人口4万人、“消滅可能性都市”の挑戦
市民4人に1人がメールを受信中
熊本県を中心に2016年4月14日以降に発生している地震災害において、犠牲になられた方に心からお悔やみを申し上げると同時に、被災者のみなさまへ心から謹んでお見舞い申し上げます。
全国に約1,800ある市区町村のうち、およそ半数にあたる896の自治体が2040年には失われてしまう。そんな「消滅可能性都市」に関するレポート(※1)が発表されたのは、2014年5月のことだ。
レポートでは、出生率が減少して人口が1万人を切ると自治体の経営そのものが成り立たなくなるとして、具体的な名前を列挙した。
宮崎県の西諸地区にある3市町村(小林市、えびの市、高原町)も、現時点でこの条件に当てはまると予測された。
霧島を挟むように鹿児島県と接する宮崎県南部が西諸地区。「北きりしま」と呼ぶこともある
宮崎県小林市の人口は、約4万6,000人。市役所の入口には、市をあげて養殖に挑戦している淡水魚「チョウザメ」の水槽があった。水が綺麗な土地(※2)だという印象が強まる。
卵が「キャビア」として珍重されるチョウザメだが、あっさりとして歯ごたえのある身も美味
出迎えてくれたのは肥後正弘市長。やはり「消滅可能性都市」のレポートは非常にショックだったそうだ。しかし、現実感のある見通しを示されたことで、地元の危機感が感じられるように変わったという。
「宮崎県の出生率は、実は沖縄県に次いで全国2位なんです。小林市は教育に力を入れているので、みんな中央に進学していきます。その後、地方に帰ろうと思っても就職する道がないから、人が流出してしまうんですね。どうやってそれを防ぐかといえば、雇用を増やすしかありません」
新卒で市役所に入庁した肥後正弘市長。かつては海外で教育事業に携わる夢も描いた人物
若い世代の定住者や移住者を増やすには、雇用のほかにも、医療や教育など「安心して暮らせる環境を整備する必要がある」と市長は言う。
防災も大きなテーマだ。肥後市長が就任した2008年以降、宮崎県は口蹄疫、鳥インフルエンザ、火山活動といった災害に相次いで見舞われた。特に口蹄疫の流行時は市民一丸となって、小林市への侵入を防いだ経緯がある。
「そのとき痛感したのは、危機管理体制の重要性です。それを市民力の高さでどうカバーするのか。通信体制、情報提供体制をしっかりと構築していかないとなかなか難しいなと感じたんですね」
携帯電話で届いた小林市からのメール画面
「そこで今、1万人を超える市民の皆さんに、市からの『防災・防犯メール配信サービス』に登録していただいているんです」
折しも取材当日、九州は115年ぶりの大雪に見舞われた。普段なら30分足らずで到着する鹿児島空港からの道のりも大渋滞だった。
「今日のような日は、市役所に災害対策本部が立ち上がります。まずは、入院施設などの確認です。市内には資産や家畜がいっぱいありますので、そこに給水がいってるかも確認します。その報告を今朝からずっと待機して受けています」
インタビューの合間に慌ただしく会議に出席する肥後市長
水道管の破裂もあちこちで起こった。そこで市は「断水になる可能性があるので、なるべく蛇口を絞ってください」という節水の呼びかけをメールで行った。
断水にならずに済んだのは、ITの力があると市長は言う。
「こういうお願いごとや火災などの事故が発生した場合、全てメールで伝えられます。ただし、まだ高齢者には届かないです。本当の要支援者に対してどう発信するかは、今後いろんな開発でできるようにならなくてはいけません」
西諸地方は酪農も畜産も盛ん。牛は農家の大切な資産だ
こうした危機対応を踏まえたうえで、観光などの産業にも力を入れていきたいと語る。
「国でも『地方創生』という言葉を使うようになりました。人、水、食、花、星、湯、桜、蛍……火山を望む西諸という土地は本当に恵まれていて(※3)、魅力がたくさんあります。今までは発信が非常に下手でしたが、昨年は小林市が注目される出来事があったんですね」
霧島周辺の火山が形成した自然。その地層から50年かけて湧き出る天然水が、西諸の豊かな農作物や畜産物を育んでいる
話題になった移住促進ムービー
霧島山を望む豊かな自然に囲まれた小林市がにわかに注目を浴びたのは、ネットにアップされた移住促進ムービー(※4)の存在だった。
動画には、この地に魅せられたというフランス人男性が登場する。滑らかなフランス語で小林市の魅力を語り続ける……と思いきや、彼の話す言葉が実は、現地の方言「西諸弁」だったというオチだ。
小林市の移住促進PRムービー第1弾「ンダモシタン小林」。んだもしたんとは「驚いた」という意味の西諸弁。地元高校生たちをプランナーに迎えた第2弾も完成し、現在第4弾まで公開されている
きっと2回見てしまうという評判通りのムービーは、SNSを通じて拡散。さまざまなアピール要素が地域にあるなか、あえて「言葉」を中心に据えた意外性も大いに受けた。
西諸という地名の認知度が飛躍的に高まった今、次は実際に来てもらうためにどうすれば良いか。ネット動画に止まらず、さらにITを積極的に使うチャレンジが2015年の秋にスタートした。
アイディアソン×ハッカソン=?
