Wi-Fiマルチキャスト技術
Wi-Fiマルチキャスト技術は、次世代の映像ストリーミング技術であるMPEG-DASHとNTTデータが持つIPデータキャスト(IPDC)技術を組み合わせた映像配信技術で、Wi-Fiを使って高品質な映像の一斉同報配信を実現します(※1)。
完全片方向であることから多人数の同時視聴が可能なため、スタジアムのように大勢の人が一箇所に集まるような場所での映像の配信に適した技術です。
- ※1
大勢への一斉同報配信サービスを実現するWi-Fiマルチキャスト
http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/trend_keyword/2015111201.html
スマートスタジアム
スポーツ競技のスタジアムにICT技術を適用することで、来場者が様々なサービスを受けられるようになります。海外での取組みが進んでおり、米国のNFLの「リーバイス・スタジアム」の事例(試合のリプレーをスマホで視聴できるなど)が有名です。他にもNFLやメジャーリーグのスタジアムでスマート化が進んでいます。
いずれのスタジアムでも、数万人規模の人数が同時利用しても通信の輻輳が発生しないようにスタジアム内に多数(1000基以上の場合もある)のWi-Fiアクセスポイントを設置し、試合の映像や試合のスタッツ、チームや選手の情報の配信に加えて、座席案内やフードデリバリー、トイレの混雑情報の配信などスタジアムで来場者が快適に過ごすための様々なサービスが利用できるようになっています(※2)。
日本でも2020年を見据えての取組みが始まっており、西武ドームや等々力陸上競技場で、場内へのWi-Fiアクセスポイントの敷設やそれを利用した新しいサービスの実証実験が行われてきました(※3)。
- ※2 来場者がスタジアムで快適に過ごすために工夫されたサービス
- スーパーボウルで実証、世界最強の「ITスタジアム」
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/052000044/060300006/ - 6万人超がWi-Fi利用可能、米でスマートスタジアム最強争い
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/092100040/092900010/
- スーパーボウルで実証、世界最強の「ITスタジアム」
- ※3 スタジアム内のWi-Fiアクセスポイントやそれを利用したサービスの実証実験
- 西武ドームにおけるスタジアムエンターテインメントサービスの拡充について
https://group.ntt/jp/newsrelease/pdf/news2014/1409/140908a.pdf - サッカー競技場でスマホを力いっぱい振りまくる
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/120801474/
- 西武ドームにおけるスタジアムエンターテインメントサービスの拡充について
NACK5スタジアム大宮「スマートスタジアム」の取組み
J1リーグの大宮アルディージャのホームスタジアムであるNACK5スタジアム大宮をスマートスタジアム化して、様々なサービスを提供する実証実験が2016年の第2ステージに行われました。2020年を見据えたNTTグループ全体の取組みになります(※4)。
スタジアム内に高密度Wi-Fiを敷設した上で、来場したファンにチーム情報の提供や映像配信に加えて、所定の席へのフードデリバリーやスタジアムの周辺の店舗で使えるクーポン配信も行われました。
また、2016年9月25日からは大宮アルディージャ公式アプリ(図1)の提供開始と合わせて、Wi-Fiマルチキャスト技術を使ったライブ配信サービスを開始しました。Wi-Fiマルチキャスト技術を使い、1.5万人収容のスタジアム全体での映像配信は国内初の試みになります。
- ※4 NTTグループが行ったスマートスタジアム化への取組み
- 新たな感動と体験を~NACK5スタジアム大宮から始まる新たなストーリー~
第一弾 https://group.ntt/jp/newsrelease/2016/06/24/160624a.html
第二弾 https://group.ntt/jp/newsrelease/2016/09/23/160923a.html - 大宮アルディージャが挑む「スマートスタジアム」大作戦
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/101400242/072100022/
- 新たな感動と体験を~NACK5スタジアム大宮から始まる新たなストーリー~
図1:アルディージャ公式アプリ(赤枠がNTTデータ提供のサービスへのアイコン)
Wi-Fiマルチキャストによる映像配信サービス実証実験
2016年9月25日と10月22日、11月3日の3試合でWi-Fiマルチキャスト技術により、3チャンネルのライブ映像配信サービスを提供しました。
図2:スタジアム内の構成
チャンネル1は試合のライブ中継で、衛星放送向けの中継番組を配信しました。チャンネル2は解説番組として、試合中はボール支配率やシュート本数など試合のスタッツ画面を表示し、ハーフタイムと試合終了後は大宮アルディージャにフォーカスした解説番組を視聴できるようにしました。チャンネル3は「選手追っかけ」として、試合中に大宮アルディージャの特定の選手を映し続ける映像になります。私も3試合とも観客席で映像の視聴を試しましたが、ごく稀に映像が途切れることはあったものの、快適に視聴することができました(※5)。
試合後のログ分析の結果から、大宮アルディージャ公式アプリの利用者の半数以上がLive動画の視聴実績ありとの結果が分かりました。また、来場者へのアンケート結果から、このサービスが新規のファンから特に好評であったことも分かりました(※6)。流すコンテンツ次第で、さらに利用者が増えることが期待されます。
この実証実験はメディアの注目度も高く、実証実験翌日の9月26日(月)のNHKおはよう日本、および、10月28日のNHK金曜eye「大胆予測!TOKYO 2020」でWi-Fiマルチキャストで配信される映像を視聴し楽しんでいるファンの様子が紹介されました。
- ※5 大宮アルディージャ本拠地の「Wi-Fi」が恐ろしく快適な理由... Wi-Fiマルチキャストの実証実験が開始
http://japanese.engadget.com/2016/10/28/wi-fi-wi-fi/ - ※6 多様化するスタジアムのスポーツ観戦
https://inforium.nttdata.com/foresight/smart-stadium.html
今後に向けて
NACK5スタジアム大宮での実証実験を経て、現在、Jリーグの他スタジアムへの適用に向けた活動を進めており、Wi-Fiマルチキャスト技術もこの流れで更なる普及展開が見込まれます。
また、2016年は「VR元年」といわれた中で、360度カメラで撮影した全天球映像の配信が盛んになってきましたが、配信には高いビットレートが要求されます。そこで、Wi-Fiマルチキャスト技術と組み合わせることで全天球映像を活用した新たな観戦スタイルの確立も期待されます。
今後もNTTデータではWi-Fiマルチキャスト技術の普及展開に努め、2020年にはどこのスタジアムでもWi-Fiマルチキャスト技術で試合に関連する映像が楽しめるようにできればと考えています。