対話型インターフェースの拡大
文字によるチャットや音声による会話といった、「対話型インターフェース」が拡大を見せています。文字によるチャットの例としては、条件に合致する家をチャット形式で探せるサービス参考1や、外国旅行中に母国語によるチャットで観光支援してもらえるサービス参考2などが登場しています。既に日本で日常的に使われているLINEもチャットによる対話型インターフェースです。音声による会話の例としては、Amazon EchoやGoogle Home参考3といった音声アシスタントが各家庭に入り込み始めています。音声アシスタントとの会話を通じて家電を操作したり、スケジュールを調整したり、商品を注文することが可能になりました。特に会話における音声認識技術は応答速度や精度が(用途に合わせたチューニングを通じて)実用レベルまで向上しており、活用の幅が一気に広がっています。参考としてAmazon Echoは累計300万台以上売れている参考4との調査結果もあります。
これらの対話型インターフェースは、自ら情報を探して整理して答えを見つけるといった面倒なことをせずに、直接質問して聞くことでダイレクトに欲しい答えに辿りつける点が優れています。人間の「面倒なことをしたくない」ニーズに非常にマッチしたインターフェースと言えるでしょう。今後も多くの場面で、面倒を減らす観点から対話型インターフェースの採用が拡がっていくと予想されます。
対話型インターフェースの拡大がもたらす変化
さて、対話型インターフェースが拡大を続けると何が起きるでしょうか。例えばECで買い物をする際、ウェブサイトで品物を探したり値段を比べるといった行動をしなくなります。音声アシスタントやチャットサービスに聞けば自分に一番適した良い条件の商品を紹介してくれるからです。病気になって具合が悪くなった時も、症状を伝えれば推定される病気の名前や対処方法まで教えてくれるので、Googleの検索欄に「病気、熱、頭痛い、対処」のようなキーワードを入れて必死に調べることも無くなります。これは人間が調べることをしなくなるだけで、実際は対話型インターフェースの先で動いている専門家や人工知能が代わりに調べている状態です。対話型インターフェースは、人が調べて情報を集めて判断する部分を徐々にアウトソーシングさせていくための仕掛けとして非常に優秀です。やがて判断はお任せになり、対話型インターフェースが出す答えや選択肢は何の疑問も抱かれず正解として扱われるようになっていきます。情報にたどり着くためのルートや参照される情報が画一化されていき、一種の情報統制状態(皆が同じ情報を得て同じ答えを出す)になるでしょう。情報を発信する側にとっても、現在のような「人が見ることを想定したコンテンツ」は相対的に価値が低下し、対話型インターフェースの先で動く人工知能に的確な情報を届け振り向いて貰うための工夫がより重要となっていきます。
図:対話型インターフェース(イメージ)