2015年10月、東京・丸の内で「東京と地方を編むアイディアソン(※5)」と題したイベントが催された。テーマは西諸地区の魅力をITで引き出し、伝える方法。イベントに登壇した肥後市長は、このように語った。
「地方にはたくさんの魅力的な地域がいっぱいあります。これからITに期待するのは、地方と都会をつなぐ役割。先駆的な事例をまずは小林市でやって、これを広めていけたらと思います」
どうしたら、都会の人々に「地方に行きたい」という機運を広められるだろう。アイディアソンにはおよそ80人が参加して、ウェブコミュニケーションを通じてITコミュニティを育むような111個の案が生まれた。
なかでも大きくピックアップされたのが、西諸地区が2006年から取り組んでいる「農家民泊」だ。現在57件の農家が加入して「北きりしま田舎物語推進協議会」が組織されている。
西諸でしかできない体験を提供するため、各農家の特色を生かしたプログラムを用意するのが特徴だ。農家民泊で地域のファンを増やした後は、農産物のインターネットを通じた販路拡大を図り、最終的にはインバウンドを呼び込むという将来策も構想された。
これからの課題は、受け入れ農家の拡大に加え、研修・講習会の徹底、修学旅行時期以外の集客力アップだという。そこにITがどう活用できるか。アイディアソンで集まった知恵を参考に、今度はハッカソン(※6)で実際に動くサービスを形作ることになる。
流通や道路網が発達したことで現代社会の利便性を享受しながら、自然の豊かさに親しめるのが西諸地区の魅力。天文観測やホタル鑑賞ができる土地として知られる
最後に、肥後市長はITへの期待をこう語ってくれた。
「ITという言葉に対して、以前は機械的な印象がありました。でも、ITでコミュニティが育まれたり、人と人の触れ合いが生まれたりする事例をNTTデータの方々から聞いて、これは凄いなと直感したんです」
「この地域でITを駆使して新たなコミュニティをつくれるなら、地方と都会の差はなくなります。アイディアソンで上がった案も、全て可能になりそうな予感がしますね。人が頭で思いつくことに対して、ITで実現できないものはないのでは? とワクワクしていますよ」
増田寛也氏(元総務相、元岩手県知事)が座長を務める民間シンクタンク「日本創成会議」によるもの。2010年比で、20~39歳の女性人口が2040年には半数以下となる自治体を示した。
小林市が発信するFacebookページ「よかとこ小林市|Miyazaki Kobayashi」によれば、小林市内にある複数の製造会社や輸送業者の協力を得て、2016年4月18日に500mlのミネラルウォーター2,400本と12Lのミネラルウォーター15箱を熊本県益城町と宇土市、4月19日に2Lのミネラルウォーター9,000本(約18t)と紙コップ3,800個を熊本県宇土市へ支援物資として届けた(2016年4月19日現在の情報)
宮崎県の小林市・高原町・えびの市・都城市に加えて、鹿児島県の霧島市、曽於市の5市1町で、火山活動の歴史と自然景観、多様な植物に触れるための「霧島ジオパーク推進連絡協議会」が設置されている。
小林市移住促進PRムービー「ンダモシタン小林」は、小林市出身のコミュニケーション・プランナー越智一仁氏(電通CDC)が企画制作を手がけた。2016年3月末時点でYouTubeの再生回数は186万回超。
「アイディア」と「マラソン」を掛け合わせた造語で、2000年代に米国で使われ始めたとされる。定められたテーマに対してグループごとにアイディアを出し合い、それを時間内に収斂させていく。今回のイベントは三菱地所の協力の下、NTTデータと一般社団法人エコッツェリア協会の主催で催された。
「ハック」と「マラソン」を掛け合わせた造語。ソフトウェア開発分野のプログラマーやグラフィックデザイナー、ユーザインタフェース設計者、プロジェクトマネージャーらが集中的に作業をするソフトウェア関連プロジェクトのイベント。
日常生活とは違う空間を共有する
リスクマネージメントは不可欠
宮崎と鹿児島にまたがる霧島連山。その北東に位置する西諸地区は、さらに「えびの地区」「須木地区」「小林地区」「野尻地区」「高原地区」という5つのエリアに分かれる。
この地で2006年に発足したのが、農家体験を推進する団体「北きりしま田舎物語」だ。
http://www.kitakirishima.com/
「北きりしま田舎物語」のホームページでは、各地区の農家でできる体験と、受け入れる家族の構成を紹介している
今回、ITを活用してPRに取り組むのが「農家民泊」だ。実際に経験したことがある人は、それほど多くないだろう。
