者は、その受け手がいる場所ならではの情報を載せることができます。たとえば、前回来店時にお買い上げのなかったお客様が、お店の半径500mに入ってきたら店舗シークレットセールのお知らせを出す、などができるようになるのです。一斉同報メールの取り組みと、位置情報を活用したプッシュの取り組みでどちらが効果的かは自明であり、現在、こうした取り組みの差が、各社の競争力の差になりつつあります。
デジタルマーケティング力が生む格差(2) 行動分析でECクーポン
ECサイトのクーポンでも同じような動きが見られます。これまでのECクーポンといえば、メールマガジンに10%OFFクーポンがついていたり、ECサイトのトップページにクーポンのお知らせを張り付けてあったりというものが一般的でしょう。お客様のサイト内行動に合わせてクーポンを出しわけるといった対応はできていませんでした。一方で、最近のクーポンサービスには、ユーザーがECサイトに訪問した際のCookie情報やクリックストリーム情報、画面スクロールや画面遷移の情報などをリアルタイムに解析するものがあります。こちらの仕組みを用いる場合、ECサイトに初めて来たお客様だけにクーポンを表示したり、買うかどうか迷っているタイミングでクーポンを表示して最後の一押しを演出したりすることが可能になります。それまで買わずに帰っていたお客様層を、こうした出し方をすることで効率的に獲得することができるようになるのです。一律タイミングのクーポンと、行動データを活用したクーポンの仕掛けでは、こちらも効果には大きな差が生まれており、競争力の差につながっています。
デジタルマーケティングで「幸運な消費機会」が生まれる
スマートフォン(GPS・Wi-Fi・Bluetooth)や、WEBサイトの行動履歴データのリアルタイム収集技術など、デジタルテクノロジーの発展によってさまざまなデータが取得できるようになりました。こういったデータは、正しい使い方をすることで、エンドユーザーにとっては、今まで味わったことがないような「幸運な消費機会」に出会える可能性を秘めています。例えば、欲しかった商品を扱っているお店に近づいたらプッシュ通知が来たり、ECサイトで買おうか迷っていたまさにその瞬間に10%OFFクーポンが表示されたりといった、お客様が「ついている!」と感じるような消費機会です。今後ウェアラブル端末の発展などによって、さらに多様な情報が取得される時代が始まり、こうした幸運な消費機会の拡大に期待が高まります。
図:デジタルマーケティングによるレコメンドイメージ