情報のもつ価値の活用がビジネス再構築を加速する
21世紀の最も重要な資源はデータであると言われます。顧客情報などの収集・分析・活用が、新たなサービス、新たなビジネスモデルの創出につながっています。例えば医療分野では、日常的に計測されたデータを診断に役立てることが、予防医療へのシフトを促すと考えられます。遺伝子情報や蓄積された臨床データの解析は、新たな治療法の開発や創薬、治療の高度な個人化に効果があると期待されます。
自動車業界は“破壊的(ディスラプティブ)”な変化に直面していると言われています。移動ニーズと移動手段の効果的なマッチングを行うライドシェアリングの普及は、自動車の所有から利用への変化をもたらし、自動車業界のビジネスモデルにも影響を及ぼしています。走行中に収集したデータをリアルタイムに解析し、自律的な状況判断に基づいて機構を制御する自動運転は、技術的には1-2年以内に完全自動運転車が登場することも予想されますが、社会的に受容されるまでには責任の所在などの課題解決が必要でしょう。
データを成長の源泉として捉えるデータエコノミーが到来しています。収集・蓄積されたデータの活用は新たな価値を生む反面、個人情報保護などの問題が生じます。今後、データは誰のものかの議論が進み、情報に対する考え方が整理されることが期待されます。
図1:情報社会トレンド3
フィジカルとデジタルの融合が意識や行動を変化させる
小売に占めるeコマースの割合は、2017年に世界で10%を超えたと推定されます。実店舗の小売業者によるeコマース進出に加え、eコマース事業者の実店舗開設も増えるなど、フィジカルなチャネルとデジタルなチャネルを自由に行き来する消費者の行動に、小売業者が対応を迫られています。商品の持ち帰りができない店舗やレジのない店舗など、実店舗のコンセプトや提供価値も変化してきました。キャッシュレスによる決済のデジタル化も進行しています。
AIが身近な存在になってきました。社会生活の気づかないところにも、AIが使われることが増えてきています。音声操作が可能なスマートスピーカーは、家庭内の機器の操作やバーチャルアシスタントとして、今後、家庭に浸透することが期待されます。一方で、意思決定や判断をAIに“操作”されたり、AIが人間にとって脅威となったりすることがないよう、社会のしくみを整えていくことも必要です。
AIは、今後、社会のあらゆる場面で活用が進むと予想されますが、真に社会に組み込まれるには既存の制度やルールなどの見直しが必要です。AIによる新たなディバイドが発生しないよう取り組むことが求められます。
図2:情報社会トレンド4
まとめ
社会は転換期を迎えています。デジタル化により、フィジカルな社会で培われてきた常識や秩序は、再考が必要とされているのかもしれません。将来に備え、変化の先を読むことが求められます。