そこで体験できるのはどんなことか。小林市役所商工観光課で、北きりしま田舎物語推進協議会をサポートしている宮田陽介さんに聞いた。
「現在、協議会に加盟している農家さんは57軒。平均年齢は61~62歳ですね。これからの目標は、参加する農家さんの数を100軒程度にまで増やすことです」
北きりしま田舎物語のイメージカラーは、元気なオレンジ色
会員拡大のためには、観光業に協力してくれる各農家の声をしっかりと聴くこと。1軒1軒を訪ねていき、どういった想いを抱いているか汲み取っていくという。
「民泊をしてくれる農家さんの数が増えるに越したことはありません。ただ、この辺りは専業農家が多いんですよ。本業を考えると1週間に1組くらいを受け入れられるかなと思いますけど、忙しいとなかなか民泊まで踏み込めません」
具体的にはどんな体験ができるのだろう。
「畜産だったり、農業だったり、受け入れる農家さんごとに特色があります。自分でピザ釜を作っている農家も多く、旬の野菜をトッピングして自家製の小麦粉からピザを焼き、みんなで食べる体験は都会から来た子たちにも人気です」
食と農に触れる1泊2日。行政とも連携して、農家から貴重な体験を提供し続けている
協議会では、初めての農家が民泊開業するまで(※1)ステップを踏みながらサポートしている。こうして、異なる受け入れ農家が違っても実りある体験ができるよう、万全の体制を整えているわけだ。
特に受け入れ時には、宿泊者にアレルギーの有無などを確認する。安全対策のための研修会など、リスクマネージメントは徹底して協議会の中で行うルールがある。
「観光をしっかりやっていくことは、街づくりにつながるんじゃないかと思うんです」と語る宮田さん。今後、ITにかける期待も大きい。
「まずは、取り組みを知ってもらうことが大事です。その後、どうやって本当に来てもらうのか。東京と宮崎、距離は遠いじゃないですか。『お金を払ってまでこの人に会いたい!』と思わせるには、手紙やメールだけじゃなく、もっと新しい手段が考えられると思うんです」
コミュニケーションを体感する
小林地区にある受け入れ農家の「生駒ファーム」を訪ねた。取材に同行したのは、NTTデータイノベーション推進部部長の吉田淳一。
話を聞かせてくれたのは、冨満哲夫さんだ。「北きりしま田舎物語推進協議会」の会長も務めている。
冨満さんは無農薬・無化学肥料で米や野菜を生産するほか、栄養価の高い「烏骨鶏」の飼育もする
「私たちが提供している農家民泊は、ふだん住んでるところに泊まってもらう体験です。地元や農業をPRしたいという目的なんですよね」
他県などで、農家民泊に取り組む自治体も増えている。ただ、他の施設に泊まりながら農作業を体験できることを売りにした、大規模な旅行ビジネスも見かけるそうだ。
「そういった方法なら毎日でもできるかもしれませんが、お金になる部分とボランティア的な気持ちの入っているバランスで、私たちは気持ちの部分を大事にしているんです」
57軒の農家をすべて足すと、年間の利用者は2,000人を超える。その多くが5~6月の修学旅行時期に集中している。
「修学旅行先を選ぶうえで、農家民泊は相当大きなポイントになっています。関西や関東あたりでは、必ず組み込む学校も多いそうです。先生たちが先行して体験にやって来るケースも多いですね」
短時間の滞在だったが、取材スタッフは冨満さんのお宅で心温まる歓迎を受けた
「ただ海外へ行って高級ホテルに泊まるという体験ではなく、農家の人々と交流することに教育的効果を認めてもらっているようです。実際に農家民泊をした生徒たちの顔が変わって帰ってくるのを目の当たりにすると、いい体験なんだなと感じてくれるようで、リピーターが多いんですよ」
子どもたちにとって、最も印象的なのはどんな体験なのだろうか。
「やっぱりコミュニケーションの部分ですね。食事も一緒に作って、一緒に食べる。その中で、いろんな話をしながら同じ時間をすごす。それが中学生とはすごく歳の離れたおじちゃんおばちゃん。お互いに孫のような、親戚のような関係性ができるんです」
いつもの生活とは違う空間で過ごす1泊2日。それはまさに非日常の体験だ。
「農家には嫌な作業もときにはあります。私たちの民泊でも、烏骨鶏の解体を食育の一環で行うんです。むやみやたらに殺しているのではありません。『可哀想だけれど、なぜこんなことをするのか』と説明しながらです。先日は中学2年生の大きな身体の男の子が、血抜きをしているときに自然と手を合わせていたのが印象的でした」
農家民泊を通じて、修学旅行生の成長を見守る
「から揚げとかクリスマスチキンとか、みんな好きでしょう。自分たちで鶏の脚を切って、その部位を見て気付くんですね。残酷ですよ。中には泣き出す子もいます。でも鍋にして食べるときには、みんな美味しいって言うんです」
西諸地区には美味しい食材があふれている。どこか知らないところからやって来たのではなく、現地の農家と結びついた「生命」だ
西諸地区には美味しい食材があふれている。どこか知らないところからやって来たのではなく、現地の農家と結びついた「生命」だ
「自分が何を食べているのか分かっていれば、むやみやたらに食べ残しもしません。生きている動物を殺して、美味しく食べさせてもらっている。それが『生きていく』ということ。子どもたちは話せば分かってくれます。非日常的な体験だからこそ、頭の中に残してもらいたいんです」
こうした体験を家に持ち帰って、親や兄弟姉妹と共有するのは貴重だ。それが空間を超えたリアルタイムの共有なら、どんなに新鮮だろうか。
吉田が手にしているiPadには、ツーアクションでビデオ通信が立ち上がるパイオニアVCのアプリが入っている
それだけでなく、実際に農家へ行く前に「こんな人たちのところで過ごすんだ」ということが表情や声で分かれば、心理的な距離がより近くなるかもしれない。
ITリテラシーがない人にとっても、操作や接続が簡単な装置さえあれば、十分に実現できる話だ。
地域の空気感までITで運びたい
西諸地区に移住した人にも出会えた。
橋本和弥さんは、2年前に久留米から奥さんの実家である小林市へ移り、障がい者の就労継続支援を行うレストラン「野菜ビュッフェ ツナギィーナ」を2015年11月に開業した。悲恋の「泉姫伝説」が残る、静かな湖畔(※2)のロケーションに一目惚れしたという。
https://www.facebook.com/tsunagheena/
ツナギィーナの営業は11時30分~15時まで。ランチはビュッフェスタイル。定休日は火曜
「レストランのほかに農業も営んでいます。いま畑で獲れたレタスとホウレンソウが届いたので、ぜひ召し上がってください」
ドレッシングもかけずに一口頬張ると、ビックリするほど甘味がある。
新鮮な野菜を生かしたメニュー。生地から寝かせた焼きたてのピザも食べ放題でオーダーできる
「美味しいでしょう。うちでできた野菜は有機栽培で無農薬です。無農薬って、本当に大変なんです。慣行農業に比べて1カ月くらい余分にかかってしまうため、生産性を上げられませんから」
野菜はレストランで使うほかには、主に小林市内へ出荷。残念ながら、インターネットで流通させるのは難しいという。
「生産工程をFacebookで発信していますが、最終的な購買にまで結び付ける知恵が必要だな、と痛感しています。西諸は農畜産が基幹産業なので、土に「完熟たい肥」を撒きます。土づくりから消費者に知ってもらって付加価値を上げていくとか、考えているところです」
インタビューの合間、小林市市役所の柚木脇大輔さんが現在取り組んでいる事例(※3)を紹介。積極的に動画での情報発信に取り組んでいる。
名刺に施されたマークにスマホをかざすとアプリが自動で立ち上がり、生産者のストーリーを語るYouTube動画を再生した
水や自然に恵まれた西諸地区。奥さんの紗耶香さんに、あらためて魅力を語ってもらった。
「純粋な人がとても多いんですよ。今すごく若い方々とお仕事させてもらってるんですけれど、もっと欲を出していいのにと思うほど。でもその純粋さとともに、私も育っていきたいなって思うようになりました」
四人のお子さんに囲まれながら、仕事で新しいスタートを切った橋本夫妻。子育てをする環境として、とても恵まれた土地だという
定量的なデータでは計れない、ゆったりとした西諸地区の雰囲気とそこに暮らす人々の人柄。地方と都会をITで結び付けるとき、この魅力をうまく盛り込んでほしいと願わずにはいられない。
①まず『農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律』に対する照会を各首長から受ける。②開業に必要な申請書類を保健所に提出し、保健所と消防署の調査を受け、晴れて簡易宿所の営業許可証を獲得。③その後に各種講習(消防署救命士による3時間受講の普通救命講習会、保健所衛生課職員による『浴室と食品の衛生講習会』『専門家によるリスクマネジメント講習会』)を受講。④さらに民泊モニター研修会ではベテラン農家宅で実際に民泊体験し、今度は逆に自分が受け入れ側となって、ベテラン農家を受け入れる研修を行う。
ホタル鑑賞の名所である出ノ山(いでのやま)公園には、会えない恋人を想い身を投げたという泉姫の伝承が残る「出ノ山湧水」があり、チョウザメの養殖にも生かされている。ため池のほとりにある泉姫神社の水汲み場は、清水を求める人々で賑わう。
小林市のサイト「てなんど小林プロジェクト」には、これからも続々と動画がアップされる予定だ。
http://tenandoproject.com
東京と宮崎を結ぶ2日間のハッカソン
裏道を探し、道を切り拓く
地方と都会をITで結び付けるという、宮崎県の西諸地区(小林市、えびの市、高原町)を対象にした試みもいよいよ実践編に入る。
2016年3月12日と13日の2日間、ハッカソン会場となった豊洲センタービル10Fにある「INFORIUM豊洲イノベーションセンター」は、土日にも関わらず熱気に包まれていた。
週末に行われたイベントは、カジュアルでラフな雰囲気。所属組織の枠組みを超えて個人として参加する意識のメンバーが多かった
参加者とサポートスタッフ合わせて、集まったのはおよそ60名。20代半ばから40代後半まで幅広く、男女の比率は8対2ほどだった。
ファシリテーター(進行役)は、HackCamp(※1)の矢吹博和氏。これまで数々のハッカソンを国内で運営してきた実績を持つ。
翌日にフルマラソンの「横浜マラソン」に出場する矢吹氏は気合十分。ハッカソンには、アイデアを一気に推し進めて形にする熱量も必要
「ハックとは『裏道を探す』『道を切り拓く』という意味です。与えられたお題に対して、自分たちでアイデアを考え、裏技を考える。そのためのアプリケーションやソフトを短時間で開発するのが、今日のハッカソンです」
今回の趣旨は、地方の活性化。矢吹氏は「ハッカソンにはその場で作っただけで、実効性がないプロジェクトも多い」と指摘した。
「これまでハッカソンに参加したことがある方、挙手を!」との声に挙がった手は4割ほど。参加者のバックグラウンドも、プログラマーやエンジニア、デザイナーからプランナーまで、さまざまだった。
募集開始からすぐ定員になった人気の秘密は、参加者のうち10名が2週間後に現地へ行き、農家に泊まりながら実地検証ができるため。実際に「新しい客層が農家民泊に参加したくなる仕組み」をつくる前段階であり、本当に有効かどうか確かめる目的がある。
「これまでの農家民泊は修学旅行生がメインの顧客。それ以外の大丸有(大手町・丸の内・有楽町)を訪れる子連れやOLの皆さんをターゲットにした農家民泊促進プランを考えてください」
メンバーの特性が考慮されて事前に班分けされた10チームが、朝10時から翌日の18時まで、2日間の長丁場に挑んだ。
相手とつながる、体験を貯める
矢吹氏に続いて、NTTデータイノベーション推進部部長の吉田淳一が登場し、ハッカソンの趣旨を解説した。
「小林市はネット上のCMが話題になって認知度が向上しました。でも、実際に訪れてくれるかは、また別。そのときにWebコミュニケーションが力を発揮します。空間を共有することで、なんとなく顔が分かって安心する。農作業を通じて初めて生まれる感動を、疑似的に体験する。それを上手く伝えられたら『じゃあ、行ってみよう』となってくるんですね」
映像をふんだんに使ったユニークなプレゼン「吉田劇場」で、地方創生の課題とITを使った解決の方向性をわかりやすく説明する吉田
また、昨年10月に催されたアイディアソンで出された111個のアイデアをマッピングした4象限(※2)を見せながら、こう述べた。
アイデアがマッピングされた 4象限マトリクス
「情報をどう伝えていくか(第一象限)、現地で何をすればいいのか(第三象限)、この2つの象限にはアイデアが集まりました。しかし、相互認識・理解の第二象限と相手とつながる、体験したことをアーカイブする第四象限、こちらの2つの象限のアイデアが足りなかったのです。そこをシンクロしていけるようなプロジェクトを皆さんに考えてもらうのを期待します」
途中、宮崎にいる「北きりしま田舎物語推進協議会」の民泊受け入れ農家とネット回線を結んで中継した。
今回の実証実験には、無農薬野菜と米を生産する「笑美農(えびの)市場 本坊農園」、宮崎牛を育てている「農家の宿くらら」、子牛を生産している「たっちゃんの宿」の3軒が協力
その後はインプットセミナーと題し、ハッカソンに技術提供する各社から解説があった。機材とデバイスのWeb APIで何ができるか、SNSと結び付けられるヒントも多かった。
ハードウェア環境では、眼鏡型フレームにビデオカメラと6軸センサーを内蔵し、見たものを遠隔地へ送れる「M-100」、全天球(360度)撮影が可能なデジタルカメラ「Theata(シータ)S」、身体から出る微弱な電力を取得し、心拍とストレス値、加速度センサーで歩行状態を把握するバイオセンサーシャツ「hitoe(ヒトエ)」などが実証実験で使用できると案内があった。
農家民泊での使用を想定した機器の一部
ソフトウェア環境では、モバイル環境で繋がりにくいとき自動で帯域を制御し同時に最大10端末が通信可能な技術「Xsync Prime(バイシンクプライム)」や、見た目にも派手なアクションが楽に追加できる、統合型ゲーム環境「Unity(ユニティー)」などの紹介があった。
各社から技術プレゼンに来た社員は、参加者のやりたいことが溢れてしまった場合の相談相手となる「メンター」としても活躍
参加者の関心が高かったのが、コミュニケーションロボット「Sota(ソータ)」の利用だった。プログラム言語を書かなくても開発できる環境が整っている点と、Javaで補足できる点なども好感された。
ヴイストンが開発したSotaは、ロボットクリエイターの高橋智隆氏によるデザインを取り入れた。一般家庭への普及を目指す普及型ロボットフォームと位置付けられている
裏側の仕組みに関心を向ける機会
40分のランチ休憩を挟み、短期集中型のアイディアソンがスタートした。ここでアイデアを一気にまとめ上げ、チームで提案すべきプロジェクトの方向を決定する1時間だ。
シートのひとマスに1つのアイデア、持ち時間で3つを書き入れる。実現するか分からないアイデアでも良いとされた。5分経ったら、時計回りにシートを隣へ。同じことを繰り返すが、他の人と同じアイデアや自分が他のシートで出したアイデアは書けない。
5分間のアイデア出しに苦しむ参加者たち。これを連続6回繰り返した
「ダブりはNGなので、だんだん辛くなるでしょう。前の人のアイデアの組み合わせ、ガジェットとの連携はOKです。『Aをしながら、手元ではBをする』とか『このアイデアをこの機材と組み合わせる』など。相手と繋がる、体験を貯める。単語だけでも、絵で描いてもいいので、なんとか埋めていきましょう」(矢吹氏)
1時間後は、一転して「ハックモード」に。メンバーの得手不得手を確認し合いながら、自然とチーム内で役割が決定していった。
1日目の22時過ぎまでを作業した後、翌日は9時に集合。2日間の合計で12時間以上をハッカソンに費やした。
技術メンターを務めた、HackCampの若狭正生氏は、プロブラマーやエンジニア以外の人々が、ハックキャンプに参加する例が増えていると語る。
「そういう方たちでも、例えばソースコードを覗いてみるとか、プログラムの1行を自分で書いてみるとか、この機会に何かを動かす仕組みに関心を持ってもらえると嬉しいですね」
プログラマー、デザイナー、プランナー、それぞれが自分のバックグラウンドを生かしながら、1つのアイデアを見える形にしていく
2日目の夕方からは、いよいよミニプレゼン。
ゲストコメンテーターに小林市の肥後正弘市長とえびの市の村岡隆明市長を前に、ネット回線で高原町の日高光浩町長、前日に続いて宮崎にいる農家と結んで、各チームのアイデアが披露された。
宮崎から駆けつけた小林市の肥後市長(左)とえびの市の村岡市長(右)は活発に質問や意見を投げかけた
ガジェットとの連携では、Sotaを利用した案が2チームあった。西諸弁をロボットと一緒に学んだり、ロボットと一緒に旅に出たり、具体的なイメージが広がる提案だ。
民泊の予約プラットホームを開発して、終了後に食材を注文したり、ふるさと納税ができたりする「食」にフォーカスした情報サイトをつくる提案は現実的だった。
熱のこもったプレゼンに参加者からも笑みがこぼれる
参加者の心拍数をhitoeで測る提案もいくつかあった。感動した体験をピンポイントで抜き出せるほか、「婚活」イベントで相性を判断したりするゲーム性の高い案も出た。
ユニークだったのは、民泊しながらダイエットに挑戦する企画。新鮮な野菜や鶏肉が美味しい、西諸地方らしいアイデアだ。
プレゼン終了後には各チームから最低1名、合計11名が選出。3月23日、宮崎での実証実験に向かった。
2014年の設立以来、組織内や公開型のイベントで、多くのアイディアソンやハッカソンの企画と運営を成功させてきた企業。オープンイノベーションのためのイベント開催をテーマにしている。
http://www.hackcamp.jp
横軸(x軸)と縦軸(y軸)を組み合わせ、2つの指標から4つのカテゴリーを区分して分析するフレームワーク(思考方法)。このマッピングではさらに、時間軸に沿ってそれぞれの象限が時計回りに影響を及ぼしていく特徴がある。
ITでコミュニティがつくれる
ハッカソンの提案を現地で検証
2016年3月24日朝、羽田空港から出発した「宮崎と東京をつなぐハッカソン」実証実験のメンバーたちが鹿児島空港に降り立った。その後、九州自動車道を北上し、えびのインターに到着した。
鹿児島空港に降り立った実証実験のメンバーたち。大雪のため通行止だった前回は2時間以上かかった西諸地区までの道のりは、30分ほどに
東京でのハッカソン終了から10日間が経過し、これまで準備を進めてきた各チーム。1泊2日の現地滞在はITを使ったそれぞれの提案が有効か検証する機会だ。
地元野菜をふんだんに使ったビュッフェランチを食べた後、農家民泊を体験する3つの宿泊先に分かれた。
3軒の農家に分かれて宿泊
えびの市内にある「笑美農(えびの)市場 本坊農園」は、有機農業に取り組む農家。天気が良い日には、無農薬・無化学肥料で育てた米をかまどで炊いたご飯が宿泊者に振る舞われる。
本坊照夫さんは65歳。「医食同源」の考え方の下、妻の千代子さんと一緒に、健康な身体や病気にかかりにくい身体をつくるための食材を育てている。
農家民泊の始まりは、お茶を飲みながらの自己紹介から。普段の仕事や出身地などを、ざっくばらんに話す雰囲気だ
「農業は土づくりから。うちの畑の土をつくるのに、30年かかったんですよ」と照夫さん。
この日の農作業は種芋の選別だった。参加者の一人は、hitoe(※1)を組み込んだセンサーシャツを着用。集中力を要する初めての作業で、心拍数がやや上昇。その状況がスマートフォンの画面にリアルタイムで表示されていた。
慣れない農作業を行う参加者の心拍数が上昇したのを、PCの画面で確認。遊園地のアトラクションを楽しんだような軽い興奮を味わったのが第三者にも分かる
小林市の「たっちゃんのやど」は、無農薬・無化学肥料の野菜づくりをするとともに、敷地内でタケノコや原木栽培のシイタケも収穫している農家。牛も10頭ほど保有。肉質に影響を与えるストレスをかけないよう、窪薗辰也さんは牛たちを大らかに育てている。
「牛の瞳は素直で綺麗。ブラッシングされて気持ちがいいと尻尾の付け根を立てて喜ぶんです」と辰也さん。
スマートグラス(※2)の「M-100」や全天球撮影カメラ「Theata S」といった撮影デバイスを使い、臨場感ある写真や動画を農場で記録した参加者たち。それらをPCへ取り込み、SDK(※3)が配布された後はスマートフォンで見られるようになると仮説を立てる。
ある参加者は「生体センサーを牛にも着ければ、バイタル(生体)情報が取れる。すると、遠く離れた場所でも牛への愛着が湧くのでは?」とアイデアを披露。肉牛のオーナー制度を知事に訴えたこともあるという窪薗さんも、妻の由紀子さんと一緒に関心を示していた。
牛のブラッシングをしながら、脈拍や心拍などをとっている
300頭以上の肉牛を飼育する「農家の宿 くらら」は、倉薗 忠さんと嘉枝子さんが、牛の餌やりや牛舎の清掃、農作業体験を提供している。ハッカソンの最優秀チームに与えられる1万円相当の宮崎牛も、ここで大切に育てられる肉だ。
2010年に口蹄疫が発生した宮崎県では、牛舎へ向かうときは消毒槽で靴の裏を消毒するように、現在も警戒態勢を緩めない。畜産業を守る厳しい状況下でも、北きりしま田舎物語推進協議会では会員の農家を徐々に増やしてきた。
取材スタッフが到着したのは、宿泊者が順番に入浴を済ませている時間帯。ロボットと農家民泊の組み合わせたサービスを提案するチームからの参加者は、夕食の調理風景をデジタルカメラで撮影。コミュニケーションロボット「Sota」がその様子をレポートするという画面をデザインしていた。
Sotaの動きは、オブジェクト指向のプログラミングで設定できる
この晩のメニューは、牛鍋、胡瓜の辛子和え、ほうれん草の胡麻和え、地元で「ガネ」と呼ばれる紅はるか(サツマイモ)の天ぷらなど。
「明日はこのガネの調理法を、中継先の東京の皆さんに教えたいと思っています」と嘉枝子さん。
親戚の家で過ごすように気取らない食事風景。地元の食材がふんだんに使われ、どの料理も非常に美味しかった
宮崎と東京を結んだ最終発表
翌25日朝、農家の宿くららに集まった参加メンバーたち。2日目は宮崎と東京を結んだハッカソンの最終プレゼンが行われた。接続状況の確認を兼ねたリハーサル後、各チームは現地での検証を踏まえた3分間の報告を行った。
東京のオフィス街にあるコラボレーションスペースと宮崎の自然豊かな農家。お互いに両会場に流れる異なる空気感を近くに感じながらの中継だった
宮崎側は会場から一歩外に出ると、こんな風景が広がる
東京会場は、丸の内から大手町に移転リニューアルしたばかりの「3x3Lab Future(さんさんラボ・フューチャー)」。エコッツェリア協会が運営する交流・活動拠点だ。
全チームのプレゼンが終了後、基調講演やパネルディスカッションを挟んで、優秀作品の表彰が行われた。
基調講演を務めたのは『協創力が稼ぐ時代』などの著書がある、伊藤園常務執行役員CSR推進部長の笹谷秀光氏(上)。その後は西諸地区の3首長を交えてパネルディスカッションが催された
最優秀賞に輝いたのは「どろんこフェスティバル」を提案したチーム。最初に全国では身近でも、都会にない観光資源は「土」だという気づきがあった。そこで、東京の真ん中に泥のプールをつくり、バレーボールをやったり、野菜を隠して掘り起こしたりする体験イベントを催そうというアイデアを考えた。
優勝した「チームどろんこ」のメンバー。これから1年後の実現を目指して、宮崎県の首長たちも高い関心を示していた
「私の母国、フランスのパリで催される『農業フェスティバル』をヒントにしました。シャンゼリゼの一部を畑に変身させてしまい、農業はカッコイイことだとアピールするんです。日本でも西諸地区が中心となって、同じ発想の試みをやってほしいと思います」
一見すると地方と都会を結ぶアナログな提案だが、さまざまな場面でITが活躍する。東京会場に大きな画面を置いて、宮崎の水田をリアルタイムに映し出す「空間共有」や、どろんこバレーの様子を防水仕様のスマートグラスで撮影して、ネットでその様子を見られるようにする「仮想体験」などだ。
イベントを通じて自然や農業に興味を持った子どもやその家族が、次のステップとして農家民泊へ踏み出す、というストーリーが考えられている。
審査に当たった小林市の肥後市長は、このように講評した。
「泥んこ遊びで、人間が人間らしくある本来の姿が体験できる。自然と触れあい、人間関係が生まれる。これは素晴らしい提案です。どこにでもある資源を使うアイデアにも可能性を感じました」
ハッカソンのプロジェクトを行った前後で、ITヘの意識も変化したという。
「ITでコミュニティがつくれるという事実に気付きました。コミュニケーションをITで図る取り組みが今後進んだら、素晴らしいことが実現できると期待しています」
えびの市の村岡市長は、農家民泊の取り組みから振り返った。
「民泊に参加している農家さんも、最初に子どもたちを受け入れたときは緊張しながらのスタートでした。でも『農家体験を自分たちが提供すると、こんなに喜んでくれる』と魅力を他の農家に伝えて、活動が広がった経緯があります」
プレゼンの中で評価が高かった実現可能な提案について、いくつかは具体的に進めていきたいという。
「心拍数を伝えたり、事前に学習をしたり。実際に現地へ行ったような気になれて、思わず行ってみたくなるといったステップのある提案が特に面白かったですね」
IT×料理=新たなコミュニティー
表彰後の東京会場では宮崎とネットワークでつないだイベントが開催された。会場では宮崎から直送されたミニトマト、きんかん「たまたま」の即売会が行われた。売り場のモニターには生産者が映り、リアルタイムで商品を解説したり、来場者からの質問に答えたりしていた。
宮崎からはミニトマトを生産する小川農園の小川紘未さんが商品の育成環境などを解説。ITを使った対面販売の実証実験を行った
東京会場に併設されたキッチンでは、8名の参加者を迎えて料理教室を開催。学ぶレシピは、切り干し大根や宮崎牛などを使った家庭料理だ。
打ち上げや即売会も行われる会場では音声を拾いにくかったり、通信にタイムラグが生じたり、レンズの関係で宮崎側から参加者全員の顔が見えなかったり、通常の料理教室と比べるとスムーズにいかない場面も多かった。
ただし、困難から生じる失敗まで楽しく感じられてしまうような面白さを参加者たちは感じていたようだ。新しい試みの面白さ、普段の都会生活では触れられない「農家のお母さん」たちの人柄がそうさせたのだろう。
講師は宮崎にいる農家の女性陣。温かい指導に参加者の顔がほころぶ。東京側の進行役はエプロン姿で張り切るNTTデータ イノベーション推進部部長の吉田淳一
肥後市長も、郷土料理「ガネ」の作り方を参加者に伝授
ITで農家民泊を「ハックする」という今回の試み。技術を観光への呼び水に使うだけに留まらず、地方と都心の両方がこれからの豊かさのために必要なものが見えてくるような機会だった。
3つの電極と小型端末を搭載し、着用者の生体情報をスマートフォンに送信できる機能性繊維素材。東レとNTTグループが共同開発した。
http://www.hitoe-toray.com/
撮影機能や小型の画像ディスプレイを備えたメガネ型デバイス。Googleが開発中の「グーグルグラス」もその一種だが、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)方式のAR(拡張現実)ウェアラブルコンピュータだと定義されている。
ソフトウェア開発キット。システムに対応したソフトウェアを開発するために必要なプログラムや文書などの統合パッケージで、開発希望者に向けて配布または販売されるのが一般的。
文/神吉弘邦、瀧口幸恵
写真/真鍋奈央、冨樫実和